人生とは様々なもので構成されている
その中でも『出会い』と『別れ』は誰にも等しく訪れるものであり
だからこそ意味を持つと私は考える
今思うならば・・・・
『彼ら』との『出会い』が私にとって一番大事な思い出だと思う
―2002年・夏―川神院中庭―
side
俺は両親の顔を知らない、聞く話によれば父は俺が生まれて少し後に、母は俺を産んですぐに亡くなったと言う。真相は知らないし別にこの先知る必要も無いと思う、俺にとっては今が重要だからだ。
「せいっ!!はぁっ!!」
俺の名は秋山悠理、ここは武術の総本山川神院、そして俺は川神流の門下生。
「オー、頑張ってるねェ悠理」
「おはようございます、ルー師範代」
七三分けに緑のジャージのルー・イー、川神院の師範代で生真面目を絵に書いたような性格で『心』の強さに重きを置く。やや技のネーミングセンスの悪さが目立つが基本尊敬出来る。
「お?朝も早くから元気だなぁ」
「釈迦堂さんはもう少しシャキッとしたらどうです?」
ボサボサの頭に無精ひげの
「ん、しっかり鍛錬しているみたいだな」
「おはようオヤジ」
腰ほどまである長い髪を束ね季節外れのマフラーを着用する
「おはよう、頑張っとるのぉ悠理」
「おはようございます、総代」
人の良さそうな笑みを浮かべた老人、この人こそこの川神院の総代である
「すまんがモモを起こしてきてくれんかのう」
「まだ起きないんですか」
「うむ、一応起こしはしたんだがのー」
「分かりました」
いつもの事だ、とため息をつきながら建物の中へと歩き出すのだ。
―――
side 立花信
「ところデ、悠理の方はどうだイ?」
「そういやぁそれが気になるんだよなぁ、お前秘密主義だからあいつの修行を他には見せねぇだろ?」
ふと、ルーと刑部からそんな事を問われた。俺は秘密主義と言うよりは一人の弟子を時間をかけて熟成させたいんだよねぇ。
「まだまだ発展途上だ、だがまぁ・・・・」
『まぁ?』
「まだ底が見えんからな、どっかで二、三年ぐらい集中的に育成したいもんだが・・・・そうなると学校とか行けなくなるわけでよ、結構キツイ事させるつもりだから当人の意思も重要だしなぁ」
正直言うなら悠理はまだまだ強くなれると思う、だがそのためには修行以外のほぼ全てを捨てる期間がほしい。がまだ悠理も四年生だしこれから友達も増えてくる、保護者としては今は小学生らしく過ごしてほしいとも思うわけで・・・・ん?
「なんだ、ニヤニヤして」
「いやーねェ?」
「だな・・・・」
なんだよ、気色悪い面しやがって・・・・
「ちゃんと父親していると思ってネ」
「まぁ最初はどうかと思ってたけどよ、最近特にオヤジが板についてきたんじゃねぇか?」
そうか?まぁそれはそれで嬉しいと言えば嬉しいのだが・・・・悠理がそう思ってくれるなら特に、だけどな。
―――
side 秋山悠理
さて、総代に言われてからたどり着いた部屋。とりあえずはその襖を叩いてみる。
「百代!起きてるか!?」
反応が無い、再度叩いてみるが同じだ。本来ならば年頃の女子の部屋に無断で入るのは気が引けるが・・・・
「入るぞ百代」
襖を開けて入れば寝穢く寝ている黒髪の少女の姿が目に入る。
「・・・・揺らして起きるはずも無いだろうし・・・・ここは」
枕元にしゃがみこんで、耳元で一言呟く。
「起きなきゃ前髪をストレートにするぞ」
「うわぁっ!?やめろよぉ!!」
次の瞬間に跳ね起きる百代、しかしまぁどんだけ嫌がってるんだよこいつは。
「起きたか、鍛錬が始まるぞ。俺はオヤジだから良いがお前今日は総代と組手だろう?遅れたら説教で組手がなくなるぞ」
「っ!!すぐ行く!!」
「そう伝えとく」
