Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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第十一話 転勤

 俺こと、川村英司の話を聞いてほしい。

 

「やられた……で、良いのか?」

 

 新聞を偶然購買したら、ヤバイ事が書かれていた。

 その内容とは――

 

『〝喪失時代(ロストエイジ)〟の正体判明!!なんとその正体は、〈超級(スペリオル)〉の〈マスター〉だった!!?』

 

 ――そんな見出しの記事である。

 ご丁寧にしっかり俺とウィル子の顔写真が添えられていた。背景から察するに、あのファトゥムと対談した屋敷の入り口。ファトゥムに連れ込まれた瞬間を撮られていた。いつの間に隠し撮りされたんだ……。

 とかく、〝喪失時代〟と呼ばれた事件の主犯が俺であると露呈している以上、ファトゥムに情報をリークされたのは明確だ。

 しかし、俺の正体が〈超級〉という事になっている。ファトゥムやカルディナ議長は俺が〈マスター〉でないと気付いているはずなのだが、いったいどういう思惑なのか。

 

「とりあえずは、「やられた」で良いのではないですか?ウィル子たちが逃避行してる原因なのですし」

 

 思惑はどうあれ、ウィル子の言う通り不利益をもたらされたのは事実だった。

 その不利益とは、あの〝喪失時代〟の被害がPKによるモノだと判明してしまい、PKした〈マスター〉からお礼参りされるかもしれない、という事である。

 おかげで、俺はほとぼりが冷めるまで高跳びしなくてはならなくなった。ほとぼりがいつ冷めるのかは知らないが、何にせよ、しばらくカルディナには居られない。

 だから現在は逃避行中。煌玉馬(ジルコニア)で空をかける魔法馬車の中、砂漠越えしている最中だ。

 

「でも、あんな友好的な態度を取っておいて、どうして今さらこんな事をしたのでしょうか?」

 

「さてな。カルディナでPKされたくないってのもあるかもしれないが、それだけで喧嘩売ってくるとは思えんし……」

 

 ウィル子と俺の2人で考えても、敵の思惑は全く予想が付かない。これだからカルディナは嫌なんだ。原作でも絶対重要になるだろう要素を匂わせてくるくせに、全然情報が出されないんだから。

 〈セフィロト〉の構成メンバーも、具体的な戦闘スタイルがほとんど分からないし。どうせ初見殺し連中なのだろうが。〈超級〉のだいたいは初見殺しだし。

 

「はぁ……。やっぱ原作で情報が全然出てねぇ場所は居られないな。初見殺しに出会いたくない」

 

「とすると、しばらくはアルター王国に留まりますか?」

 

「しばらくどころかずっと留まりたいが、そうは行かないんだろうなぁ……」

 

 管理AIから請け負っているPKの仕事は、場所などの指定はないが、どう考えたって広い活動範囲を求められる。

 それに、長く留まればそこの第6段階〈エンブリオ〉持ちを狩り尽くしてしまうだろう。いや、狩ったって絶命しないが、何度も挑んでいたら対策されるし、初回で進化を促せなかった時点で意味が薄い。俺の生存のためにも、仕事を果たすためにも、初回以降の戦闘は避けたいのだ。

 

「アルターはカルディナより第6段階少ないだろうし、狩り尽くしちゃうのは早いだろうなぁ。まぁ、カルディナみたいにそんな急ぐ気はないが」

 

「さすがに、2か月で28人はやりすぎましたね」

 

 管理AIに睨まれているからPKに執心したが、それで国に睨まれたら本末転倒だ。これ以上の死亡フラグなんて建てたくない。

 故に、国に睨まれない程度のペースを落とす予定である。

 

「あ、そういえば管理AIで思い出したのですよー」

 

「ん?なんだ?なんか文句言われてたか?」

 

「いえ。言われたのではなく、言いました」

 

「さりげなく何やってんの!?」

 

 まさか知らぬ内にウィル子が管理AIに喧嘩売ってるとか、聞きたくなかった。

 

「喧嘩を売ったのではなく、正当な抗議なのですよー。川村英司(マイマスター)には『プレイヤー保護機能』が付いていないので、前回のように自白剤などを使われたら危険なのです。ですから、それ対策の特典武具を作らせてくれと、抗議しました」

 

「お、おう……。有り難いけど恐れ知らず……」

 

