真剣で私に恋しなさい!~零~   作:伯楽星

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第二話 五十年後の約束

―2002年8月―

side 秋山悠理

 

俺と百代が風間ファミリーに加わって二ヶ月ほどが経過した、最初の頃にちょっとした事件はあったものの今ではすっかり仲良し八人組として周囲からも認識されている。参入時のあの事件だがちょっとだけ捻れて周囲に伝わったらしく『風間ファミリーのうち二人が化物』と言う認識をされている、やや不本意だ・・・・化物なのは百代だけで俺は一般より少し上ぐらいだ。

 

「ねぇねぇ、この草・・・・この間より大きくなってないかしら?」

 

何時ものように原っぱで遊んでいると、一子が草・・・・と言うよりはあれは花ではなかろうか?つぼみではあるが。まぁともかくその植物を見てそんな事を言い出した。

 

「そういえばそうだな、以前より・・・・うん、かなり伸びた」

「ああ・・・・そう言えばそうだな」

 

皆も少しばかり印象にあったのだろう、口々につぶやきながら頷いている。

 

「ある日」

 

不意に岳人が口を開いた。

 

「ある日ワン子の姿が消えていた、すると次の日にこの植物がワン子の身長分伸びていた」

「いやー!!?」

「テメェゴラァ!!何妹怖がらせてくれてんだァアン!?」

「すいませんした!!」

 

岳人の言葉に怖がった一子を見て俺が胸ぐら掴んでキレると岳人が即謝ってきた。全く、大事な妹である一子を怖がらせるなんて何てことをするんだ・・・・泣き顔も可愛かったけど。

 

「ある日岳人の姿が消えていた、すると次の日この植物のてっぺんに岳人の顔が・・・・」

「ギャー!!気持ち悪いわ!!」

「気色悪い事言うんじゃねぇ風間!!」

「グロイよ!!」

「・・・・」

 

翔一の言葉に皆がキモがるとかなり分かり易く凹んでいるのがわかる。

 

「しかしなんの植物だろうな」

「ジジイか立花さんなら分かるんじゃないか?」

 

成程、鉄心さん(老人)オヤジ(博識な馬鹿)なら分かるかも知れないな。

 

「じゃあ呼ぶか、皆耳塞いどけ」

 

俺の言葉におとなしく全員が耳をふさいだのを確認すれば百代と二人揃って息を吸い込む、そして・・・・

 

「ボケはじめのブルセラじじい!!」

「制服大好きエロオヤジ!!」

 

俺と百代が同時に叫ぶと・・・・

 

「こりゃモモ!!お前良い度胸しとるの!!」

「お前んな事大声で叫ぶなよ!?俺が色々と疑われるじゃねぇか!!」

「なんなの川神院って・・・・」

 

俺と百代が悪口を叫んだ事で本当に現れた鉄心さんとオヤジの姿に卓也がドン引きしながらツッコんでる。

 

「実は二人を呼んだのには理由があって・・・・」

 

とりあえず二人の叫びを無視しながらこの植物について聞こうと思って呼び出した旨を伝えてみる。

 

「んー・・・・これって竜舌蘭じゃね?」

「ふむ、確かに・・・・竜舌蘭じゃのう」

『竜舌蘭?』

 

鉄心さんとオヤジが口を揃えた事でこちらが皆揃って首をかしげる。

 

「センチュリープラントっつってな、何年かに一度しか咲かない花の事なんだが・・・・この竜舌蘭がまさにそれでな」

「うむ、確かこの花は五十年に一度のはず・・・・ワシも昔ここで見た覚えがあるから・・・・明後日ぐらいには咲くかのう」

 

なんのかんのと言いながら去っていく二人を見送るように手を振ってから、後ろを振り返ってみれば何故か皆がサークル組んで相談中。

 

「五十年に一度か・・・・いいなそれ!!」

「だよな、良い記念っつーか」

「じゃあ咲いたら集合写真とって・・・・」

 

どうやらこの竜舌蘭を前に写真を撮る計画らしい、しかし・・・・確か明後日は台風が直撃するはずだ。無事に咲けば良いのだが・・・・

 

「ん?」

 

今一瞬・・・・原っぱの入口に誰かいたような・・・・

 

―翌々日―

見事に台風直撃とはな、昨日の感じだと明日には咲きそうだったがこれじゃ・・・・

 

「悠理ー、お友達から電話だヨー」

「うーっす」

 

ルー師範代の言葉に受話器を受け取る。

 

『ああ兄さんか!?』

 

電話のむこうからはやや慌て気味の大和の声が。

 

「どうした」

『実はキャップたちが竜舌蘭を護るために原っぱに・・・・』

「・・・・は?」

 

