がっこうぐらし! 称号『しょうがっこうぐらし!』獲得ルート【本編完結】   作:水色クッション

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誤字脱字を指摘された時の自分の情けなさに笑っちゃうんすよね
そんなんだから仕事でもポカミスやらかすんだよおめぇは(自戒)

評価、感想、本当にありがとうございます
とても励みになります

※追記
「ちょとsYれならんしょこれは……?」 の部分でいくつか誤字報告を頂きましたが、この部分は故意です。ブロント語というFF11スレで流行ったネットスラングです。



寝ても覚めても

 はじめてのおとまりがっこうに胸踊る2日目はーじまーるよ! 

 

おはよーございまーす!!! 11! 1! 

 

 ……あれ? おかしいですね。普通は起き上がるところから再開のはずですが、今回は何故か窓の側に立っている状態で始まってますね。

 なーんか嫌な予感がするぞー……

 

 ……うげ。なるほど、原因が判明しました。

 ステータス欄に【悪夢】のマイナススキルが追加されてしまってますね。そこから夢遊的な行動でもしていたのでしょう。

 

【悪夢】の効果は、睡眠時に疲労と精神の回復を軽度に阻害するマイナススキルです。まだ軽いっちゃ軽いので、ここから精神系のマイナスが積み重らないように早めに治しておいたほうがいいでしょう。(できるとは言ってない)

 1人で取り除くには時間がかかるんだよなぁ……。ちなみにめぐねえ(養護教諭Ꮩer・激レアキャラ)に相談すれば一発で治療完了するゾ。

 私は出会ったことすらないです……(クズ運)

 

 まあこの程度私にとっては誤差も同然。今後の活動に支障などありえませんね。

 現在時刻はAM7時。未だに別のソファでおねむのるーちゃんを起こしましょうか。

 

 おはよーねぼすけ、朝だぞー。おはよーねぼすけ、朝だぞー。おはよーねぼす──

 

「ううん……りーねぇ……わかったよ……あれ? どうしてまりーが……」

 

 寝ぼけてんじゃねぇぞ! 起きてええええええ!!!! (首絞め公)

 

「……そっか、やっぱり、ゆめじゃなかったんだね……」

 

 夢じゃありません…………! 現実です…………! これが現実……! 

 

「ひぐ、えぐ、りーねぇ…………あいたいよぉ…………」

 

 やばば、茶化してる場合じゃねぇ、ここはどうにかフォローしないと。えーと、えーと……

 

 あっそうだ(唐突)

 ここ職員室だし、そこの電話使えば会話できるんじゃないかな。なんなら昨日の大人かれらからスマホ拝借してきたので、こちらも使えるし。

 

「……そっか、そうだよね! きっと、りーねぇも心配してるよね……!」

 

 初日に提案しないのかという疑問についてですが、一日目のりーさんはスマホを鞄にでも入れてるせいか電話が繋がらないんですね。接点無しな他キャラの番号は知らないので提案できませんし。

 掛けたけど出なかった、では心労がぐんと貯まるマイナスイベントになってしまいますが、二日目なら大丈夫でしょう。きっと、多分。

 

「りーねぇ!? わたしだよ、るーだよ! ……うん、……えっといまは、学校にいるんだけど……そうだよ、まりーに、助けてもらって…………」

 

 ちゃんと繋がったようですね。えがったえがった。これで2人の正気度も回復することでしょう。……ん? 

 

「あ、まりーなら、すぐそこにいるけど……ねえ、りーねぇが話したいってさ」

 

 おっすおっすりーさん、今日は何のパンツ履いてらっしゃるんですか? (人間の屑)

 

『万里花なのね! 心配したのよ、二人とも無事で本当によかった……!』

 

 あの程度の苦難なんて楽勝でしたね(震え声)どうやらりーさんの信頼度も随分高いみたいです。信頼度が低いとるーちゃんに何かしていないか疑われたりして大変なので助かりますね。

 

『その……昨日はどうやってかれらから逃げ切れたの……?』

 

