Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

1 / 20
第一話 その日、俺は運命に出会う。のかもしれない

 俺こと、川村(かわむら)英司(えいじ)の話を聞いてほしい。

 

 終電ギリギリまで働いた会社からの帰り。疲労でフラフラだった足が駅の長い階段を踏み外し、頭に一瞬激痛が走ったかと思えば――

 

「……は?」

 

――砂漠のど真ん中に立っていた。

 

「いや、どういう事なんだ……」

 

「きっとあれですよ、それで死んで転生したのですよー」

 

「わぁ、なんて在りがちな転生モノ。じゃあここはどっか異世界か」

 

 隣に浮遊するオレンジ色の髪で、白を基調としたサイバーアイドルを思わせる服を着た少女がそうにこやかに言うものだから、俺も「きっとそんなもんだろう」と雑に受け入れた。

 きっと神様もテンプレな転生導入するのが面倒臭くなったのだろう。

 

「どうも、ゲームの中みたいですよ?ウィル子がこんな風にデータ改竄でPON☆とアイテム出せるので」

 

 少女が指パッチンすれば本当に「PON☆(CV・ベネット)」と音を立てて馬車が生み出された。

 

「ゲームの中?『.hack(ドットハック)』か『ソード・アート・オンライン(SAO)』か?」

 

「最近はVRモノも多いですからねー。特定は難しいのですよー」

 

 確かに、少女が頭を捻るくらいにVRモノというのは最近溢れている。

 まぁ、俺はそういう世情に苦言を述べるつもりはない。一つのジャンルが様々な人に書かれるのは良い事だ。それだけ違った形が生まれ、各々読者に合った形が生まれやすくなるという事だからな。

 

 というか、今気付いたのが。

 

「ん?どうしたのですか?」

 

「ウィル子じゃん」

 

「はい、ウィル子はウィル子なのですよー」

 

 先程から俺に返事をくれていた存在。それは『戦闘城塞マスラヲ』という作品に登場する電子の精霊、ウィル子だった。正式名称は『Will.CO21』だったか。彼女の相棒兼主人公が呼んでいた『Will.Century Of 21(21世紀を願う神)』という名称はとてもかっこいいと思った(小並感)。

 

「にほほほほ。ヒデオ(マスター)のあの呼称は、誇らしくもありますが、ちょっと恥ずかしくもあるのですよー」

 

「まぁあの人、割と場の雰囲気でトンでもない事言い出すし。ご愛敬だろ」

 

 空気を読みすぎたり酒の勢いでぶっ飛んだりする主人公が『戦闘城塞マスラヲ』の主人公だった。良識はあるのだが、とかく行動が突拍子もない。パンツ脱ごうとするしパンツ脱いだし。

 

「とりあえず、ウィル子が転生特典ってのは良いとして」

 

「軽く流しますね」

 

 そうとしか考えられないからね。仕方ないね。

 

「この世界が何なのか特定しないと、二次創作転生者特典・原作知識が使えないぞ」

 

「二次創作って断言しちゃうんですね」

 

 ウィル子が居る時点で著作権とかそこらで商業作品にはできないからね。仕方ないね。

 

「何か手掛かりはないか……。腰のこれは、アイテムボックスか。え~~と、ステータス欄とか、見ても区別つかないか。ん?なんじゃこれ」

 

 ゲームのようなウィンドウを表示した時にかざした左手の甲。そこにはウィル子の額にあるマークと同じジグザグ配置の五つの四角が描かれていた。

 

「これは、まさかっ!」

 

 驚愕してすぐにキリっと真面目な表情をするウィル子。いったい何を思いついたのやら。

 

「問おう、貴方がウィル子のマスターか」

 

「令呪を以って命ずる。自害せよ、ウィル子」

 

「よもや貴様!グワーッ!」

 

「ウィル子が死んだ!この人でなし!」

 

 まぁ、嘘だけど。

 

 Fateの感動シーンをウィル子が再現し始めたので俺も感動シーン(愉悦)を再現した。付き合いの良いウィル子でもさすがに槍で貫くのは再現できなかったのか、マジックナイフで胸を指すフリをしてグッタリ倒れている。

 

「紋章は令呪じゃなかったな。FateVRとか面白そうだったが、デスゲームになりそうだから止めとこう」

 

 月の聖杯戦争とかゲームっぽい宣伝文句でやっていたのがガチのデスゲームだった。ワカメはご愁傷様。月の裏側で蘇れ……蘇れ……。

 

