がっこうぐらし! 称号『しょうがっこうぐらし!』獲得ルート【本編完結】   作:水色クッション

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主人公のイメージ、キャラメーカーで作ってみました
ここからもうちょっと手足が丸っこい感じを想像してます


【挿絵表示】


みーな氏作「みーなのキャラメーカー(β版)」より作成しました。規約……大丈夫かな。
違反等あればすぐに削除しますのでお知らせください。


小さな理想郷

 

 ようやくまともな食事にありつける三日目後半、はーじまーるよー! 

 

ッシャアァ! ッシャオラァアアッッッ!!!! 

 

 るーちゃんの覚醒イベントですよ! 始めて見ました! ていうか史上初じゃないですかコレ!!? 

 何がどう、どうなってフラグが成立したのかまるでさっぱり分かりませんが、とにかく彼女の覚醒イベントが存在するという情報はデマではありませんでした! 

 いやっほーい! 最早ここで死んでも一片の悔いはありませんが、ちゃんと称号は獲得していきます。ご安心ください。

 

 画面に戻って、まずは傷心のるーちゃんを抱きしめているところですね。ここは早めに立ち直ってほしいので、全力で慰め続けます。

 良ぉお~しッ!

 よしよしよしよしよしよしよしよしよしよし立派に殺れたぞるーちゃん。

 

「……ありがと、すこし、げんきでた。ずっといっしょって言ってくれて、すごくうれしい」

 

 あれ、もう終わり? もっと甘えてもよかったんやで。

 抱きしめタイムが終わったので、本来の目的に移りましょうか。冷蔵庫を開けたい所さんですが、血塗れの手では食材に触れられないので手を洗いに行きます。てかその途中で覚醒イベントが起きたんでしたね。

 水道が止まっていることは先程確認しました。なので職員室に汲み置いた水を取りに行く必要があります。あ~めんどくせーマジデ……

 

 

 

 手を洗ってきました。手だけと言わず全身血が付いていたので洗いました。おかげで水の消費ががが。

 さっぱりして機嫌も良くなりましたね。血塗れは精神に悪影響を与えるので、できればなりたくないです。今の二人は石鹸の匂いがするかわいい女の子です。嗅ぎたい。間に混ざりた──

 

「んん……ふくがくさい……けど、これしかないよね……」

 

 ──殺気を感じたので実況に戻ります。るーちゃんもこう言ってることですし、明日は二階の教室から服を取りに行く予定です。三階は上級生ばかりでサイズが合いませんでした。

 でも明日の服より今日の飯のほうが大事。早く戦利品を持ち帰りに行きましょう。

 それでは宝箱の中身をご開帳。開けーゴマッ! 

 

「うわぁ……やったねまりー! ざいりょういっぱいあるよ!」

 

 や゛ったあああアアア゙ア゙ー!!!(純粋糞サイヤ人)

 

 かなりの量が入っていました! カレーだけでなくサラダやデザートの材料まで盛り沢山です! やっぱり今日はノリに乗ってますねぇ! (血族にあるまじき豪運)

 

 肉類は今日が期限ギリギリなので、明日にはもうアウトですね、残念。お、果物の缶詰です、デザートは正気度の回復に役立ちます。……随分前に作っただろうナニカを見つけました、ゾンビ菌より恐ろしいものが入ってそうなので皿ごと捨てときます。

 まだ残ってる氷や保冷剤も入れときましょう。缶詰は別として、何日くらい持つでしょうか。

 それではこれを持って……持って帰ッ……。

 

「なん回かに分けたほうがいいんじゃ……」

 

 俺も今考えたところ! (クソザコ筋力知能)シャベルウーマンなら小指の先で持ち上げられるというのに、ほんまこの非力っぷりが……。

 

 おっと、もう一つ必要な物がありましたね。カセットコンロを持っていかなければなりません。えーっと、どこにありましたっけ。

 引き出し、無い。食器棚、無い。机の裏、無い。……あるぇ? 

