汜水関
戦準備が進められる城壁に二人の男女が立っていた。
二つの筒がつながった道具、双眼鏡で遠くに布陣する
連合軍を見ている。
総司「お前の予想通りになったな。桂花。」
荀彧「はい。袁紹には誇れるほどの知能も武芸の腕もありません。
いわゆる無能です。誇れるのは家名のみ。
しかも自分に都合のいい進言しか聞かず、
その割に野心の塊のような女です。
そんな女が二手に分かれるなんて方法取るわけありません。」
総司「確かにな。でも誰かが勝手に動くかもしれない。
各方面に偵察は出して置けよ。」
荀彧「既に各方面に偵察は出しております。」
総司「流石だな。師団の状況を確認を頼む。」
荀彧「はっ。」
桂花はお辞儀をすると第四師団の陣へかけていく。
総司は再び双眼鏡を覗きながら報告の内容を思い出す。
総司(攻撃は明日。攻撃は幽州、徐州連合軍で、
それに呉軍が入って計七万五千。
此方は九万五千。此方が数の上ではまだ多いが油断は出来ない数だな。
さてどう来るか。霞には華雄の事を任せてるけどいざという時は俺も出るしかないか。)
総司は今後の事を考える。
出来れば徐州軍とは戦いたくない。
戦いになれば手加減などできないからだ。
そのせいで約束がつぶれたら意味がない。
総司「はあ~。面倒なことになった。」
張遼「そうやな。」
総司「ん?もしかして聞こえてたか。」
総司はいつの間にか隣に立っていた霞の方を見る。
張遼「面倒な事になったって言ったとこだけな。」
総司「そうか、悪い。」
張遼「で、何があったんや。その様子やと大体敵の状況分かったんやろ。」
総司「まあな。攻撃は明日。先方は徐州軍。それに呉軍が加わって計七万五千だな。」
張遼「なるほどな。でどうするん?徐州軍やとちとやばいんちゃうか?」
総司「向こうとは一応底らへんの事も話し合ってきてる。だから一応大丈夫なはずだ。」
張遼「なんや締まり悪い返事やな。」
総司「取引が成立した時はそれでいいことになっていたとしても
後からどうなるかわからんからな。」
張遼「なるほどな。てか、気になっててんけどどんな取引したんや?」
総司「こちらからは月と詠、それと帝の保護。あと撤退時の追撃をしない事。
その代わりあっちはこの戦での手柄と袁紹のこれまでの罪の調査。」
張遼「一つ目は予定の日を過ぎればどうにかなるな。
でももう一個の方はどうにかなるんか?」
総司「問題ない。美花が頑張ってくれた。既に劉備に渡してある。」
張遼「ここ最近おらんなあと思とったけどそれでやったんか?
でその美花はどうしたんや?」
総司「監視として劉備の下にいる。勿論彼女にも周倉と数名だが変装させて護衛に付けてる。
正直やらせたくはない仕事だがな。」
張遼「美花のこれまでの事考えたら、そうやな。」
総司「ああ。だが美花以上にこの任務をこなせる奴を俺は知らない。
美花には悪いがこなしてもらわないといけない。
それより華雄の抑え、頼んだぞ。」
張遼「任せとき。しっかりこなして見せるわ。」
総司「ああ。頼りにしてる。」
張遼「けど華雄隊を抑えるんは無理やで。」
総司「分かってる。指揮官に似て猪ばかりだからな。」
張遼「全くやで。どうやったら三万も猪ばかりが集まるねん。」
総司「そうだな。」
張遼「ぷっ。」
総司「ふっ。」
二人「あははははははははははははは。」
二人は暫く笑っていた。
張遼「いや~こんな笑ったのはいつぶりやろ。」
総司「さあ?少なくとも黄巾討伐の時はそれどころじゃなかったからな。
その前からだろ。」
張遼「そんな前からかいな。こりゃ、華雄に感謝やな。」
総司「そうだな。なあ霞。」
張遼「なんや。」
霞は総司の真剣な表情に笑い顔をやめ再び真剣な顔になる。
総司「改めて言う必要もないかもしれないが生き残るぞ。何としても。」
それはとても力強い言葉だった。
そこで霞は改めて誓う。
総司を始め恋、音々音、月、詠、華雄、瑠香(孫尚文陣の真名)の八人でしたあの日の誓いを。
何としても生き残る。生きてこの国を蘇らせる。
