恋姫夢想 御使いの友(凍結)   作:秋月 了

25 / 56
第二十三話

 翌日の夕刻。

黄祖の下に援軍が来ていた。

援軍の将は黄忠、その副将として魏延が来ていた。

 

「援軍感謝する。それと前回の揚州刺史への援軍の際、囮として使ったこと申し訳なかった。」

 

「過去は水に流して荊州の為に戦いましょう。」」

 

「そう言って頂きありがたい。」

 

「それでいかかがされますか?昨日の奇襲が失敗に終わっているのであれば

武昌に戻るべきでは?」

 

「いや、昨日の失敗しているからこそ今夜攻める。」

 

「本気ですか?

武昌に戻るべきです。」

 

「ここで出鼻をくじかなければ復讐に燃える虎の娘を止める事は出来ない。

喰い殺されるだけよ。」

 

「では今宵も夜討を仕掛けますか?柴桑を攻めるにしても

今少し戦力を減らさなければ。」

 

「そうだな。敵の出方にもよるが……。」

 

「申し上げます。敵が柴桑を出航いたしました。」

 

「およそ五百隻。全軍が出航した模様です。」

 

「でも先日の初戦で数隻とはいえ沈められたはず。

数が足りてえいないのはずでは?」

 

黄忠は最初に援軍として状況説明を受けた際そう聞いていた。

勿論それは事実で総司達に火砲の攻撃を待逃れた船舶が数隻を指示めていた。

その事実がある為黄忠は困惑していた。

だが黄祖は冷静に考えを巡らせる。

 

「先ずは水上で我らを打ち破り、しばし間を開けてから輸送船を整え、

武昌への上陸は果たすつもりなのだろう。」

 

「黄祖様我らも迎え撃ちますか?」

 

「待て、編成はどうなっておる?」

 

「戦闘は甘寧の錦帆賊です。

小舟で偵察に出た者によるとその中に妙な筒を確認いたしました。

なお旗艦には孫権が乗船している事を確認しております。」

 

「ふむ。水燕の鉄砲部隊だな。孫呉が全軍出たのだ。当然出てくるか。」

 

「孫権?孫策ではないの?」

 

「はい。孫策は柴桑の本陣に残っているようです。」

 

「ぐぬぬ……荊州軍を甘く見おって!」

 

「よし。」

 

「我らは船団を二つに分ける。黄忠、魏延、お主たちにはこの旗艦を預ける。」

 

「えっ?私たちが旗艦の指揮を?」

 

「さよう。日が暮れるのを待ち二百隻を率いて孫権に攻めかかれ。」

 

「黄祖殿が率いていると敵に思わせるためですか?」

 

「そうだ。そして引き気味に戦いつつ孫権を柴桑から引き離せ。

その間に私が残りを率いて孫策の本陣を襲う。」

 

「分かりました。」

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り柴桑では今後の動きに対しての会議が行われていた。

 

「先ずは水燕、利晏、働きご苦労だった。特に水燕は大手柄ね。」

 

「うむ。初戦の水上戦での正面部隊の撃退に続いて今回の地上戦での敵部隊の撃退。見事ゃ。」

 

「そうね。そのおかげのもあってここまでほぼ無傷で来れているわ。」

 

「はい。あの鉄砲と呼ばれる武器は凄いです。あれがあれば数年で天下を取る事も不可能では

ありません。やはり技術提供はしていただけませんか?」

 

「はい。それだけは出来ません。」

 

「あれがある事で呉軍の被害は格段に下がります。これまで長い時間をかけて訓練してきた

時間を大幅に減らすこともできます。それでもだめですか?」

 

「控えよ、包。水燕とはそう言う約定となっておるのじゃ。」

 

「しかし。」

 

「包の言う事は分かるわ。でもそれが約束なの。

利益ばかり見て約束を蔑ろにすれば敵を作りすぎてしまう。

それとも包は水燕と戦したいの?」

 

「いえそういう訳では。」

 

「魯粛殿の言う事も分かる。確かにそうすれば死者も時間も人員も減らす事が出来るだろう。

それは俺も理解しているつもりだ。だがそうする事でいらぬ戦をしてしまう可能性がある。

この時代でなら漢の統一だけでなくそれこそ世界を取る事も不可能ではないだろう。

だがそれは人の領域を超えた所業だ。必ずどこかでほころびをうむ。

それは歴史が証明している。かつて誰も世界を取る事は出来なかったのだから。」

 

「確かにの。あれほどの武器じゃ。そう夢見てしまうのも納得できる。」

 

「更に言わせてもらえば兵士は戦での手柄で生計を立てている。

鉄砲が広がればその機会は確実に減るだろう。

そうなれば不満が確実に出る。」

 

「なるほど今の軍のあり方ではそれを行った時の

不利益の方が大きいという訳か。確かにその通りだな。」

 

「それはもういいわ。どちらにしろ、約束はもうなされている。

そして水燕はこの戦で約束通りの働きをしてくれている。後は我々が約束を果たすだけ。

それだけよ。それよりも今は今後の事を話し合いましょう。

思春、敵の動きはどうなっているの?」

 

「はっ昨日江夏を出航した船は三百隻以上。先日の奇襲戦の際、河の沖で

黄祖の船団を確認しております。明日、早ければ今晩にも襲撃してくるかと。

また長沙から黄忠、魏延の軍が援軍に参っております。」

 

「黄祖は出ているの?」

 

「はい。」

 

「なら予定通り蓮華様を囮として差し向ける。」

 

「俺達も出よう。そうすれば敵船団を罠事破壊できる。」

 

「頼むわね。」

 

「任せてください。」

 

それから細かい話を詰めていく。

そして夕方ごろ。江夏水軍を主力とした荊州水軍が黄忠の指揮のもと進軍を開始した。

甘寧の指揮のもと江夏水軍の攻撃を躱し、総司の指揮で鉄砲による攻撃で確実に

江夏水軍の兵士は数を減らしていっていた。

しかし黄祖は船体に薄く加工した鉄板を張り付けており思ったほど効果は薄い。

 

「まさか鉄板を張った船が出てくるとはな。さしずめ鉄甲船か?多分一刀だな。」

 

「どうする。大砲使う?」

 

「それはまだよ。使うのはまだ先よ。瑠香。」

 

「気になってたんだけどさ。桂花って何で私にはタメで総司には敬語なの?」

 

「私が仕えているのは総司様だけよ。貴方じゃない。」

 

「そうですか。そうよね。まあいいわ。」

 

「二人ともおしゃべりはそこまでだ。敵が来る。総員、放てーー。」

 

銃声が響く。江夏水軍は矢が届かず、孫呉は決定打を討てずの戦いを続けていた。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告