一年、三年、二年の順番で三日かけて行われる東西交流戦。既に最初の二日だけで悲喜交々なストーリーが生まれた。
初日、一年生の部。総大将武蔵小杉の命令で意気込んで敵本陣に奇襲をかけに向かった由紀江だったが何故か突出し始めた武蔵小杉がものの数分で撃破され活躍する暇もなく終戦、のちに「小杉散華」と呼ばれる事になった。
二日目、三年生の部。百代対策として200人が一体の巨人に変化する奥義『天神合体』を用いて戦いに望んだ天神館側であったが百代の放つ『星殺し』・・・・まぁつまり極太レーザーの前に撃沈、その後は消化試合同然となりのちにこちらは「MOMOYO無双」と呼ばれる。
そして三日目、この戦いの勝敗を決す二年生の部が今まさに開戦の刻を待ち構えていた―――
―川神学園側本陣―
既に全員が配置に就いたのを確認すると俺は英雄の傍らで待機していた。
「フハハハハッ、悠理よ。レベッカの配置はどうしたのだ?」
「単独で遊軍扱いに、下手に部隊に組み込むよりは良いかと」
何より手合わせした感じではかなり強そうだったし、とりあえず「隙あらば敵将を討て、それ以外は自由に」とだけオーダーを下して後は何の指示も出していない。どれぐらいの自己判断力と行動力があるかを見る一つのテストだ。
「さて・・・・序盤で十勇士のうち何人を討てるかが問題となるな」
「ふむ、悠理もそう見るか」
「当然だろう、中核を成すのが十勇士ならば最低半数討てれば勝負の天秤はこちらに傾く」
そのためには要所防衛、遊撃の将たちと何枚か仕込んだジョーカーが機能することを期待するしかない。
『開戦じゃあっ!!!』
鉄心さんの開戦宣言と共に前線から大音量の怒号が巻き起こる、初っ端から正面衝突したのだろう。
「悠理、ここまで敵が抜けてくる可能性はあるか?」
「突破力があるのが一人いるようだし忍もいる、本来あずみさんの役目なんだろうが・・・・今日は俺が代理と言う事でお相手しますよ・・・・なぁ?忍」
俺が視線を向けるのは真上、何も見えない漆黒の闇。しかしはっきりと殺気と気配を感じる。
「真っ向からも一人ですが・・・・そちらは不死川さんがなんとかするでしょうよ。俺は上を叩きます」
「任せたぞ悠理」
「御意」
ぐっ、と足に力を込め力任せに跳躍する。
―――
姿が見えた、まぁわかりやすいぐらいに忍のような格好をしている。
「何奴!?」
「川神学園、秋山悠理・・・・参る」
降下してくる忍、特徴からして十勇士の鉢屋だろう。まぁとりあえず・・・・
「そのまま落下されると困るのでね・・・・ぶっ飛べ!!」
「ぐむぅっ!?」
先ずは空中で蹴りを一つ、これで落下地点が動いた。少なくとも落下のドサクサで大将が・・・・なんて事にはならない。が・・・・大分距離を空けすぎた、俺は百代みたいに空中で自在に動けるわけではないのでこのまま落下するしか・・・・
「これでも喰らえ!!」
「っ!!?」
ヤバイな、そう言えば忍には飛び道具があるのを忘れていた。クナイに手裏剣の乱舞、だが・・・・見慣れた光景だ。なにせ鉢屋よりも長く生きたあの人と戦っていたのだから・・・・な。
「当たるか!!」
「何っ!?」
親父のマフラーを一本借りてきていた、首には巻かずに腰に巻きつけていたモノに気を送り込み硬化させる。布槍術と呼ばれる中国武術の技法・・・・を使って一本残らず撃ち落としたところで俺も鉢屋も着地する。丁度味方部隊のど真ん中か・・・・
「囲うだけでいい!こいつは俺が討つ!!」
その言葉に味方が俺と鉢屋を囲い円を描く、とあちらの方で不死川と恰幅の良い女子が戦っているのが見えた。
「余所見をする余裕があるのか?」
「分身か」
鉢屋がいつの間にか五人に増えている、周囲の味方もざわめき始める。まぁそりゃ驚くだろうが・・・・普通は。
「覚悟っ!!貴様さえ討てばロクな護衛はいないはずだ!!」
「ああ、その読みは当たりだ。客観的に俺より強い奴はここにはいない」
ゆっくりと眼を閉じる、そう俺が負ければそれまでだ・・・・『負ければ』だがな。
「だがな鉢屋、お前は奇襲を見破られた時点で終いだったな・・・・」
―――
side 鉢屋
