恋姫夢想 御使いの友(凍結)   作:秋月 了

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第十五話

総司「全軍準備はいいか?」

 

張遼「いつでもええで。」

 

朱儁「ああ。早く行くぞ。」

 

呂布「行く。」

 

荀彧「総司様。」

 

総司「どうした?」

 

荀彧「とにかく人質から敵を排除してください。救出は我々が。」

 

総司「任せる。それと潜入中の美花に生き残りがまだ捕らえられていないか

   調査した後に戻るように伝えろ。」

 

荀彧「はい。」

 

総司「開門。」

 

声にこたえる様に門が開く。

開閉され切った時点で総司が叫ぶ。

 

 

総司「行くぞ。全軍全速力でかけろ。彼らにこれ以上苦しませるな。」

 

張遼「そうや。まずはあの石を投げとる奴らを蹴散らすで。」

 

総司「全軍突撃~~!」

 

合図と同時に総司、呂布、張遼、華雄を先頭に留守居役の徐栄を残して

怒りに燃える兵士達が虎牢関を出ていく。

徐栄もあの中に加わりたかった。でも辞退して総司に自分のこの想いを託した。

出撃ぎりぎりで無理を言って同行させてもらう条件として全軍出陣の際は

徐栄が留守居役になる事を賈駆に約束させられた。そしてそれを自分から申し出る事を。

ド真面目人間の彼女は自分の想いよりもそちらを優先した。

 

兵士「徐栄様一つよろしいですか?」

 

徐栄「何ですか?」

 

兵士「何故我々だけ留守なのですか?」

 

兵士は叫ぶ。彼もあの場に行って自分の中にある恨みを晴らしたかったのだ。

 

徐栄「その気持ちは分かります。私もあの場に行きたかった。」

 

兵士「なら。」

 

徐栄「ですがそれは出来ません。我々はこの砦を守らなければならないのです。」

 

兵士「しかしあいつらは。」

 

徐栄「だからその怒りは次に取っておきなさい。

   この戦だけが怒りをそして恨みを晴らす場ではありません。」

 

そこで兵士は気づいた。徐栄の手が血に染まっているのを。

彼女も悔しいのだと。そこで兵士は黙った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出撃した董卓軍は袁紹軍が休憩している間に一気に攻めあがった。

袁紹軍の誰もが降伏するだろうと思っていたので真剣に見張りをせず

寝転んだり喋ったりして油断しきっていて馬の足音が聞こえる距離まで

近くまで誰も気づかなかったのだ。

そこに総司達は攻め込んだ。

 

張遼「良くもやってくれたな。覚悟しいや。」

 

華雄「部下達の無念‼貴様等の命で償わせてやる‼」

 

呂布「お前達・・・・・・恋を本気で怒らせた‼死ね。」

 

総司「全軍、袁紹軍を囲め。決して逃がすな。

   趙雲!姜維!許攸を探せ。奴が提案者だ。奴だけは逃がすな。」

 

全員「おう。」

 

趙雲・姜維「「はっ。」」

 

趙雲と姜維がそれぞれ少数の部隊を率いて許攸を探しに行く。

その間も包囲網は完成した。

攻撃が始まってすぐ逃げ出した後衛五千の兵士を残して

そのほとんどが包囲網に置き去りになってしまった。

その後は簡単だった。

もはや戦意を喪失して降伏を指揮官が申し出る。

やったのは許攸と袁紹だと。自分達は指示に従っただけだと

だが総司は降伏を無視。その指揮官を己の槍で突き殺す。

 

総司「捕虜を散々嬲っておいて武器を捨て降伏するだけで助かると思うたら大間違いだ!

   お前ら、あいつら殺すまんまんだったじゃねえか。

   ならば滅せられても仕方ない道理だろ。」

 

それを聞いていた兵士達は青ざめる。

もはや死ぬ以外の選択肢を失ってしまったのだから。

 

総司「総員・・・・かかれ~~。」

 

全員「おおおおお~~。」

 

殲滅戦が始まるどうにか逃げようとするが降伏を申し出た指揮官の指示で武器を捨てている。

慌てて拾おうとするが壊乱状態で皆逃げるのに必死で押されたりして拾う事が出来ない。

何とか拾う事が出来てとしても多勢に無勢で殺されていく。

結果誰もまともな抵抗できず袁紹軍は殲滅された。

その時間は現代の時間に直すと包囲完成から約三十分の出来事だった。

なお許攸は一人で逃げていた所を趙雲によって打ち取られた。

これがのちの外史の世に袁紹三大悪事に数えられ虎牢関の悲劇として

世界史の授業でも取り上げられる事になる出来事の全貌である。

 

 

 

 

 

虎牢関に戻った総司はその足で医療用の天幕に向かう。

天幕に入ると兵士が傷の治療をしている。

その場に立ち会っていた荀彧が総司が来たのに気付き近寄ってくる。

 

荀彧「総司様。」

 

総司「状況は?」

 

荀彧「はい。命がある物は何とかなるかと。」

 

総司「そうか。治療が終わり次第洛陽に戻す。

   手配しておいてくれ。」

 

荀彧「はい。」

 

指示を出し終わり一度周りを見回すと一人既に治療が終わっていた女性に近ずく。

見れば意識があるようだ。

 

総司「大丈夫か?とは言えないな。瑠偉、済まなかった。

   もう少し早く救援を出していればここまでの傷をうけずにすんだかもしれない。」

 

彼女は殿務めた部隊の隊長で一番ひどい傷を受けて居た。

聞けば捕まってから袁紹軍の兵士にいたぶられていた部下を守るために

身代わりになり散々殴り蹴りを受けたらしい。

 

瑠偉「いえ、水燕様さえ無事ならこの身はどうなってもよいのです。

   なんせ私たちは元山賊というゴミのような存在なのだから。」

 

総司「それではだめだ。俺には弱点が多い。槍や剣を振るしか能がない。

   だが俺一人では軍勢相手に一人で戦えるほど強くない。

   だからこそお前達が必要だ。これまでもそしてこれからもだ。

   元山賊?それがなんだ!今は違うだろう。

   自分が主と決めた俺の為に命張れる、大切な部下の為に自分が

   どうなろうと構わないと覚悟を決められる。そんな奴らが俺には必要だ。

   勘違いするんじゃないぞ。別に俺は肉の壁が欲しいと言ってるんじゃない。

   あの時お前達がくれた意志が俺に、いや俺達に力をくれている。

   だからその怪我を治して戻ってこい。

   俺達の下へ。戦えなくてもいい。そんなこと重要じゃねえ。

   自分が一度決めた意志はどんな硬い鉱石よりも硬くこの世界のどんなものよりも重い。

   だが一度くじければ今まで硬かったものがそこらに落ちているゴミより軽くなる。

   だがお前達は違う。お前達は自分の意志を貫ける奴らだ。こっちの方が何十倍も重要だ。

   俺はお前達を誇りに思う。」

 

瑠偉「はい。う、うう。私達は必ず水燕様の下に戻ります。」

 

怪我人、治療している兵士関係なくその場にいた誰もが感動して泣いていた。

総司の言葉に。自分はまだ必要としてくれている事。もしくはその両方に。

それと同時に自分たちの主が総司で良かったと思うのだった。

   

 

 


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