小日向さんのバイト日記   作:龍狐

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36話~40話

~36話 【囮】

 

 

 

あの後、ノイズが表れた。

クリスはすぐに皆が逃げる逆方向に向かって行った。

 

 

「彼女ならあの武装があります。放っておいても問題ないでしょう」

 

「そうだけど…」

 

「――――――。まぁ、とりあえず逃げましょう」

 

 

そう言い、私と仁井さん、そしておばちゃんと一緒に逃げる。

他の人とより逃げ遅れたから、私たち三人以外には誰も周りにはいない。

 

だから…

 

 

「ッ!ノイズ!」

 

 

私たちの走る方向の横の道から、ノイズが表れた。

このままじゃ皆が…!

 

 

「小日向さん。おばあさんを連れて走ってください」

 

「えっ!?でもそれだと仁井さんが!」

 

「そうだよ!私たちと一緒に逃げるんだよ!」

 

「ヤツ等の足は以外と早いです。中年の方ではすぐに追いつかれてしまいます。そしてボクは体力には自信があるので」

 

 

確かに、彼ならノイズくらいなら簡単に逃げられるだろう。

でも…!

 

 

「駄目ですよ仁井さん!もしぶつかってしまったら…!」

 

 

灰になってしまう。

それは彼だってわかっているだろう。

 

 

「安心してください。行き止まりに差し当たってもただ屋根を飛び越えればいいだけです」

 

「はい!?」

 

 

彼だからこそ言える、説得力のある発言。

それだけで、私は諦めてしまった。

 

 

「絶対に捕まらないでくださいね!」

 

「えぇ。それはお二人にも指定されますが。まぁなにせ―――」

 

 

シェルターとは違う方向を走ろうとする仁井さんが、次の瞬間私たちにこう告げた。

 

 

 

「お二人が死んでしまったら、ボクが戒名料をもらえないので」

 

 

 

「「――――………」」

 

 

こんなときでも彼は……ぶれない。それがなかったらかっこよかったのに。

しかもいつの間にか私とおばちゃんが顧客に含まれているし。

 

 

 

 

 

 

~37話~ 【わいせつ物陳列罪】

 

 

あの後、おばちゃんを助けるためにタコ型のノイズの囮になった私は、響に助けられ、仲直りをした。

 

 

そして、あの時に見た黒服を着た優しそうな風貌をした男の人、2mくらいある大きな男の人、そして、風鳴翼さん、そして私と響が円になって話していた。

 

 

「あの……」

 

「どうしたんだ?」

 

「実は、私とおばちゃんが逃げてる最中に、囮になってくれた人がいて…」

 

「む?それは誰だ?特徴を言ってくれると助かるんだが…」

 

「そちらの男性は一度会われてるはずですけど…」

 

「僕ですか?あ、ちなみに僕の名前は【緒川慎次】。緒川でいいです」

 

「えっと、緒川さんは一度会ってるはずですよ?」

 

「あの…もしかしてその人って…」

 

 

響が、そう言った。たぶん分かったんだろう。

 

 

「仁井さんですか!!?」

 

「うん……」

 

 

そのとき、慎次さんと男の人がちょっと苦い顔をして、翼さんが何故か驚愕していた。何故?

 

 

「彼か…」

 

「彼ですか…」

 

「あの、なんでそんなにたどたどしいんですか?」

 

「いやぁ……。俺の口からは言えないんだが…。彼は少し、過激なことをしてな…」

 

「彼の、般若心経は、もう聞きたくありません…」

 

 

一体彼らとニーチェ先生の般若心経の間になにがあったのか気になってやまない。

 

 

「あーそういえば!仁井さんのあれって結局謎ですよね!私もあの人の般若心経でお腹痛くなりましたし!」

 

「それだけが謎なんですよね…特に聖遺物などの反応は見られなかったんですけど…」

 

「…まぁとにかく。彼がいないんだな?職員に探すように「司令!生存者を見つけました!」本当か!?」

 

 

職員の人がその生存者の人を連れてくる。

その人は…

 

 

「仁井さん!!」

 

「おや、小日向さん、無事でしたか」

 

 

仁井さんだった。よかった…!無事だったんだ!

 

 

「よかったー」

 

「心配しましたよ!」

 

「別に心配しなくても問題ないんですがね。……ところで、また会いましたね」

 

 

仁井さんは緒川さんの方を見る。

 

 

「えぇ…」

 

「先日はどうも。おかげでいろいろと潤いました」

 

「えぇ…」

 

 

一体なんの話を…?

