柴桑での戦は終わった。
敵は暫く粘り遂に降伏。今は 全兵士が武装を解かれ座っている。
「全兵士の武将解除終わりました。」
「お疲れ様です~。流石お早いですね。」
「いえ。」
「長江の船団はどうなった?」
「はい。全て撃ち払い撤退させました。」
「流石じゃの。」
「それにしてもぉ・・・・黄祖さんの兵は皆、すさまじい戦ぶりがでしたね。」
「不思議ですね。皆黄祖さんを逃がそうと必死でした。あんな悪人顔の冷酷そうな人なのに。」
「何かしら惹きつけるものはあったのじゃろう。利晏も申して負ったが」
「でしょうね。でなければああはなりませんよ。」
「・・・・・・・・・・。」
陸遜、張昭、魯粛、総司が話している間も太史慈は黙って聞いていた。
「あれ?利晏様は残っていたのですか?」
「えっ、あ、うん」
「ああ。彼女には俺から頼んで残ってもらったんだ。
流石に武官全部を追撃に差し向けてこの場を手薄にするわけにもいかないので。」
実際は言っていないが太史慈が今かなり複雑な想いでいる事が簡単に想像できた総司が
嘘をついてその場を収めた。
「なるほどそうでしたか。」
「勝手なことをして申し訳ない。」
「気にするほどではない。お主が言う事も確かじゃ。」
「ありがとうございます。張昭様。(張昭様は気づいてるなあ。これ。)」
「よい。さてわしらも戻るぞ。」
「はい。」
「分かりましたぁ」
四人は歩き出す。それを追って太史慈も後を追った。
黄祖は逃げる。
既に部下はおらず皆足止めの為に残りやられていった。
黄祖も雨のせいで体力が無くなり怪我を治療もできず血を流し過ぎたせいで視界がかすみ、
満足に歩くこともできず目の前の木の幹に背中を預けて座り込む。
「くっ、もはやこれまでか」
遠くから孫尚香や孫策の声が聞こえる。
追いつかれるのも時間の問題だろうと黄祖は悟った。
「だがこの頸誰にもくれてやるものか。」
小刀を取り出して首を切ろうとする。
だがその前に茂みから足音が聞こえてきた。
「黄祖殿。」
「思春か。」
「真名を許した覚えはない。」
「ふっ、最後におぬしに追い詰められるとは。天とは慈悲深いのかそうでないのか」
「少なくとも私にとっては都合がいい弱き己を断ち切るための舞台を整えてくれたのだから。」
「弱さなど人である限り克服など叶わぬよ。故に皆伴侶を求めるのだ。
ああ。その為にこの場に参ったのかならば天に感謝しよう。」
「相変わらず己の感情のみで物を語る。私は貴様のそう言うところが・・・嫌いだ。」
「私はその抜き身の刃のようなそなたが愛しい。」
「やはり貴様との問答は無意味だ。私の一振りで終わらせる。」
黄祖は弓を構え、甘寧もまた剣を構える。
その時茂みから新手が現れた。
「黄祖ーーー。」
甘寧の後ろから孫策や黄蓋が追いついてきた。
「思春。黄祖を追い詰めたのね。よくやったわ。」
「雪蓮様。」
「言わなくても分かっているわ。私が見届ける。黄祖を討ち取りなさい。」
「御意。」
「如何やら・・・孫策も来たようだな。
だが私を切った所で過去を全て捨て去れると思うてか。
お主が江賊のそなたがまことの孫呉の臣になれるとでも?
変わらんよたとえ私を切ったとしても江賊の狼の血に抗う事は出来んわ。
そしてそなたの中で私はさらに大きくなるだけ。」
「ならばそれ事、貴様を切るのみ。」
「死ねーーーーーー。思春!」
「黄祖っ!」
「ぐぅっ…………ふっ!」
黄祖は矢を放つ。
だが甘寧はそれを剣ではじき黄祖の胸に剣を突き刺した。
「届かぬか。ぐっ……がはっ。届かなんだか。礼を言うぞ。
最後にお主に手で死ねること・・・・幸せだ。」
黄祖はそれだけ言って息絶えた。
「お見事。」
黄蓋はゆっくり目を閉じた。
黄祖の遺体は傷つけられることなく本陣に持ち帰られた。
本陣では大喝采が起こる。だが誰一人として黄祖を悪く言う人物はいない。
言えばそれに討ち取られた孫堅を貶めてしまうからだ。
それだけ孫堅が民や兵士達から慕われていた証拠なのだろうと
総司は考えて改めて孫堅の偉大さを知った。
「一つ肩の荷が下りたわね。」
「意外とあっさりしているのだな。」
「前の黄巾最後の戦で水燕が言ってたでしょ。
魂は空に骸は土に還す。もう黄祖は死んだのよ。
なのに死んだ後まで黄祖を恨み続ける必要はないわ。
ならもう休ましてやってもいいと思わない?」
「そうだな。」
「さて後かたずけよ。全て燃やして埋葬するわ。
江夏軍と孫呉の兵士を遺体を集めて頂戴。」
『はっ』
敵味方関係なくこの場にいる兵士が総動員されて埋葬作業が進められ
戦が終わった朝方から昼まで掛かり全てを埋葬した。
孫呉はそのまま江夏と長沙を制圧。黄忠と魏延は荊州を脱出し
黄忠の友人、厳顔を頼って隣の益州に逃げたのだった。