異世界をヴァーディクトウォーに巻き込まないでください(懇願) 作:COTOKITI JP
私には、三人の姉がいた。
人生の中で唯一私を名前で呼び、愛してくれた。
共に戦場で戦い、時に勝利の喜びを分かちあった。
戦争。
それが愚かな事など、私は少しも思わなかった。
事実、私達四人を繋ぎ止めていたのはあの戦場とACだった。
もしこれらが無かったら、私達は姉妹愛なんか忘れて互いに殺し合い、野垂れ死にしていただろう。
姉達の最期は今でも忘れられない。
『レイカ!私はもうダメ!逃げ──』
『ふ、ふざけるな!!てめえなんか……てめえなんかに殺されて溜まるか!!』
『私も生還は不可能か……ならばレイカ。 私はお前だけでも命を掛けて生きて返す!!』
次々と上がる爆炎。
嘗て、私よりも強かった筈の姉達がたった一機のACに殺られていく。
二人は呆気なく蜂の巣にされて死に、残りの一人は私を生かすために当時危険の大きかったオーバードウェポン、グラインドブレードまで使ってあの敵に挑んだ。
その間に私は逃げたから、彼女の最期は知らない。
生きてるか、死んでるかすらも不明だった。
あの時、目の前にいたのは黒い鳥。
そして今、目の前にいるのは赤い蜥蜴の化け物。
どっちが恐ろしいかなんて、最初から決まっている。
「何がバケモンや!あんなの、黒い鳥よか怖ないわ!!」
次の攻撃に移ろうとする炎龍。
レイカはある程度距離を取ってから停止し左腕武装のスナイパーキャノン、『AM/SCB-217』を展開し構える。
レティクルの中心と炎龍の胸部を重ね、引き金を引く。
本来のAM/SCB-217は五発の砲弾を自動連射するのだが、命中率の低下や砲身の摩耗を考慮し、その機能はオミットしている。
とても7〜8mのACに積むものではない大口径スナイパーキャノンから放たれた35cmの榴弾は弧を描きながら炎龍へと向かっていく。
スナイパーキャノンは普通APFSDSを撃つ物なのだが、今回の偵察任務では対AC戦は想定しておらず、榴弾しか装備していなかった。
とはいえ、それでも35cmの榴弾だ。
鱗一枚でしか体を守れていない炎龍ならば、食らってタダで済む事は無い。
その様子を見ていた伊丹は、炎龍の纏うプライマルアーマーに砲弾が阻まれるかと思ったが、何故か砲弾は何にも阻まれる事の無く確実に命中した。
凄まじい爆発音が鳴り響き、炎龍が仰け反り倒れる。
プライマルアーマーが作動しなかった原因だが、結構
「そうか!アイツ、攻撃と防御を同時に行う事が出来ないのか!」
恐らく、炎龍そのものの出力の所為だ。
ジェネレーターに例えるなら、炎龍はその出力が足りずプライマルアーマーと攻撃両方にエネルギーを回すことが出来ない。
パンツァーファウストを防いだ時も、炎龍は何かしらの攻撃をする素振りは見せなかった。
先程も攻撃準備をしている最中に撃たれたので防ぐ事が出来なかったのだ。
35cm榴弾の直撃で思い切り後ろに倒れた炎龍だったが、死んではいなかったらしく再び立ち上がった。
「まだ生きてたのか!」とユーリが武器を構える。
榴弾が直撃した胸部は鱗が完全に砕け散り、肉も内臓までには達していないがかなり抉れており、血が滝のように出ている。
少しの間茫然自失状態だった炎龍が我に返り、戦意を喪失したのか回れ右をして飛び去ろうとする。
「逃がすと思っとるんか!?」
飛び立つ炎龍に今度はなるべく偏差をつけて照準を合わせる。
レイカは対空射撃の経験もあった為、殆ど勘で偏差をつけていた。
またも鳴り響く爆音。
放たれる榴弾。
偏差はしっかりと合っていて榴弾は確実に炎龍目掛けて突っ込んだ。
遠くで爆発が起きた。
