恋姫夢想 御使いの友(凍結)   作:秋月 了

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第四十話

燃え盛る炎。叫ぶ敵兵。袁紹軍五千は全滅した。

劉備だけはこれに激怒した。

 

「こんなのひどすぎます。」

 

「これは戦争です。それはあなたもわかっていたはずだ」

 

「でも追い返すだけでも良かったはずです」

 

劉備は更に怒りをあらわにして追及する。

しかし総司は気にせず反論する。

 

「敵は叩ける時に叩くべきです。叩いて叩いて根まで刈り取らなければ

そのものはまた新たな武器を持って我々に刃を向ける」

 

「でも。」

 

「別に敵であるものを全て滅ぼせとは言わない。話し合いで解決するならそれも有りだ。

だが彼らは間違いなく話し合いに乗らない。それは分かっていたことだ。」

 

総司に言われて劉備はへたり込み下を向く。

総司が言ったことは何一つ間違っていない。

自分達は戦争しているのだ。子供の喧嘩やごっこ遊びではない。

無意識のうちに夫であり共同代表である一刀に甘えていた事に。

何より自分の戦に対する認識の甘さ。現実の見えていないさまを痛いほど理解させられた。

総司の横でへたり込む桃香を更にその横に立っていた朱儁が話しかける。

 

「下を向くな桃香様。目をそれしてはいけない。それは己の未来さえ閉ざし

生きる意味を見失う事になる。自分の正しい事に従った時に下を向いて行う者に

どれ程の者が付いてくる?顔を上げ前を見て、手を伸ばせ、出なければ

今回の事と同じ轍を踏むことになるぞ。また後悔するのか?

その目に焼き付けろ。これが戦争だ。俺たちは戦争をしているのだ。

軍師達はいかに自軍の損害を減らし敵に効率的かつ最大の攻撃を加えられるかを考えている。

それは朱里殿や雛里殿も同じこと。これで分かったろ?これが孫呉のそして総司の本気だ。

孫呉と曹魏は己の理想を叶えるために覇道を進む。

桃香様は王道を進むつもりだろうがそこにも血は流れる。」

 

「でも、それじゃ、今までと何も変わらない。また別の憎しみが生まれるだけです。

また、その憎しみのせいで戦いが起こって悲しい思いをする人が増えるだけ。

それじゃあ、何も変えられない。」

 

「それは………………。」

 

朱儁は黙ってしまう。それと変わるように総司は声を上げた。

 

「それが人という生き物の本質だ。劉備殿。」

 

「え?」

 

「これまでどれだけ屍を積み上げてきた?どれだけ泣いてきた?

この漢という国の下にどれだけの屍があると思う。

それでも人はその真実に気付かない。自分の事しか考えない。

人はいつだって一握りの英雄様がきらびやかな武勇伝をひけらかすせいで

争う事を辞められない。やってることはただの殺人だ。

だがそれをさも科学者が成し遂げた偉業と同じような感覚で語る。

それを聞けば誰だって思うだろう。自分でもあんな偉業を成し遂げたい。

自分こそがそれを成し遂げるのだと。

もっとだもっと欲しい。あいつは自分より持っている。

羨ましい、妬ましい。そういう考えが人の本質だ。

だが自分ではどうすることもできない時どうするか?

一番簡単なのは持っている奴から奪ってしまおう。その考えに行きつく。

そして人はどれだけ技術が進歩しようと本質自体は旧石器時代から

そしてこれから先二千年たとうが三千年たとうが変わらない。」

 

「そんなことはありません!人は変われます。

誰もがより良い明日を迎えたいと思っているから。」

 

「ならなぜ十常侍や大将軍は不正を働いた?

バレれば死はまのがれないとわかっていたはずだ。

そしてなぜそれを止めてより良い明日を未来を創ろうとした月や献帝陛下は

洛陽におらずこの徐州の地にいる?いやそもそもなぜ反董卓連合など結成した?」

 

「それは………………。」

 

「攻めてばかりで悪いがな。それが証拠だ。

そう思うなら献帝陛下の下一致団結すればよかった。

反董卓連合など結成せずにただ唯々諾々と中央に従えばよかった。

施行されることは無かったが出されていた法はこの国をよくする法律だったのだから。

だがお前達は月が相国に任命された事が気に入らない袁紹の口車に乗せられただけだ。

それかより良い地位を得るためか?どちらでもいいがそれが

本質を変えられない証拠ではないのか?」

 

「そうかもしれない。でもこれからは。」

 

「学生の喧嘩とは違うんだぞ。これから?変えられるわけないだろ。

やり直しは聞かない。一度でもその手に剣を持ち血が付いた手を持つ者の声を誰が聞く?

誰が信用する?誰だって信用しないさ。」

 

「なら水燕さんはどうすればいいと考えているんですか?」

 

「俺は徹底的にやる。そして全く新しい王を立てる。

その後は中央集権をなす。軍閥があるからいけない。

軍閥をなくし武力も司法も金も政治に関わる力を全てを中央に集めて

中央主導の政治を取り行っていく。

そして徹底して地方にしっかりとした法と学問を行き届かせる。

出来る限り世襲をなくし実力だけでのし上がれる国を作る。

それでもいずれは腐敗が出るだろうが今よりはマシだ。」

 

「今までとほとんど変わらないじゃないですか?」

 

「大きく違う。抗う力がなければだれもが従う。

そして何より世襲をなくせば誰だって努力する。

今ままでは世襲のせいで努力する事を蔑ろになってきた。  

誰だって思うだろ?努力せずとも地位、金、名誉が親からもらえるんだ。

誰だって努力するのが馬鹿らしくなるだろ?」

 

この時の総司の考えは彼の実家である世界的に有名な企業水城グループの在り方そのものだった。

完全実力主義で彼の曽祖父と祖父が作り上げ父が維持している企業。

彼自身当時の地位を手に入れるために必死に努力し将来的に世襲で自動的に確かな地位が

手に入ると考えて全く努力しない兄二人を蹴落として次期社長候補筆頭にまでのし上がった

経験をしている。だからこそそう言う考えに至るのだと理解した。

 

「だがこれは俺の考えだ。劉備殿がより良い形を作る事が

出来るならその時は手を取る事もできるかもしれない。そうある事を祈っている。」

      

総司はそういいながら戦場を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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