ここ数日総司は悩んでいた。
理由は洛陽に戻ってきて直ぐに賈駆から聞いた提案。
その提案は失敗すれば彼だけではなく彼の仲間たちも死に直結する提案だった。
既に師団の幹部には話しており総司に一任すると言われている。
故に彼は悩んでいた。
彼は敵に対しては冷徹なところがあるが部下や仲間に対してはとてもやさしい人物だ。
そして彼は仲間や部下の死を許さない。
過去に彼の部下を非道なやり方で殺した五胡の村人がいた。
当時は戦時中ではなく和平交渉が行われている最中だった。
だがその村人は交渉が決裂すれば滅ぼされることも理解しながら奇襲を敢行し惨い殺しを行った。
その時総司はその五胡の村人の出身の村に赴き村人や駆けつけた戦士を一人で皆殺しにした。
仲間や部下を傷つける者を決して許さない。
それがたとえ女、子供であろうと関係ない。
それが総司という人物だった。
それ故に迷っていた。
だが現状の洛陽を見ればもはや迷っている暇もないと理解させられる。
今の洛陽では霊帝直属の西園八校尉が選ばれその式典も行われている。
だがこの西園八校尉は霊帝直属とは名ばかりで実質大将軍直属と変わりは無かった。
このままいけば漢は大将軍に乗っ取られてしまう。
勿論十常侍が黙って見ているとは思えないがどちらが勝とうが
ろくでもない未来が待っているのは想像するまでもない。
困るのが本人たちだけなら自業自得である。
だが彼らは国の中心にいる人物だ。
当然だが彼らが出した影響は民が被ることになる。
総司にはそれは出来なかった。
総司「やるしかないか。」
溜息を一つはき詠の部屋に向かう。
賈駆「来たね。返答を聞かせてくれるかい?」
総司「ああ。俺達第四師団は詠の提案に協力する。」
賈駆「わかったよ。協力には感謝しているよ。さきほど
朱儁将軍や霞(張遼の真名)も参加の意向を示してくれた。
これでうまくい。それで総司に頼みたいんだけど
何太后に近々行われる黄巾討伐の情報とその警備を
我々にするように頼んでほしい。」
総司「わかった。任せろ。」
賈駆「ありがとう。いつも裏方ばかり任せて悪いね。」
総司「気にするな。月やお前や先代には大恩がある。
それを返したいしな。」
賈駆「わかった。ありがとう。」
踵を返し扉を出ていく。
詠にとって総司は董卓軍主力の中では最も頼りになる存在だった。
恋も霞も華雄も正面からの戦いにおいてこれほど頼りになる存在はいない。
だが搦め手を任せる事が出来ない。
特に華雄は猪が服を着て戦っているんじゃないかと思うほど突っ込むことしかしない。
それでも他三人と負けない位、武功を立てているので全くの無能という訳ではない。
恋も単騎で万の敵を打ち取れるほどの
音々音(陳宮のまな)がいるおかげである程度搦め手のような事が出来ている。
しかし恋が強すぎる為、彼女の部隊を奇襲で使用した場合戦場での連携が難しい。
だからこそ二人に第一師団を任せて董卓軍の武の顔として活躍してもらっているのだが。
霞も部隊指揮は旨く対応力も高く武も恋に近い物がある。
だがやはり搦め手よりも正面から戦うのが得意だ。
一方総司の第四師団はあらゆる面で高い水準を示してくれている。
普段の訓練から凄まじい訓練を行い、練度を高く、臨機応変に行動がとれる。
総司自身も恋と同等の武を持ち、全体の指揮を執る桂花も男嫌いというのが
たまに傷だが能力に疑問は無い。
また師団内には一騎当千の将も多い。
元々懲罰部隊の側面が強い第四師団だがそれゆえなのか武人が嫌がる仕事も
多く受けている。
勿論総司自身や部隊内の武人たちに武人の誇りがない訳じゃない。
だがそれよりも上からの任務の方が大事だと考えているだけだ。
その点からも総司には前準備段階の時点で裏で動いてもらう事が多かった。
そのことも有り詠は総司には絶大な信頼と感謝していた。
夜、総司の家に一人の女性が入ってくる。
女性の正体は皇帝の妻、何太后だ。
かつて彼女は総司に色仕掛けを仕掛けて失敗し
逆に惚れてしまいそれからは総司に尽くすようになった。
もっとも総司自身は便利な女としか思っていないのだが。
※木乃伊取りが木乃伊になるとはこのことだと思う。by作者
何太后「及びと聞き参上いたしましたわ。総司様。
それでいかがいたしましたか。」
膝を付いて瑞姫は総司に問いかける。
本来逆なのだが
総司「瑞姫(何太后の真名)君に頼みたいことがあるんだ。」
何太后「何なりとお申し付けくださいませ。」
総司「来月行われる戦勝記念の祝賀会に華雄以外の元董卓軍の者と
朱儁将軍を警備担当にするように手をまわしてほしい。」
何太后「お任せを。」
総司「頼んだ。」
何太后「はい。」
それからすぐに準備を整える。
あっという間に祝賀会当日を迎える。
全ての準備が終わり後はその時を迎えるだけ。
総司達は全く気取られることなくその場に立ち会うのだった。