その言葉を聞けば直ぐに背を向け部屋を出る、と直後に寝巻きを脱ぐ音が聞こえる。全く、俺も一応年頃の男の子なわけで・・・・意識していないのだろうか、信頼されているのだろうかと疑問にも思うわけだが。
―昼頃―
いつものように午前中の鍛錬を済ませた俺はいつものように縁側で昼寝をしようと寝転がっていた・・・・のだが
「悠理、いるかイ?」
「?ルー師範代」
呼ばれる声に身を起こせばルー師範代の姿が。
「君を訪ねて人が来ているヨ」
―――
「忠勝!一子!・・・・と誰だ?」
正門までくればそこにいたのは二人の弟妹分と見知らぬ男子。
「兄貴、実はちょっと用事があってな・・・・」
こちらの少々目つきが悪いのが
「おにいちゃん・・・・」
ポニーテールの少ししょんぼりした表情なのが
「お初にお目にかかる、
なんだろう、いろんな意味で重大な病気を患っていそうな口調で話してきたぞこの男子。というか良く近くまで来て見ればクラスメイトじゃないか。
「直江は同じクラスだったな?まぁ俺の顔ぐらいは知ってると思うけど秋山悠理だ。改めて宜しく」
とりあえず直江と握手を交わす。
「で?本題に入ってくれ」
「ああ、実は・・・・」
忠勝の説明を聞くならば今現在、忠勝と一子、直江が所属している仲良しグループがあるらしいのだがつい先日、上級生のグループに何時も遊んでいた原っぱを数の暴力で奪われたのだそうだ。それぐらいならば良くある事だったがそこから先を聞くにつれ自分の表情が歪んでいくのが分かった。
当初遊び場を奪い返す事を考えた直江たちは策を用いて上手くあしらう寸前まで行ったのだがあと少しと言うところで一子を人質にとられ更にリーダー格の男子は耳にコンパスを突き刺されたのだという。
「で?俺を?」
だが今は耐えよう、ここで怒ったところで相手はいないし一子を怯えさせるだけだ。
「俺もそれは考えたんだがな、如何せんあっちも数が多いからこっちも手数揃えようって話になってな」
もっともな話だ、聞けば一子ともう一人非戦闘要員がいるようだ。なら護る担当と攻める担当が一人ずつほしいわけだ。となればなんとなく予想がつく。
「百代を呼んでくれば良いんだな?ってか手間省いて説得もしてくるよ」
「いいのか?」
「今の話は俺も気に食わん、任せろ」
―――
確かこの時間なら百代は・・・・いたいた。
「百代!ちょっとこっち来い!!」
「ん?どうした悠理」
厨房で桃をつまみ食いしていた百代を呼び寄せる。
「ちょっと話を聞いてくれないか」
それから説明をした、俺の弟妹分とその友人が理不尽にひどい目にあっていると言う事、それでこちらに助けを求めて来たと言う事を。
「確かに、気に食わないな」
百代は普段色々といい加減な性格をしているがとにもかくにも曲がった事が大嫌いなやつだ、特に今回みたいなのは許せなかっただろう。
「良いだろう、案内しろ」
―――
「っつーわけだ、俺と百代が手ぇ貸してやる」
「すまねぇな兄貴」
「ありがとうお兄ちゃん!」
「気にするな弟妹よ、俺は兄だからな」
とりあえず忠勝と一子の頭を撫でているとあちらでは百代にトレーディングカードのレアカードを献上する直江の姿が。
『じゃあお前は今から私の舎弟だ!いいな!?』
『はいっ!姉さん!』
舎弟契約とは、まぁ良いだろう。川神院内で唯一の年下である俺がこのとおりタメ口だから弟分と言う存在に憧れたんだろう。
『ゆーびきーりげんまん、嘘ついたら腕の中で嬲り殺す!ゆーび切った!!』
『・・・・え?』
嬲り殺すってお前・・・・直江、強く生きるんだ。
『ちなみに私の舎弟と言う事は悠理の舎弟でもある!あいつの事は兄さんと呼ぶんだ!』
おかしいな、気がついたら巻き込まれた。
―一週間後―
例の上級生連中をしめる前に忠勝や一子が所属していると言う『風間ファミリー』のメンバーと顔合わせをする事にした。
「俺は自由な風!