「左手の紋章……。待てよ?」

 

 「VRモノ」、「左手の紋章」で俺は記憶の取っ掛かりを掴む。ステータスウィンドウを開いてその証拠を探した。

 

「あった……」

 

 証拠となる項目、『〈エンブリオ〉』。そこにはこう書かれていた。

 

虚数電神ウィル・センチュリー・オブ・トゥウェンティーワン

到達段階 i

Type イマジナリー・ワールド

スキル 《21世紀(ウィル・センチュリー)を願う神(・オブ・トゥウェンティーワン)

 

「……」

 

「〈エンブリオ〉という事は、『インフィニット・デンドログラム』みたいなのですよー」

 

 うん、俺もその事実には気付けた。

 

 2043年に発売されたダイブ型VRMMO〈Infinite(インフィニット) Dendrogram(デンドログラム)〉、そのゲーム内とリアルを舞台とした作品『インフィニット・デンドログラム』。

 

 詳しくは原作を見てほしい。今井神さん作画のコミカライズの方でも良いぞ!ただ、この作品はネタバレも多分たくさん含むからWeb版既読推奨だ!

 

「メメタァ」

 

「メタ発言は許してほしい。色々と頭が混乱してるんだ。後、ウィル子はそろそろ立ち上がって良いぞ。いつまで倒れてるんだ」

 

 メタ発言による現実逃避と倒れ続けるウィル子へのツッコミで頭をリセットし、思考を目の前の疑問に戻す。

 

「「到達段階i」って?」

 

「ああ!」

 

 ウィル子が遊戯王風の作画をしてまで無駄な合いの手を入れるがスルーだ。二次創作だからウィル子に著作権への遠慮がない。

 

「管理AIたち、って言うか〈エンブリオ〉の先達たちの到達段階が「(インフィニット)」。他のプレイヤー、ゲーム内では『〈マスター〉』か。そいつらでも段階は「1~7」だ。「i」、もしかして「イマジナリー」?「虚数」って意味か?こんな到達段階はないはずなんだが……」

 

「原作壊さないようにするための特別措置ではないのですか?」

 

「あーなるほどー、なんか7段階とか∞段階とか増えちゃうと話に影響しそうだもんなぁ」

 

 管理AIたちの目的は〈エンブリオ〉7段階到達者を増やす事だったはずだ。おそらくそれは最終目標の過程であり、新たな∞段階到達者を生み出す事が目的だと俺は考えている。当たっていたとして、それも過程だろうが。

 

「「イマジナリー」ってのは話を壊さないために例外にしたのか。じゃああんまり深く考えなくて良いな」

 

 一つの疑問が解消した。次だ。

 

「「Typeイマジナリー・ワールド」って何だよ」

 

「世界をなんやかんやするのではないですか?」

 

「なんやかんやって何だよ」

 

「なんやかんやはなんやかんやですよー。ほらこの通り」

 

 ウィル子がまた指パッチンし、今度は機械の馬を生み出す。馬車はもう出してあるからお誂え向きだ。

 

「……。ウィル子、これさ。この世界がゲームっていう事になってるから、電神ないし電子ウィルスよろしくゲームデータを改竄してるって事はないよね?」

 

 不意に不安が湧いてくる、運営にBANされるような事をしていないかと。

 

「最初にデータ改竄してるって言いましたよ?」

 

「……」

 

 通報されたらアウトだった。

 

「マスターはそもそも〈マスター〉ではありますが、ゲームプレイヤーではないので大丈夫ではないですか?」

 

「いや、〈イレギュラー〉として物理的に消されない?垢BANならぬ心臓BANGされない?」

 

「……ファイトですマスター」

 

「「ファイトです」じゃねぇ!一蓮托生だ!」

 

 テヘペロしながら他人事なウィル子に俺は現実を突き付ける。俺だけでは死なん。お前の魂も連れていく。

 

「まぁまぁ。やってしまったものはどうしようもないのですし、有効活用するのですよー。ほら、馬車に入って、どうぞ」

 

「あぁ~!クーラーの音ォ~!」

 

 忘れていたが俺が居るのは砂漠のど真ん中。シュレディンガーの猫的なあれやこれで先ほどまでは暑さを知覚していなかったから無事だった。しかし、ウィル子が開けた馬車の扉から吹く冷風が照り付ける日差しを思い出させる。

 

「限界だ!乗るね!」

 

