こっから時系列が一気に飛びます。
41話~45話
~41話~ 【再開:その後】
あのライブの日から約一か月―――。いろんなことがあった。あのお団子の茶髪の女の人が、一連の騒動の原因である【フィーネ】さんだったりと、それで響たちがいなくなっちゃったり―――。
あの時はすごく悲しかったけど、再会できたときはすごくうれしかった―――!
「ところで小日向さん。学校の方は大丈夫なの?」
「あぁそうそう。ノイズ被害で全壊しちゃったけど、この後どうなんの?」
「政府が廃校を買い取ってそこが新しいリディアンになるそうです」
今現在、バイトの休憩室で松駒さん、渡利さん、ニーチェ先生、私で机を囲っている。ニーチェ先生は話に興味がないのかずっと『別冊マー○レット』を読んでいる。
あの事件で、リディアンは全壊した。だけど、新しい校舎で再開するみたいだ。よかった。
「―――ところで、とっても
「なんですか?」
「仁井君が、戒名料とか言わなかったのがちょっと不思議で…ちゃんと、人のこと考えてたんだなって…」
「松駒さん」
ニーチェ先生は本を閉じて―――
「松駒さんは僕をなんだと思ってるんですか?」
変人です。私は少なくともそう思います。でも、彼が戒名料のことを言わなかったのは今となってみれば不思議だ。まぁあの状態で『立花さんの戒名です。戒名料を貰えませんか?』と言われたらビンタでもなんでもしていただろう。あの時の私はそうする自信がある。
「い、いやぁ…。ただ単に不思議だったってだけで―――」
「―――流石の僕も、あのような状態でそんなことは言いません」
仁井さん…。ちゃんと考えてくれてたんですね…。
今までの彼から考えるに、そんなこと考えずに非常にもそういうことする人だと薄々思ってたけど……ちゃんと―――
「それに、立花さんたちの霊体が見つからなかったので」
「「「――――――???」」」
この人は今、ナニヲイッテイルノカナ?
「霊体がないと言うことは生きていたということです。生きている人間に戒名を添えても何の意味もありませんので」
―――つまり、死んでいたら添えていたと?
ていうか、今の発言で彼がそう言った霊が見えているので?と言う疑問が――と言うか確証が生まれた。
~42話~ 【切れることのない赤い鎖】
今の時間帯はお昼休み。
この時間、私と響、弓美ちゃん、創世ちゃん、詩織ちゃん、そして―――
「な、なんでアタシが…」
このリディアンに2年生として編入してきたクリスと一緒にご飯を食べていた。
「いいじゃん!いっしょに食べるとおいしいでしょ!?」
「う、うるせぇな…。ま、まぁでも?そこまでアタシと一緒に食べたいってんのなら、やってやっても…」
クリスったら、ツンデレなところがかわいいな。
そんなとき―――
「ここにいたのか」
聞き覚えのある声が聞こえた。
私たちがそっちの方を振り向くと――
「翼さんッ!」
「先輩ッ!」
そこには、翼さんがいた。
「風鳴翼さんだ!」
「とてつもない状況ですわ…」
「一体どうしたんですか?」
三人はあんまり交流がないから、驚いてるんだな…。
でも、なにか用事があるのかな?
