Ep:1
あの事件から数日が経ち、ゴールデンウィークを迎えた日、1週間程別れることになる学友との会話をしていた
「鈴とついでにオルコットは帰国、零と箒は実家に帰るんだっけ?」
「あぁ、久々にな」
久々に?
まだ3週間経つか経たないかなのに大袈裟だな、と思っていると一夏が納得したように呟いた
「要人保護プログラムか……」
「そういう事だ」
「要人保護プログラム?」
「あんま詳しくは知らないが、篠ノ之一家を守るために偽名やらなにやら与えて全国を転々としてるんだと」
「あ……なんか、すまない……」
「大丈夫だ。お前も大概だからな」
「俺も?……あ」
「そうだろ?世界で二番目の男性IS乗りさん」
「そういう事だよな……」
改めて俺は世界で二番目の男性IS乗りという言葉の重さを知ってしまった
「今のところ俺らはどこの国にも属さない無所属だから国に縛られることは無いが、逆に言えば何処の国も守ってくれないってことだ。自分の身は自分で守れよ?」
「……恐ろしいな」
「自由ってことはそういう事だぜ」
「そうだよなぁ……」
自分の身は自分で守れ、当たり前と言ったら当たり前なのに、俺達の立場のせいでここまで恐ろしい言葉になるとは……
「何言ってんのよ!いざとなったら私たちが守るわ!……まあ私達の意思が絡むかは別として」
「お国も男性IS乗りを守ったという実績を欲しがるでしょうし……」
「国に縛られると大変だな」
「箒もある意味国に縛り付けられてるじゃない、しかも私達よりもギッチリと」
「……気にするな」
しんみりとした雰囲気になるが一夏がパンッ!と手を叩いてそんな雰囲気を霧散させる
「まあなにはともあれ、無事に再開すること。それが1番だ」
「そうね……ってやば!今からで出発の便ギリッギリなんだけど!じゃあね!」
「私もですわ!それではまた!」
「私は特にそういうのはないが、早くお父さんとお母さんに会いたいな。じゃあな」
「あらら……野郎しか残ってねぇ」
「んじゃ俺らも帰りますか」
「だな」
……俺は自身が無所属である。という事実は俺の想像よりも重いものだと、すぐに思い知らされた
イヤホンを付けて電車の席を確保し、最寄り駅に向かう
まだ11時で人は想像よりも少なく、近くにいるのは青い髪の同年代の女性くらいか
「……」
電車のアナウンスとガタンゴトンという音以外聞こえず、換気のために開けられた窓からの音は想像よりもよく聞こえて来る
本来含まれるはずのない異常な音はその中でもくっきりと聞こえる。特に──銃撃音などは最もわかりやすい
「ッ!?」
ガシャァン!というガラスの砕け散った音がなるよりも早く俺は横に飛び退き、つい先程俺がいた場所は銃弾が通り過ぎ床を貫く
窓があった所を見ると顔を覆い隠すフェイスアーマーの着いた打鉄が2機滞空しており、銃口は明らかに俺の方を向いている
「ウッソだろ!」
白昼堂々、しかも電車を攻撃してまでの襲撃等想定しておらずISを起動しようと言う考えが頭から抜け落ちてしまう
追撃の弾丸、かろうじて回避するも足に弾丸がかすり血が地面に滴る
「うぐっ!」
姿勢を崩して倒れ、そのまま壁に激突すると好機と見たか打鉄が俺の方に向かってくる
「や、ば……」
迫る打鉄に脚を痛めた俺は後退しか出来ない
そしてその距離が10メートルまで近付いて来た時、打鉄の近くで爆発が起きた
「ッ!?」
思わず腕で顔を覆う俺、その直後には打鉄の背後でまた爆発が起きる
「な、なにが……」
困惑する俺の前に一機のISが降りてきた
全体的に装甲こそ薄いものの水のヴェールのようなモノに覆われているそのISは手に持っていた螺旋状にヴェールが纏われた槍を使い攻撃をする
打鉄の銃による反撃は槍を回転させることで弾き逆に蛇腹剣を使い銃を切り落とし更にISが槍を打鉄の方に向けると打鉄の付近で爆発が起きてSEが切れて墜落する
たった数十秒のうちに見たことの無いISによって打鉄2機が無力化されていたのを呆然と眺めていた俺の前にISが着地した
乗っていたのは……先程近くに居た青い髪の女性だった
「IS乗りだったんですか」
「あら、こういう時は質問より先に感謝の言葉じゃないかしら?」
「……ありがとうございます」
「えぇ♪どういたしまして。災難ねぇ、帰宅しようとしたら襲撃を受けるなんて、私が護衛でいなかったら連れ去られて解体されてたかもしれないわよ?」
「……護衛?なんですかそれ」
「聞いてないの?このゴールデンウィーク中は私が護衛をするように言われているのよ」
「IS学園から?」
「えぇ」
「聞いてないですよ」
「………それについては後日問いただすわ。という事は私も知らないのよね?」
「そうですね」
「私は更識楯無、IS学園の生徒会長を務めているわ」
いつの間にか取り出された扇子にも『生徒会長』と載っている。どういう仕様だ?
「兎に角、このゴールデンウィーク中はIS学園から私と複数人の護衛が着くからよろしくね♪」
「……わかりました」
俺のゴールデンウィークは初っ端から大変なことになってしまった
数時間前、一夏と零が別れる時、そこに第三者が居たことを知るのは当人のみである
「……これは驚いたな。 可能性は無限大って言葉が本当にあるなら、きっとそれは……今のこの現状を表してるのかもしれない。」
銀髪の一夏達よりも年上の女性は少し困惑した様子で一夏達を見る
「さて、良い土産話になる次いでに枷にならなきゃ良いけど……まぁ、見込みがないならやり直せば良いか。」
彼女はそういうとその場から立ち去る