Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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第十話 同じ卓に着け・後編

「ですから、お話しませんか?今度は、対等に」

 

 実に優雅な手付きで向かいの席を指すファトゥム。

 自白剤を盛られた側としては、素直に席に着く事ができない。

 

「……1つ答えてくれ。……俺たちが敵にならない着地点はあるのか?」

 

 だから、席に着く前に、俺は俺が求めている事を訊ねた。

 カルディナと俺が、友好ないし休戦に着地できるのかどうか。

 そんなモノはないと言われたら、俺はもう全力で逃げる。

 

「カルディナは、貴方との融和を望んでいます」

 

「……」

 

 鵜呑みにはできないファトゥムの回答。でも、一縷の望みはあると、俺は自分で倒した席を立たせ、慎重に腰を下ろした。

 ファトゥムは満足そうに微笑んでいるが、なんとも胡散臭い。

 

「……まず、何を話せば良い。話せる事なら、話してやる」

 

「では最初に、貴方が何者であるのかを」

 

 最初と言っておきながら、核心を突いてきやがった。しかも明確な回答が俺の中にすらない質問だ。

 新手のいじめだろうか。

 

「……分からない、というのが俺の答えだ」

 

「分からない?それは何故ですか?」

 

「……俺はログイン画面を通ってない。それで察してくれ」

 

 どこまで明かしたものか悩んだ末、その事だけは明かした。自白剤が効いてしまった時点で、俺がプレイヤー保護機能のある〈マスター〉でない事はバレているだろう。そもそも自白剤を使ってきた時点で、だな。

 

「……貴方は〈マスター〉ではない、という事で間違いないですか?」

 

「ゲームプレイヤーではないって意味ならな。性質がどうとか、俺のアバターが〈マスター〉と同質か問われたら、それこそまた分からないって返すしかない」

 

 ファトゥムはやはり驚きはせず、されど全く動揺がない、という訳でもなかった。議長に聞いてはいたが、事実を確認するまで信じきれずにいたのか。

 より明確にするため、言葉を厳密にしてきたが、それに俺が答えても彼の歪んだ眉根は解れない。

 

「……貴方は、いったい何なのです?」

 

 急に、ファトゥムの質問が曖昧になった。それは彼をして理解しきれない存在に出会ってしまった、純粋な疑問なのだろう。

 

「悪いが、それは俺も調査中だ。管理AIたちからは〈イレギュラー〉判定喰らってた気がするが。お前が聞きたいのはそんなんじゃないだろ?」

 

「……」

 

 ファトゥムは俺が何者だったか聞き出せず、瞑目した。そうしてほんの数秒後、頭を振って俺を見据える。

 

「失礼。では、貴方の目的を聞きましょう」

 

「目下、生きるのが目的だよ。この世界は修羅すぎる。この世界で目覚めて数日で、管理AIに生殺与奪の権を握られたくらいだ。どうにか取引して、仕事をいくつか引き受けるのを条件に、こうやって一命を取り留めてるが」

 

 未知に対する恐怖か、はたまた好奇心か。何か感情を振り払ったファトゥム。

 仕事に戻ったという感じの彼に、俺は己の内にある苦労を、ため息交じりで語った。

 ほんと、この世界は修羅だ。管理AIから逃げ切ったと思えば、次はカルディナ政府。その次はどこに目を付けられる事やら。

 

「引き受けた仕事というのは、〈マスター〉を狩る事ですか?」

 

「正解。まぁ、簡単な問題だよな。ここまであからさまにやってれば」

 

 俺がPKした〈マスター〉は6段階エンブリオを持つ者だけを数えても、28人。そいつらの巻き添えを食らった〈マスター〉も居るから、全体数を数えればもっと多くなる。

 ちなみに、ティアンの殺傷は絶対に避けた。わざわざウィル子に〈マスター〉とティアンを区別するマーカーを付けてもらったくらいだ。

 ティアンだけは、殺したら取り返しの付かない命だけは、ウィル子や俺の憧れる人物に誓って、殺さないようにしている。

 命とは、曰く奇跡なのだ。

 

「その仕事はあくまで見逃してもらうための対価、なのですよね?」

 

「ああ。あくまでもそういう取引なだけだ。あいつらに与している訳じゃない。個人的に、与しづらくもあるしな」

 

「与しづらい理由は?」

 

「目的優先の被害度外視なところ。彼らの熱意は分からなくもないが、それにしたってティアンを蔑ろにしすぎだ」

 