「実は、お前たちをライブに誘いたいと思ってな」
「えぇ!?翼さんのライブですか!?」
「いいや、違う」
「だよな。先輩のライブの予定なんて聞いたことねぇもん」
「6枚持ってきているので、皆で当日来てほしい」
「行きます行きますッ!絶対行きますッ!!」
「そうか。喜んでくれて、私も嬉しいぞ」
「…………」
「ん?どうしたんだ未来?」
……翼さんのライブじゃない。翼さんがお勧めするライブ…。もしかして……
私の脳内に、あの激しく般若心経を唱える三人の姿が浮かんだ。
そして、翼さんから渡されたチケットには…
○月×日。
18:00~19:30
そうでかでかと書かれていた。
なんとなく予想できてたから私はあまり驚きはしなかったけど…。
………私たちと般若心経はすでに、切っても切れない鎖で繋がれているのかもしれない。
皆の表情を見てみる。
「「「「…………………」」」」
案の定、四人の思考は見ているだけでも分かるほど止まっているように見えた。
「なぁ、先輩。これってなんだ…?」
「それは私が
翼さんの目がこれほどかと言うくらいに輝いている。
不安しかない。
~43話~ 【地下ライブハウス、再び】
「……来てみたはいいものの、ライブハウスはどこなんだ?」
当日、私たちは六人でライブが開催される街へと来ていた。
あぁ…できればこのまま道に迷ったと言う理由で行かないという手も…
現に…
「来ちゃったね…」
「来ちゃったよね…」
「来ちゃいましたね…」
「まぁでも、翼さんのお誘いだから、断るわけにはいかないよね」
「そうだけど…。でも、まさか翼さんが「 」のファンだなんて驚いたな」
世界が誇るアーティストがまさかの仏教好きだなんて、一部の人以外は、知る由もないだろう。
そのとき、クリスが私に質問してきた。
「……なぁ、なんでこいつらはこんなに落ち込んでんだ?」
「そっか…。クリスは知らないんだね。あの狂気を」
「狂気?」
「あの時見せてもらった映像よりある意味ヤバイほど」
「………なんかわかった気がする」
ちなみに、あの映像とは仁井さんがバルベルデの兵士に強盗の対処方法を実践しているところだ。今のところあの映像を知っているのは私とクリスの二人だけ。あの映像の異常性が分かるからこそ、彼はある意味危険なのだ。
「…まぁでも現地で先輩が待ってんだから、行かないとな」
「…でもクリスちゃん。私たち、一体どっちに行けば…」
「そこなんだよな…。アタシも初めてだし、こういうの」
「たぶん、こっちで合ってると思うんだけど―――」
――その時、私たちの目にあるものが映った。
黒いTシャツの中心に円が書かれており、その円には三人の虚無僧。そしてその上に大きく書かれている『KU-HAKU』と言う文字。しかもそのTシャツを着ている人が所々に見える。
「ねぇ、キネクリ先輩」
「キネクリ言うな…。後輩、言いたいことはわかってるよ」
「確実に…」
「あれ、ですわよね…」
「……どうする?」
「とりあえず、あの人たちについていこうか」
ナイスなTシャツのおかげで事なきを得た。
あの人たちについていき、私たちは無事ライブハウスへと到着した。すると、そこには…
「あれ、松駒さんに柴田さん?」
「あれ、小日向さん?」
「小日向さんじゃないですか!」
バイト仲間である松駒さんと柴田さんがいた。どうしてここに…。
「どうして小日向さんたちが?ていうか、そっちの銀髪の子は…」
「この子は雪音クリスって言って、私たちの友達です」
「へぇ、そうなんですか!それで、どうして小日向さんたちもここに?」
「……ちょっと」
「誘われまして…」
言えない…。まさかトップアーティストに誘われただなんて…。
「そっか。とりあえず入ろうか」
「そうですね」
「あ、あの松駒さん?」
「ん?どうしたの?」
「松駒さんはどうしてここに?」
「もちろん、仁井君に誘われたんだけど…」
まぁ、彼らが来る理由なんて、それしかないかな…?
私たちは受付でチケットを渡して中に入る。
「あぁ、いよいよか…」
「始まって、しまうのですね…」
「…今の内に音楽聞いて心の安寧を…」
「…今更だが、ヤベェな」
「でしょ?」
「大丈夫三人とも?」
「小日向さん。一度休ませた方がいいんじゃ…」
「そうですね。前は水責めでしたし…。休ませたほうがいいと思います」
三人の精神状態がとてつもなく危険だ。やっぱり来ない方がよかったんじゃ…。
―――?ちょっと待って柴田さん?今水責めって言った?
