虎牢関
汜水関を孫呉と劉備軍に約束通り突破させ後退した総司は虎牢関まで戻っていた。
総司「着いたか。皆ご苦労だった。各自休息をとってくれ。」
総司の指示の元あらかじめ用意してた天幕で寝たり、
自分で持って来た軽食を食べるなど各自で休息を取り始める。
それを確認した総司は虎牢関の部隊を指揮する賈駆のいる部屋に入る。
総司「賈駆、今戻った。」
賈駆「お疲れ様、報告は霞から聞いてるよ。物資は全て回収したんだよね。」
総司「ああ、それは大丈夫だ。それは回収してある。」
賈駆「分かったよ。被害は?」
総司「華雄が暴走した時に華雄隊から数人と俺の隊からも数人
追撃を受けてここでも二部隊分失った。」
賈駆「なんで?劉備とはそこら辺も取引してたんじゃないの?」
総司「恐らく、劉備はまだ徐州軍を完全に掌握出来てないんだろ。
そこからの暴走だと思う。ま、全て俺が汜水関でやりすぎたせいだな。」
賈駆「大丈夫かな。月が攻撃されないといいけど。」
総司「その為に朱儁将軍を護衛とするんだろ?」
賈駆「そうだね。過剰に心配してたみたいだ。」
総司「それより俺達はここの守備だ。汜水関で十一日稼いだから残り約九日。
行けそうか?」
賈駆「修繕は終わってるよ。三日後には敵も攻めてくるだろうから
それまでにバリスタや小型投石器の配置頼んだよ。」
総司「分かった。任せろ。」
総司は賈駆の部屋を出て壁上の状態を確認する。
総司「瑠香。状況はどうなってる?」
瑠香「もう少し、もうメンテは終わってるから後は設置だけ。
追加の矢も作ってるし部品も今明石の輸送隊が持ってきてるから大丈夫かな。」
総司「頼んだ。」
瑠香「任せなさい。月の為だもんね。しかしあの子も可哀そうだ。
まだ十代なのにこんなことになって。」
総司「ああ。てか瑠香それを言えば今戦場で指揮を執ってるのは
殆ど十代だ。それと少し年より臭いぞ。」
瑠香「生きてる時間だけなら私もあんたも既に三十五歳だよ。
というかほんと、総司は昔から遠慮なく言うよね。女に対して少し遠慮を覚えたら。
いやそんな事私に対してしか言わないよね。て事はわざとかこのコノヤロー。」
総司「やっと気づいたか。気づくのが遅いんだよ。」
瑠香「何をー!」
総司「少しは気がまぎれたか?」
瑠香「えっ?」
総司「お前、前の戦のあとから気負いすぎ。指揮官として責任感じてるんだろうけど
いくら何でも気負いすぎだ。もう少し肩の力を抜け。でないと指揮に影響するぞ。」
瑠香「ごめん。総司有難う。」
総司「気にすんな。俺も最初はそうだったし。」
瑠香「まじか。何でもそつなくこなす癖に。」
総司「そつなくこなすのと気負わないのは違うだろ。
指揮するなら環境が違うとはいえ、親父の会社でやってたけど
此処じゃそれが直接生き死にがかかわるからな。流石に何も感じねえ訳じゃない。」
瑠香「そっか。でもそれでも総司はすごいよね。
私は総司みたいなことは出来ないや。」
総司「こればかりは慣れだからな。
それよりだ。お前この後どうするんだ?」
瑠香「どうとは?」
総司「劉備の所に行くのか。それか俺と孫呉に行くのかだ。
それか曹操に雇ってもらうっていう手もあるが?」
瑠香「その事?それなら一択だね。総司について行きつもり。
総司以上に私の作る物を理解してくれる人はいないだろうし。
それに劉備は聞いた限りかなりの甘ちゃんだろうからね。」
総司「だろうな。でもいいのか?お前一刀の事好きなんだろ?」
瑠香「それはそうだけどさ。それとこれとは別。戦場に覚悟もなく甘いこと言いながら
出るような奴に私の兵器を使わせたくない。」
総司「そうか。分かった。ならこれからも頼む。」
瑠香「任せなさい。てか何で私が一刀が好きって知ってるの?」
総司「は?お前、一刀に告白した後振られてさんざん一緒に飲んだろ。」
瑠香「そうだった。ありがとね。気使ってくれて。」
総司「気にすんな。」
さわやかな笑顔を向ける総司。
瑠香(この笑顔、こいつのこういうとこ一刀の無自覚女落としに似ているんだよなあ。