炎龍には確かに命中した筈。
そう誰もが思っていたが、煙の中からは胸以外無傷の炎龍が更にスピードを上げて出てきた。
「チッ、何やあの緑色の膜は!反則やないか!」
直撃していれば炎龍は確実に撃ち落とせていただろうが、逃げていた炎龍はしっかりとプライマルアーマーを作動させていた。
結果、プライマルアーマーに阻まれた榴弾はそのまま着発式信管が作動してしまい、炎龍の手前で爆発した。
この間にも炎龍はどんどん加速しながら高度を上げていき、遂には豆粒程の小ささになっていた。
ACが戦いを繰り広げている間、隊員の無事を確認していた伊丹は戦いが終わった事を知ると無線で大丈夫かどうか聞いてみた。
「あの〜そちらは大丈夫でしたか?」
「あぁ、怪我人は一人もいない。 そちらも大丈夫か?」
「ああはい、特にこれといった被害はありません」
「お前達はこれからどうするんだ?」
「引き続き難民を連れて逃げますよ。 そちらは?」
「我々も引き続き偵察任務を続行する。 顔も見せられなくてすまないが、そろそろ車両部隊の方へ戻らなければならない。 では、幸運を祈る」
そう言ってAC部隊はグライドブーストで地平線の彼方まで飛び去ってしまった。
しばらく呆然と見つめていた伊丹だが、彼らが見えなくなると各車両に指示を出し、難民の誘導を再開する。
それに伊丹の車両には重傷者までいる。
早く戻らなければならない。
そう思っていると、突然誰かが高機動車にズカズカと乗り込んで来た。
伊丹が後ろを振り向くと、そこにはあからさまに不機嫌な表情のゴスロリ少女がいた。
特別地域に建設されたヴェニデの基地。
そこの司令室には一人の女がいた。
コーヒーを飲みながら執務机に置かれている特別地域に関する資料を読んでいる。
「ほぉ……ここから約300km先に壁に囲まれた都市、か。 文明レベルは中世。 そして手付かずの資源の山……!」
資料を流し読みしながら彼女はブツブツとつぶやく。
「まるで攻めてくれと言わんばかりの世界一だな! あーでもしかし、EGFとシリウスが邪魔だな……いっその事総司令部に旧時代の超兵器でも強請ろうか。 それかヒュージキャノン大量配備で敵ごと焦土に変えてしまおうか……」
ウンウン唸るかと思えば唐突にニヤニヤしだしたり、忙しなく動く彼女だったが、部屋の扉をノックする音が聞こえると動きが止まった。
「コホン……入れ」
「失礼します」と一声入ってから軍服に身を包んだ男が入って来る。
要件を聞くと、彼女にとって嬉しい知らせが来た。
「先程連絡が途絶えていた我が軍の第一偵察部隊との通信が回復し、幾つかの報告を受けました」
「報告、とな。 それは何だ?」
男は淡々と目の前にいる特別地域派遣軍最高司令官に報告内容を告げる。
炎龍の事、難民の事、そして自衛隊と名乗る謎の武装勢力。
全てを聞いた彼女は難しい顔をした。
「うーん……炎龍はまあどうにでもなるとして、自衛隊、ねぇ……見たことも聞いたことも無い勢力だな」
「はい、恐らくは特別地域由来の勢力ではないかと小官は愚考致します」
「まだ顔も合わせていないのでは、何も分からないな。 まさか先日撮影された
結局どの疑問もまだその可能性があるという曖昧な答えしか出ず、男が出ていった後も疑問が頭の中に残り続けてモヤモヤした。
コーヒーを飲み干し、彼女は溜息をついた。
「ハァ……こういう時に、レニックがいれば何かと便利なんだがなぁ……」
彼女の覇気の無い声はやけに部屋の中に響いた気がした。
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君にはその権利と義務がある。(謎の押し付け)