「あの、柴田さん。今水責めって―――」
―――と、その時。
「皆!」
「この声って!」
私たちはその声が聞こえた方へと顔を向ける。
そこには――
「皆、よく来たな。ついでに買っていかないか?」
――変装もしていない素顔を晒している翼さんと渡利さんが、物販をしていた。
………理解するために、時間をください。
~44話~ 【物販】
「翼さん!?」
「渡利さん!?」
響と松駒さんが驚愕の声を上げる。何故翼さんと渡利さんがいたからだ。
うん、この時点で理解できない。
「どうして翼さんがここに!?」
弓美ちゃんたちも驚いている。どうしてこんなところで物販を!?どうして変装もせずに!?ていうかなんで渡利さんと一緒に!?
「いやぁ、仁井に物販頼まれちゃってさ」
「私は一度こういうのをやってみたかったものでな」
いやだからって変装もせずにするのは…。ていうかなんで周りの人たちはトップアーティストがこんな堂々といるのに見向きもしないの!?
「翼さん、どうして変装してないんですか!?」
「それはだな、立花。彼らに比べれば私など雲の下の存在だと言うことだ」
「先輩!自分で自分を卑下すんなよ!」
これ、すごく重症なんじゃ…。
「か、風鳴翼だ…」
「すごい!僕生で見たの初めてです!あとでサインもらってもいいですか!?」
「別に構いませんよ」
「やった!」
二人の反応は普通なのに…。やっぱりここは異常だと思う。
「とりあえず、買って行かないか?」
「CDは特典付きだぞ?」
「えぇ…。じゃ、じゃあ一枚」
私はお金を出してCDを一枚買う。主題歌はあれだけど内容は聞いていて何故か心地よいから悪いと言うわけではないので、CDを買うこと自体は後悔はしない。さて、特典ってなにかn―――
―――人生のアフターサービスも万全な坊主ロッカーの商魂逞しいと思った次第です。
特典を見た皆(松駒さんと柴田さん以外)も唖然としているし…。
「(これ……翼さんの病室に同じようなものがあった…)」
「さぁ~て、金数えるか。ひ~ふ~み~」
渡利さんは怪しい顔でお金を数え始める。あれ、盗んだりしないかな?
と、そのとき。
「皆さん。どうしたんですか?」
「仁井くん!」
坊主服の姿をした兄さんが現れた。ちょうどよかった。ツッコミたいところも聞きたいところもたくさんあったから…。
「仁井さん、渡利さんに物販任せて大丈夫なんですか?」
「金銭に関する計算はお手のものですし会計も間違えない人材と見込んでいます。監視として彼女もついています。そして何より―――」
仁井さんの目が、二人の壁の後ろにある『
「信用できる見張りも万全です」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
その信ずる心、もう少し
「あのよ、一つ気になったんだが…。なんで先輩に物販任せたんだ?」
「彼女は有名人ですからね。彼女目的で買ってくれる方もいるのではないかと思ったからです」
売上のためならトップアーティストすらこき使う彼の度胸が凄まじい。
~45話~ 【本番】
ライブ中。相変わらず般若心経の歌と観客の歓声が響く。
「……聞いてはいたが、ヤベェな」
「だよね」
これを始めて聞いた人の正当な感想だと私は思う。
―――と、その時。
『ん?』
変な音が聞こえた。これって確か、機械の不調の音じゃ…
『すみません、アンプの調子が…』
「悪霊が憑りついてますね。祓いましょう」
彼が突然そんなことを言い出し、般若心経を唱え始める。
「悪霊って…」
「そんなのいるワケないですわよね」
「えぇ~そうかな?アタシはいるって信じてるよ?」
「ゆゆゆゆ、幽霊なんててて、い、い、いるわけ、ないないないだろ?」
クリス、あからさますぎるよ。
「ウッ…!?」
「ガッ…!?」
そのとき、変な声が聞えたので、そちらの方を全員で振り返ってみた。
「カッ…カハ…ッ」
「グゲェエエエエ!!!!」
響と渡利さんが、泡を吹きながら悶え苦しんでいた。
「響!?」
「渡利さん!?」
私たちも驚くが、周りは気にしている様子はなかった。なんで!?こんなあからさまに苦しんでいるのに!?
