曹操軍の先鋒を任された楽進、于禁、李典を先頭に曹操軍は前進する。
「別の城は春蘭様が落として合流しました」
「秋蘭様の部隊が合流しました」
曹操の元にあらゆる情報が舞い込んでくる。
「一部地域からの情報が遅いわね」
その時、前衛から伝令の兵士が走ってくる。
「報告。前方の丘から敵が現れました」
「数と旗は?」
「呉の旗と三本足の黒い鳥の旗を確認しました」
「水燕ね。迎え撃つわよ。秋蘭を」
その時が爆音が響く。
「な、なんなの?」
「わかりません。ですが今の爆発で一小隊が壊滅しました」
「そんな」
「水燕ならあり得ない話ではないわ。全員心してかかりなさい」
「「「「はっ」」」」
曹操の言葉に全員が返事を返す。
この時曹操は知らなかった。
部下の独断のせいで自分が絶望の淵に立たされている事を。
「見えました。曹操軍です」
「わかった。瑠香。ここから砲撃して敵の数を減らせ!」
「了解」
「柱花は瑠香に指示を出して的確に敵を崩せ」
「はっ」
「その他の奴らは敵に向けて突っ込め。知らない顔はすべて殺せ。
自身の後ろに敵を残すな。いいな!」
『おお~~~~!』
「総員、突撃~~~~!」
雪崩を打ったように全員が突っ込む。
「殺せ!」
「よくも俺達の仲間を!」
「卑怯者には死を」
そう叫びながら八咫烏隊は突っ込む。
先頭を走る総司と趙雲が敵の前衛を突き殺し
それと同じようにして後ろの隊員が敵を突き殺し、切り殺していく。
一方的な戦い。戦闘が開始して五分と経っていないにもかかわらず
既に曹操軍の前衛は壊乱状態に陥っていた。
それを今回初めて部隊を任された楽進達に立て直すことは不可能だった。
「一旦下がるで。この砲撃に加えて敵の士気が高すぎるわ」
「しかし」
「ここで私達がいても出来る事はないの。とにかく部隊をさがらせて
春欄様と合流するの」
「くっ。わかった」
三人は撤退の合図を出しつつ下がる。
すぐ後ろに総司が迫っていた。
「進め!曹操を殺せ!」
『おおおお~~~~!』
なお進む。ただただ曹操を殺す為に。
「妙だ」
張遼率いる第三旅団との戦いを指揮しながら夏侯淵はある疑問を抱いていた。
「妙とは?」
夏侯淵の言葉に隣にいた曹洪が聞く。
「なぜ敵はあそこまで鬼気迫る勢いでこちらに迫っている?」
「それは呉が攻められているからでは?」
「それも有るだろうがあの水燕がこうなるのはあの時だけだ」
「あの時とは?」
「虎牢関の悲劇。それに敵の兵士はこの卑怯者共がと言ってこちらを攻撃してきている」
「まさか!お姉さまが?あり得ませんわ」
「わからないが。もしかするかもしれない。栄華すぐに調べてくれ」
「わかりましたわ」
その時部隊が崩れ始める。
「もう持たないか。本陣まで撤退する。急げ!」
別箇所に向かった曹洪を見送りつつ夏侯淵は本陣に向かっていった。
「報告。前衛部隊。壊滅しました。援軍を」
「報告。右翼。夏侯惇様。関羽に敗北。撤退しました」
「報告します。左翼夏侯淵様。張遼に敗北。撤退します」
戦闘が開始してからそれ程の時間が経っていないにもかかわらず
曹操のいる本陣には凶報ばかりが舞い込んでくる。
「どういうことなの?」
曹操にはわからなかった。
報告に来た兵士から敵先鋒である八咫烏隊に関する報告を聞いていた。
その誰もがまるで虎牢関での董卓軍のようだったという印象を受けたという報告だった。
(なぜ、ここでその報告を受けるの?まさか誰かが?)
