その日は来た。
準備を整えて宴の警備の担当である総司と朱儁はその時を待つ。
目に前では十常侍が大将軍何進が来るのを今か今かと待っていた。
十常侍1「大将軍はまだですかな。」
十常侍2「もうそろそろ来られるでしょう。趙忠が呼びに行っている。」
十常侍3「そうか。まあいい。この宴もすぐ終わる。」
十常侍4「まったくですな。はっはっはっはっは。」
この宴はただの宴ではなく何進の暗殺を行うためのものだった。
この暗殺が成功すれば十常侍に逆らう勢力はほぼなくなる。
実際には月の勢力がいるのだが彼らは気にもしていない。
その喜びのせいか総司達が傍に控えているにもかかわらず
全くその事を隠そうとせず話続けている。
彼らの頭の中は何進がいなくなった後の事で頭がいっぱいなのだ。
総司(全く。この手の謀は最後まで油断しちゃだめだ。どこに落とし穴があるか
分かったもんじゃないからな。)
総司は目の前の迂闊すぎる者達を見ながらその時を待っていた。
すると大将軍何進が怯えながら入ってきて、
その後ろを瑞姫がついて入ってくる。
最近の彼女は宮廷内に流れる大将軍暗殺計画があるという噂を真に受け、
完全に怯え切っている。
十常侍1「何進殿、よくぞ参られた。どうぞ上座へ。」
何進「ふん。」
何進は不満に顔をしながら上座に座る。
十常侍2「ささ、何太后様もこちらへ。」
何太后「ええ。」
促された瑞姫も何進の隣に座る。
十常侍1「では黄巾討伐の祝賀会を始めさせてもらう。
僭越ながら私が何進殿の盃に注がせてもらいます。」
一人の男から何進に酒が注がれる。
何進「これはどういう風の吹き回しだ?」
趙忠「何進殿。我らの間には行き違いも多くございました。
ですがこの盃をもってすべてを水に流しかつての間柄に戻りましょう。
漢を導くには我らが手を取り合う事こそが一番なのですから。」
趙忠の言葉を聞いた何進は少し考えた後、
何進「妹よ。」
何太后「はい。」
趙忠「?」
何進「毒味役を呼べ。」
十常侍1「何進殿それは余りにも無礼が過ぎますぞ。」
何進「ほう?なら貴様が飲んでみるか?」
十常侍1「うっ!!」
何進「飲めるわけがない。なんせこの酒には毒が混入されているのだからな。」
趙忠を除く十常侍達は驚いていた。本来この酒はとてもいい香りのする酒なのだ。
毒などの異物が入っていない限り。
彼らが今回使った酒はこの国のはるか西の羅馬から来た商人から手に入れた酒だった。
流石の何進もこの酒は知らないだろうと考えたからだ。
しかし彼らは何進の用心深さを侮っていた。
何進はあらかじめこの宴に使われる食材や酒類、果ては食器や踊り子まで
怪しいところがないか全て事細かに調べ上げていた。
その結果酒が本来の香りを出さずにいる事を突き止めたという事である。
何進「出会えーーーい」
その合図に隠れていた面々が出てきて十常侍達を囲む。
警備をしていた者もそれに続く。
十常侍1「き、貴様ら裏切ったか⁉」
十常侍2「ひっ。」
張遼「動くんやない!」
董卓「もう、あきらめてください。」
賈駆「宴の間は完全に包囲しているよ。」
十常侍3「お、おのれ・・・・・・・!」
何進「フハハハハハ。」
賈駆「・・・・・・・・・やれ!」
十常侍1「待ってくれ。」
張遼「潔う往生せい。アンタらが漢にのさばったせいで
漢の国はここまでだめになってしもたんや。」ザシュッ
十常侍1「ギャアアアア」
霞が十常侍の一人を切ったのを皮切りに一人ずつ殺されていく。
後の方に残った者は「趙忠が勝手にやったことだ。」や
「私は何も知らない」など見え透いた嘘を並べるが
警備に入っていた総司や朱儁からの証言され無意味と化し
何進は皆殺しにするように命令を出しこの場にいる霞、朱儁、総司によって
殺されていく。
ほどなくして趙忠以外の十常侍は全て殺されてしまった。
趙忠「なぜ私は、殺さないのですか?」
趙忠は当然の疑問を何進にぶつける。
趙忠自身もこの場で殺されると思っていた。
今回の一軒で彼女自身首謀者ではないが加担していたのは事実だ。
何進からしたら趙忠も粛清対称なはず。
だが何進は一向に趙忠を殺す命令を出さない。
だからこその疑問だった。
何進「貴様は霊帝のお気に入りだからな。」
趙忠「・・・・・・・・・。」
何進「だがあれは無能にもほどがあるのでな。
そろそろ妹の劉協に、皇帝の座をゆずっていただく。」
張遼「っ・・・・・・・・・。」
何太后「私はあまり気乗りしないんだけどねー。」
何進「それゆえ貴様だけは生かしてやろう。
隠居された霊帝が大人しくされているように貴様が相手を務めるのだ。」
何進「無論嘉徳殿からは一歩も外には出さんがな。」
趙忠「・・・・・・・そうですか。なら私にも依存はございませんね。」
何進「ああ?」
趙忠「私の願いはあくまで、主上様の安らかなお暮らしです。
俗世から解き放たれ、主上様が平穏無事に過ごせるのなら、
それは私にとって何より喜ぶべきことです。
承りました。言われたと通りにいたしましょう。」
趙忠は笑顔で答えるがこれには何進も拍子抜けしたような顔になる。
何進「ふん。つまらん負け惜しみを。まあいいそれより今はやるべきことがある。
張遼、董卓、朱儁、水燕、宮殿内にいる十常侍の息のかかった宦官どもを一人残らずとらえよ。」
董卓「・・・・・・・。」
張遼「・・・・・・・はー・・・。
傾(何進の真名)・・・・・・・・・悪いけど。」カチャッ
そういいながら霞は自身の得物を何進の首元に向ける。
それに続いて総司も槍を瑞姫に向け、周りの兵たちも一斉に
二人へ槍を向ける。
何進「なっ。張遼、水燕、気でも違ったか!?