「キンキンに冷えてやがる……っ!!のですよー」

 

 俺は飛び乗ってその涼しさを堪能する。犯罪的だ……快適すぎる……。

 

「ウィル子、これってレジェンダリアの試作魔法馬車じゃないか?」

 

 床で尺取り虫になりながら中を見回した俺は、その広さに違和感を覚えた。それでこのゲーム内で最もファンタジーな国、レジェンダリアで魔法により馬車内の空間を広げる魔法馬車の存在が頭を過る。

 

「にほほほほほ。2LDK、シャワールーム付き、バス・トイレ別、空調完備の魔法馬車ですよー」

 

「……ひょっとしてだが。あの機械の馬も、煌玉馬だったり……?」

 

「さすがの私もゲーム内で0からオリジナルアイテムを作るのは手間がかかります。なので、名工フラグマン薫製の煌玉馬をオマージュして作りました。安心してください、自動修復機能(オートメンテナンスシステム)と動力炉も付けてありますので整備もMP供給もいらないのですよー。ただ、性能は余り盛らず、《自動走行》と《空間固定》だけに留めました。名付けて、【無之偽金剛(ジルコニア・ヌル)】!なのですよー」

 

 自信満々にウィル子は語るが、ヤバい。大変ヤバい。煌玉馬は先々期文明という古代文明が残したプラントが見つかるまで、初代フラグマンの製造品しか残っていない。そのプラントが見つかっても、フラグマンの製造品の劣化しか作れない。劣化品は動力炉が作れず、MP供給を騎乗者が行う仕組みになる。

 

 そう、ウィル子は現状誰も作れない物は、データがあるからと言って作り出したのだ。

 

「一応聞いておく、スキルの詳細は?」

 

「《自動走行》は命令しておけば後は自分で考えて勝手に走ってくれます。《空間固定》は名前の通り空間を固定して外部からの圧力で流動・変化しないようにします。簡単に言うと見えない壁です。これで空中でも走行及び牽引できるのですよー」

 

「……」

 

 「空間を固定」とかいう辺りにヤバみを感じて悟りが開けそうだ。ゲームだったらただ単に透明なオブジェクトを置いただけだが、この世界は単なるゲームではない。

 

「ちなみに、リソースって言うか、代償に払ってるモノとかは?俺MPとか払ってるの?」

 

「いえ?ほとんど何も消費していないのですよ?強いて言うなら、このゲームへの信仰心でしょうか。ウィル子は電子機器に対する良い感情が寄り集まった電子のカミなので。現状もそういう『戦闘城塞マスラヲ』のルールを押し付けている感じですよー」

 

 「イマジナリー・ワールド」とはつまりそういう事らしい。別の世界のルールを押し付けているからテリトリー系の分類なのだろう。

 

「それさ、俺のMPを使うようにできんかな」

 

「できるでしょうが、出力が∞段階レベルから7段階レベルくらいまでに落ちますよ?」

 

「充分じゃないかなぁ、そんなに暴れる気ないし。管理AIたちと戦ったら多分死ぬし」

 

 強い力を手に入れても、もっと強い奴らが居るので暴れたくても暴れられない。

 いや、そんなに他人に迷惑かけるような事をするつもりはないが。後、死にたくない。一度目はほぼ自覚できてないが、だからって二度も死にたくない。そもそも一度だって死にたくない。

 

「じゃあどうするのですか?せっかくの二度目の人生なのですから、何か好きな事とか」

 

「のんびりしたい」

 

 切実にそう思う。ウィル子に「えー……」って呆れられようとそう思う。

 なんたってブラック企業であくせく働いて死んだようなものだからな。忙しなく生きる人生などもうこりごりだ。

 

「でも世界漫遊も面白そうではありますね」

 

「じゃあそういう事で。人間の生活圏まで、全力☆前進DA!」

 

 ウィル子も嫌ではないようなので、とりあえずの活動方針を「のんびり生活」に設定した。俺は全力でのんびり生きる。

 

「で、生活圏ってどっちなのでしょう」

 

「……真っすぐ進めば町に出ないかなぁ」

 

 俺の第二の人生は、そんな不安しかないスタートを切った。

 

 

 

◇◆◇

 

 権限の有る者しか入れない異空間、宇宙船の一画を思わせる場所に数名の人物が集っていた。いや、彼らは人物と評して良い者ではない。

 

 〈Infinite Dendrogram〉の管理AIであり、〈無限(インフィニット)エンブリオ〉。

 