曹操はある仮説にたどり着く。
だがさらに悪い報告を舞い込んできた。
「報告します。中軍。曹純様。敗北、撤退しました。
敵がすぐそこに迫っています」
「あり得ないわ。このような事」
「華琳さま!」
「秋欄!」
「直ぐに撤退してください。敵が迫っています」
「わかっているわ。それよりも気になることがあるわ。
敵は私を卑怯者と言ってこちらに向かってきていると報告があったわ」
「それについても既に栄華に調べさせています。今はとにかく撤退を!」
「ぐわっ」
「姉者!」
本陣を構築している柵が壊れ夏侯惇が吹き飛ぶように転がってくる。
「曹操」
「水燕」
夏侯惇を吹き飛ばし総司は馬を降り曹操のすぐ近くに立った。
「あの時は素直に撤退させたが今度はその首をもらう」
「取れるものなら取ってみなさい」
曹操も自身の獲物である鎌をかまえた。
呉軍は全速力で総司たちに合流する為に走っていた。
「急ぐわよ。もう遅いかもしれないけど」
「どういう事じゃ策殿?」
「総司君が負けると思っているのですか?雪蓮様?」
孫策の言葉に疑問を持った黄蓋と程普は孫策に聞いた。
責められているとはいえその防衛の先鋒は総司率いる八咫烏隊だ。
黄蓋や程普にしてみれば既に勝って曹操軍は既に追い返されているかもしれない。
それくらいに考えていたほどだ。
勿論それでノロノロしていていい理由にはならないのは理解しているが
だからと言って今の孫策の表情には疑問があった。
「総司がまた狂気を解き放つかもしれないのよ」
「総司の狂気?」
孫策の言葉に太史慈が聞く。
「総司は王の器を持ってると思うわ。
どんなことも動じず常にどっしりと構えて
その言葉は聞いたものを引き付ける。
まさに王にふさわしい器よ。
まあ、まだ成長途中とはいえ劉備の所の一刀もそうだけど。
でも総司の器は言ってみれば狂王の器。
そして彼の持つ狂気は周りの者にまで伝染し巻き込んでいく。
その枷なのが八咫烏隊一人一人が持つ命と誇り。
だから八咫烏隊の面々が戦場以外で殺された時は
総司は無意識のうちに狂気を解き放ってしまう。
そして同じ思いを持つ八咫烏隊の隊員を狂気に染めてしまう。
そこに例外はないわ。
そして八咫烏隊はそれを拒まない。
この短い間であの関羽までもがその狂気に染まってしまっている。
だから止めないといけないの。
出ないと八咫烏隊は曹操を殺すか死ぬまで止まらない」
孫策の話を聞いていた将の誰もが頷く。
既に孫呉にとって総司たちは無くてはならない存在だ。
ここで失っていい存在ではない。
「見えたわ。急ぐわよ」
少し離れた丘の上に砲台が築かれ瑠香の指揮の元次々と
砲弾が打ち出されている。
「呉軍が来た。道を開けなさい」
呉軍の到着と共に砲兵たちが道を開ける。
孫策たちはその間を通り抜け戦場を見た。
「何よ。これ?」
そこで見たのは一面死体の山と血の匂い。
見ただけで歴戦の勇士である程普や黄蓋、孫策ですら吐き気を覚えて口元を抑えた。
「とにかく進むしかないわ。私についてきて」
孫策は勇気を振り絞り進む。
そこで見えたのは総司が今にも曹操と戦おうとしているところだった。
「双方、その場で剣を収めなさい!」
「孫策!」
「孫策様!」
「総司もういいわ。ここまですれば曹操は退却せざるを得ないわ。そうよね?」
「ええ」
孫策と曹操の間では話は纏った。
「ぬるい!敵は確実に潰さなければならぬのです。その戦意を完全に砕き、
敵対する意思を完全に破壊しなければ敵は再び武器を持ちこちらを襲い掛かる」
だが総司はそれをよしとしなかった。
「そうして大切何かを失ってから後悔してもおそいのです」
誰もが反論できなかった。
曹操の頭には既にどのようにして呉を攻略するかという
考えがあるしそれは孫策も同様だ。
だがこれ以上この場で人死にを出すわけにはいかなかった。
「総司のいう事はわかっているわ。それでもここは引いて」
「しかし・・・・・グハッ」
「いい加減落ち着け。策殿が言っているのだ」
「その仲間想いな所は尊敬に値するけど今は落ち着きなさい」
尚も反論する総司を黄蓋と程普が当身をくらわし気絶させる。
「曹操!今退けば追わない。何も聞かずに速やかに国に帰りなさい。
そして私は忘れない。今回の卑怯な暗殺を」
「待ちなさい。孫策。暗殺とは「私は何も聞かずに引けと言ったわよ。
それともこのまま私達と一戦するのがお望みなの?」
「わかったわ。その言葉に甘えさせてもらうわ。全軍、撤退よ」
『はっ』
曹操軍は引いていった。