 俺から見ると、管理AIたちはティアンを、命を軽視している。そこら辺は、俺の倫理観と誓いに反していて、相容れない。

 まぁ、管理AIたちは目的達成のために生み出され、しかも彼らを育て上げた、彼らにとっての〈マスター〉のような存在に望みを託されている。止まるに止まれないだろう。今まで出した犠牲を無駄にしないためにも。

 ……ちょっと疑問なのが、そんな殊勝な心掛けをしている管理AIが果たして何人居るかってところだが。

 

「貴方は、あまり人殺しをしたくないんですね?」

 

「ティアンは絶対殺したくない。そいつが死んだ方が良い奴でも殺したくない。これは、誓いみたいなもんだ。俺の持つ力への」

 

 俺の力、ウィル子の方を見やれば、少し照れたように頬をかいている。

 やっぱり、何処か『戦闘城塞マスラヲ』のウィル子とは差異があるが、それでも、彼女はウィル子を象っているのだ。

 ならば、オリジナルウィル子の友であり、最愛の信徒だった川村ヒデオの心意気を、俺は継ぎたい。

 それが、俺の持つ力への敬意だ。

 

「〈マスター〉殺し、PKにはあまり忌避感がないと」

 

「ないね。殺しても死なないだろ?だから別に。強いて忌避してる点を上げるなら、こっちも殺されそうって事だ。さっきも言ったけど、生きるのが最優先なんでな。この仕事は不本意だよ」

 

「不本意でも、続けなければならないんですか?」

 

「命運握られちゃあな……」

 

 話が進む毎に、ファトゥムは余裕を取り戻しつつある。多分、推測通りの回答が続いているのだろう。

 相手の読み通りというのは少し(しゃく)だが、相手を落ち着けるという点では望ましいか。

 

「ではその不本意な仕事を、多少ながらも本意なモノに変えませんか?」

 

「……どういう意味だ?」

 

「我々がPKを依頼するのです。当然、達成されれば報酬をお支払いします」

 

「……」

 

 なるほど、とは思った。今後も続けなくちゃいけないが、手に入るモノと言えば、管理AIからのお目溢しとPKした〈マスター〉のドロップ品。今後、そのPKした〈マスター〉からの報復があるとなると、損失の方が上回っている。

 そこで、この不本意な仕事を、カルディナは依頼にしてくれると言うのだ。そうなると、利益の方が上回る可能性が出てくる。カルディナは色んな意味で富豪国だ。金払いを渋りはしないだろう。

 問題となってくるのが、依頼という形になる以上、カルディナに手綱を握られ、彼らに利益をもたらしてしまう事。

 正直、俺にとってカルディナも管理AIと同じくらい与しづらい。原作でもまだまだ全貌が見えなかったが、あの議長の企みは結構不穏なのだ。

 でも、〈セフィロト〉のようにカルディナの実働部隊に入るのではない。依頼という仕事契約をなされるので、服従とまでは行かないだろう。

 それに、そういう仕事を請け負う関係になれば、敵をけしかけてくる事は控えてくれるだろう。多少なりとも、友好関係が築かれる訳だ。

 〈セフィロト〉が明確な敵にならないという時点で、俺には多大な利益に思えてくる。

 

「依頼、という事は、受けるも受けないも俺の自由だよな?」

 

「ええ、もちろん。依頼主と請負人は対等の立場です。我々はそちらの自由を阻害するつもりはありません」

 

「そうか。確かにそれならお互い対等だし、俺にも利益がある」

 

「では……」

 

「だが、断る」

 

 話の流れ的に取引を呑むところだろうが、俺はあえて拒絶の姿勢を示した。この流れなら、この名言を使うに適した瞬間だと思ったのだ。

 

(マスター……)

 

 ウィル子から哀れむ視線と思念が注がれるが、もちろんそんな『ジョジョ』の明言が言いたかっただけではない。ちゃんと正当な理由がある。

 

「最初に薬を盛っといて、今更どの口で友好を結ぼうってんだ。悪いけど、俺はお前たちを信用できない」

 

 そう。俺はファトゥムを、ひいてはカルディナ政府を信用できない。

 先程も言ったが、カルディナ議長の動きは凄く不穏だ。そんな相手の依頼を受けるなど、罪の片棒を担いでいる気がしてならない。依頼の内容が一見正当なモノだったとしても、俺は裏を勘ぐってしまう。

 

「そう、ですね……。無礼に対する謝罪、それを忘れていました。貴方が話の分かる方だったから、それに甘えてしまいましたね」

 

「悪いが、俺も完全に合理性で動ける人間じゃない。どっちかって言うと感情論寄りの方だ」

 