己が今何をしているか分かっているのか?」
張遼「どうもしてへんし、アタシが何してるかもわかっているつもりや。」
董卓「何進様、もうあなたにこの国の政治を任すわけにはいきません。
これからは白湯様と共にこの国をよくしていきます。」
何進「なっ、その名は劉協様の真名。なぜ貴様がその名を?」
???「私が許したからです。」
全員「!!」
扉の方から一人の少女が歩いてくる。
将軍たちと何姉妹を囲む兵士達以外の兵士は慌てて跪く。
劉協「今回の騒動、全て外で聞いていました。
何進。もうあなたの力入りません。
更に月の調べで貴方も十常侍の者達とそう変わりない罪がある事は分かっている。
それでもこれまで漢に仕え、政治を担ってくれていたのは事実。水燕。」
総司「はっ。」
劉協「せめてもの情けです。そなたの武で楽に殺して差し上げなさい。」
総司「はっ。」
総司はそのまま槍を部下に渡し、刀を抜いて何進の横に立ち兵士に一つ頷く。
それを合図に一人の兵士が無理やり何進を正座させる。
総司「何進殿、お覚悟。」
その後何進は礼儀作法に乗っ取り総司によって首を落とされた。
瑞姫は特に動揺することなく見ていた。
何太后「これが姉さまの最後か。分かっていたことだけれど、
いざそうなると寂しい者ね。」
劉協「随分他人事なのだな。まあいい。そなたは今回の事で
協力してくれたと月から聞いている。なので命は預けておく。
趙忠も今回はその命預けておくが一時牢に入ってもらう。
このものらを牢に入れよ。」
兵士1,2「はっ。」
瑞姫も趙忠も特に抵抗することなくそのまま連行されていった。
劉協「みなこの度はご苦労だった。暫く自室に戻り休むがよい。
この後の事は董卓と共に考え指示を出す。」
全員「はっ。」
その言葉に従い将軍以外は出ていく。
残ったのは月、詠、総司、霞、朱儁と劉協のみだった。
兵士達が出ていくと劉協はその場に座り込む。
隣にいた月と詠があわてて支える。
劉協「月、これでよかったんだよね。私は間違えてなかったよね?」
董卓「はい。とてもすばらしい御判断でした、白湯様。
白湯様も少しお休みください。」
劉協「それはだめ!一刻も早くこの国を建て直さないと。
民は今も苦しんでる。」
董卓「だからこそでございます。疲れた状態では最善の判断は
難しいものでございます。ですから今はしっかりとお休みください。
ご安心ください。我らは決して白湯様を蔑ろにしたいわけではございません。」
劉協「分かった。なら少し休ましてもらう。」
そういって劉協は自室で休み、翌日から精力的に内政の立て直しに
取り組むと同時に多くに腐敗に関与した者達を粛清していった。
その血の匂いが宮殿内が充満するほどに。
後日西涼遠征に赴いていた盧植将軍と皇甫嵩将軍はこれに
驚き糾弾するも皇甫嵩将軍は理由を聞いて納得し、
それでもなお反対意見を述べた盧植将軍は董卓によって
幽州の劉備の元へついほうされた。
更に董卓は粛清が終わると己は漢の最高位である相国に付いた。
それには袁紹が反発し反董卓連合を立ち上げる檄文を諸侯に送った。
そして諸侯はこれに乗るだろう。
だが彼らは知らない。ここまでの展開が全て総司と詠の計画通りだという事を。