真剣で私に恋しなさい!~零~   作:伯楽星

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第七話 帰還

―2009年4月―九鬼家極東本部

ヒュームさんの弟子になり、本格的に鍛え始められてから三年半が経った。兄弟子とも言えるステイシーさんや同期の弟子である漆さん(従者部隊入隊後強制的に弟子入りさせられた)と共に切磋琢磨し今ではすっかり様々な従者たちから評価を得ていた・・・・のだが。

 

「そろそろ期限だな、悠理」

「はい」

 

そう、三年半・・・・黛家で世話になっていた時期を含めれば四年。戻るとした約束の時が来てしまったのだ。

 

「お前は揚羽様に次ぐくらいに強くなった、俺がそのように鍛えた。胸を張って戻ると良い」

「はい・・・・ヒュームさん、三年半・・・・お世話になりました」

「ふん・・・・」

 

なんだろう、心なしか照れているようにも見えるが・・・・

 

「おお、悠理・・・・そうか期限終了であったな」

「英雄様」

 

九鬼英雄、九鬼家長男でありやや破天荒な性格ではあるが根本は快男児と言った感じである。好きな人ができたと言う相談を受け相手が一子であった事に驚きはしたが・・・・まぁ一子次第だろうと思っている。

 

「フハハハハッ、もう主従の間柄では無い。何より悠理には世話になっている、友として我のことを英雄、と呼ぶが良い」

「まだ、今日までは従者です故・・・・明日からそう呼ばせていただきます」

「うむうむ、お前さえよければ川神学園卒業後は九鬼に来て欲しいものだな」

「そうですね・・・・良き師と上司、先輩方に恵まれた良き職場だと思いますが・・・・オヤジの事もあれば川神院の事もあります。今年一年考えて・・・・その時に決めさせていただきます」

 

満足そうな笑顔を浮かべた英雄様が去っていくと今度は紋白様だ。九鬼紋白、俺が始めて従者部隊の人々と参加した作戦で救出目標となった少女、この三年半はヒュームさんに付き従い仮専属と言うことでお仕えしてきた。

 

「おお悠理、もう行くのか?」

「はい紋様、短い期間ではありましたがお世話になりました」

「うぅむ・・・・悠理よ、お前さえよければ九鬼にこぬか?」

「英雄様にも同様のお誘いを受けましたが一年、考えさせていただきます」

 

同じように満足気な笑みを浮かべ紋様も去って行かれた。

 

「なんだ、もう行くのか」

「少し寂しくなりますね」

「なんだよー何時までもいりゃあいいじゃねぇかー」

「君がいなくなると寂しいけど束縛はできないもんねぇ」

 

すっかり馴染みになったあずみさん、李さん、ステイシーさん、漆さんが別れの挨拶に来てくれた。

 

「皆さんにも世話になりました」

「ま、アタイは同級生になるからいやでも顔合わせるんだけどな」

「えー、あずみさんが悠理君と同級生?テラワロス」

「漆ぃ!!そこ直れぇええ!!!」

 

逃げ惑う漆さんとそれを追うあずみさん、こんな風景も日常となりつつあった。

 

「では、またいずれ」

「何時でも遊びに来てください、忙しくなければお相手致します」

「おう!ロックにハンバーガーとコーラでもてなすぜ!!」

 

さぁ、戻るとしようか・・・・家族と仲間の下へと・・・・

 

「ちょっ!?あずみさん、それマジで刺さる方!!刺さる方だからぁ!!」

「うるせぇ!!殺すつもりだから問題はねぇ!!」

「大アリじゃーん!!?」

 

・・・・漆さんを救出してから帰ろう。

 

―川神院―

懐かしいな、川神院の門。かつてはここが家だった、毎日のようにおはようとここから出かけ、ただいまとここに帰ってきていた・・・・それだけに感慨深い。

 

「ああ、すまない」

 

門前にいた修行僧に声をかける。

 

「はい」

「鉄心さんは今いるかな?」

「どのようなご用件でしょうか?」

「・・・・秋山悠理が戻りました、とお伝え頂けたら分かるかと」

「?はぁ・・・・」

 

