長坂坡を渡り終えた劉備軍を追って、曹操軍が現れた。
それを総司たちは端の反対側で隠れて見ていた。
夏侯惇と曹操、夏侯淵を先頭に橋を渡り始める。
「今だ」
総司の指示したがって数人の兵士が火矢を撃った。火矢は端に当たり燃え始める。
「急いで渡るんだ!」
夏侯惇を先頭に橋を渡っていた兵士たちの半分は進み、
半分は後ろに下がった。
しかしどちらも最後尾が橋から落ち流されていく。
総司は川を渡り終えて息をついていた曹操軍へと奇襲をかけた。
「敵だ!迎え撃て。夏侯惇隊突撃しろ」
夏侯惇は曹操を守るために突撃する。
「勝負だ!水燕」
「いいだろう。受けて立つ」
剣と槍がぶつかり合う。
二合、三合と打ち合って夏侯惇の剣が後方に吹き飛び夏侯惇自身も落馬し兵士数人で捕らえる。
その頃、共に突撃した姜維が夏侯淵の弓を躱しきり捕らえた。
「夏侯姉妹は捕らえたぞ。曹操」
「くっ」
曹操は舌打ちする。
関羽を召し捕り破竹の勢いでここまで来たところで
孫呉が介入してきてこの結果だ。
それでも曹操は魏の王である。
動揺することなくあくまで平然とした態度で臨む。
「そう、要求は?」
「この場からの撤退。そして捕虜の引き渡しだ」
「いいでしょう。現状私は孫呉と事を構える気はないわ。
捕虜もすぐに連れてくる。と言っても関羽だけだけれども」
「では交渉成立だ」
その後橋が修復され捕虜交換が行われ曹操軍は引いていった。
天幕の中。
「う、ここは?」
「お目覚めか?関羽殿」
「水燕殿!なぜ?」
目覚めた関羽の目の前には総司が座っている。
関羽にしてみれば不思議で仕方がなかった。
夏侯惇に敗れて捕らえられたはずが目の前には総司がいるのだ。
困惑するのも無理もないと言える。
「まず、ここは孫呉、もっと細かく言えば八咫烏隊の天幕の中だ。
そして関羽殿は先ほどこちらで捕らえた捕虜と交換された」
関羽はすべて理解した。
だがそれでも新たに疑問が生じる。
「ではなぜ私は縛られたままなのですか?」
「今のお前は八咫烏隊の捕虜だからだ。そしてここからが本題だな。
君には二つの選択肢がある。このまま劉備殿と合流するか?
それとも俺達と来るか?勿論俺達とくれば先日のそちらを示したままの待遇ではある。どうする?」
「どうするも何も・・・・・・」
劉備の元に戻ると関羽に言えなかった。
そこまで今の関羽には劉備の信念、在り方に疑問を感じれるものがあった。
あるいは一刀の基本的な考え方がどちらかといえば劉備とは正反対にも関わらず、
劉備に従っている事も関羽にそう言わせられない要素の一つなのかもしれない
「どうする?今ここが最後だ。これ以降こちらに付こうがこのような待遇は保証できない」
関羽は焦った顔をする。
それを見た総司は小さく笑う。
(あともう一押し)
「本当にいいのか?このまま劉備の元に戻って一生近衛として生きるのか?
本当は大部隊を率いて前で戦いたいのではないのか?
俺達の元に来ればそれもかなう。
例え近衛であろうとも前線で武を振るう事が出来る。
関羽殿が戦場で望むのはそういう場所ではないのか?
それに関羽殿の理想や考え方は劉備殿とは正反対で
どちらかといえばこちら側なのでは?」
「それは・・・・・・・」
長い沈黙がその場を支配する。
その間総司は待った。
そして関羽は頭を下げた。
「水燕様、この関羽 雲長をあなた様の軍にお加えください」
遂に関羽は折れた。
「ようこそ、関羽殿、いや関羽。今この場にはいないが約束通り第四旅団は君に預けよう」
「ただ、桃香様に最後に挨拶をさせてほしい」
「いいだろう。それで君が満足するなら。
それと今日から君にも真名を預ける。総司だ」
「私の真名は、愛紗です。なにとぞよろしくお願いします。総司様」
この時から関羽は劉備を捨て総司に着いた。