~31話~ 【夕陽の海で】
今は、バイトの時間。
昨日の夜、事情を聞いて寮に戻った私は、響と喧嘩した。
それから、今日は一度も喋っていない。
「………」
「どうしたんですか?未来さん?」
柴田さんに話しかけられた。
正直、この人とはあまり話したくないけど、今は気晴らしにでも…
「実は、響と喧嘩しちゃって…」
「響さんって、未来さんのお友達ですよね?あんなに仲良かったのに、どうして喧嘩なんて?」
「…詳しくは、言えないんです。でも、響が隠し事をしてて…」
「その隠し事に腹を立てちゃったんですね」
「はい…」
今の時間でも今はお客さんは一人も来てなかったので気軽に話すことができた。
「私、どうすれば…」
「でも、響さんの言い分も聞いてあげたんですか?」
「…………いいえ」
「駄目ですよそれは!少なからずとも相手側にも事情があるんですから!」
そうだよね……。
「ありがとうございます、柴田さん」
「大丈夫ですよ!あっそうだ!僕が仲直りする方法を教えますよ!」
「な、なんですか?」
「夕陽の海で殺し合いをするんです!そうすれば絶対に仲良くなれますよ!仲良くなれるんだったら仲直りもできますって!」
その方法。確か一昔前の不良が友達作るときの方法なはずでは。
しかも殴り合いのところが殺し合いに発展しているし。
「僕もこの方法で、何人もの友達ができたんですよ!!」
今の発言で、彼が有限実行していたことが立証された。
怖い。
~32話~ 【帰り道】
学校の校門前。
私はいつもの五人で歩いていた。
唯一、変わったところがあるとすれば…
「…………」
「…………」
私と響が、喋らないことだ。
あの出来事(31話)から一日経ってるけど、私と響は喋っていない。
むしろ、私は響を突き放した。
響の目の前で、「もう友達でいられない」と言ってしまったから。
「…ねぇ、どうしたの?ビッキー?ヒナ?」
「昨日から様子がおかしいですよ?」
「いい加減元気だしなよぉ」
「「………」」
「こりゃ相当重症だなぁ…」
「私たちでは入りどころがありませんね…」
「こんなときアニメでは…」
三人なりに励ましてくれているんだろうけど、今の場合じゃ…
そのとき。
「excuse me!」
突如英語で話しかけられた。
相手は、外国人だ。
「~~~~~~ッ?」
「え、えぇ…」
「な、なんて言ってるんだろう…?」
「え、えぇっと…」
「ぱ、パードゥン…?」
この外国人は私たちの空気など知らないというように話しかけてきた。
一体なんて返せば…
「~~~~~」
そのとき、見知った声が聞こえた。
その声の主は…
「仁井さん!」
ニーチェ先生だ。
そうか、彼はアパートから駅、コンビニに行くために毎回この正門を通るんだった…
「~~~~~」
「~~~~~~~~」
流石は大学生…英語が上手なんだな。
「あ、あの仁井さん!この人はなんて言ってるんですか?」
「あぁ。頭がどうしようもない響さん」
「その言い方やめてくれません!?」
「「「???」」」
「…こほん、で、なんて言ってるんですか?」
「50円で飢えを凌ぐにはどうすればいいかと聞いています」
一介の女子高生に無理な難題押しかけて来た。
~33話~ 【少女】
雨の日の、朝。
私は朝早く寮から出て、学校に向かっていた。
ただでさえ私は響の件で情緒不安定なのに、コンビニの人たちのおかげで考えがまとまらない。
改めておかしすぎる。明かに裏社会に繋がっているであろう柴田さんと仁井さん。この二人が特に…
特に仁井さん。あの般若心経で人を苦しめたこと自体謎だしなにより、車を片手で抑えていたことが驚愕した。
あれは確実に人間の腕力ではない。
でも、考えても仕方ない。
「……?」
そのとき、路地裏であるものが目に入った。
女の子だ。どうしてこんな、しかも雨が降っている中で…
私はその女の子に近づく。
……あれ?この女の子、どこかで…。
いや、そんなことはどうでもいい。
とにかくこの子を助けないと。でも、どこに…
「……小日向さん?」
そのとき、見知った声が聞こえた。
そこにいたのは、仁井さんだった。
「仁井さん…?」
「どうしたんですか、こんなところで……」
仁井さんが女の子の方を見る。
「彼女は…」
「あの、仁井さんも手伝ってください!この子をどこかへ…!」
「彼女は、悪霊白タイツじゃないですか」
「………え?」
突然のことで、思考が停止した。
~34話~ 【力の秘密?】
私たちは、いつもお好み焼きを食べている『ふらわー』まで来ていて、二階を貸してもらっていた。
「………」
この子が、あの白いタイツ―――服を着ていた子。
なんであんなところに…
「う、うぅ……」
「あ、起きた。大丈夫?」
「ここは…って!あんたは…!」
この子は私に気付いたのか、驚愕の声を上げた。
「お前は、あのときの…っって、あれ!?アタシの服は!?」
「貴方の服なら、洗濯物に出しといたよ。今洗ってる。その服は私の体操服」
「余計なことを!」
そこのは一気に立ち上がる。
「ちょ!今上着しか着せてないから!見えちゃう!」
「うわぁあ///!!」
はぁ…同性同士なのに恥ずかしい…。
「…………」
