恋姫夢想 御使いの友(凍結)   作:秋月 了

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第三話

 包囲網が完了してからは早かった。

前衛は槍や剣をで向かってくる敵を倒しつつ突破させないための壁を形成し

その後ろから弓隊が攻撃する。それで敵は殲滅された。

殲滅が完了すれば後処理にかかる。

その間指揮官と幹部の一部が集まる。

桂花は周辺警戒の指揮の為おらず孫堅は戦闘の後すぐ天幕で寝てしまった。

 

総司「先ずは曹操殿、首領張角三姉妹討伐感謝する。奴らが逃げていたらこれからも

   被害が増えるところだった。」

 

曹操「気にする必要はないわ。此方も偶々見つけただけだから。

   それより聞きたいのはなぜ死体を全て焼却させてるの?」

 

孫策「それは私も気になってたの。何でわざわざ?」

 

そう今連合軍が行っているのは死体の検分と火葬。

これから死体を全て焼き、黄巾の物はその場で埋めて塚にしてそれぞれの軍の人間の死者は

それぞれ簡易的な箱や壺に入れられる為の準備がなされている。

これらは全て総司の指示で各軍が協力しながら行われている。

彼女らはその理由がわからなかったのだ

 

総司「質問に質問で返すようで悪いが生きとし生ける者が死んで

   その死体が腐ると何が現れると思う?」

 

この質問に誰も答える事が出来なかった。

指揮官や将達は答えが出ず、

軍師たちは精神的なものか、もしくは宗教的なものかを考えるが

総司の聞き方からそうではないと思うだけ。

結局皆亡骸が腐ったとしても大地に還るだけではないのかと

考えるも答えは出ない。

一人一刀だけは何となく分かったが明確に答える事が出来ない。

この中で恋、陳宮、張遼だけは前に同じ質問をして答えを聞いていたので黙って聞いていた。

 

総司「答えは蛆だ。腐肉を苗床にして蛆が生まれ、成長し蝿に

   なれば腐肉で発生した病を街や村に運んでくる。」

 

答えが返ってこないと判断した総司は周りにいる者達が思いも寄らない答えを

口にする。それを聞いてこの場にいる者達がまさかと驚く。

この時代、病は病原菌などではなく呪いや怨霊などの心霊的な事だと考えられていた。

唯一五斗米道が「違う。ゴット・ヴェイドーだ。」ん?なんか聞こえた気がする。

まあいい。ゴット・ヴェイド―だけがその知識に近い考えを持っているが

まだ総司の考えび至ることはまだ先だろう。

総司の答えはこれまでの己の考えを根底から覆すものだった。

 

総司「ここは街から遠いが何らかの方法で例えば食物連鎖つまり

   病原菌を持った蝿を強い何かが食い、病にかかり、それをまた強い何かが食う。

   この繰り返しでいつか人間に行きつく可能性が十分あり得る。

   だから根源の時点止める。その為に燃やしているんだ。」

 

孫策「そうだったのね。感謝するわ。」

 

総司「というのもあるがそれはこの行為の理由のほんの四割ほどだ。」

 

全員『えっ。』

 

そこで総司は死体の方を見る。

 

総司「これは俺の勝手な思い込みだし奪った俺が何を言うのかと思うかもしれないが、

   ここにいる奴らの大半は自分達の家族が生きていく為に戦った。

   そりゃ私利私欲の為の盗賊もいただろう。だが中には家族の為、友の為、村の為に

   戦った奴の方が多いと俺は信じてる。だから魂を肉体から解放し、

   魂は(そら)に肉体は土に思いは俺達の胸に残して見送ってやる。

   それが残された者の・・・いや奪った人間がするべきことだと俺は思っている。」

 

劉備「それが敵だったとしてもですか?水燕さん。」

 

総司「そうだ。恨みもあるだろう、許せない事もあるだろうさ。

   それだけの事を彼らはした。でももう死んだんだ。

   なら死んだ後まで苦しめる必要はないだろう。

   死んでまで頑張ったんだ。ならもう休ましてやってもいいじゃねえか。

   少なくとも俺個人はそう思う事にしている。あんたはそうは思わないか?」

 

劉備「そうかもしれませんね。」

 

劉備は穏やかに微笑みながらそう答えた。

答えを聞いた総司は少し笑って作業を手伝う為にその場を離れる。

張遼、恋、陳宮はそれについていく。

 

劉備「私も手伝ってくる。朱理(孔明の真名)ちゃん後お願いしてもいい?」

 

