恋姫夢想 御使いの友(凍結)   作:秋月 了

53 / 56
第五十一話

曹操軍はようやく許昌城に帰還した。

だがその様子は誰もがボロボロで無事な人間はほとんどいない。

誰もが傷つき、まだまともに歩ける同僚や上官に肩を貸してもらいながら

行進している。

 

「稟、被害はどれくらい?」

 

曹操は隣を歩く郭嘉に尋ねる。

 

「死者だけで出陣時の八割に上ります。怪我人はそれ以上でしょうが

現在確認中です」

 

「わかったわ」

 

落ち込みながらも曹操は城に入り玉座の間に入り玉座に座る。

 

「華琳様」

 

「何?秋蘭?」

 

「あまり御自分を責められない方が宜しいです」

 

「………そう……」

 

夏侯淵はそういったが相変わらず曹操殿は変わらず落ち込んだ表情をする。

 

「華琳様!!どうか今一度、呉に攻めるご命令を!!このままでは華琳様のお顔が立ちません!!」

 

「姉者………頼むから少しは空気を読んでくれ」

 

「だが秋蘭!!このままでは悔しいではないか!!我等天兵が呉に負けるなどとは……」

 

「だが実際に我等は敗退したのだ。それに今は兵達も疲れきっている。

今の状態で攻め込んだとしても今度こそ奴等は我等を完膚無きまでに殲滅するだろう」

 

「しかしだな秋蘭!?「春蘭……少し黙りなさい」か……華琳様!?」

 

なかなか話を聞こうとしない夏侯惇に曹操がようやく口を開いて黙らせる。

そこに曹操にとって更に落ち込ませる報告が入った。

 

「お姉さま!」

 

「何?栄華」

 

「ご報告すべきことが。水燕殿の隊はお姉さまの事を卑怯者と呼びながら

突撃してきていたのはご存じかと」

 

「ええ、その事で栄華が調べてくれている事も聞いているわ。それでわかったの?」

 

「はい。我らが呉に進行を開始したと同時期に曹操軍旗下の者が

暗殺者を放ったことが判明しました。

そしてその刃が水燕殿の配下を殺した事も判明しております」

 

その瞬間落ち込んでいた曹操の顔が怒りの色に変わる。

 

「直ぐにその首謀者を捕らえなさい!栄華!首謀者は誰なの!」

 

「は、はい。首謀者は許貢です」

 

「直ぐに許貢の首を取りなさい!」

 

「しか「話は聞かないわ、稟。これは絶対命令である。秋蘭。今すぐ許貢の首をはねなさい」

 

「御意」

 

秋蘭は玉座の間を出ていった。

 

「なんてことなの。私はあのような戦いは求めていないのに」

 

誰もが悲痛な思いを顔に浮かべる。

 

「とにかく使者を送らないといけないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした」

 

建業城の謁見の間。

総司は孫策に対して謝罪を述べていた。

理由は先日の曹操との戦で孫策の制止を聞かず逆らったこと。

 

「気にする必要はないわ。あなたの気持ちは私もよく理解できるもの」

 

だが孫策はそのことを特に深く考えていなかった。

理由は自分で言ったとおりだ。

 

「顔を上げなさい。総司。私は今回の件であなたを責める気はないわ。

私ももし冥琳や蓮華達をあんな形で失えばあなたのようになるかもしれないし。

でももう少し自分を抑えることを覚えなさい」

 

「ありがとうございます」

 

総司は立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

益州、成都。

 

「先日の孫呉と曹魏の報告が上がりました」

 

会議場として使っている部屋に入ってきたのは黄忠。

薄紫のきれいな髪と胸元が大きく開いた服装が特徴で

先日の劉備たちによる益州攻略戦で巴群を守護していた将だ。

戦闘で敗北を喫した黄忠は捕らえられたのち、劉備軍に下った。

今は劉備軍の将として働いている。

なお、ほとんどが年若い将が多い劉備軍の中でお母さんポジを確立していたりする。

 

「先日の両軍の戦は孫呉が快勝。それも八咫烏隊に

曹操軍八万が壊滅したと報告が上がってきました。

そして孫呉は側に死者はほとんどなかったとの事です」

 

「な!」

 

「そんなのありえるのかよ」

 

一刀と馬超は驚きを口にする。

あり得ないと二万でその四倍に相当する戦力を壊滅させる。

言葉にすれば簡単だが実際実行するのは不可能に近い。

その難しさがどれほどのものか実際に部隊を率いて戦う一刀や馬超には

よく理解できるものだった。

 

「総司なら納得だな」

 

「琴さん?」

 

「あいつはそれができる。

他者を率いて己の意のままに操る。

あいつの恐ろしいのは個人の武じゃない。

その統率力だ。器なんだろうな。あいつも。

だからこそ関羽もその器に魅せられたのだろう。

俺もそんなあいつの器に魅せられたこともあった。

あいつこそ王になるべきだと思った。

一刀殿いなければそうなっていたかもしれないな。

だがあいつの器には狂気が孕んでいる。

その狂気をあいつは制御できていない。

いや、違うなできるわけがないというべきか。

そんな狂気をあいつは持ってる。

その狂気が解き放たれた結果が今回なんだろう」

 

「琴」

 

「それが総司という人物だ。この漢を守る者たちを

勝利に導いてきた男だ。それを忘れるのよ。一刀殿、桃香殿。

あいつはすでにこちらと戦う事も視野に入れて動いているぞ」

 

「はい」

 

「そうですね」

 

一刀と劉備は覚悟を決めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告