四年前には見なかった顔だ、と言う事は俺が川神院を離れてから入門してきた人だろう。まぁ四年もあれば人の入れ替わりもあるだろうしなぁ。

 

「悠理」

 

ああ、懐かしい声だ。そう思い視線を向ければ鉄心さんがオヤジとルー師範代、釈迦堂さんを伴ってそこにいた。

 

「総代、秋山悠理・・・・ただいま戻りました」

「ふぉふぉふぉ、大きくなったのう」

「何かがっちり鍛え上げられてね?あのじじいどんな修行させたんだよ・・・・」

「以前とは比べ物にならないくらいに鍛えたネ、どれほど成長したか楽しみだヨ」

「おぉっ、俺も戦いてーなぁ」

 

一様に俺の成長を喜んでいる反応でこちらとしても嬉しい。

 

「しかしヒュームを通じて話は聞いたが・・・・川神院を出るのか」

「はい、確かに以前よりも強くはなりましたが・・・・それでも今の俺は大分川神流から離れました。正直以前使えていた技も若干うろ覚えなものもありますし」

「あれ?お前川神流の鍛錬はしてなかったのか?」

「いや・・・・仕事で忙しくて技の鍛錬とかほとんどできなくて・・・・使用頻度が少ない方から順番に記憶から無くなって・・・・」

 

ちょっとオヤジが呆れ顔をしている。

 

「ですが・・・・川神流の門下生であることに変わりはないと思っていますので何かあれば声をかけてもらえれば、と思います」

「うむ、そのときは頼らせてもらおうかのう」

 

―島津寮―

岳人の母親で寮母でもある麗子さんに挨拶を済ませた俺はあてがわれた部屋で・・・・

 

「僕はクッキーって言うんだ、よろしくね」

 

ロボから挨拶をされていました。しかし九鬼にいた頃に話は聞いたが本当にこんな高性能なのを作っていたとは・・・・まぁクッキーの話を聞けば元々は一子へのプレゼントだったらしいがクッキーはご奉仕ロボ、一子は日常生活そのものも鍛錬と言ったらしく

 

「じゃあ僕は廊下掃除をしているから何かあったら呼んでね」

 

すいー、と部屋を出て行くクッキーを見送ってから荷解きを始める。

 

先ずは衣類、李さんおすすめすべらないギャグ百選(封印指定)、ヒュームさんからもらった標本、ステイシーさんからもらったアメリカ国旗ペナント、漆さんからもらった漆器・・・・おかしいな、貰い物のほとんどが役にたたない。まぁもらった漆器はどこぞの家宝よろしく飾っておくとして・・・・他の物は押入れ下の収納スペースに押し込んでおこう。

 

「しかし・・・・思ったよりも荷物は少なかったな」

 

先ほどのよぶ・・・・大事な貰い物たちを押入れにぶち込んだら表に出してあるものがほとんど無い。数冊の本と漆器ぐらいなものだ。

 

『ただいまー!』

『あれ?クッキーお客さん?』

 

ああ、すんごい懐かしく感じるな。声からしたら翔一と大和、気を感じるに・・・・京と・・・・誰だこれ?知らない気配が・・・・ん、更に気配がもう一つは・・・・覚えがあるような無いような・・・・まぁ行けば分かるか。

 

「久しぶりだな」

 

―――

side 直江大和

 

「久しぶりだな」

 

一瞬、時が止まった。この人だれ!?とも思ったけれど俺たちに久しぶりなんて言う人は一人しかいない。

 

「うぉおおおおお!!!悠理ぃいいいい!!!」

 

真っ先にキャップが反応して飛びついた!?

