これは、唐突な始まりだった。
~11話~ 【趣味】
何気ない、ただの興味だった。
「そういえば仁井さんって、趣味はないんですか?」
「楽器の演奏ですね。バンドも組んでいます」
「バンドッ!!?」
私は仁井さんがバンドを組んでいたという事実に驚愕していた。
私は音楽に力を入れているリディアンに入っているので、そういうことには興味はあるからだ。
「凄いですね!!担当楽器はなんなんですか!!?」
「木魚です」
……耳を疑う楽器があったこと、詳しく問い詰めたいし、演奏ではなく説法の聞き間違えかもしれない。
~12話~ 【バンド名】
「今度ライブやるんですよ。よかったらお友達と一緒に来てみてください」
「えぇ!?いいの!?」
そうして私は5枚分のチケットを渡され、その表紙を見た。
「うわぁ~~楽しm――」
出演バンド
18:00~ トルネードダイブ
18:45~ 天国の地獄
19:30~ 「 」(※空白)
20:15~ 馬オ餓アhゲ□誤トp是空yミ激ク
狂気にまみれた文字列が並んでおり、どれが仁井さんのバンドなのか聞き出せずにいる。
だけど、最後の完全に文字化けしているヤツじゃないことだけを祈っている。
~13話~ 【地下ライブ会場】
「へぇ~~ここがヒナのバイト仲間の仁井さんがやっているライブ会場か…」
「でも、貸出してるだけですよね?」
「そりゃそうでしょ。ここそういうところじゃん」
私は後日、響を混ぜた四人を連れて仁井さんが言っていた場所に着きました。
「ライブ…会場か…」
響はやっぱり悲しい顔をしている。
やっぱり、二年前のことなのかな…。
「ビッキー?どうしたの?そんな浮かない顔して?」
「うえぇ!?い、いや、なんでもないよ…」
「うっそー!その顔は絶対なにかあるってぇー!」
「いや、なんにもないよー!」
「…あの、皆さん。そろそろ時間ですし、行きませんか?」
詩織ちゃんナイス!
私たちは階段を下って、受付の人にチケットを渡した。
「にしても、バンドやってるなんてねぇ」
「以外だったねぇ」
「担当はなんだか聞いてますか?」
「あ、うん…」
「へぇ~。あ、言わないでね!こういうのは見てからの方がいいからさ!………にしても、この最後の文字化けしているヤツ、これなんかヤバイ感じしかしないんだけど」
「そうだよね…」
「でも、これじゃないんですよね」
「おーい!皆、早く早く!」
響はさっきのことはもうたぶんだけどすっかり忘れて奥にまで行っていた。
「もー響ったら」
「はは。まぁアタシも楽しみだし、響の気持ちは分からなくもないけどね」
やがて五人が扉の前についた。
「よーし!!それじゃあ開けるよ!!」
響は扉を開けた。
そこには、100人を超えるであろう観客たちと―――
「「「「「………………」」」」」
そこには、お坊さん姿の三人がいた。
木魚をすごい速さで叩く仁井さん。
強烈な勢いでギターを弾いている老人。
苛烈に歌っているお坊さんがいた。
私は、ゆっくりと扉を閉めた。
~14話~ 【緊急会議】
「……ねぇ、ヒナ。何?今の?」
「さぁ…私にも…」
「…と、とりあえず、もう一度開けてみない?」
「ちょっと待って。心の整理が…」
「とりあえず、少し時間を開けましょう」
皆、詩織の提案を受けて、頭と心の整理のために扉から離れた。
「あれ…歌、なのかな?」
「いや、お経でしょ」
「お経…と呼べるかどうかも不明ですよ」
「…仁井さん、前に担当がベースと木魚って言ってたけど、そのままの意味だったんだ…」
「…よし!私は行くよ!」
響ッ!!?
「響ッ!?本気なの!?あんな狂気にまみれた場所に行くつもり!?」
「弓美さんの言う通りです!もう少し時間を置いてから…!」
「そうだよ!!あそこに入ったらもう戻ってこれなくなるかもしれないよ!?」
皆…。ボロクソ言ってるけど、正直私も同じ気持ち。
あれ、絶対ダメな奴だ。
「でも、せっかくチケットもらったんだよ!見ない方が失礼だよ!」
「でも…!響!」
「私は行くよ!」
待って!行かないで響!
でも、私たちの叫びを無視して響は扉を開けた。
『うぇえええええええええええいッ!!!!!!!』
熱狂にまみれた地下ライブ会場と裏腹に…。
「「「「「……………」」」」」
この瞬間、私たちの中の歌の概念が、音を立てて壊れて行った。
「えーこんばんわ。今日はずいぶんと入ってますね!目標にまた一歩近づけて嬉しいです」
坊主のお坊さんが、マイクを持ってそういう。
「バンドの最終目標はなんですか!?やっぱりあれですか!?武道館ライブですか!?」
「おッ!じゃあ仁井くんから!」
「全国のライブ会場で、般若心経を広めていきたいです。この場所は、そのための第一歩です」
『ウオオオオオオォォォ!!!!』
日本中に布教の波が押し寄せるのも、そう遠くないかもしれない。
そして、その始まりを、私たちは見たのかもしれない。
~15話~ 【新しい宗教】
『アンコール!アンコール!アンコール!アン――』
アンコールが響く中…
カッ……
そのとき、ステージに一筋の光が刺さった。
そこにいたのは…俗に言う、【
「……あ…」
「ああ……」
そして、突如泣き出す観客たち。
「「「「「…………………」」」」」
私たちはもう、ワケがわからなかった。
そして、宗教と音楽が手を組んだときの恐ろしさ、ひしひしと感じているし、新しい宗教が始まる予感すらあった。
そして、ライブが終わり……。
「ねぇ、ビッキー、ヒナ、テラジ、ユミ…。音楽って、なんだっけ?」
「さぁ…」
「私も、わからなくなりました…」
「わ、私たちは!私たちの中の音楽や歌を、信じればいいと思うよ!」
「響…!」
「そ、そうだよね!!私たちは私たちの音楽を信じればいいよね!」
「いいこと言うね響!よぉ~し!今日はふらわーでたくさん食べよう!」
「ナイスですね弓美さん!」
「それじゃあ行こ~~!」
このときの私たちは、今までにないほど心がシンクロしていた。
~後日~
「あの、仁井さん。バンドっていつもあんな感じなんですか?」
「過去のライブ資料がありますけど」
「えっ、見せてください!」
ニーチェ先生はバックから写真を取り出し、私はそれを見る。
「わあ……」
そこに写っていたのは…。
観客たちが座禅して、三人が
もうこれ、音楽活動の域を超えている。
~後日 学校にて~
「―――で、今度の秋桜祭で流す音楽を決めようと思います。なにか、案がある方は挙手してください」
「はい!」
「はい、小日向さん。なにかいい案があるんですか?」
「般若心経なんてどうでしょうか!!」
「……え?」
『『『『『…………??』』』』』
「古いのに斬新で、気が付けばやみつきに―――」
「小日向さん………疲れているんですね…」
と、一週間の部活動の休止とバイトの休暇を強いられた。そしてクラスの皆から心配された。
般若心経の力の一端を垣間見た気がする。
~またまた後日~
「小日向さん。念仏ofパーフェクトに興味はありませんか?」
「ね、念仏オブ…?それは仁井さんのバンドのライブか何か――」
「いえ」
「今度国宝のお寺で開かれる公式イベントです」
この国、もうダメなんじゃないかと思いました。