 今のところ何らかの制裁は受けていないし、抗議で不興を得る事はなかったようだ。命拾いした気分だよ、全く。

 

「という事で、こちらが新製品になります」

 

「……注射器?」

 

 ウィル子が「PON☆(CV・ベネット)」と取り出したのは、半透明の白い液体が入った注射器だった。

 

「注射器の中に入っているのが今回の新しい古代伝説級(エンシェントレジェンダリー)特典武具、【隠狐致死(おんこちし)フォックス・ダイ】です!」

 

「わぁい。すっごい聞き覚えあるー」

 

 聞き覚えのある部分は「フォックス・ダイ」。その言葉は『メタルギアシリーズ』に登場した、特定の人物を殺す感染ウィルスだ。

 

「もちろん、今回も完全再現ではないのですよー。そもそも、ウィルスですらありません。これはナノマシンなのです」

 

「ま、そりゃそうだよな。まんま再現だったら一切誰も殺せないウィルスになるし、自白剤の対策にはならない」

 

 【細心注衣(さいしんちゅうい)キングス・オーダー】や【望遠傍鏡(ぼうえんぼうきょう)アンダーライン】の時と同じ、モチーフにしただけの物だった。

 

「まず、自白剤とかの対策としてのスキル、《コールド・アイド・フォックス》。このスキルは、精神に干渉するあらゆる状態異常を無効化します」

 

 第1スキルは、当初の目的に沿った効果。微妙にスキル名がフォックスにかけられている。直訳だと「冷静狐」になるが、まぁ、うん。

 

「次に、HPオートリジェネスキル、《ナノマシン・セラピー》。HPを徐々に回復させます」

 

 第2スキルは、ナノマシンらしい回復効果。SFで体内に注入される類のナノマシンって、どういう原理か知らないけど体を治療するのが多い気がする。

 

「最後に、今回のモチーフを部分再現したスキル、《隠れ潜む狩人(フォックス・ダイ)》。散布されたナノマシンを吸い、特定条件が満たされた人間を心筋梗塞みたいに殺します」

 

「最後に物騒なの来たな!?」

 

 第3スキルは、まさしくフォックス・ダイな効果。モチーフ元はウィルスだったが、同じ事をナノマシンでやるらしい。

 名前から察してはいたが、本当にそんな物騒なスキルがあって、俺は思わず叫んでしまった。

 

「生殺与奪を握られたら情報なんて吐いちゃうでしょうから、対抗して相手の生殺与奪を握ろう。という説得で、管理AIたちにこのスキルの付与を許してもらったのですよ」

 

「効果も物騒なら発想も物騒だな」

 

 今後有り得そうな未来だし、それに対策するのは当然の備えなのだが。それにしたってマフィアばりに物騒だ。

 

「でも、さすがに問答無用で殺すのは却下されました」

 

「でしょうね」

 

 無条件殺戮とか元ネタにもあるフォックス・ダイ変異種だし、というか管理AIたちが似たようなの〈イレギュラー〉判定して封印したはずだ。確か、「災菌兵器」だったか。具体的な効果は忘れたが、無差別に感染者を殺すウィルス的な奴だったはずだ。

 そんなヤバい物の製造を、管理AIたちが許す訳はない。

 

「そのため、特定条件の達成という制限が付けられました。その特定条件は、ナノマシンを体内に侵入させる事。ナノマシンを常時散布できる範囲は半径1メートルに限定されているので、マイマスターの半径1メートルで呼吸してもらわなければなりません」

 

「至近距離に潜り込まなきゃ駄目って事か。射程長い奴にはほとんど無意味になったな」

 

「それと、事前に対象のDNAを24時間以内に採取している事。髪だの唾液だの血液だの、事前に得ておかないと駄目なのですよー」

 

「ナノマシンにDNAを覚えさせる的な感じでか。あらかじめ、それも1日以内に接触しておかないと使えないのか……」

 

 ウィル子にスキルの詳細を教えられ、総合して考える。

 

「……使いづらくね?」

 

 対象に1メートル以内まで近づいてもらった上で、事前準備をしておかなければならない。しかも、事前準備は1日以内。

 はっきり言って、特定条件の達成は困難だ。使い時がほとんどない。

 

「ウィル子もそう思うのですが、そこまで制限しないと、制作を許可してもらえなかったのですよー……」

 