 ここは正直に「トイレに隠れていた」と答えましょう。高校でも同じような生存者がいるかもしれないと考えて、トイレ籠城中のチョーカー姉貴の救出率が上がります。さすがに確実ではないんですけどね。

 

『そっか……ねぇ、そっちには、貴女達以外に無事な人はいるかしら?』

 

(い)ないです。隠しキャラ出現の条件は満たしてない以上、我ら二名を除いて全滅しております。

 ていうかこのゲーム、フラグが複雑怪奇すぎて隠しキャラの安定した出現方法が未だに不明だゾ……(wiki参照)せーちゃんとかアリアちゃんに会いてぇな俺もなぁ。

 

『分かったわ、直ぐに助けに行くから。私達といた方が、きっと安全よ』

 

 あ、おい待てぃ。そちらの安全が確保されるまでは急がなくても大丈夫だゾ。具体的には称号獲得の七日目まで待っていてほしいですね。

 

 実はこの会話、エンディングのフラグです。助けは要らないと言えば次に電話するまで、気の済むまで小学校生活を堪能するエンドレスモードに突入です。まあ遠足に行かないと早々に限界がくるんですけどね……。

 

 逆に、もう待ちきれないよ、早く出して(救出)くれ! とも言えるのですが、これは罠選択肢です。

 焦りでろくな準備しないまま、りーさんが周りの制止を無視して単独で向かい空しく死亡します。当然その後の救援は来ないのであっちもこっちもバッドエンド一直線ですね。

 

『本当に、大丈夫なの……? いいのよ、無理なんかしなくても』

 

(無理してんのは)お前じゃい! るーちゃんは誤魔化せても、この私は誤魔化せなかったようだな。心労で声が震えております。

 ていうかそちらはまだ1フロアも安全確保できてないでしょ。職員室を既に籠城化した私達のほうが順調な滑り出しですね(謎の張り合い)

 

『身勝手なお願いなのは分かってる。だけど、約束して……どうか、るーちゃんを守ってほしいの……!』

 

この質問には2秒以内に「もちろん!」を選びましょう。ちょっとでも迷う素振りを見せると信用されません。必ず即答します。涙声で縋る美少女の頼みなんか断れるわけねぇよなぁ! 

 

『…………ありがとう、貴女がるーの友達でいてくれて。私たち姉妹は幸せ者ね……』

 

 我が血(ガバ運)と誇り(ガバプレイ)に掛けて誓いましょう。ていうか失敗してるーちゃん氏んじゃったトラウマがががが。

 いやあの時のりーさんの慟哭は思い出すだけで鳥肌が……あれはほんにもう……くわばらくわばら…………。一週間このゲームに触れなくなりましたねあれは。

 

 後はるーちゃんに電話投げて放っておきましょう。気が済むまで電話続けてる内に、部屋内の昨日出来なかった箇所を物色していきます。

 カッター、ドライバー、モップ……武器はできるだけ集めておきます。小学生は技量も低く、すぐに使用中のものを壊しますから。

 それと何でもいいので、何か水を入れられそうな容器。高校と違って水道が止まるため、水を数日分貯めて置かなければなりません。しかし学校なんだからゾンビパニックでなくとも災害用の備蓄くらい用意してくれよ……。防災意識が低すぎる-114514点。

 

 ラッキー、非常持ち出し袋がありました。これ一つに便利な物資が沢山入っている優良アイテムです。グレードは最低品ですが、それでも貴重です。先生だけ生き延びるつもりだったんだろう、ずるいぞ! (ゴマすり)

 ついでに残ったジュースとお菓子を口に放り込んでおきます。……あれ、まだ食事は出来ないのか? おっかしーなー1日寝れば平気だと思ったんですが。

 しかしこれはまずいですね。 既に空腹値は限界なのに食事ができないので、少しずつ体力が低下していきます。ただでさえ低いステータスへのデバフはちょとsYレならんしょこれは……? 