そのとき、ピンクの車がやってきた。

 

 

 

「はぁ~~い。主役は遅れてやってくるものよぉ♪」

 

 

 

そのとき、グラマーレベルの体型をした女性が車から降りてきた。

…なんか悔しい。

 

 

「了子くん」

 

「弦十郎くん。どうしたの?」

 

「いやぁ、実は彼らに話を…」

 

「そう。それじゃあ私は仕事で忙しいからまたあとで!」

 

 

 

そうして了子と言われた彼女は別の方向へ向かって行く。

だが…

 

 

 

「ところで、あの武装を造った人はどんな人物なんですか?どれだけ頭のおかしい人か聞きたいのですが」

 

 

その瞬間、周りの時が止まった。

その理由は、彼女―――了子さんから発せられる謎の黒いオーラが原因だ。

あ、たぶんシンフォギア作ったのあの人だ。

 

 

「に、仁井さーん…。その人はそんなに頭おかしくないですよ?」

 

「そうですか?」

 

 

仁井さんは続けてこう言った。

 

 

 

「あれだけ性能の高いものを作る知能を有しておきながら、わいせつ物陳列罪と言う法律に目がいかないただの愚か者だとボクは思いますが」

 

 

 

その瞬間、彼女は仁井さんに形容しがたい―――言語化するのが難しいほどの黒くどす黒い目で仁井さんを掴もうとしていたところを、大きい男性に必死に止められているのが彼の背中越しで起きている。

 

 

 

 

 

 

 

~38話~ 【ゲーセン】

 

 

 

あれから数日後。

私たちは三人でデートすることになった。

 

言い出しっぺは響。

それで今はゲームセンターにいる。

 

 途中、同い年の黒髪の女の人が敵の軍隊を無傷で壊滅させていたところは、見ていた楽しかったのをここに記しておく。

 

 

「はぁ~~取れなかった…」

 

「気を落とすな、立花」

 

「そうだよ。またがんばろ?」

 

 

響がクレーンゲームに挑んだけど、ことごとく失敗してお金の無駄遣いになってしまった。

 

 

「よぉ~し!!じゃあ次は音ゲーやりましょう!!」

 

 

そうして響が指さしたのは太○の達人。

 

 

「よぉ~し!やるぞぉ~!」

 

 

そうして、対戦するは私と響。

結果は…

 

 

「負けたぁ~!!」

 

「小日向はこういうのに強いのか?」

 

「はい。幼いころからピアノを習っているので」

 

 

こういうのに関しては、自身がある。

さすがに仁井さんの木魚をやれと言われたら無理だけど…

 

 

「そうか。小日向は将来ピアニストにでもなるのか?」

 

「それはまだ、決めかねています」

 

「まぁ人生いろいろとだ。そうすぐに決めなくてもいいだろう」

 

 

さすが先輩…!貫禄がある。

と、そのとき…

 

 

――ガヤガヤ――

 

 

ゲームセンターの中が騒がしくなってきていた。

しかも人が一か所に集まっている。

 

 

「どうしたんだ?」

 

 

翼さんのその一言で、私たちもその場所に向かってみた。

そこには…

 

 

 

 

ダダダダダダダダ!!ガチャンガチャンガチャンガチャンガチャン!!パンパンパンパンパン!!カチカチカチカチカチ!!

 

 

 

 

音ゲー史上最難関と言われている【beat(ビート)maimai*1】をまるで単純作業のように打って叩いて弾いている、男性二人の姿があった。

 

 

 

「すごい!あの超難しいと言われている音ゲーをあんな素早くコンボするなんて!」

 

「しかも、連続で続いて、両者一ミスもしていないぞ…!」

 

「…あれ?なんか片方の人どこかで…?」

 

 

やがて、ゲームが終わり、フルコンボと画面に出る。そして巻き起こる歓声。

その人たちが後ろを振り向いた。そして、その一人は…!?

 

 

「に、仁井さん!?」

 

 

ニーチェ先生だった。

もう一人は知らないけど、友達だろうか?

 

 

「あれ?仁井。お前この子たちと知り合いなのか?」

 

「えぇ。バイト仲間です」

 

「あの、お二人とも!さっきのすごかったです!どうしてあんな反射神経を持ってるんですか!?お二人ともぜひ教えてください!」

 

「コツですか?僕は―――」

 

 

 

「僕は三歳のころからエレクトーン*2を習わされていたので」

 

 

幼少期からフルコンボ前提の音楽ゲームをしていたと同じなのか…

ピアノ程度で誇っていた私が恥ずかしい。

 

 

 

 

 

 

 

~39話~  【お友達】

 

 

 

「ところで…そちらの方は?」

 

「あぁ。俺?俺は【中村】。中村拓哉(たくや)だ」

 

「彼は僕の所属する仏教学部の3年生。つまり先輩です」

 

 

へえ~。彼にも友達がいたんだ。

しかも結構まともそう…。いや、彼の周りの人が変人すぎるから感性が可笑しくなってるのかな?

