Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram 作:RAINY
□■アルター王国カルチェラタン伯爵領ドライフ皇国国境付近
「情報ではもうすぐだ。全員、気を引き締めろよ」
〈境界山脈〉の端にして、まだ山地の目立つ場。そこで、獅子の如き鬣がついた紅いジャケットを着込む男が、崖からドライフやカルディナに伸びる街道を見下ろしていた。同時に、男に付き従う者たちへ指示を出している。
男の名は、エルドリッジ。〈マスター〉・ティアン問わず強盗するクラン、〈ゴブリンストリート〉のオーナーだ。自然、彼に付き従う者はクランメンバーという事になる。
そんな者たちが何を目的に潜伏しているかと言えば、当然、強盗である。
「カルディナからドライフとアルターに商品を卸す輸送団が、この道を使うはずだ。長距離を行く都合上、〈マスター〉は護衛に雇えない。護衛のティアンにも、名の知れた奴は居ない。楽な仕事だ」
エルドリッジは大量の商品を運ぶカルディナの輸送団に関する情報を得ており、それが今回の標的だった。その輸送団や運ばれる商品にカルディナ政府は絡んでいないので、その輸送団が襲われたとしても、カルディナ政府が目くじら立てる事はない。
強盗しても指名手配されないというリスクヘッジの観点で以って、エルドリッジはその輸送団を標的としたのだ。
「《スポッター・オウル》で3キロ先に複数の竜車を確認」
「良し。【
部下である二アーラが目標を観測したのに合わせ、エルドリッジが次の指示を出した時だ。
エルドリッジの《危険察知》に反応があった。周囲を警戒したエルドリッジは彼らの近くまで迫るミサイル弾頭を視認する。即座に、《グレータービッグポケット》でその弾頭を爆ぜる前に強奪し、自身のアイテムボックスに仕舞おうとした。
だが、それは間に合わない。エルドリッジが強奪する前に、その弾頭は空中で爆ぜたのだ。周囲に白煙を巻き散らせて。
「くっ、煙幕か……!全員周囲警戒!何者かが俺たちを狙って来てやがる!」
エルドリッジが皆に投げかける警告。それは正しいモノだ。何者かが〈ゴブリンストリート〉を狙っている。
ただ、やはりその警告は遅かったのだ。
銃声と呼ぶにはあまりに重苦しい、まるで金属で金属を締め上げたような音が数度、エルドリッジの鼓膜を揺らす。
【PTメンバー〈ニアーラ〉が死亡しました】
【蘇生可能時間経過】
【〈ニアーラ〉はデスペナルティによりログアウトしました】
【PTメンバー〈フェイ〉が死亡しました】
【蘇生可能時間経過】
【〈フェイ〉はデスペナルティによりログアウトしました】
「なっ!?」
次の瞬間には、仲間のキルログが流れていた。エルドリッジは動揺を隠せない。
しかし、そんな事で固まっている暇は彼にない。
『殺しているんだ。殺されもするさ』
猛烈な突風が吹き、煙幕を払う。開けた視界には、煙幕が張られる前には居なかった、黒い人型機動兵器が空中に制止していた。
エルドリッジは瞠目する。
「〝
『俺が何者か分かってるなら、そう驚く事もないだろう。カルディナで暴れ過ぎたから、狩場を変えた。それだけの事だ』
機動兵器はご丁寧にも返答し、悠然と空に佇んでいた。そして、その返答にエルドリッジは納得する。狩り過ぎて騒がれたから狩場を移す。PKとしては当たり前の心理だ。
「全員ログアウトしろ!」
伊達に強盗クランとして生計を立てていないエルドリッジ。納得してからの判断は早かった。
だが、それも手遅れだ。
「オーナー!何故かログアウトできません!」
「な……」
『悪いけど手は打たせてもらっている。さっきの煙幕に俺のアイテムを混ぜておいた。吸引したお前らは、すでに俺の影響下だ。1キロくらい離れでもしないと、俺の影響下からは逃げられないぜ』
そう。あの煙幕には、【
「説明ありがとよ……っ!全員、俺が時間を稼ぐ!その内に逃げろ!」
エルドリッジはその影響範囲を聞き逃さなかった。あえて開示されただろうその情報に不信感を抱きつつも、彼は部下たちに撤退を促し、自身は臨戦態勢に入る。
彼は、勝てないと直感していた。自身は〈
敗北は必至。だけど彼は相対する。
『その心意気や良し』
「……お褒めに与り、光栄だな。……で、仕掛けてこないのか?」
機動兵器は滞空し、不自然にも攻撃を仕掛ける素振りを見せない。狩りに来たと言うなら、いったい何を待っていると言うのか。
『無駄な狩りはしない主義なんだ。それに、お前らの戦力が怖い。6段階〈エンブリオ〉はお前しか残ってないだろうが、それ未満の〈エンブリオ〉でも逆転の可能性はある。メイデンとか居たら最悪だ。十中八九ジャイアントキリングの手がある』
「……二アーラとフェイを初撃でやったのも、戦力を削ぐためだったのか」
『正解だ。見事な判断力だな』