「…なんで、アタシを助けたんだ?だって、アタシは一度、お前を危険な目に…」
「でも、結果じゃ私はどこも怪我してないよ?」
「違う!アタシが言いたいのはそういうことじゃねぇ!なんで、アタシなんかを助けたんだ!?」
「だって、困ってたら助けてあげなきゃ」
「そんなこと言って!これが終わったらアタシをあいつらに突き出すつもりなんだろ!」
「そんなことしない!それに…響と、喧嘩しちゃったし…」
「…え?」
「響のあの姿のこと。ノイズと戦ってたことで喧嘩して、喧嘩しちゃったんだ」
「………(…アタシの、せいだ…)…ごめん」
「ううん。あなたが謝ることじゃないよ」
そのとき…
「起きましたか」
「なッ!?」
仁井さんだ。あの後、彼も一緒についてきた。
なんでも、今日は仏教学部のみ学校に行かずオンライン授業をするらしい。理由は聞いてないけど。
それで授業は午後にあるから気晴らしに散歩してたら私と出くわしたらしい。
「お前は…怪力念仏野郎!」
「仁井です」
「呼び方なんてどうでもいい!お前のせいで!お前のせいであたしは、アタシは…!」
たぶん、彼女は仁井さんの般若心経のことを言っているのだろう。
普通に般若心経のせいでって言ったら謎すぎるけど、事情を知っている人しかわからない内容だ。
「なにに怒っているか知りませんが、少し落ち着いてみては?」
「落ち着ていいられるか!大体、お前なんなんだよ!?車を片手で持ったり!念仏でアタシ等の腹を痛めつけたり
よぉ!?まさか、お前もあいつらの仲間か!!」
そう言って、彼女は私の方を睨みつける。
「ヤツ等、とは誰のことかわかりませんが、勝手に決めつけられるのは心外ですね」
「はッ!じゃあなんだって言うんだよ!?」
「仏教学部に所属している、大学2年生です」
「嘘つくんじゃねぇ!普通のヤツにあんな怪力出せるワケねぇだろ!!」
「なに言ってるんですか?」
?この彼の顔。
本当に何言ってるんだろうこの人、とでもいう顔をしていた。
一体何故こんな顔に―――
「あれは仏教学部において必要な基準身体能力です」
「……………」
「はぁ!?」
仏教学部に求められている身体能力基準がおかしすぎる件について。
~35話~ 【国際問題】
この後、私は彼女、【雪音クリス】からいろいろなことを聞いた。
色々と言っても、ただ知ったことは彼女の両親が地球の裏側で殺されたということ。
「地球の裏側と言えば、バルベルデですね」
「……あぁそうだよ。チッ」
バルベルデ。ニュースで聞いたことがある。今も内戦が絶えない戦場地帯だと言うことを聞いたことがある。
「バルベルデですか……」
「どうしたんだよ」
「バルベルデには昔、旅行で言ったことがありまして」
「嘘つくんじゃねぇよ!あんな地獄に旅行で行けるわけねぇだろ!」
「仁井さん!さすがにそんなウソは!」
「嘘ではありませんよ。昔、と言っても一年前のことですが。当時の映像があります。見ますか?」
そうして仁井さんにスマホを渡された。
そして、そこに映されていたのは…
『『『『『ぎぎゃあああぁあああああああああ!!!!!!』』』』』
「「…………………」」
生き地獄だった。
始まりは、兵士たちの手足が何故かプランと垂れていて、倒れている所から始まった。
その状態でお坊さんの服を着ている仁井さんに一人一人無理やり座禅を組まされた。
そして…
『セェエエイ!』パンッ!
警棒で、兵士の肩を叩く。肩が脱臼しているせいかその兵士の絶叫が響く。
『ぎゃぁああああああああああああ!!』
『セェエエイ!』パンッ!
『ぎゃぁああああああああああああ!!』
『セェエエイ!』パンッ!
『ぎゃぁああああああああああああ!!』
一人一人、確実に肩を叩き、絶望の海に叩き落としていっていた。
なにこれ?
「あの…なんですか?これ、仁井さん?」
「バルベルデの兵士に仏教を説いています」
「いやこれ明らかに拷問ですよね!?仏教を説くとかの以前の問題ですよね!?」
「おい…なんでこいつらの顔、なんか赤と黄色の粘液にまみれてねぇか?特に目のあたり」
クリスに言われて、動画をいったん止め、ズームしてみる。
すると兵士一人一人の目から、赤と黄色の液体が垂れていた。
待って?もしかして、これって…
「仁井さん……。もしかしてこれって、ケチャップとマスタードですか…?」
「正解です」
「あの…この拷問。前に聞いたことあるんですが……」
私の記憶が正しければ、これは…
「覚えていてくださり光栄です。これは僕が教えた強盗の対処の仕方です」
「「…………………」」
有限実行どころか、すでに実行していた。
彼の行動が下手すれば国際問題に発展しかねないので、とても恐ろしい。
31話。そのあと
私は休憩室の扉を開けた。
そのとき…
ポンッ
「ひっ!」
突如、両肩を何者かに叩かれた。
慌てて後ろを振り向いてみると、そこには松駒さんと渡利さんがいた。
「小日向さん。さっきのは、聞かなかったことにしよう」
「それが、俺たちにとっても、君にとっても良いことだ」
珍しく二人がマジ顔をしていた。
その考えはものすごく共感できるし、なにより怖すぎて誰にも話す気になれない。