前回のお話は『5年越しのプレゼント』となります!
それでは、ゆるりと本編をお楽しみください。
あらすじ
アニメ収録を終えたマネージャーは陽菜を迎えに行こうと車を走らせていたが、二期生のSpringメンバーである若葉日向を見かけてしまう。
ある準備を終えたマネージャーは、アニメの収録を終えた陽菜を迎えに行くために車を走らせていた。
目的の場所は神瑞駅……収録場所から近いため送迎車の場所で拾う形だ。
街灯が流れていく中、信号待ちで停車させる。
赤いライトで照らされた景色の端に、車掌が被っていそうな帽子が映る。
「あの帽子って、確か……」
いわゆるAiRBLUE二期生と呼ばれる少女たち……の中でもややこしい子が被っている帽子に似ていた。
若葉 日向。
チームSpringに所属している六石陽菜に憧れた少女。
つい半年前までは二期生全体が研修生状態だったけれど、その中でSpringのリーダー顔負けの活躍をした子だった。
陽菜のことを知った瞬間には、目の色を変えてしまって大変だったが……。
ため息をついてあおくなった信号を見てアクセルを緩く踏んでいく。
きっと気のせい。
そうやっていくら自分自身に言い聞かせても、向かう先は神瑞駅から変更されていた。
…‥
…‥
「お前か……ひなに何の用事があるの」
「険しい顔しないで、何があったのか話してよ……日向ちゃん」
よく知るデパートの入り口で不貞腐れていたのは、紛れもなく若葉日向そのものだった。
お気に入りの車掌帽を片手でいじりながら、背伸びをして蹴りをいれようとして失敗している。
もちろん避けたからだ。
「危なっ!」
「コドモ扱いするなっ!」
売り言葉に買い言葉。
さらに言い返そうとして、自分から口を紡ぐ。
「落ち着こう……ここで言い争っていても間に合わなくなるから」
「……‥誕生日プレゼント」
「なんて?」
僅かに口を動かして日向が放った言葉を聞き返すマネージャー。
それを見た日向は、小さな体躯を活かして腕を取る。
「ついて来て、ひなとブレゼント勝負するの」
普段……と言っても会う回数は少ないが、マネージャーは日向とあった際には毎回蹴りを入れられている。
普段から鍛えているのか、高校生の細腕でデパート内に引き摺っていった。
日向のプレゼント選びに付き合っていたマネージャーだったが、折角なので陽菜へと渡す追加の贈り物を探すことにした。
「形に残るものがいいよな……」
そう思って女性物の髪留めや小物を見てみるが煌びやかで目移りしてしまう。
日向には秘密にしてあるが、陽菜と付き合い始めたのは1年も2年も前のことだ。
その間、公にできないとはいえ……プレゼント選びには自信があった。
それでも……いや、それだからこそ、マネージャーとしてではなく『恋人らしい贈り物』なんてしてこれなかった。
結婚しないのか、そう言われた事も多々あった。
……その声の主に五十鈴りおであったが。
「リボンがあるから……これとか」
手に取ってみたミサンガを見つめてみるが、これでは目立ちすぎる……。
カシャ
背後の音に驚いて振り返ると、不機嫌な顔をした日向がスマホを構えていた。
「ひなの買い物終わったから……事務所まで送って」
覚束ない手つきでスマホを操作している。
……パパラッチだろうか。
もしやこれは脅しなのではと頭を抱えるマネージャーだったが、日向は気にも留めない様子で歩き出す。
「そっちは出口じゃ……」
マネージャーは日向を必死に追いかけた。
見失ってしまっては元も子もないと考えたからだ。
…‥
…‥
日向を事務所……ではなく、寮まで送り届けた。
夕食前の時間となっており水谷マネージャーに確認を取るとそうして欲しいと指示があったからだ。
「後輩というより同僚だよな……」
「何かひなに?」
いや特にないから……そう、後頭部座席に呼びかける。