 

 

「ところで、木村さんもエレクトーンってやつをやってるんですか?」

 

「え?俺はやってないよ?」

 

「えっ!?それじゃあどうやってフルコンボしたんですか!?」

 

 

これには私たちも驚きだ。

仁井さんは過去の経験がものを言っただけだけど、木村さんは謎すぎる。

あれだけの反射神経を一体どこで…

 

 

「あーなにか勘違いしてるかもだけどよ…」

 

「え?」

 

「小日向さん」

 

 

 

ニーチェ先生?

一体どうしたんだろ――

 

 

 

「彼は今人生初めてあの音ゲー、【beatmaimai】をプレイしたんです」

 

 

 

「「「――――!?」」」

 

 

 

え、人生初!?

とてもそんな風には見えない。いや、見えるわけがない。

 

 

「嘘つかないでくださいよ!あれは明かにプロの領域ですって!」

 

「いや嘘じゃねぇって」

 

「それに―――」

 

 

 

「あの程度。ボクたち仏教学部全員がフルコンボできますよ」

 

 

 

あ、そうだった。

仁井さんのとこの仏教学部、普通じゃなかった。

 

 

 

 

 

 

~40話~ 【ライブ】

 

 

 

 

あれからまた数日後。

私は翼さんの生ライブに行っていた。

 

 

歌も終わり、演説も終わり、30分の休憩が挟まった。

 

 

 

「よかったなぁ…」

 

 

 

にしても、響はどうして来てないんだろう?

もしかして、またノイズが…?

 

……響の分まで楽しまないと。

もし今響が戦っているのだとしたら、私にできることは少ないから。

 

終わりの開幕まであと10分。

そろそろステージに戻らなきゃ。

 

 

「おや、小日向さん」

 

 

あれ?

 

 

「仁井さん!?なんでこんなところに!?それにその人たちは…!?」

 

 

その人たちは確か、仁井さんのバンド、「  」(くうはく)のメンバーの二人!

どうしてここに?彼らも翼さんのファンなのかな?

 

 

「僕たちは野暮用で来たんです」

 

「それじゃ、また会いましょう」

 

「それでは」

 

 

三人は、そのままステージとは違う方向を歩いていった。

…一体どこに?そっちは楽屋とかがある場所だけど、彼らには関係ないはず。

まぁ考えても仕方ないか。

 

 

 

『さぁ!今ライブも最後の大詰めとなりました!最後に、風鳴翼が、演歌を歌います!』

 

 

そう司会者の言葉に、観客席がざわめく。

翼さんが(おおやけ)の場で演歌を歌うなんて…!

 

 

『いつもとは180度違ったジャンルに挑戦してみたい。と言う翼さんの期待に応え、今回披露していただくこととなりました!それでは、どうぞ!!』

 

 

そして、ステージに四つの光が差した。

 

光の三つは線を結べば三角形になるような形に光、その中心にもう一つの光が差す。

そして、その中心に、青い花柄の浴衣を着た翼さんが出てきた。

それに会場は一気に大盛り上がりに。

 

 

そして、三つの光に、人が入ってくる。

 

 

………虚無僧?

 

 

出てきたのは、虚無僧だった。

これには、私だけではなく、他の観客たちも困惑している。

 

……ていうか、あれって絶対仁井さんたちだよね!?

「  」(くうはく)の三人だよね!?

 

 

そして、虚無僧は笛を吹き、翼さんが歌い始めた。

 

 

 

………仏教徒の間では有名であろう「  」(くうはく)の三人。

そんなバンドが、ついに表舞台に姿を現した。

 

 

 

 

*1
ニーチェ先生4巻に出てくる音ゲー

*2
簡単に言ってしまえばピアノの上位互換。全編イタリア語で二段構えの鍵盤、数多のボタンがあり足元にも鍵盤がある。速度も奏法も変幻自在。打ち込みに合わせて演奏することができる




37話の後。


翼「すまない」

仁井「?」

翼「サインを、くれないだろうか?ファンなんだ」

仁井「いいですよ」


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