 

「ははは、俺は男に抱きつかれる趣味は無いからなー?」

「うわぁあああああ!!?」

 

全速力のキャップを掴んで投げるなんて芸当を出来る存在は数えるほどしか知らない、特に男性では・・・・一人ぐらいだ。

 

「お帰り、兄さん」

「ただいま大和」

 

――――――

side 秋山悠理

 

しかし凄まじく動きが早い事であっという間に風間ファミリーが参集した、しかも外国人留学生のクリスと昔懐かしい由紀江の二人が参入と言うおまけ付きでだ。

 

「しかし、由紀江が川神に来ていてしかも風間ファミリーに入っていたとは・・・・驚きだな」

「いえいえ、皆さん良くしてくれますので・・・・」

「というか悠理ー!お前本当に修行してきたのか!?まゆまゆみたいな可愛い子と知り合いになってたし」

 

百代は昔からその気はあったが女の子好きになったようだ、そして強くなった・・・・以前よりも遥かに。

 

「投げ飛ばすなんて酷いぞう!!」

「お前は少し落ち着くことを覚えなさい」

 

翔一は恐ろしい事にほとんど変わらない、体は大きくなったけど中身はそのまんまだ。

 

「兄さんが戻ってきてくれたから助かるよ」

「お前には気苦労をかけたみたいだな」

 

大和は中二病が抜けて少し知的なイメージを持ったように思える。

 

「ま、兄貴がくれば少しは楽だろ」

「忠勝も苦労をかけたな」

 

忠勝はほとんど変わらないようで何よりだ。

 

「お兄ちゃーん、わふー」

 

一子は・・・・なんだろう、以前より犬っぽくなっている気がする。まぁ気にするほどではないだろう。

 

「うぇーい!お兄ちゃん!」

「小雪も元気そうで何よりだ」

 

小雪もあの頃が嘘のように元気だ、少々エキセントリックになったが問題無いだろう。

 

「悠理君、お会いしたかったですよ」

「ああ、俺もだ」

 

冬馬はなんだろう・・・・眼の暗さはなくなったがちょっとばかりおかしい気がする、人のふとももに手を伸ばしてくるし。

 

「気をつけろ、若は両刀使いに進化してるぞ」

 

準は何故かハゲになっていた、しかし一番聞きたくない進化情報をよこされたな。

 

「おひさ」

「ああ」

 

京も以前とは比べるまでもないぐらいに元気なようだ、ちょっとばかり大和との距離が近い(物理的に)が問題は無いだろう。

 

「ふふーん♪どうだ、俺様ナイスガイになっただろう?」

「確かに、以前より筋肉がついたな。だが筋力トレーニング以外も行え、体幹が悪くなるぞ」

 

岳人はあの頃のまま真っ直ぐパワータイプに育ったらしい、まぁそれはそれで不安があるが・・・・きっと問題は無いだろう。

 

「で?何故卓也は女装しているんだ?」

「うぅ・・・・せっかくだからって・・・・」

 

卓也は・・・・なぜだろう、女装姿が何故だか似合う・・・・そして岳人と冬馬が・・・・うん、俺は何も見なかった事にしよう。

 

「お初にお目にかかる、クリスティアーネ・フリードリヒだ」

「秋山悠理だ、よろしくクリス嬢」

 

そして新人のクリスはまっすぐな眼をしている、どちらかといえば一子に近しいものを感じる。

 

「悠理さんにまたお会い出来るなんて・・・・」

「約束通りまた会えた、と言う事で」

 

もう一人の新人由紀江は以前会った時よりも女らしく育っていた、そして闘気も充実している、確実にあの頃よりも強くなっている。

 

「ユウ兄、かなり落ち着いた感じになったよね」

「色々と経験してきたからな」

「さー!!色々話を聞かせてもらうぜ!!」

 

これだよ、この雰囲気。ああ、戻ってきたんだなと実感する瞬間だ―――




TIP集

・やや破天荒
悠理の英雄に対する評価、他の人曰く「やや」ではないとの事。

・「えー、あずみさんが悠理君と同級生?テラワロス」
自殺志願者のセリフ。マジで刺さる方のくないを持った素敵なメイドさんが阿修羅の如き形相で追いかけてくる魔法の呪文。

・クッキー
108の形態を持つ可変型万能お世話ロボット。テンパりやすくキレやすいが基本優しい。形態ごとに性格が変わる。

・李さんおすすめすべらないギャグ百選
某万能執事も愛読する一冊。「KEEP OUT」と書かれたテープでぐるぐる巻きにされて悠理の部屋の押入れに封印されている。

・漆さんからもらった漆器
漆さんの漆器コレクションから厳選されて贈られた一品。後々鑑定してもらったら数十万するモノホンだと判明。
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