後半はかなわなくなったがせめて前半だけはかなえて見せる。
総司と霞は強く誓うのだった。
翌日
劉備「かかれ~。」
戦場に良く響く劉備の綺麗な声を合図に汜水関攻めが始まった。
連合軍は選抜された一万五千の兵力で攻めかかる。
それを董卓軍は砦の上から弓矢を射かけ防ぐ。
だが連合軍は一万五千の兵で果敢に攻めるが、董卓軍の弓隊は弓矢だけではなく瑠香によって開発され
更に効率化までされたバリスタや小型の投石器の攻撃で思うように攻める事が出来ない。
瑠香「どうよ、どうよ、総司。私たちが作り上げた兵器は?」
総司「ほんと助かるよ、瑠香。これで兵の損耗をかなり減らせる。」
実際、董卓軍は怪我人すら出ていない一方的な状態だった。
弓矢の射程外からバリスタや投石機で桂花の指示に従い、
撃ち込まれている。
連合軍は攻撃しようにもまず届かせる攻撃手段がない状態だった。
攻城が不可能と悟った連合軍は引いて行った。
兵士1「やったー。勝ったー。」
兵士2「勝った~。」
兵士3「ざまあみろ。連合軍め~。」
兵士の間にも勝利に沸き立つ。
総司「皆よくやってくれた。だが油断するな。交代で休んで敵がいつ来ても
いいように備えよ。」
兵士全員「はっ。」
先程の喜びから一転兵士たちは皆真剣な表情になる。
だがその顔は生き生きしていた。
翌日からは孫呉も攻城に加わる。
黄蓋率いる弓騎馬隊と程普の騎馬隊が縦横無尽に走り回り苦戦させるが
やはり射程に近ずく事が出来ない。
その日も連合軍は敵に打撃すら与えられずに撤退していった。
瑠香「少し拍子抜けではあるかな。一刀がいるから
ボウガンとかクロスボウは出てくるかと思ったんだけど。」
総司「知識があっても技術がないからな。一刀の方は。」
瑠香「私がいたことに感謝しなさいよ、総司。
そしていい加減開発費用と新しい開発の許可出しなさい。」
総司「開発については新たな拠点を確保できたらいいよ。
追加費用は考えとく。」
瑠香「金に関しては相変わらずね。ま、新たな開発の許可出たからいいとしましょう。」
総司「どんなものを作るのかプレゼンを期待しとく。
内容次第で追加費用も期待していい。」
瑠香「期待して待っときなさい。それと例の奴は使うの?」
総司「華雄の動き次第だな。」
瑠香「そう。ならいつでも準備しておくわ。」
総司「頼む。」
連合軍は翌日の晩に夜戦を仕掛けるがこれも失敗に終わり、
三日目も失敗に終わるのだった。
劉備軍天幕
そこには孫呉の当主である孫策を始め、軍師の周瑜、陸遜、
武官として宿老の程普、黄蓋が
今後のことを話し合う為、訪れていた。
劉備陣営からは劉備、一刀、関羽、孔明が参加している。
孫策「まさかここまで硬いとわね。」
劉備「そうですね。」
周瑜「このまま正攻法でせめても一か月かかっても抜くことは出来ない。
ならばおびき出すしかない。」
孫策「そうね。それしかないわ。で誰をおびき出すの?」
周瑜「華雄だな。」
陸遜「それしかないですね~。」
孫策「そうね。時間はかかるけど華雄が一番確実ね。」
劉備「あの、すみません。華雄さんてだれですか?」
周瑜「漢の将軍の一人だ。黄巾討伐では洛陽を攻めようとした黄巾党を
汜水関で迎え撃ち追い払ったらしい。飛将軍呂布や必勝の神使の異名で知られる
水燕の陰に隠れているが優秀な将軍だ。だがかなり短気なところがあるらしく
功績と同時に短気を起こしたがゆえの失態も多いと聞く。」
一刀「なるほど、それなら可能性はあるかもしれないな。
俺はいいと思うけど桃香はどう?」
劉備「うん。それしかないんじゃないかな。」
孫策「なら決まりね。陸遜、細かい事は任せるわ。
諸葛殿と話し合って決めて頂戴。」
陸遜「分かりました~。」
それから翌日。
劉備軍による挑発が始まった。
初日は関羽による一騎打ちの誘い、それに華雄は乗ろうとするが
霞に止められる。
二日目も同様に関羽が一騎打ちを誘うが断り、
その後関羽の隣にいた小さな双子、麋竺と麋芳により