朱理「はい。周辺警戒はお任せください。」

 

劉備「お願い。」

 

一刀「俺も行くよ。」

 

関羽「桃香(劉備の真名)さまご主人様お待ちください。朱理何かあったら呼んでくれ。

   行くぞ鈴々(張飛の真名)。」

 

鈴々「うんなのだ。」

 

劉備達は総司を追いかける為に駆け出す。

 

孫策「行っちゃった。あなたはどうするの?曹操。」

 

曹操「悔しいけどさっきの水燕の言葉は私も感動してしまった。

   確かに死んだ者をこれ以上痛めつけるのは覇を目指すものとして

   取るべき行動じゃ無いわ。むしろ彼らに私はこの場で誓う。

   私がいる限りもうこんな事はさせないと。」

 

郭嘉「はい。我々も全力を尽くします。」

 

曹操「稟(郭嘉の真名)、警戒を任せるわ。

   孔明達や既に警戒に出ている第四師団と協力して

   ここには誰も近づかせないで。いいわね。

   春蘭(夏候惇の真名)。貴方も周辺警戒の方へ行きなさい。

   他の者は私を手伝って。」

 

曹操軍幹部『はっ。』

 

命令を下すと曹操は部下を伴い総司を追いかける。

 

周瑜「どうするのだ雪蓮(孫策の真名)。私達だけ見ているか?」

 

孫策「そんなわけないでしょ。蓮華(孫権の真名)、冥琳(周瑜の真名)後任せた。」

 

雪蓮は走って総他の者達同様総司を追いかける。

 

黄蓋「おい策殿。全く。でどうするのだ?公瑾。」

 

周瑜「全員で向かう訳にはいきません。

   なので黄蓋殿と明命(周泰の真名)は残ってくれ。

   蓮華様、それでよろしいでしょうか?」

 

孫権「構わないわ。皆頼んだわね。」

 

孫呉の幹部『はっ。』

 

その場にいた者達が行動を開始する。

 

 

死体を一つずつ木の板を張り合わせただけの棺桶に入れられて並べられ

その前に所属と名前が書かれた札が置かれる。

これが約六万人ほどあるので大変だ。

だが各軍の将まで協力したことで作業が早く進み本来かかると考えられていた

半分の時間で完了した。

今は各軍が大将を先頭に全軍が整列している。

 

総司「曹操殿、孫策殿、劉備殿ご協力いただき有難う御座いました。」

 

曹操「気にしなくていいわ。戦死者の中には当然わが軍の人間もいたのだから。」

 

孫策「そうね。それにあなたの考えは正しいとも思ったし。」

 

総司「有難うございます。ではあと少しだけお付き合いください。桂花。」

 

荀彧「はっ。点火して。」

 

兵士「はっ。」

 

数人の兵士達が走っていきそれぞれ火をつけていく。

やがて全てに火がつけ終わった事が報告される。

 

総司「この地で戦死した全ての戦没者に哀悼の意を表する!黙祷。」

 

その言葉を合図に一人の兵士が小太鼓をゆっくり叩く。

その瞬間この場にいる全ての者が頭を下げた。

 

総司(君たちはよく頑張った。つらかっただろう、苦しかっただろう。

もう苦しむ必要はない。ゆっくり休んでくれ。)

 

劉備(お疲れ様でした。皆、私の為に戦ってくれてありがとう。

黄巾の皆さん。私、絶対皆が笑って暮らせる国を作って見せるから見ていてください。)

 

曹操(あなた達に誓うわ。この私がいる限りもうこんなことは起こさせない。

そんな国を作って見せるわ。天から見ていなさい。)

 

孫策(お疲れ様。私たちの為に戦ってくれて有難う。ゆっくり休んでね。)

 

己の意志をこの場の死者に誓うもの、ただ哀悼の意を示すもの。

それぞれがそれぞれの思いを胸にしながら頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特に何か問題が起こることもなく追悼式が終わり、一つずつ

箱に詰めて札を張り付て荷馬車に乗せる作業が終わると各軍がそれぞれの

領地に戻る為に引き上げて行く。

 

総司「劉備殿貴方にはこのまま漢までご同行お願いします。」

 

劉備「え?どうしてですか?」

 

総司「先程皇帝陛下から褒美として役職を与えるので直ぐに洛陽に来いと

伝令が参りましてご同行願います。」

 

劉備「こっ皇帝陛下から!!」

 

関羽「良かったですね、桃香様。これで夢に一つ近づきました。」

 

劉備「うん。」

 