デパートで日向に追いついたところであんな事になるとは思わなかったが。
結局、日向が選んだプレゼントは亀と桜の花びらが一緒になっているキーストラップだった。
今日はもう遅いので、明日渡すらしい。
誕生日プレゼントだったら意味がないのはないか……そう思ったが口を噤むことにした。
当の本人である陽菜が喜ぶなら、干渉しすぎるのもおかしな話だ。
「寮……ついたよ」
かつては何度も足を運んだ場所の目の前に車を駐める。
無言で降りようとした日向だったが、言葉の一片だけを車に置き去った。
「助手席にあるペンダントを……渡すこと」
お礼すら言わない。
最近の若い子は〜……なんてマネージャーは思わない。
デパートを出る直前、寄り道をさせられて購入したのだから気の利いた台詞だと思う。
ここで何かを買えと半ば強制で言われた時はどうしようかと思ったが、陽菜の誕生日に渡すものとしては上々だろう。
……普段使い出来ない点を除けばだが。
覚束ない足取りで走っていって姿を消した日向に、マネージャーは苦笑いに近いものを浮かべていた。
腕時計を見ると収録終わりから10分以上経過している。
スマホを取り出して素早くメッセージを送信する。
『もう到着するからまってて、陽菜』
僅かな音と共に送信が終わった……が、漢字変換を忘れている場所を発見してしまい、ひとり車内で悔しく思う。
流石に取り消しは出来ないが。
あくまでも安全運転で、さらにバックミラーを確認してからマネージャーは夜の街を突き進んだ。
…‥
…‥
神瑞駅に到着すると、一瞬だけ女性が窓の視界を横切った。
……陽菜が街頭に身を寄せて立ち尽くしている様に見えたのだ。
何処かのカフェに入っているとばかり考えていたが、寒そうな顔つきは不安になる。
嫌な予感が脳裏を通り過ぎた。
だがしかし、一瞬後には笑顔になり手を振ってくる。
遅れてしまったことがマネージャー失格だと、後悔しながらもすぐさま停車させる。
そのまま手早く鍵を閉めると、走って陽菜を迎えに行く。
「マネージャーさん!さっきヒナちゃんから送られてきたメールはなんですか!?」
……最初に言う台詞はそれなのか。
一先ずは陽菜に平謝りをする事にした。
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六石と書かれた表札の家まで陽菜を送り届ける。
都内にある陽菜の実家だ。
流石にもう……道は覚えてしまった。
「マネージャーさん、この箱はなんですか?」
「うーん、向こうで開けてくるといいよ」
秘密にしておこう。
……舞花は驚くだろうから。
「ふふっ、久しぶりにここに来ちゃった」
助手席から降りて、陽菜がくるりとその場で舞う。
「いっぱい楽しんできてね」
運転席からは降りずに、そう呼びかける。
陽菜はその言葉に……しっかりと頷いた。
「きっと、お父さんとお母さん以外も……祝ってくれると思います」
「え……もうバレたの」
「カマをかけてみただけです……やっぱりFlowerのみんなもいるんだ」
しばらくの無言の後、陽菜は僅かに身を乗り出す。
開け放たれた運転席に手をかけると、口元に陽菜を感じた。
いや……春の香りが自分の元までやってきたのかもしれない。
「わたしは……マネージャーさんと2人っきりの誕生会の方がよかったかもです」
そう言って陽菜は……微笑んだ。
春を告げる陽菜の笑顔は、どんな時よりも好きになってしまう。
「いってらっしゃい」
「行ってきます。マネ……____さん」
マネージャーさんではなく、自分の名前が告げられて……陽菜との時が刻まれていくようだった。
「……明日の先にわたし達は居ます、か」
マネージャーは、少しだけ寂しくなった助手席を見ながらそう呟いた。
ありがとうございました。
陽菜に、AiRBLUEに……CUE!に明日の先があることを祈ります。