罵りあおりが始まる。だがこれまでの失態から流石に学んでいる華雄は
それを大声で笑い飛ばした。
三日目は射程の外で戦をしているふりをして睨み合うだけ。
四日目には前日と同じ位置で酒盛りを始めてしまった。
中には寝ている者もいる。
五日目、六日目も同じような感じで終わる。
華雄は吠えてこそいたがその日も耐えていた。
総司、霞、朱儁、徐栄は明らかなおびき寄せと分かっているので動じない。
六日目の夕方ごろ
総司「瑠香、話がある。」
瑠香「なに?」
総司「明日の攻撃開始までに砦の中の投石器を虎牢関へ運び出してくれ。
それと例の物を用意しておいてくれ。今日の感じからすると明日は耐えられないだろう。」
瑠香「分かったわ。二時間でやる。」
総司「頼む。」
そして誘い込み作戦開始から七日目、ついにその時がやって来た。
その日も攻撃開始からすぐ酒盛りを始めた連合軍。
流石に四日目ともなれる華雄にさらに追い打ちをかける出来事が起きた。
酒盛りの途中で参加してきた孫策が張飛と取っ組み合いの喧嘩を始めてしまったのだ。
更に周りの兵士たちはこちらを背に向けて応援を始めてしまう始末。
それに頭に血が上った華雄は張遼や朱儁の静止を振り切って出陣してしまった。
張遼「行ってしもうた。どうする総司。予想できひんかった訳ちゃうけど、
こうなったら止められへんで。」
総司「仕方がないか。俺達で華雄を押さえます。朱儁将軍と霞と徐栄は迎撃を頼みます。」
朱儁「わかった。任せろ。」
張遼「まかせとき。これぐらいはこなして見せるわ。」
徐栄「承知いたしました。」
その後すぐに第四師団が集まる。
総司は全員が集まったのを確認すると馬に乗り叫ぶ。
総司「これより先行した第三師団を救出する。
救出完了次第即離脱、砦に帰還する。出陣。」
師団全員「はっ。」
総司を先頭に師団全員がかけてゆく。
黄蓋の隊が足止めを行うがそれを無理矢理突破する。
総司(どこだ。華雄。どこにいる。)
その時、敵が包囲陣を敷いているのを見つける。
総司(あそこか。)「突っ込むぞ。」
そのまま総司は突っ込み包囲陣を突破する。
第三師団副将「水燕将軍!」
総司「華雄は?」
第三師団副将「この先です。」
総司「お前らはそのまま耐えろ。華雄を救出次第脱出する。いいな!
第四師団は援護しろ。趙雲任せるぞ。」
趙雲「任せろ。」
第三師団副将「華雄さまをお願いします。」
総司は頷きながらさらに進む。
その先には傷ついた華雄ととどめを刺そうとする関羽がいた。
「董卓軍の華雄、この関羽が討ち取ったー。」
関羽は華雄にとどめをさすために得物を振り下ろす。
ガキィィン
が振り下ろされた得物は華雄を殺すことは出来なかった。
総司によって防がれた為に。
関羽「貴様、武人の戦いを邪魔するな。」
総司「知らねえな。」
総司自分の槍では関羽の得物を跳ね上げて、腹のあたりに蹴りを入れる。
「ぐっ。」
辛うじて腕で防ぐが衝撃で体制を崩し、馬から落ちる。
その間に傷だらけの華雄を自分の馬に乗せ引き返す。
総司「引くぞ。」
董卓軍兵士全員「はっ。」
第三師団の生き残りと第四師団が一点突破で囲みを突破する。
孫策「くそ、囲みを突破された。追え!そのまま汜水関を攻めている程普隊に合流する。」
囲みを突破されたのを確認した孫策が追撃の号令を出す。
華雄「総司………なぜ?」
総司「仲間が危機。助けなければならない。それ以上に重い理屈がこの世にあるかよ。」
華雄「済まない。」
董卓軍はそのままの速度を維持したまま汜水関へ退却し始める。
その汜水関では孫呉の程普隊、黄蓋隊と劉備軍の張飛隊、本隊が汜水関を攻めるが
バリスタによる的確な狙撃で未だ取りつけずにいる。
程普「かったいわねー。流石董卓軍というとこかしらね。」
黄蓋「粋怜(程普の真名)。感心している場合ではないぞ。」
程普「分かってるわよ。」
それでも少しずつ進んでいく。その時、
兵士1「程普様、後方より敵です。」
程普「あれは華雄の隊に水燕の隊。まさかもう突破されたの。