総司(ああこんな純粋な子もあの魑魅魍魎が跋扈する場に連れて行かなければ

   行かなければならないのか。)

 

喜ぶ劉備達を見ていて総司はつらそうな顔をする。

だが未来を此処でつぶすわけにはいかない。

 

総司「劉備殿、これを。」

 

総司は意を決して金が入った袋を劉備に渡す。

 

劉備「水燕さんこれは?」

 

総司「洛陽に着いて役職が言い渡され退出したのち十常侍か大将軍が

   訪れるでしょう。その際にその金子を使って難を逃れてください。」

 

劉備「水燕さんそれは賂ということですか?」

 

総司「はい。」

 

明らかに劉備の顔は怒っていた。

劉備だけじゃない。関羽も同様である

当然だ。総司が進める行為は劉備の理想とする世界とは全く逆の行為だ。

 

劉備「このようなものいりません。そういう事なら褒美もいりません。」

 

総司「しかし。」

 

劉備「貴方も分かっているはずです。この行為が今回の乱を引き起こした

   原因の一つだという事を。なのになぜこのような事を進めるんですか?

   こんなことでは何も変わらない事位分かっているはずです。」

 

それにうつむく総司。すると我慢が限界を迎えたのか

隣で聞いていた桂花が叫んだ。

 

桂花「さっきから聞いてたら結構なこと言ってくれるじゃない。

   そんな事あんた達なんかより総司様の方が何倍も分かってるわよ。

   知らないようだから、教えてあげる

   今の洛陽は魑魅魍魎が跋扈する妖の巣窟と言っていいわ。

   それはもう董卓様や賈駆がどれだけ頑張っても意味ないくらいね。

   だから能天気なあんた達がそこに向かえばまさに

   餌によりついてきた魚も同然。骨の髄までしゃぶりつくされる。」

 

関羽「しかしご主人様がいる限りそのようなことは。」

 

桂花「甘い!甘すぎるわ関羽。あいつらからしてみれば天の御使いなんて

   大した存在じゃないわよ。それに予言の事は私も聞いてるけど

   容姿に関しては何も言ってなかったわ。なら適当に罪を

   でっち上げてあんた達を拘束して殺す。

   その後自分達の配下に彼の服を着せて傀儡にすればいい。

   そんな事簡単にできるのよ。

   今の洛陽は隙を見せれば即終わる。

   だからそうさせないために水燕様は金子を渡してあんた達を守ろうと

   してるんじゃない。それともそうなりたいの?

   あんた達なんかいいとこ死刑、最悪一生性奴隷よ。」

 

劉備「でもそんな事が。」

 

総司「本当だ。そこら辺の娼館に出向けば十常侍や大将軍に楯突いて

   失脚した貴族の娘なんかが普通に売られている。

   大変失礼だが劉備殿も関羽殿も大変見目麗しい見た目をされている。

   楽に殺されることは無いだろう。」

 

劉備「そんな。」

 

総司「お願いだ。今回の事は忘れてこのまま褒美の件も辞退するか

   この金子を受け取って俺の言う通りにしながら洛陽で過ごしてほしい。」

 

劉備「分かりました。私たちはこのまま辞退し幽州へ帰ります。

   水燕さん先程はすみませんでした。」

 

総司「お気になされず。こちらこそ申し訳ありませんでした。

   これからの生活や義勇軍の方々への支払いも大変でしょうから  

   その金はお持ちください。では。」

 

総司はそのまま劉備の元を去る。

 

桂花「総司様よろしかったのですか?」

 

総司「いいさ。大将軍には俺から言い含めておく。」

 

桂花「また彼女を使うので?」

 

総司「それが一番効果的だろうな。とりあえず洛陽に戻ろう。」

 

桂花「はっ。」

 

こうして総司達は洛陽に戻っていく。

洛陽に戻る途中かつて董卓と共に守っていた街により、

街から少し離れたところにある

董卓軍の中で戦死した者達を董卓軍共同の墓地に弔った。

 

総司「お前達の働きこの水燕 白英が確かに見届けた。

今はただ眠れ。いつかあの世で再開したらまた盃を交わそうぞ。」

 

董卓軍のまとめ役である総司は水を賭けながら

いつも戦死者が出るとその死者に向けて言う言葉を述べる。

後ろで聞いていた配下の者や第一師団、第二師団の者達も

頭を下げて祈る。

お疲れ様、俺達の大将の事は任せてゆっくり休んでください。

そんな思いを込めて。

それから董卓軍は洛陽にに戻っていったのだった。

 

 

 

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