 絶大な力を持つ〈Infinite Dendrogram〉世界の管理者たちである。

 

 そんな者たちが、全員でないにしろ、その半数近くが集まっていた。

 

「本当にデータ改竄(チート)されたのかい?それも、未遂じゃなくて?」

 

 疑問を呈するのは『チェシャ』と呼ばれる管理AI。彼の担当は補佐、いわゆる雑用であるために多くの分野を噛んでいる彼だからこそここに呼ばれていた。

 

 チェシャの疑問は当然である。今までも〈Infinite Dendrogram〉に改竄を仕掛けようと不正アクセスを働いた者は居た。しかし、その全てが未遂または失敗に終わっている。ただのゲームと高を括って挑んだチーターにこの世界が改竄などできない。同時に、そんな茶々を許す程愚鈍な管理体制ではない。

 

「ええ、どうぉにも不正な方法でアイテムを製造されましてぇ。バンダースナッチが血ぃ眼になって改竄の履歴を掴みまぁした。彼は今もそぅのチーターを血眼で探しぃてまぁす」

 

 道化のような笑みで答えるのは『マッドハッター』と呼ばれる管理AI。彼の担当はアイテム。今回の不正発覚がアイテムの不正創造なのだから、当然彼の管轄に食い込む。当人はあまり焦っていないが。

 

「私もさっきまでそのチーターを捜索していたけど、影も形もないわ」

 

「データ改変ができるような〈エンブリオ〉の候補はいくつかあるけど、私たちにも隠し通せるくらいに育っているのは居ないわよ」

 

「私の監視する限りでも……そのプレイヤーの情報は……得られていない……わ」

 

 補足するのが、プレイヤー保護機能及びアバター管理担当のアリス、<エンブリオ>担当のハンプティダンプティ、グラフィック担当のダッチェス。

 

 彼女らの管轄であるアバター情報、〈エンブリオ〉情報、視覚情報においても、此度のチーターは判明できていない。

 

「以上から、我々の管轄にない存在である〈イレギュラー〉ではないかと推測されているのである」

 

 最後に締めるのが『ドーマウス』と呼ばれる管理AI。彼の担当は危険物。危険物の最たる〈イレギュラー〉の可能性があるために彼は集わざるを得なかった。

 

「僕たちの管理を擦り抜けてデータを改竄する〈イレギュラー〉。そんなモノを、いったい誰が……」

 

 〈無限エンブリオ〉数名で管理するシステムに干渉できるとなれば、それは管理AIの同族、〈エンブリオ〉のはずなのである。しかし、チェシャたちの管理している〈エンブリオ〉に今回のようなデータ改竄を行える物はない。チェシャたちは全ての〈エンブリオ〉を管理しているのだから、そんな〈エンブリオ〉はこの世界の何処にも存在しないのだ。

 

 もしそんな〈エンブリオ〉が存在すると言うならば、それはチェシャたちが生み出した〈エンブリオ〉ではない。チェシャたちを生み出した者たちが、新しく生み出した〈エンブリオ〉という事になる。

 

 しかし、その可能性は恐ろしく低い。チェシャたちを生み出した者たちは、チェシャたちを生み出した時点で限界だったのだから。

 

「チェシャ、今それを考えても意味はないのである。今すべき事は、我々の思惑を崩しかねない〈イレギュラー〉を一秒でも早く見つける事なのである」

 

「ああ、そうだね」

 

 彼ら管理AIはその〈イレギュラー〉を何が何でも見つけ出さなければならない。自分たちが存在する意味を壊されないために。




(´英`)<という事で、英司です

(*´w`*)<ウィル子なのですよー

(´英`)<原作でもあるように、このあとがきのスペースを使って細々とした解説or余談をしていくつもりだ。担当は、もちろん俺こと川村英司と本作のウィル子だ。

(*´w`*)<ここで述べてる事全てを本作内のウィル子たちが知り得ている訳ではないので、そこら辺はご了承くださいなのです

(´英`)<とりあえず、本作の更新ペースだが。書き溜めてある分はさっさと放出して、そっからかなり時間をかけて更新していくつもりらしい

(*´w`*)<書き溜めが終わっちゃったら、後々は月1ペースを予定してるようですよ?

(´英`)<そんな感じで、おそらくスローペースな本作だが

(´英`)(*´w`*)<お付き合い、宜しく~(なのですよ~)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。