恋姫夢想 御使いの友(凍結)   作:秋月 了

37 / 56
第三十五話 陸遜、周泰

その日建業での仕事を終えた総司は中庭で本を読んでいる。

 

「そ、それは」

 

聞き覚えのある声と影で顔を上げた総司の目の前には

陸遜の顔とその豊かな胸がある。

 

「穏殿。どうされました?」

 

目のやり場に困りながら陸遜に聞く。

 

「その書は限定百冊しかない大変珍しい書なのです。

それも何と入手できるのが都だけだったので

発売日に間に合うようにわざわざ孫堅様の許しを得て都に向かったのに

何と私が百一人目だったのですよぉ~

しかも聞いてください。最初に買った方が二冊買ったせいだったんですよ」

 

熱く語る陸遜に軽く引きつつある提案をする。

 

「よかったら差し上げしましょうか?」

 

「いいんですか~」

 

「はい」

 

「あ、でもそれは限定の書ですしいただくわけにはでも~」

 

「(言えない。購入ミスで二冊持ってるとは口が裂けても言えない)」

 

自分のせいで陸遜が買えなかった事実を墓まで持っていこうと心に決めつつ

構わないと言う。

 

「そこまで言っていただけるなら遠慮なくいただきます。

後でやっぱり返せとは言わないでくださいね」

 

「言いませんよ(だって二冊持ってたし)」

 

「ではありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

陸遜はスキップしながら帰っていった。

何となく総司はいいことした感があふれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建業の街を歩いていると

 

「はぁ~癒されます~」

 

という声が聞こえてきた。

声の方に向かってみるとそこにいたのはとろ~とした目をした周泰だった。

 

「お猫様、今日もありがとうございます」

 

どうやら猫と戯れているようだ。

そして恐らく飼い主であろうおばあさんは微笑ましい顔をして

それを見ていた。

 

「(孫権殿から信頼熱い方だがやっぱ女の子か。

ああいう年相応があれば誰だって落ち着くよな)」

 

少々じじ臭いことを考えながら後ろを通り過ぎようとする。

そこに偶々後ろを見た周泰が総司に気付いた。

 

「そ、総司様。どうしてここに?」

 

「偶々通りかかっただけだが?」

 

「そうでしたか。あ、総司様もいかがですか?」

 

「いや、俺はいい。明命がよくしてやるといい」

 

部下からの信頼を一心に受け、戦場を槍を片手に縦横無尽に駆け回り

狼すら飼いならす総司だが唯一にして最大の弱点が猫である。

彼はネコアレルギーで遠くから見ている分には問題ないのだが

触ろうものならくしゃみに鼻水とかゆみといった症状が出て一日寝込む。

だから極力避けてきた。

だが今それが出来ない状況に陥っていた。

この時代にはアレルギーというものが知られていない。

それが知られるようになるのは1700年代になってからだ。

紀元前期に食物は人によっては毒になるという記録があるにはあるが

その道の専門家が知るレベル。一般人が知っているわけもない。

勿論それに漏れず周泰もアレルギーは知らない。だからこそ無邪気に近づいてくる。

 

「悪い。明命。急用を思い出した。失礼する」

 

総司はそう言って速足でその場を後にした。

 

「どうしたのでしょう?総司様。は!まさかお猫様が苦手なのでしょうか?

ならもっとお近づきになって好きになってもらわねば」

 

「にゃ~」

 

違う。そうじゃない。

彼はそのレベルではないのだ。

それからしばらく猫をもって追いかける周泰とそれをさりげなく避ける総司が建業内で

見かけられるようになった。

それらを見た市民は微笑ましい光景としてとらえていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告