「だがな鉢屋、お前は奇襲を見破られた時点で終いだったな・・・・」
それがどうした、忍とて直接戦闘は鍛えている。川神百代や剣聖の娘と言った特記戦力がない以上は俺が貴様と総大将を討てば全て・・・・
「!!!?」
何が起きている?どうして『目の前にこの男がいる?』おかしい、さっきまで30mは離れていたというのに!しかも分身が全て消されて・・・・
「ジェノサイド・・・・」
振り上げられた脚、見た瞬間にこれを喰らえばマズイと言うのは分かった。わかっているのに・・・・本能が告げている、これを避ける事はできないと・・・・そして・・・・
「チェーンソー!!」
俺はここで負けるのだと、ハッキリ認識した瞬間に俺の意識は途切れた・・・・
―――
side 秋山悠理
ヒュームさんに教えられて以来始めて使ったが上手くいくものだな、まぁあの人が見ていたら「まだまだだな」って言われて終わりなんだろうけれど。
「フハハハハッ!まさかヒュームの技を使うとはな!!」
「相手も手練だったからな、確実に仕留めた方が良いと考えたまでだ」
忍との直接戦闘の場合、長期戦は避けなければならない。というのもあずみさんによる対忍講義で教えられた事なのだが忍にはあずみさんのように罠を駆使する者もいれば体のいたるところに毒を隠し持ち長期戦に持ち込んで仕留めるタイプも存在するらしいという情報を得ていた。
鉢屋がどのタイプかは分からないが可能性が少しでもある以上は速攻で倒した方が良いと判断したのだ。
「いっぽーん!!敵将、此方が討ち取ったのじゃあ!!」
その声に釣られてそちらを見れば地面に叩きつけられのびたままの敵将が横たわっている。
「まぁ重量級は投げに弱いというしな」
「フハハハハッ!!相性が良かったな不死川!!」
「素直に此方を褒めぬかー!!」
俺と英雄の言葉に涙目の不死川、ちょっとからかい過ぎたかと思えばその頭を撫でる。
「まぁとは言え敵将を討ったのは確かだ、よくやってくれた」
「にょわっ!?」
なんだろう、顔が真っ赤になっているが・・・・まぁ良い。
「さて・・・・そろそろ押し込みに行こう。英雄、すまないが本営を離れさせてもらうぞ」
「うむ、流石に将を二人も失ったとあっては迂闊に本陣攻めなどすまい。思う存分に暴れて参れ!!」
「承った」
さてさて、現状入ってきた報告と照らし合わせよう。本営で撃破したのが鉢屋と・・・・おそらく宇喜多だろう、そしてマルギッテが十勇士の大友を、京が毛利を、詳細は伏せられているが羽黒が龍造寺を、準が尼子を討ち取ったと言う情報が入ってきた。大村が持病の発作で倒れたらしいので残るは石田、島、長宗我部の三名のみ。
「・・・・あれは・・・・」
遠くの方で火だるまになった大男が打ち上げられた、それを追って飛び上がったのは・・・・
「小雪とレベッカか・・・・あ、蹴り落とされた」
多分、打ち上げられたのは長宗我部だろう。火だるまになっていた理由は分からないが小雪とレベッカのツープラトンキックで海の方へと叩き落とされたのが見えた。小雪の脚力が凄いのは知っていたがレベッカもどっこいどっこいじゃないか。
「あの娘のどこをどう鍛えろと?」
自然な疑問だが技術的なものかも知れないしあまり気にしないようにしよう。
「さぁ・・・・行こうか」
ならば狙うは大将首、将一人討っただけでも十分だとは思うのだが後からヒュームさんにどやされる気がするので・・・・ここはもうひと踏ん張りと行きますか。
TIP集
・星殺し
川神流の技で要するに極太レーザー。別名「かわかみ波」、百代が使用する確率が高い大技の一つ。
・天神合体
天神館三年生による合体奥義。中々強力な奥義ではあるのだがスピードが無いため百代の星殺しで一撃解体される羽目に。
・ジェノサイドチェーンソー
ヒューム直伝の一撃必殺。正確で強烈な蹴りの一撃が体力を十割持っていくと言う大技で悠理がヒュームから教わった唯一の技。
・小雪とレベッカのツープラトンキック
脚だけが壁越えの可能性を秘めた小雪と全体的にマルギッテに近いレベルのレベッカによる途轍もなく威力のある蹴り。喰らった瞬間に意識が飛んだ、と被害者長宗我部は語る。