もう関羽は何やってるのかしら。」
黄蓋「仕方あるまい。劉備の兵は見ていた限り、それほど強い者らはおらんかった。
その点、水燕の隊は兵士はよう鍛えられておる。
その差が出たんじゃろう。」
程普「公瑾、どうする?このまま通す?」
周瑜「このままでは水燕に背後を突かれます。
直ぐに雪蓮もおって来るでしょうがこちらの被害も増します。
通してしまってください。」
程普「分かったわ。全軍後方の兵を通しなさい。」
孫呉が道を開け水燕がそこを通る。
だがそれが理解できない劉備。
劉備「なんで?」
唯一理解している一刀が答える。
一刀「このまま抑えれば砦と水燕さんの隊で挟み撃ちになって身動き取れなくなるからだよ。
それよりもうすぐ孫策さんと愛紗の隊が来るから合流して一気に攻めるよ。準備して。」
劉備「わかった。ご主人様。」
その後すぐ孫策や関羽の隊と合流した連合軍は追撃をかける。
孫策「このまま攻城戦になる。皆、心してかかれ。」
連合軍兵士達「おおー。」
連合軍の士気はこれまで攻撃さえ出来なかった砦にあと少しのところまで近づいていることもあり高い。
そのまま突っ込む。
一方砦に帰還した総司は華雄の治療を医療班に任せ、
砦の塀に昇り防衛部隊にいる、瑠香に指示を出す。
総司「桂花、弓隊の弓の攻撃を絶やすなよ。
瑠香、あれを使う。準備しろ。」
瑠香「待ってました。大隊を二つに分けるわ。
第一、第二中隊は私についてきて、第三、第四は師団長の指示があるまでこの場に待機せよ。」
大隊兵士全員「はっ。」
瑠香の普段からは全く聞く事の出来ない凛とした声に従い兵士たちは二手に分かれ
一方は残り、もう一方は瑠香に付き添い門の外へ出ていく。
朱儁「何故彼女は出ていく。それよりあの兵器はなんだ?」
総司「説明するより見てもらった方が早いです。
それより朱儁将軍。この後轟音がなるので馬のさばき注意してくださいよ。
それとこの後の事です。俺達の攻撃が終われば敵はひるむはずです。
状況次第ですが手筈通り敵に突っ込んでください。」
朱儁「分かった。準備しよう。」
朱儁は階段を走りながら自分の部隊の所へ向かい配置に着く。
朱儁が配置に着いた事を確認した総司に伝令兵が報告に来る。
伝令兵「報告します。孫尚様、配置に着きました。」
総司「ご苦労。孫尚の元に戻れ。」
伝令兵「はっ。」
伝令兵が下がるのと同時に桂花から報告が来る。
荀彧「総司様、敵が来ます。城壁の鉄砲隊も配置完了です」
総司「分かった。鉄砲隊、構えろ。
この世界で初めての銃火だ。お前達がその先駆けだ。お前達は今歴史の
先頭に立っている。お前達の後ろには何億丁もの銃が続く。
お前達は今歴史の上を立っている」
総司の号令と共に壁上の鉄砲隊と門前の鉄砲隊が敵に向けて鉄砲を構える。
総司「まだ、まだだ。まだだぞ。」
瑠香「まだよ、まだ。まだ駄目。」
騎馬隊を先頭に連合軍が砦に迫る。
その迫力はすさまじく門前で構える兵士たちは恐怖に駆られて鉄砲を撃ちそうになるが
瑠香が抑える。そしてついに、
総司「はなてーー。」
バンババンバンバン
総司の号令と共に壁上と門前の兵士達が一斉に鉄砲の引き金を引く。
轟音が響き、弾が打ち出される。
打ち出された弾はそのまま連合軍の兵士の身体を貫く。
当たりどころが悪かった者はそのまま死に
腕や足を撃たれた兵士は倒れる。
その悲鳴に連合軍全体が混乱する。
それは指揮官である孫策や一刀も同様だった。
だがそれでもいち早く立ち直った二人は退却の合図を出す。
その合図を聞いた兵士達は退却をし始める。
怪我人も多いのでどうしても遅いがその後、董卓軍から追撃はなかった。
どうも秋月です。いかがだったでしょうか?
もう一人の現代人孫尚 文陣こと瑠香の初登場。
それと鉄砲の登場。
三国時代に鉄砲を持ち込むのはどうかという人も多いかなと思います。
ですがこういうものだと思って楽しんでいただければ幸いです。
次は荀彧をもう少し出せたらと思います。
では次回またお会いしましょう。