 

「ねぇ、何日かしたらりーねぇがこっちに来てくれるって……うん? まりー、どうしたの? そういえば昨日から、なんにも食べてないよね」

 

 姉妹の会話も終わったようで、るーちゃんがこっちにやってきました。(どうして食べないのか)私にもわからん。仕方ないので水以外はるーちゃんに押し付けましょう。

 

「ううん、わたしもいらない……いまはあんまり、食べたくないかな……」

 

 さいですか。そんじゃ今から外に行きましょう。るーちゃんは……着いてくるみたいですね。正直私1人ではあまりにも心許ないので、素直にありがたいです。

 今日の目標は3階廊下制圧と水の汲み置きです。イクゾー! デッデッデデデデ

 

 職員室から外に出ました。前回は暗くてよく見えませんでしたが、床も壁もみんな血みどろの素敵な光景がお出迎えしてくれます。早速正気度減少ですね……。

 

「ぃ……! だ、いじょうぶ、だから……」

 

 これで叫ばないのはなかなか偉い。見続ける度にマイナスなので早めに掃除したい所さんですが、ステがクソザコの2人だけではどれだけかかることやら……。大量の水も必要ですし、全部は無理そうですね。

 

 廊下でたむろしているのはひー、ふー、みー……ばらけて7体います。武器も確保した今、集団でないかれらなど慎重になれば恐るるに足りません。

 

 おびき寄せながらチクチクするだけの光景なんて倍速だ倍速だ倍速だ! この程度に15分もかけるなんてちょっと遅すぎるんとちゃう? 

 

 

LEVEL UP! 

 

 

 かれらを相当数倒したことでレベルが上がりました。習得するスキルは……王道を往く『製造』ですね。両者とも知力がチンパンなので、このスキルが無いといつまでたってもバリケードが作れません。

 小学校ルートならひとまず最初に取るべきです。

 

 各学年の教室にいる居残り組もサクッと処理。足を狙って転けたら頭をひたすらボコる黄金ムーブ。子どものかれらなので楽勝ですね。

 

「──まりー、後ろ!?」

 

 

 ギャアアアア!!!

 クソクソクソこいつロッカーの中に隠れてやがった!? レアポップなんぞしてんじゃねぇ確率0.014%だろぉが!! 

 

 離せこのクソガキぃ! てめぇにやる肉なんざ小指の先だってねぇんだよ自分のハナクソでも食ってやがれってクソザコ筋力でほどけねぇぇ!?? 

 ヤバイヤバイ押し負けたあぁもうだめだ残念わたしの冒険はここでおわってしまった……

 

「この、まりーを、はなせ!!」

 

 る、るーちゃん!? 彼女が攻撃してくれたおかげで拘束が緩みました! この隙に回避用のドライバーをシュウウウウト!! 

 

 よっしゃ、抜け出しました。この溝鼠如きがさっきはよくもやってくれたなぁ! 二度と目覚めんようその頭蓋、粉微塵に散らしてやるぞォ! 

 

 死ね! 死ねっ死ねっ死ね! ヒャハハハハ! 全て内側、粘膜を曝け出したその姿こそが、いやらしい貴様には丁度よいわァッ!! (血酔狩人)

 

「まりーやめて! もう死んでるから、もうだいじょうぶだから!」

 

 いえいえまだですよ、と言いたいところですが、抱きつかれては動けませんね。今日はここまでにしといたる。

 ところでるーちゃんはなんで泣いてるんですかね? 

 

「だって……ひぐ、まりーが死にそうで、それに、怖かったの。さっきのまりー……」

 

 確かに言い訳の余地もないですね……。彼女がいなければ感染待ったなしでした。けれど俺は悪くねぇ! このクズ運が悪いんだ! 一族の呪われた血が! 