 おかしいですね、どこかに一つはポップする筈なんですが、予備のガスも合わせて。

 

「ねえ、もしかしたら、あそこにあるんじゃないかな」

 

 そう言ってるーちゃんが指差したのは釣り戸棚。なるほど、確かにあそこにありそうですね。うーん、手が届きません。身長が絶望的に足りない。ジャンプ、ジャンプ! ダメです、取手に掠りもしません。

 

「まりーじゃむりでしょ……わたしより背がひくいのに……」

 

 え、マジで? ……二人並ぶとちょっとだけ身長低いです。気が付きませんでしたねぇ。あれ、てことはまりーちゃん全キャラ中最低値ですか?

 ともかく今はあれをどうにかしましょう。脚立が欲しいのですが、学校を探索中に見たことはありませんでした。あったとしても持ってくるのが面倒だよなぁ……。

 

 ……せや! 椅子を積み重ねて足場にしたろ! 

 

「えぇ……あぶないよそれ……」

 

 二段重ねれば足りそうですね。一段目に椅子を四つ、その真ん中に二段目を置きます。ぐらつきはありません。安全確認ヨシ! (猫)

 早速扉を開けましょう。あ、本当にカセットコンロがありました。冴えてますね今日のるーちゃん。覚醒しただけのことはあります。

 

 カセットコンロと予備のガスボンベ、両方いただきます。おっとっと、結構重たいらしく、ふらついてしま──あっ、やべ。

 

 

 ドンガラガッシャーン! 

 

 

 

 ○

 

 

 

「まりーってさ、ほんとにバカだよね……」

「んん!? 今すごいしつれいなこと言われた気がするぞ!?」

 

 聞こえぬようくぐもった声での発言だったが、万里花は耳聡く反応したらしい。瑠璃を睨みつけて警戒する様は小型犬のよう。ピンと逆立った尻尾が見えかねない。

 

「なんでもないよ、聞きまちがいじゃないかな?」

「……むむむ」

 

 渋々、と言った様子で元に戻る。正直に受け取った反応が素直すぎて、少しだけ吹き出してしまった。

 

「やっぱりバカっておもってるな!」

「おもってないってば」

 

 彼女たちは今、料理をしていた。夕食にしては些か早すぎる時間ではあるが、ずっと満腹まで食べられなかった彼女たちには時間帯など些細な話である。

 それに停電しているのだ。夜になれば灯りは付かず、電池式のランタンだけが光源になる。当然料理など出来はしない。

 

「ぜんぜんわからん!」

 

 そう言って本を叩きつける万里花。今読んでいる家庭科の教科書は、当然ながら上級生の読み物だ。習っていない漢字が難しいらしい。

 

「…………こめをあらって……な、なんだろう、これ……」

 

 隣で諦めずに解読を続ける瑠璃。姉がいると、先々の授業を予習できるのかもしれない。

 早々に投げ出した万里花はカレールウの袋を取り出し、後ろの説明を見始めた。「ほう」「ふん」格好つけて唸っているが、おそらく理解できていない。

 

「あれ、コンロがつかないよ、どうしよう」

「えーっと……たしかそこを引いて──」

 

 前途多難。二人にまともな料理の経験はない。瑠璃はほんの数回、姉や親の手伝いで台所に立ったことはある。火を使う作業からは遠ざけられていたが、作り方は姉や親を通して見ていた。何となくだがイメージも出来る。

 問題は橙の少女。料理の『り』の字すら知らない有様らしい。せいぜいが、インスタントラーメンを作れる程度。それもカップでなければ危ういか。

 

「ほうちょうってこうにぎるんだよ。はんたいの手はこう」

「ほへー」

 

 故に時間が非常にかかる。慣れた人間の二倍、三倍、早めに調理を開始したのは、図らずも正しい選択であった。

 

「だすげでるー、玉ねぎきったらなみだでてぎた」

「あ、その手で目をこすっちゃダメだよ!」

「うわぁあああ!? さきに言ってよそれ!!」

 

 ゆっくりと進んでいく。傍からは見ていられないほど、ゆっくりと。

 

