揚州のとある平原。
そこでは二つの集団が集まっていた。
片方は黄色の布が目立ついわゆる黄巾党約五万、
片方は都から派遣された総司(水燕の真名)率いる董卓軍六万五千、
呉から孫堅率いる呉軍約二万、
陳留から曹操率いる陳留軍約二万、
更に幽州から来た劉備義勇軍約五千、計十一万の官軍。
既に一戦交えて黄巾党に勝利した官軍は休息をを取りつつ
各軍の大将と軍師達が軍議を重ねている。
だが今日の朝から始まった軍議の場にいる者たちの空気は暗い。
曹操「今こちらが優勢な状況になっているけど
この状況になっても敵の士気は旺盛だわ。」
周瑜「確かに数は此方が上回ったとは言え、
敗北してもこの士気の高さは驚異だな。」
張遼「せやな。だがこれを破らん事には勝利は難しいで。
どうしたもんか?」
総司「士気を崩すのは難しいだろう。外に出れば先ほどから大きな声が聞こえてくる。
敵陣から聞こえてくるこの歓声。この歓声を生み出している奴が
存在する限り士気を折るのは無理だろ。」
総司が天幕を開けながら言う。
総司「しかもこっちは士気が下がりかけてる。
どれだけたたいても士気が落ちない軍隊と言うのは厄介すぎる。」
彼はそう言いながら天幕を占めて元の位置に戻る。
一刀「なんかまるでライブだな。」
劉備「ライブ?ご主人様?ライブって何?」
一刀「今、敵陣で行われていることだよ。
数人の人が舞台に立って歌ったり踊ったりして
それを観客は見て楽しむ行事だよ。」
劉備「わ〜楽しそう。」ウキウキ
孫堅「そんな事はどうでもいいだろ。今はあれをどうするかだ。」
一刀の一言で脱線しかけた話を孫堅が戻す。
孫策「ちょっと母様。今それを話し合ってるんじゃない。」
孫堅「んなもん。突っ込んでぶちのめしゃ勝手に下がるだろ。」
総司「それだとこちらの被害も増えるんだがそれしかないか。」
荀彧「はい。総司様。ではこういうのはどうでしょう。
正面から突っ込んでこちらに惹きつけます。十分惹きつけたら
後ろと横の三方からから包囲する。いかがでしょうか。」
孫堅「いいじゃねえか。気に入った。」
猫耳の頭巾をかぶった少女桂花(荀彧の真名)の説明に
この中で最年長の女性孫堅が賛成する。
それに続く様に他の者達が賛成していく。
総司「ならそれで行こう。肝心の布陣だが曹操殿の軍が
敵後方からの攻撃の担当でどうだろう。
速さも力もある貴方の軍ならこの策も不可能じゃないだろう。」
曹操「構わないわ。行けるわよね、郭嘉。」
郭嘉「可能です。でも出来ればもう少し欲しいところですね。
先ほどの条件に合う部隊が。」
孫堅「ならうちから部隊をだそう。
おい雪蓮 。お前は曹操殿について挟撃部隊に加われ。」
孫策「わかったわ母様。という訳で曹操殿よろしくね!」
曹操「ええ。それで荀彧殿。
荀彧殿は作戦開始はどれぐらいだと思うの?」
荀彧「今は朝ですから昼ごろから行えば夜には片付くかと。」
曹操「わかったわ。ならそれまでに準備を進めておくわね。
で肝心の誘因役はどうするの。総大将?」
総司「布陣は。数が一番多い俺の隊と張遼の隊で中央を引き受ける。
孫堅殿は左を、呂布右を頼む。」
孫堅「任せろ。」
呂布 コクッ「分かった。」
総司「劉備殿の義勇軍は我々と共に行動していただく。」
劉備「分かりました。」
総司「では解散とする。北では朱儁将軍と袁家の軍が
もう一つの黄巾党を追い詰めているはずだ。
此方も負けられない。各々よろしく頼む。」
全員「「「「「おう。」」」」」
そしてそれぞれがそのまま天幕を出ていく。
それを見送り荀彧はある事が気になり今も地図を見ながら
何かを考えている総司に尋ねた。
荀彧「総司様少々お聞きしてもよろしいでしょうか?」
総司「何?」
荀彧「はい。なぜ義勇軍を我々と共に布陣させることにしたのですか?