まてまて、この暴風雨の中を?確かに皆あの竜舌蘭に特別な何かを感じたのは否定しない、俺もそう思った。だけどあまりにも危険すぎる。

 

『止めるのは無理そうだったから兄さんと姉さんに来てもらおうと思って・・・・』

「分かった、他には誰が」

『既に岳人とモロ、ワン子が・・・・だからこのあと直ぐに源さんに連絡するつもり』

「分かった、俺と百代もすぐ向かう」

 

受話器をおけば、その足はまっすぐに百代の部屋へと向かう。

 

「無茶しやがって・・・・」

 

――――――

ものの数秒で百代を引きずり出した俺は、暴風雨などものともせずに原っぱへと通じる道を駆け、本来10分かかる道のりをわずか三分で踏破していた。

 

「二人共遅いぞぅ!!」

「やかましい!!まぁ良い説教は後だ、どうせやる事やらにゃ帰るつもりもねーんだろ?」

 

その場にいた翔一、大和、一子、岳人、卓也、忠勝を順に見る、全員が静かに、それでいて力強く頷くのを見れば先頭を切って歩き出す。

 

「俺が陣頭指揮を取る、皆俺の指示に従って動いてくれ!」

「おう!リーダーとして命じるぜ!この場の指揮はユウ兄に預ける!!」

「よし、んじゃあ基本二人一組で行こう。翔一と岳人、大和と忠勝、百代はモロと・・・・あの子守ってやれ」

『?』

 

原っぱに到着してから、視界の隅に映っていた少女、痩せていて少し薄汚れた印象のある子だ。

 

「お前椎名じゃん!」

「なんでこんなとこに・・・・」

 

椎名京(しいな みやこ)、クラスが違うので詳細は知らないが確かいじめを受けていた子だ。

 

「あの、皆がこの花咲くの楽しみにしていたのを、見ていたから・・・・それで・・・・」

「今は人でが多い方が助かるしな、頼んだぞ百代。一子は俺と来い、んで翔一と岳人で竜舌蘭を支えろ!大和と忠勝はロープの用意、百代チームで支柱を立てろ!俺と一子で固定する!分かったな!!」

『おーう!!』

 

――――――

あのあと、なんとか全員無事に家まで送り返す事には成功したのだが当然の如く鉄心さんとルー師範代から俺と百代は説教を喰らった(オヤジと釈迦堂さんは笑ってた)が不思議と達成感があった。

その翌日、台風一過の青空の下に風間ファミリーは集合していた。

 

「いやー、咲いたな」

 

感慨深そうに呟くのは大和だ、それに続くように口々に感動の言葉を述べる中・・・・

 

「思ったより普通だな」

 

我らがリーダーは全く空気を読まず、皆が思っていても口にしていなかった事を口にしやがった。

 

「言うなよ!?」

「思ってはいたけどさ!!」

 

岳人とモロがツッコミで連携してしまったじゃないか。

 

「ほらほら、とっとと写真撮るぞガキども!!」

 

と、カメラ片手にオヤジが皆を急かすとわらわらと寄り集まってポジション取りとポーズ決めに入る。

 

「・・・・」

 

こちらを見つめる視線を感じれば、原っぱの入口に椎名の姿だ。

 

「大和、あの子誘って来い」

「え、俺!?」

「兄貴分命令だ、行け」

 

しぶしぶではあるが椎名をつれに行った大和。

 

「なんだ、一人増えたのか?ほらとっとと並べ!!」

 

騒がしく慌ただしく撮られた写真。

 

「どうせならよ、次に咲いた時も皆で揃って撮ろうぜ」

「お、いいなそれ!!」

「あのさ、よかったら君も・・・・」

「・・・・うん」

 

50年後、そんな遠く先の約束ではあるけども。それでも今この場にいた皆の眼にはその遠い先の光景がハッキリと浮かんでいた。




TIP集

・『風間ファミリーのうち二人が化物』
MOMOYOと悠理の事です。後の武道四天王となる二人だから間違いでは無いはず。

・「テメェゴラァ!!何妹怖がらせてくれてんだァアン!?」
超シスコンが顔を出すと言葉遣いが荒くなります。それはいつまでたっても変わらないもの。

・博識な馬鹿
別称:立花信、教員免許どころか各種超難易度資格を取得しているから頭は良い。でもわけのわからないこだわりを持つため悠理がそう呼ぶ。

・制服大好きエロオヤジ
別称:立花信、完全に悪口です。が「だって女の子の制服が見たいから俺は教員免許とったんだ!」と信がシャウトした事があったらしく、そこから発生した悪口。

・「無茶しやがって・・・・」
お兄ちゃんはみんなが心配。
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