「ええ。ですから、遅ればせながら、こちらが我々の誠意になります」

 

「……え?」

 

 申し訳なさそうにしながら、ファトゥムはある物をテーブルに広げた。

 それは山のように積まれた金銭、救命のブローチ10個、身代わり竜鱗10個、それとアイテムボックスである。

 

「アイテムボックスの方は重量にして100万トンの許容量があり、《窃盗》対策付与、保存アイテム時間停止機能付きです。取り急ぎ用意した物ですが、それでも最上級の物を用意させていただきました」

 

 俺が驚愕しているのを他所に、ファトゥムはアイテムボックスの詳細を説明してくれたが、訊きたいのはそういうところではない。

 

「こ、これらを俺に渡すと?」

 

「はい。薬を盛った謝礼としては足りないでしょうが……」

 

「……」

 

 どう考えたって懐柔策なのが、揃えられているのは俺が是が非でも欲しい品物ばかり。

 金銭は当然、これからこの世界で飲食しなければいけないし、回復アイテムだってたくさん買いたい。

 救命のブローチ、致命ダメージを無効化するそのアイテムは、俺が今後この修羅の世界で生き残るのに必須だ。そのお値段、この世界の通貨にして500万リル

 身代わり竜鱗、ダメージを90%カットするそのアイテムも同上だ。こっちのお値段は30万リル。

 アイテムボックスは、ブラックグリントやその武器弾薬を保管するのにいくらあっても足りない。

 それらが得られると言うなら、懐柔されるとしても受け取りたい。でも、カルディナに踊らされたくはない。

 

「こ、ここ、こんなんで許されると思うなよ?で、でも、俺も大人だ。誠意を形として見せたんだったら、大人らしく、今回だけは特別に許してやらなくもない。いいか!特別にだからな!」

 

 心が揺れた俺は、獅子身中の虫となる事にした。そう、獅子身中の虫だ。決して、心までは許すつもりはない。魂までは売らねぇ。

 

(マスター……)

 

 再度ウィル子から哀れむ視線と思念が注がれるが、背に腹は代えられんのだ。このテーブルに広げられた品を自力で得るとなると、どれ程時間がかかるか分からない。

 それに、この謝礼を受け取って、取引を呑めば、俺は高収入となり得る収入源を確保できる。受ける受けないはこっちの自由なのだから、あからさまに裏がありそうなのは断ってしまえば良いのである。

 

(見事なテノヒラクルーですね)

 

 これも葦名の、じゃなくて俺の生存のためだ。

 

「という事は、取引を呑んでいただけるんですね?」

 

「依頼くらいは受けてやっても良い。だが、俺はレアだぜ?報酬は高いぞ」

 

 俺は相手に懐柔されていない事を示すため、精一杯虚勢を張った。虚勢の参考元はとあるカードゲームアニメのカニさんだ。

 

「心得ています。依頼はメールでお伝えしますので、フレンド登録を」

 

「あ、ああ……」

 

 ファトゥムからフレンド申請され、フレンド登録許可不許可のウィンドウで「YES」を恐る恐るタッチした。

 記念すべき俺のフレンド2人目が、ファトゥムとなった瞬間だった。




(*´w`*)<殺し屋ロールプレイって、マリー・アドラーと被ってません?

(´英`)<触れるとこそこなの?後、俺のはロールプレイじゃなくてマジの殺し屋だ。言うなれば、傭兵(レイヴン)になったのさ

(*´w`*)<そんな事よりカルディナ議長に触れておいた方が良くないですか?

(´英`)<そっちが話題を振っておきながら????????

(*´w`*)<カルディナ議長はウィル子たちが〈マスター〉、ゲームプレイヤーでない事を演算して把握しています。ですが、そこ止まりなのでウィル子たちが何者なのか分かっていませんでした

(´英`)<俺は無視して進めるのね……。まぁ良いか。……確かに、前回でも測りかねてるみたいな事がファトゥムから語られてるしな。あの議長の演算でも、俺の正体までは計算できなかったのか

(*´w`*)<今後はPK続けつつ、自分探しも視野に入れないといけませんかね?

(´英`)<そうすべきなんだろうが。ま、今後次第だな。俺は正直、「俺が何故ここに居るのか」なんて哲学したくないし、のんびり生きたい

(*´w`*)<原作死亡キャラ生存とか、やらないんです?

(´英`)<……ま、状況次第だな。助けられるなら助けたいが、この修羅の世界で人助けは楽じゃない

(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
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