 ウィル子も使いづらさを認識しているようで、しょんぼりと俯いていた。

 ウィル子的には、もうちょい使い勝手の良い物にしたかっただろうな。それを、管理AIたちに止められた訳だ。なら、責任の所在は管理AIにある。そんな危険物を簡単に作れるお前らが悪いと言われても、俺は知らない。文句は俺にウィル子を与えた神にでも言ってほしい。俺もその神と面識がないけど。

 

「ま、元より精神干渉状態異常対策のための特典武具だ。おまけにHPオートリジェネが付けられただけ、儲けもんと考えよう。な?ウィル子」

 

「そう、ですね……。特典武具の制作数を減らしてないだけ、良しとします」

 

「え?減ってないの?」

 

 超級相当を1つ、神話級(マイソロジー)相当を1つ、古代伝説級相当を2つという以前もぎ取った特典武具制作数に今回のもカウントされていると勘違いしたが、どうやらそうではないらしい。

 

「はい。貴方たちもマイマスターが知っている貴方たちの情報を漏らされたくありませんよねと。そう言ったら、今回は特別にノーカウントにしてもらえたのですよー」

 

「……」

 

 この子、俺の生存に全力を尽くしている。本当、原作ウィル子に似ているようで違う、何というか、個性がある。ちょっと怖いくらいに。

 

「ま、なんだ。……ありがとう、ウィル子。俺のために頑張ってくれて」

 

 行き過ぎているきらいはあるが、それでも俺のために尽くしてくれているのだ。感謝の1つでも贈るのが人情というモノである。

 それに、俺は結構満更ではないのかもしれない。俺の心は、ほのかに暖かくなっている。

 

「どういたしまして。では、武器や防具は持っているだけじゃ意味がないぞという事で。装備しましょう」

 

 目を引き付けるように、ウィル子は注射器を手に取った。

 

「……注射しないと駄目なのか」

 

「血流に乗せるタイプのナノマシンですからね」

 

「……ウィル子が俺に注射するの?」

 

「安心してください、マスター。マスターの肉体はデータとして把握していますので、血管の位置は分かります」

 

「いや、注射ってその手の知識がないと危な―――」

 

「問答無用、なのですよー!ブスリ♂」

 

「アッー♂」

 

 かわむら えいじ は 【隠狐致死フォックス・ダイ】 を そうびした▼




(´英`)<今更だけど、注射しちゃうタイプの装備品ってそんなに強い効果を持てないって話じゃなかったっけ

(*´w`*)<古代伝説級特典武具だからです。イイネ?

(´英`)<アッハイ

(*´w`*)<冗談はさておき。《隠れ潜む狩人(フォックス・ダイ)》の条件がきつくなったのは、やはり注射しちゃうタイプの装備品だからって理由もあります

(´英`)<ま、だろうな。如何に古代伝説級だからってちょっと盛り過ぎな気はしたし。でもほんとこれ、どうやって確殺スキル使えば良いんだ……

(*´w`*)<一応、遠隔でのナノマシン散布方法はあります。マイマスターが装備したみたいに、注射器で注入してしまうとか、ナノマシンを詰め込んだカプセルを飲ませるとか。ただ、体内に侵入させる前にDNAを取得していないと、確殺効果は発揮されません。代わりと言ってはなんですが、注射の方なら敵識別が装備されている限り永続します

(´英`)<先に敵を識別させておかないと駄目なんだな……。と言うか、注射の方が便利そうだな

(*´w`*)<はい。しかも注射の場合は相手の装備品にできます。そのせいで逆に相手のアクセサリー装備枠が空いてなくては駄目ですが

(´英`)<装備させた場合って、相手にはどう映ってるんだ?

(*´w`*)<アクセサリー装備枠に【フォックス・ダイナノマシン】と表記され、説明文に古代伝説級特典武具【隠狐致死フォックス・ダイ】によって製造された物である旨が記されます。さらに、装備効果欄で《ナノマシン・セラピー》と《???》のスキルを確認できます

(´英`)<《???》の方が、確殺スキル発動時に開示される感じか

(*´w`*)<なのですよー

(´英`)<でもやっぱり、そんな怪しい物ずっと装備している奴なんていないよな

(*´w`*)<なのですよー……

(´英`)<今回のこの辺りにするか。それでは皆さん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
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