煙幕からの不意打ちでPKした2人。二アーラとフェイ。彼女らは6段階〈エンブリオ〉である。英司は、エルドリッジと合わせ、6段階〈エンブリオ〉持ちを3人同時に相手するのを嫌った。それ故の初手不意打ちだ。
その事を、エルドリッジも読み取っていた。さらに言うなら、わざわざこうやって会話して、エルドリッジの部下たちが逃げる時間を与えているのも、戦力を削ぐためだと把握している。
(どこまでも用意周到で、とことん臆病な奴だな……)
エルドリッジは冷や汗をかきながらも、内心そのように悪態を吐く事で折れそうになる心を支えた。現状において彼が咽び泣かないのは、相手の臆病さと自身の誇り故だろう。クランオーナーをやっていなければ、今すぐにでも自決したい気分なのは間違いない。
『さて、与える猶予はこれくらいで充分だろう。後は、己の手で仲間が逃げる時間を稼いでみせろ』
「言われずとも!」
ブラックグリントが右腕の
そんな彼に、キャノンと呼ぶに相応しいふざけた口径の弾丸が襲いかかる。幸か不幸か、放たれる5連射の砲弾はそれぞれ弾道がブレていた。超音速の弾丸であるが、超音速で動けるエルドリッジは、それに対処する。
まず、そのブレた弾丸の間に体をねじ込み、余波でダメージを与えてきそうな砲弾は《グレータービッグポケット》で強奪。安全圏を無理矢理作る。
(いける……!これなら、時間は稼げる!)
まず一手を切り抜け、エルドリッジは歓喜した。勝ちはなくても、時間を稼げる希望は見出したのだ。それが、儚い希望とも知らずに。
『強制強奪スキルか。実弾は無効と考えるべきだろう。エネルギー兵器の使用を提案する』
『そうだな。丁度、あれが出来上がってたはずだ』
ブラックグリントと英司が何やらやり取りすれば、ブラックグリントの武器が切り替わる。
その武器は歪な形をしたレーザーライフル、X000KARASAWA。装弾数わずか4発にして、1発がふざけた威力を持つエネルギー兵器である。
エルドリッジは、その兵器がそんなトンデモ兵器とは判断できていない。だが、エネルギーチャージの音が長く響いている事に、不穏さだけは感じていた。
「撃たせるか!」
エルドリッジは左手を伸ばす。その左手にセットされているスキルは《グレーターテイクオーバー》。手で掴める物に限り、射程範囲内に存在する相手の部位を奪うスキル。
そのスキルで、エルドリッジはブラックグリントの頭部パーツを奪った。照準を付けさせないためにそうしたのだ。
目の前に居るのがただのブラックグリントだったら、それは正解だっただろう。残念ながら、このブラックグリントは川村英司のブラックグリントなのである。
『《
「え?」
『
英司の掛け声と共に、両腕から迸る閃光が発射された。その弾速は、エルドリッジを以てしても回避不可能。無慈悲に1発目の閃光がエルドリッジの救命のブローチを砕き、2発目の閃光がエルドリッジの命を砕く。
【致死ダメージ】
【蘇生可能時間経過】
【デスペナルティ:ログイン制限24h】
エルドリッジは健闘虚しく、デスペナルティとなったのだった。
(´英`)<まず説明。ブラックグリントの武装はACVDに準拠している。だから、今回使った武装もACVDの物だ
(*´w`*)<ブラックグリントはACFAのホワイトグリントを基にしているって言うのが主流の解釈ですが、でもやっぱりACVDのオーバード・ウェポンがどうしても使いたかったのですよー
(´英`)<うん。ブラックグリントにオーバード・ウェポンとか、変態通り越して悪夢だな
(*´w`*)<という事で、今後オーバード・ウェポン装備予定です
(´英`)<先に謝っておく。オーバード・ウェポンの未来の被害者、すまん
(*´w`*)<被害者と言えば、今回の〈ゴブリンストリート〉の方々も大概被害者なのですよー
(´英`)<〈ティアン〉殺し死すべし。慈悲は相手の力量次第
(*´w`*)<すっごい弱腰なニンジャスレイヤーモドキなのですよー……
(´英`)<ちなみに、一応捕捉だが。5連スナキャ使ったのは弱い者いじめでもなんでもなく、救命のブローチ越しからでも確殺するためだ。3連スナキャでも良かったが、弾道がブレる観点から、保険として5連の方にした
(*´w`*)<どこまでも用意周到で、とことん臆病ですね……。マイマスター……
(´英`)<否定はしない。ただし反省もしない。今後もPK時は確実に勝てる状況でしか戦わんからな、俺は
(*´w`*)<そうして奇しくも、マイマスターは『〈超級〉に命を強奪される王』さんを最初に命を強奪する〈超級〉となったのでした
(´英`)<お前、『〈超級〉に命を強奪される王』さんの事エルドリッジって呼ぶの止めろよ
(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん
(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)