 

 ひとまずあいつが最後の1体だったようで、3階のマップは赤から透明になりました。後は湧き潰しのため階段を塞いでやれば、セーフゾーンに分類され青く染まるはずです。

 

「ねぇ、すこしやすまない……? つかれてさっきみたいなこと起きるの、もうやだよ……」

 

 残念ながらその提案は却下だ。インフラの停止が起きる前にかたをつけておきたいので。停止するのは夜か、明日か、それとも今すぐか、時間は1日目を除いたランダムですが、なるだけ早いに超したことはありません。

 

「わかった……でも、むりしちゃだめだよ?」

 

 賛同も得られたので、机をひたすら階段まで運んでいきましょう。1人1つさえ運べないので、るーちゃんにももう少し頑張ってもらいます。

 人数も少ないし高校の倍以上かかりますねこれ……。

 

 

 

 ☆少女運搬中…………

 

 

 

 ようやく終わりました。まさか最低ランク作るだけでこれだけ時間かかるとは……。バリケードというより机と椅子をただ重ねただけなんですけど。有刺鉄線? そんな贅沢な素材うちにはねぇよ。つくづくこの小学校は高校に劣ってますね。

 外では既にカラスが鳴いている時間です。残っている児童は早くおうちに帰りましょうねぇ〜。

 

 そんじゃあ次は水の確保ですね。ゴミ箱に空のペットボトルが大量にあったので、これを使わせてもらいましょう。ちゃんと洗ってるよねこれ? ゲームの都合上、一括して「空のペットボトル×20」なんて書かれているし問題ないんですけど。

 

 水道で水を入れては行ったり来たりをするだけの単調な光景を繰り返しましょう。両手いっぱいに荷物抱えるので無防備になります。そのため先に廊下を制圧したんですね。

 

「ふぅ、ふぅ……これぐらいあれば、きっとたりるよね?」

 

 きっと大丈夫だと思います。足りなければ、校内の自販機をこじ開けてやりましょう。危険度高いので手段の1つというだけですが。

 

 2人とも汗だくだし私の方は血もべっとりですね。しかし着替えもねぇ、洗濯機もねぇ、シャワーもねぇのでどうしようもないです。俺らこんな学校いやだ、高校行くだ(行けない)

 

 血だけでも流しておきましょうか。服はどうしようもないです。かれらから剥ぎ取るのも精神的にマイナスですし。うーん、体操服くらいは後で確保しておきましょうか。

 

 2日目のミッションコンプリートしたところで今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 ○

 

 

 

 時間は少しだけ遡る。

 

 全てが変わり果てた一日目の夜、千寿万里花は夢を見ていた。

 仄暗い世界に1人だけ。隣に、親友はいない。

 

 ──否、1人ではない。気がつけば、無数の亡者が列を成していた。怨嗟を振り撒き、獣じみた唸り声でこちらに迫る。

 

 その貌から理解した。あれは自分が殺した『かれら』だと。

 二度目の死を与えられた筈が、今再び憎しみの炎を燃やして立ち上がり自分を殺しにかかっているのだと。

 

「──いやっ」

 

 恐れたのは、『かれら』の瞳。憎悪に満ち、血走った眼が自分を射抜くのだ。その眼は、ある事実を容赦なく突きつける

 

 何故、貴様は我らを殺したのだと。

 

 望みを絶ち、喉を描き切り、頭蓋を砕き、ほんの一夜で積み上げた躯の山。清算などとうに出来ぬ罪。底に仕舞い込んだ罪悪感が裏返り、人という形を得て牙を剥く。

 

「来ないでっ!?」

 

 その瞳から逃げだした。苦しみと絶望の声から、己の心を閉ざそうとする。自分は悪くない。そう思わなければ、あまりの重さに壊れてしまうからだ。

 逃げて、逃げて、息が詰まるほど走り続けているのに、かれらとの距離は離れない。むしろ、少しずつ縮まっている。

 

 逃れることなど出来ないのだ。かれらは彼女の心が生んだもの、心は決して離れない。心を喪うことは、思考を喪うことでしか成しえない。死によってでしか、逃れられない。

 

「うそっ!? いやだ、こんなところで!! 」

 

 辿り着いた先は行き止まり、後方には愉悦に歪んだかれらが跋扈する。

 腕を掴まれた。足が取られる。小さな体を押し倒され、かれらは頸部に向かって生温い息を吐いた。

 

