お昼から帰ってみると、陽菜と自分、2人で社長室に呼ばれた。
「2人とも、待っていたわよ」
そう、鳳社長から言われ、椅子に腰掛ける。
「あの社長、用件ってもしかして新規アニメの採用の話ですか?」
「ええ、そうよ。陽菜にはその主役のオーディションに行ってもらうわ。もちろん、担当マネージャーであるあなたも一緒にね」
そう告げた鳳社長の目はいつにも無く真剣のなものだった。
真っ直ぐに陽菜を見据えながら尋ねる。
「陽菜、アナタに出来るかしら?」
「はい!わたしなりにですけど、がんばります」
それに即座に答えてくれて、一安心だった。
「いい返事ね。それじゃあマネージャー、資料を渡すからそれによく目を通して陽菜に伝えて頂戴」
大きめの封筒を手渡され、部屋から出るように言われる。
「「失礼しました」」
声を揃えて言ってから部屋を出る。
ほっと一息ついてから、そのオーディションの予定を確認すべく封筒を開ける。
「陽菜、これから受けるアニメの内容だけれど……」
『作品名:おんハピ♪〜Only Happy♪〜』
原作、同名タイトルの小説…綾坂征人
不幸を背負った少女たちが天之御船学園の幸福クラス、という組に所属し幸福とは何かを友情を通して学んでいく日常モノ。
陽菜がオーディションに受かれば、主人公である西沢彩歌、という役の子を担当するらしい。
今まで演じてきた性格の子たちとは打って変わり、冷静沈着で物静か、そして他人に冷たい様な子であるらしい。
「……と、ここまで話したけれど質問とかある?」
事務所のソファーに座って話し始めて数十分。
出来る限り情報を陽菜に渡したところで声をかける。
「そうですね……その、原作の小説はどこで読めますか?」
「ええと、帰りに本屋さんに寄っていくなら多分あると思う」
「わかりました」
そうか、陽菜は小説が原作のアニメ化、いわゆるメディアリミックス作品の主役になるのは初めてだから勝手が分からないのかもしれない。
「キャラクターの性格面だけど……出来そう?」
そう尋ねると、すこしだけ考え込む様にして俯いた後、なんとかします、と力強い返事が返ってきた。
「よし、それなら少しレッスンしようか。コーチ……は今春夏秋冬組を教えてるから、見てあげるよ」
「マネージャーさん、見てても分からないじゃないですか」
「いやそんなことは……あるけど、それっぽくなかったら言うから」
「はい、そうですね」
そこから2、3時間ほどは2人で部屋の隅であーでも無い、こーでも無いと声の出し方を勉強していた。 「そろそろ本屋さんに行かないと、ですね」
「うん、分かった」
何となく終わりの雰囲気になって並んで事務所を出る。
本を買いに行くくらいなら陽菜1人でもいい気がするけれど、夜道も危ないので心配になってついていくことにした。
「マネージャーさん、他にもみたい本があるので一緒に来てもらっていいですか?」
「いいけど、2人で見る本ってある?」
強いていうなら声優の雑誌だろうか。
そう言って陽菜が来た場所は結婚に関する情報誌のコーナー。
「ゼクシィとか、他にも今のうちに目を通しておきたいなって」
「プ、プロポーズまだなんですがその辺は良いの?」
「してくれないんですか?」
潤んだ瞳で問いかける様にして聞いてくる。
いや、するけども!
まだ時期は早いんじゃ無いかな!
「この企画が片付いたら、かな」
「ふふっ、待ってますね」
早く行こう、と言って無理やり小説のコーナーに走る。
平積みされた本のうち一冊を手に取り、レジに並ぶ。
「もう、はぐらかさないでください…」
むくれた陽菜の手を握りもう少し待っていてね、と声をかける。
照れた陽菜から握り返された手は、とても温かかった。
こんばんはー、今日も更新ですよ〜。
実はストックなしで毎日書いてるので投稿止まるかもしれませんが、待ってくれるとありがたいです!
そんな訳で、今回はアニメ化のお話と本屋に立ち寄る話でした。
陽菜ちゃん、ゼクシィを見に行くなんて大胆な子……!
ではでは〜!