「にくはぜんぶ入れます。にんじんはのけてください」

「それじゃ大きくなれないよ、りーねーみたいになりたくないの?」

「…………!」

「あー、しょうらいまりーはチビってからかわれそうだなー」

「………………やさいもいれます」

「よろしい」

 

 姉の面影をなぞる。彼女の後ろ姿を自分に摸して、イメージを近づいていく。

 

「わわわ! あわがいっぱいだよ! だいじょうぶかな?」

「えっと、いまは中火だから、これくらいかな? ……あ、あれ」

「逆だよそれ、つよくなってる!」

 

 そして──

 

「かんせい! ……なのかな? ちょっとしゃしんとはちがう気がするね」

「……うん、りーねーみたいには、やっぱりいかなかったな」

 

 出来上がったものは、年齢を鑑みれば、十分に上出来と言えるだろう。本人達は納得しているとは言いがたいが。とはいえ飯は飯、内心涎を垂らしている。空腹感には勝てないのだ。

 

「いただきまーす!」

「うーん……やっぱりちょっとちがう……」

 

 豪快な盛り付けを、これまた大口を開けて豪快に食らいつくのが万里花。控えめでちびちびと口に運び続ける瑠璃。食べ方から感想まで何もかも対象的である。

 

 ふと瑠璃は、万里花のカレーに目を落とす。運動部の中高生のような盛り方、違和感はそこではない。なんというか、色合いが、少し違う。

 隣にあるサラダにも手をつけた痕跡がない。

 

「やさい、やっぱりいれてないよね」

「……な、なんのことだか」

 

 冷や汗を垂らして露骨に目を逸らす。やましいものがあるとひと目で分かるお粗末さ。

 

「……やさいはきらいだよ」

 

 万里花はサラダからトマトを抜き出して弄ぶ。「ぐぇ」顔を顰めて投げるように中に戻した。

 筋金入りの嫌いっぷり。カレーの中身すら避けるとなると相当らしい。

 

「食わずぎらいってやつだよ、ほら、あーん」

「え、えと、あ、あーん……」

 

 呆れた瑠璃が人参を万里花の口元に運ぶ。突然の接近に面食らう万里花。逡巡の末、しぶしぶと口を開けた。友の好意と匙中の苦手な野菜、天秤にかけ前者を取ったようだ。

 

「……んぐぇ」

 

 梅干しでも入れたかのように口をすぼめた。覚悟を決めて噛み締める。「んん?」驚いた顔になり、やがて唇を緩め始める。色々と表情が忙しない。

 

「……たべれた」

「ほら、ね」

 

 自分でも信じられないと言った様子。ここ三日間で積み重なった食事の不足もあるだろう。苦手だったあの味が、今はそれ程感じられなくなっている。

 

「うんまい!」

 

 一度克服すればなんのその。喜色満面でモリモリと食い続ける姿に、見ているだけで瑠璃は自然と頬が緩む。

 食事は楽しくあってこそ、彼女は食べる側に関しては才があるらしい。作った側としては、その笑顔を見るだけで冥利に尽きるというものだ。

 

 

 

 ○

 

 

 

 夜、二人は横に並んで添い寝をしていた。ソファを連結し、カーテンを剥ぎ取って掛け布団の代わりにする。二人が小さいからこそ狭い中で、なんとか横に並ぶことが出来ていた。

 

「かたいね、ちょっとねぐるしいよ」

「うん、そうだ、あしたはほけんしつとか行ってみよっか」

 

 窓から見える景色は黒に染まり、文明の滅びを暗に告げていた。車の音、僅かな喧騒さえ聞こえない静寂が一帯に広がっている。

 窓から差し込む月明かり、そして小さなランタンだけが二人を照らす。見える世界の範囲はとても狭い。

 

「……とてもしずか。あいつらもいなくなって、ここにはあたしたちだけみたい」

「ほんとに帰ったのかもしれないよ。みんな、むかしのことを、おぼえてるみたいだから」

「そう、なんだ。じゃあなんであたしたちのこと、おそうのかな」

「……それは、わかんないよ」

 