「いやだ! いやだいやだいやだいやだッ!! だってお前たちがわるいんだ! お前たちが殺そうとするから、やりかえしただけなんだよッ!!」

 

 必死の叫びにかれらは答えない。せせら笑いながら、生者に対して纏わり付くのみ。

 

「はな、れろ! あたしは、お前たちみたいになるつもりなんか…………!」

 

 剛力で首を締められた。呼吸が全くできない。抵抗もいたずらに体力を削るだけにしかならず、やがて視界が明暗しはじめた。

 微かに映る景色には、かれらが口を開いて緩やかに迫る姿が見える。意識の消失と同時に、噛み殺す算段なのだろう。

 

「か、ぁ…………ぐ……ぞぉ…………」

 

 音が消える。視界が途切れる。首の圧迫感も、徐々に遠いものになっていく。守ると決めたはずの、小さな光が見えなくなってしまう。

 

「る、う──」

 

 終わりの時、首を喰い千切られる瞬間に。

 亡者の濁流に飲まれる刹那、世界の全てが流転した。

 

 

 

「──ぁっ!!?」

 

 意味深な悪夢、怖れが許容から溢れ強制的に覚醒を果たした。

 

「ぇ……あ、ゆめ?」

 

 首筋を撫でるもかれらの手はなく、ただ空を切るだけだった。差し込む日の明るさで、先程のものがようやく夢であると気がついた。

 悪夢にしてはリアルが過ぎた。罪を糾弾する瞳、沸き上がる恐怖、肩を掴まれた際の異質なつめたさ、どれも現実そのものとしか思えない。

 

「……」

 

 喰われる、命が終わろうとする時、奇妙な感覚が自分の中に芽生えた。何処までいっても夢はただの夢、喰われて死のうが、直前に覚めようが、現実に死を齎すわけではないのだが。

 恐怖の中に混じった小さな何か。ほんの僅かでありながら鮮明に際立つ、まるで大部分を占めた感情とは対極の──

 

(なんだったんだろう……そうだ、今は、ゆめのことなんか考えてるばあいじゃないよね……)

 

 悪夢に囚われていた思考が、現実を認識し始める。目に入る見覚えはあり、しかし馴染みのない壁。職員室で就寝していたのだと、今更ながら気がついた。

 

 辺りを見渡す。荒らし回された部屋の跡。嗅ぎなれない大人特有の匂いに混ざった血の臭い。そして自分の左手から香る、死の臭い。

 

「──、ぇうッ」

 

 糾弾の眼が脳裏を過る。衝撃(フラッシュバック)が彼女を襲った。思い出したことでこみ上げる吐き気。窓を開けて嘔吐した。

 昨日の昼から何も口にしていないため、吐き出す中身などとうにない。黄色がかった胃液だけを何度も何度も吐き散らす。喉が焼けつくように熱く、頭痛がし始めた。

 

「げぅっ、ふっ……ひどいかお、だよね。るーには、みせらんないかな」

 

 窓に映る顔は別人の様。たった1日でげっそりとした輪郭に、汗と返り血でぼろぼろになった前髪が無造作に垂らされている。

 もし男であったなら、落ち武者、と形容できるかもしれない。

 

「ほら、わらわないと、えへ、へへへへ」

 

 窓に映る歪んだ嗤いに、その下手くそさにまた嗤えてしまう。

 

「あたしが、まもるんでしょ。へいきだって言えるように、わらうんだよ」

 

 口を更に吊り上げる。やはり歪んだ笑み。そもそも昨日までの自分は、一体どうやって笑っていたのだろうか。こうでは無い気がするが、どうにも思い出せない。目を細め、頬を緩ませるだけだった筈なのだが、今やっているものとは何かが違う。

 

「あたししか、いないんだ。あたしだけが! はは、だから、もっとしっかりわらわないと!」

 

 泣きたい心を底に沈める。念入りに、友達が自分を見て笑えるように、徹底的に踏み付ける。

 

 今は上っ面だけの笑顔でもいい。泣いた顔を見るよりも、この顔の方が、きっと彼女は安心するから。

 

 

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