既に何人か餌食になってるし。)
無自覚なのは総司も一刀と変わらないのだった。
汜水関劉備陣営
一刀「で、なんで追撃したんだ。麋芳の隊だよね。」
麋芳「ごめんなさい。」
劉備「まあまあ、ご主人様。今回の事は電々ちゃんが
直接指揮したわけじゃないんだし。」
関羽「ですが桃香様。今回の事は取引に支障が出かねません。
此方から出した条件は既にかなえてもらっているのです。
しかし今回の追撃で此方は真名まで使った約定を破ったのです。
もし敵が全力で此方を潰しに来ても文句は言えませんよ。」
劉備「うーん。そこまでしないと思うんだけどなあ。」
一刀「甘いよ、桃香。水燕さんはそんなに甘くない。
約定が破られたとわかれば容赦してくれないよ。
水燕はそういう人なんだ。」
相変わらず考えが甘い劉備に溜息を吐きながら咎める一刀。
孔明「あまり知られていませんが過去にも
約定を破って味方を攻撃した敵を皆殺しにしたという話を聞きます。
う、噂ですけど」
劉備「大丈夫かな~。」
急に心配しだす桃香に関羽と一刀は溜息を小さくこぼす。
一刀「こうなるともうどうしようもない。あちらに使者を送れない状況だし
こっちとしてはそうならない様に祈るしかないよ。後各部隊長はこれまで以上に
部隊の統率を徹底してくれ。」
劉備軍幹部『はっ。』
孫呉陣営
孫呉では出陣前の最後の軍議を行っていた。
今は劉備軍の追撃を監視していた周泰と甘寧の報告を聞く。
孫策「思春(甘寧の真名)、明命報告してくれる?」
甘寧「はっ。劉備軍の恐らくは麋芳隊だと思うのですがその一部が制止を振り切り追撃を
行い第四師団から二部隊が殿に出て殿部隊は全滅。
数で追撃部隊は殿部隊の三倍~四倍ほどの人数が居ましたが
追撃部隊は壊滅、生き残ったのは数人ほどです。
その数人も怪我人ばかりです。」
周泰「その殿部隊も異常ですよ。
最初は武器で戦ってたんですけど武器が壊れると素手で相手の首の骨を折に行って
腕がだめなら相手の頸筋をかみちぎったり、
それでもだめならしがみついて自分ごと仲間に槍で攻撃させたり、
ほんと見てて鳥肌が立ちました。ねえ、思春殿。」
甘寧「ああ。あそこまでの事が出来るのは驚いた。」
黄蓋「ふむ。思春たちの報告が嘘とは思わんがにわかに信じがたい事実じゃな。
余程うまく教育しておるのだろう。」
程普「教育でそこまで出来るならそれは洗脳の域よ。祭。」
孫策「二人とも報告有難う。出陣まで少ししかないけど休んでて。」
甘寧・周泰「はっ。」
雪蓮の声を聞いて二人は退出する。
孫策「でも驚いたわ。そこまで出来るものなのね。」
黄蓋「中々できる事ではないがな。だがそれが味方になる将来的には歓迎ではある。
策殿があの場で取引をしていたことが兵の損失の軽減と将来的な戦力向上につながった。」
程普「そうね。仮に第四師団だけだとしてもそれだけの忠誠心がある者達の集まり
なら臣下として頼りになるだろうし無碍に扱わなければ裏切らない。
それに水燕君自身もとても強い。戦力向上は間違いないでしょうね。」
孫権「しかし姉さま。これは異常です。今回の取引少し考え直すべきでは?」
孫策「蓮華には異常に映った?私は凄いと思ったわ。
配下にそこまでさせる人徳は見習うべきものだわ。」
孫権「はい。」
黄巾討伐の際、総司は長く孫呉と共に行動していた時期があり
その際蓮華も何度か総司と話す機会があった。
だからこそ蓮華自身総司の性格はよく分かっていたし好感を持っていた。
それに加えその技術力はこれからの孫呉に必要なことだとわかっている。
最初こそ異常だと思ったが宿老二人や姉である雪蓮の話を聞いて納得できた。
孫権「分かりました。では私も準備があるので。」
そう言いながら蓮華は天幕を出ていく。
それを皮切りに軍議を終え、虎牢関へ向けて出陣する。
それぞれの思惑を胸に。
だが彼らはまだ知らない。
この虎牢関で自分たちの掲げる正義が崩れ去る事になるのを。
そしてそれを味方が行うのを。