 無音と暗闇。忘れていた夜の怖さを思い出す。

 

「あとどれくらいで、りーねーがたすけくれるかな……?」

「あと三日か四日だって。今はそとに出るのがむずかしくて、二階まであんぜんをかくほしてからだって言ってた。だいじょうぶ、それくらいなら、ごはんだってのこってるよ」

「……会えるよね、ダメだったり、しないよね」

「たいじょうぶ、りーねえちゃんがみすてたりするもんか! それまでぜったいに生きのびるんだ!」

 

 万里花は拳を上げて唸る。目に自信が満ち溢れている。助け人への信頼を表していた。

 その強い自信に不安が和らぐ。きっと姉は助けてくれる、親友のようにそう信じられる。

 

「ねぇまりー、手、にぎってもらってもいい?」

「いいよー、……あったかいね、るーの手」

「まりーはちょっとつめたいね。ひんやりして、きもちいい」

 

 手を伸ばせば触れ合える距離。互いに身を寄せ合って夜の恐怖を凌ぎきっていく。

 

「もっと、近くにきてほしいな」

「それってきのうのキ……い、いいよ、るーとなら、チ、チュー、しても」

「……ちがうよばか! わたしがやりたいのはこっち!」

 

 瑠璃は上半身を起こしてぎゅんと距離を寄せる。顔を赤くして「あうあう」とショートを起こしている馬鹿に対し、顔を固定し自分の額を近づけた。焦りからか些か勢いが強い。

 

 ゴン、と双方の間で星が舞った。

 二人は痛みに悶絶してソファの上を転げ回る。これではただの頭突きであった。

 

「いっ……! あ、あたしなにかやっちゃったの……!?」

「ち、ちがうの……ごめん、やりなおさせて……」

 

 痛みから復帰の後、二人は向かい合う。緊張した面持ち。万里花の方は、今度は殴られるのかと若干怯えが入っている。瑠璃の中に、動揺させたからだと逆ギレに近い感情が沸いてきた。

 

「もう、さっきのはちがうんだって……ほら、まえがみあげて」

「こ、こう?」

「そう、じゃあいくよ──」

 

 近づく顔。ギュッと目を瞑って──

 

 コツン、とおでこを重ね合わせた。額から熱が伝わってくる。

 

「ね、どうかな?」

「どうって……うまくいえないけど、なんだかポカポカする」

「えへへ、わたしもいっしょ」

 

 額を合わせたまま、再度ソファに倒れ込む。呼吸さえ聴こえる距離で密着しているのに息苦しくない。不思議と心地よい気分であった。

 

「これで夜はこわくないでしょ?」

「うん、とってもあんしんする。ぐっすりねむれそう」

「よかった、うなされてたんだもん。どうしようって思ってたんだよ?」

「……あれ、気がつかれてたの?」

「ばか、またひとりでしょいこもうとしてたんだ」

 

 安心した心に、睡魔が優しく忍び込んでくる。抗えない。抗う気もない。

 

「こうこうなら……きょうみたいにおなかいっぱい……たべれるよね……?」

「そうだといいね、いまは、ちょっとせつやくしないと」

「シャワーもあって……ふとんもあって、なんにんも…………いっしょで……いいなぁ…………」

「ほんと、うらやましいよね……はやく、りーねーがきてほしいな……」

「うん……るー、おや……す、み…………」

「おやすみ、まりー……ふあ、わたしも、ねむくなっちゃった……」

 

 

 寝息を立てる二人。その手は強く握られていた。夢の中でも、どんな時でも、離してなるものかと。必ず守る、二人で生き抜く。地獄の中でも足掻き抜いてみせる、そう誓うのだ。

 

 

 

 ○

 

 

 

「……けほっ」

 

 夜中。小さな咳の音、本人も、隣も、気が付かない。

 作ったばかりの理想郷に、罅が入り始めた。

 

 

 




次回は水曜19時投稿予定です。
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