バンダナを巻いて一子に負けず劣らずな元気さを見せるリーダーの風間翔一、話によるならば彼がコンパスを刺されたらしいが今は気にしている様子はない。
「俺様は
小学生にしては筋骨隆々な島津岳人、なんでだろう出会ったばかりなのにこいつの将来が心配になってきた。
「
おとなしめな師岡卓也、うん。何か光るものが垣間見えるが今はそれがなんなのかは分からない。
「で・・・・あいつらか」
「ああ、そうなんだ兄さん」
そしてもはや直江の中では俺の呼び方は兄さんで固定らしい、まぁもう気にしない事にしよう。ともあれ今は例の連中を遠目に見ている状態だ。数は20人近くいるだろうか・・・・まぁ百代もいるしどうとでも出来るだろう。
「んじゃ真っ向から行こう、百代は奥に突っ込んで思うままに暴れて大将首を取れ、果敢に突っ込んできたら俺が迎撃する」
「ああ、それで良いぞ・・・・」
「ほんじゃま、参るぜ皆の衆」
俺が先頭を切って歩き始めると二番目に百代がついてくる。その後ろから忠勝と風間、直江、島津が一子と師岡の二人を護るように進む、前回の反省もあり人質に取られやすい二人を護る事にしたのだろう・・・・それならこちらもそれなりに動ける。
「百代、一発目は俺が行く。後は最低限あいつらだけを護るからカチコミは任せた」
「ああ任せろ」
「手加減はしろよ?話を聞くかぎりじゃ多分喧嘩慣れはしてないだろうからな」
「分かってる、ジジイにどやされたくないしな」
チラリと後ろを見れば、忠勝が静かに頷く。「こっちは任せろ」と眼が語っている、全く信頼出来る弟分を持ったものだ。
「なんだお前ら、風間たちじゃねーかよ」
「二人増えたぐらいで勝てるとでも思ってんのか?あぁ!?」
「今度は耳じゃなくて舌とか面白そうじゃね?」
そんな事を言いながら先ずは三人ほどが俺の方へと歩み寄ってくる、しかしまぁ俺が川神院で修行していると言う事を差し引いてもアリアリとわかるぐらい喧嘩は素人だ。きっと数に任せた真似しかしてこなかったんだろうな、個々の実力だけなら風間ファミリーの連中の方が圧倒的に上だ。
「大丈夫だ、二人増えたんじゃねぇ」
「あ?」
「お前らの相手は・・・・俺たち二人『だけ』だ!!」
無警戒な顔面に先ずはストレートを叩き込む。当然、警戒していなかったので鼻っつらに命中し鼻血で顔を真っ赤にしながらゴロゴロと転がっている。
「てめー!!」
「よくもヤスオを!!」
一緒に進んできていた二人が同時にかかってくる、が・・・・遅い。何時も百代の相手をさせられている俺からすればハエよりも遅い。先ずは右側から蹴りを入れようとしている奴の膝を前蹴りで止め、その間に左側の奴の拳を掴んでそのまま引きずり倒す。
「行け!!百代!!」
「ああ!!五分で沈めてくる!!」
そして右側の奴のみぞおちに拳を叩き込んだあとに倒れ込んでいた奴の背中に全体重を乗せた肘を叩き込む。痛みのあまり気絶した二人を放置し百代に合図を出すとそのまま俺は後退し風間ファミリーと合流する。
「後はあいつに任せておけ、何とでもなる」
その言葉に黙って頷いた風間ファミリーのメンバー、そして言葉通りに百代が五分ほどで全員を沈めてきた。ちなみに前情報で風間の耳にコンパスを刺した奴に関しては他の奴らがパンチ、或いはキックで一発だったのに対し顎へのアッパー、こめかみへのフック、ボディへのストレート、すねへのローキック、金的への前蹴りと言うフルコース五連撃で沈めていた・・・・俺にしか見えなかっただろうが。
「さて、これでしばらくは大丈夫だろうが・・・・」
そう、しばらくはだ。喉元過ぎれば熱さを忘れると言う言葉のように、時間が経って俺と百代が彼らの仲間では無いとわかれば再び危険にさらされるかも知れない・・・・どうしようかと考えていた時だった。
「ねぇねぇお兄ちゃん」
声をかけてきたのは一子だ、まるで子犬のような瞳で見ている。
「どうした一子?」
「お兄ちゃんと・・・・百代先輩も私たちと一緒に遊ぼうよ」
一子の言葉に、あちらのメンツが顔を見合わせる。そりゃあ今後の事を考えて心配していた俺にとっては渡りに船だが・・・・
「悠理!モモ先輩!二人とも俺たちの仲間になってくれよ!!」
風間の言葉、他のメンバーの表情を見れば本気で誘ってくれているのだとわかる。だから俺たちはこう答える。
『ああ!宜しく!!』
今後あとがき欄をTIP集として活用したいと思います。本当は座談会的なものも作ろうと考えたんですが・・・・性にあいませんでしたorz。
・季節外れのマフラー
「何か個性が欲しかったんだ」との理由から信が身につけている。通気性抜群、強度もありでいざとなったら武器にも出来るスグレモノ。
・秘密主義
「え?個人特訓とか秘密の方がかっこいいっしょ?」と言う信の主張が反映された結果。
・「起きなきゃ前髪をストレートにするぞ」
中々起きない百代を一発で目覚めさせる魔法の言葉、ただし一部実力者のみに使用が許される。
・『ゆーびきーりげんまん、嘘ついたら腕の中で嬲り殺す!ゆーび切った!!』
百代特製の舎弟契約の文言、能力的に実施可能なため悪魔との契約よりも厳しい契約。