適当なところに布陣させてもよかったのでは?」
荀彧はこの時ある程度予想はしていた。
総司の考えは天の御使い、北郷 一刀の力量。
そして幽州で旗揚げし朱儁将軍や盧植将軍の窮地を救ってきた劉備達の実力。
これまでの黄巾討伐で曹操、孫堅などと共に戦いその技量を確かめてきた。
その延長だと思っている。
余り表では言わないが総司は漢王朝もそう遠くない未来終わると考えており、
総司は十年無いと考えている。
これには荀彧も同じ考えであった。
だからこそ総司は次に使えるに相応しい人間を探している。
そう荀彧は考えていた。
でも今の理由では天の御使いや劉備の事を見極める意味はない。
この乱が終わったとしても精々地方の長官がいいところだろう。
そこから出世するには至難の業だ。
つまり奇跡でも起こらない限り出世することは無い。
そんな所にこんな大勢で仕えるなんて不可能だ。
自分の主がそんなことを考えているとは思えない。
それが桂花の考えだった。
総司「この先の事を考えてだよ。この先漢はきっかけ次第で直ぐに滅ぶ。
なら今の内からこの大陸を制するだろう勢力を見極めておこうと思ってね。
これは前話したか。
天の御使いを見極めようと思ったのは彼を見た時確実にこれから荒れる
この大陸を治めるだけの力があるか?それだけさ。
短期的に乱れを治めることができるなら力を貸してもいいと思っている。
でもこれが長期的に続くなら天の御使いの意味は余り大きくないと
俺はそう考えている。桂花はどう?」
荀彧「全くその通りかと。」
実際に桂花もそう考えていた。
短期的な解決が出来るならそれも意味があるだろう。
だが長期的な解決なら別に天の御使いは要らない。
永遠に続く戦いはないのだから。
戦争をするにも金が掛かる。
そしてそれで帰ってくるのは微々たるものだ。
戦時中は糧食や武器の調達に金がかかり、
戦後は荒れた大地の復興や戦死者の家族への見舞いなどむしろ負担の方が多い。
その事から一部の例外を除き、最終的に国力が高い方が大陸を制覇する。
なら短期的に戦争を終わらせる事が出来ない限り天の御使いは意味をなさない。
ただし乱世においてはそれを手に入れたことによる恩恵はとても大きい。
全ての行為が正当化するのだから。たとえそれがどんなに外道な行為でも。
その影響は皇帝より大きいだろう。
総司「だから劉備も見極めたかったんだよ。劉備がとんだ外道なら
この戦場で戦死に見せかけてでも御使いを保護する。いいね、桂花。」
荀彧「はっ。」
総司「(ま、一刀なら大丈夫だろう。一刀は決して馬鹿じゃない。
しかしご主人様か。ナチュラルに女の子を落とすのは相変わらずみたいだ)」
総司と一刀、そしてこの場にはおらず都で研究開発に没頭しているもう一人の
三人は幼馴染だった。
一刀は気づいていない様だが総司はすぐ分かった。
この時代にはないあの服と殆どの女子に受けるあの容姿。
そして彼が使う島津の九に十の字の家紋が入った旗。
極めつけは彼が使うこの時代にはない言葉。
まず間違いなく幼馴染の北郷 一刀だ。
だからこそ一刀を利用している輩は許せなかった。
だが本当のことを言って桂花や周りを巻き込むわけにもいかない。
だからこそ彼は嘘をついた。
総司「とにかく俺達だけ遅れるわけにはいかない。
準備は怠らないで。それと周倉と孫乾を読んでくれ。桂花、頼んだよ」
荀彧「お任せを。総司様。」
桂花はお辞儀を一つして出ていく。
それから数分。周倉と孫乾がやって来た。
周倉「よう大将、荀彧から大将が呼んでるって聞いたからきたぜ。」
孫乾「お待たせいたしました、総司様。」
総司「悪いな。いきなり呼んで。」
周倉「気にすんな。でなんか用かい?」
孫乾「何なりとお申し付けくださいませ。
総司「ああ。二人に頼みたいことがあってね。」
周倉「なんか知らんがまかせな。」
周倉の言葉に孫乾も頷く。
そうして戦までの時間が刻一刻と過ぎていった。