――渡利さんは金の亡者に憑かれている可能性が出てきたけど…。響は一体なんの霊に憑りつかれてるの!?
* * * * * * *
『さてさて!法礼summerNIGHTもいよいよ後半戦!』
「ねぇヒナ。次はバンドは牧師集団らしいよ?」
「牧師!?」
牧師、牧師かぁ…。まぁ牧師なら大丈夫かな。仁井さんたちのバンドに勝るほどのインパクトは―――
「「「「「「「「……………」」」」」」」」
―――と、思っていた一秒前の私を殴りたい。なにが大丈夫だ。全然大丈夫じゃない。
なにせ―――
―――腰布しか装備していない男性が、ビニールプールの水に顔が埋められていたから。あれ、息できないよね!?あれ死んでないよね!?
ていうか翼さんもなに一緒に洗礼言ってるの!?
そして、ライブは続いた―――
* * * * * * *
「「「「「「……………」」」」」」
「小日向さんたち、大丈夫?」
「どうしたんですか、皆さん?」
……今日は帰ったらすぐお風呂入って寝よう…。
おまけ1
「あの、
「あ、それ気になります!」
この時間帯は後半戦の前の休憩時間。未来たちは仁井たちに合いに行っていた。ちなみに、何故二人の名前を未来が知っているのかと言うと、仁井から聞いたからだ。
「僕ら普通に大学の同級生ですよ?」
「「「「「「…………」」」」」」
「雲海さん、悟浄さん。サインをいただけませんか?」
「おお。いいですよ。トップアーティストにサインを書く日が来るとは思わなかったな」
「そうですな」
仏教学部の守備範囲の広さに俄然興味が湧いた一同であった。
「「「(……となると、この人(おっさん)たちも、仁井さんレベルの身体能力を……)」」」
シンフォギア装者二人と、民間協力者一人が、そう思った。
おまけ2
「あの、雪音さん」
「どうしたんだ?」
柴田が、クリスに話しかけた。
「ナンパか?そういうのは受け付けねぇぞ」
「全然違いますよ!僕は雪音さんに聞きたいことがあったんです」
「なんだ?」
「雪音さんって、銃、持ったことありますか?」
「「「ッ!!!??」」」
クリスは驚愕した。なにせ、それは事実だからだ。
「な、なんでそう思うんだよ?」
「く、クリスちゃんは銃なんて使ってないよ!ミサイルは使っt「このバカッ!」痛ッ!」
響がボロを出した。すぐに柴田の顔を確認するが、どうやら聞こえてなかったようだ。そして、柴田はこういった。
「雪音さんの手に、タコが出来ているじゃないですか」
「あ…ッ」
そう言い、皆はクリスの手を見てみる。クリスの細い指に、小さなタコが確認できた。
「ま、まぁ確かにあるけどよ。これは別にペン持ってる時に出来たもんだから、銃なんて現実的なもん持ってるわけ――」
「いえいえ!そのタコの出来方は銃を使っている人とほぼ同じなんですよ!僕も良くできるので!」
「「「「「「「……………」」」」」」」
何故そんなことを知っているのか、何故柴田にもよくできるのか、答えは内心理解したのだが、一同は怖くて聞き出せなかった。
おまけ3
時間帯はバイト。
未来と仁井はバックヤードで休みを取っていた。
「そうだ、未来さん。この前は法礼summerNIGHTに来ていただきありがとうございました」
「は、はは…」
「どうせですので、これをどうぞ」
「わぁ、ありがとうございま―――」
未来に渡されたものは、掌サイズの長方形の箱に、何か封印のようなものが施されているものだった。
「…………」
天地無用 開封厳禁を予感させる代物に、未来は手から脂汗が止まらなかった。