Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram 作:RAINY
俺こと、川村英司の話を聞いてほしい。
間に合わなかった。
見下ろす大地は、死滅していた。植物も、モンスターも、人も、区別なく死んでいた。
間に合う訳がなかったのだ。超特急と
実際、ジルコニアには休まず走ってもらったが、ルニングス領への到着に3日はかかった。おかげで、もう【グローリア】の姿はない。あの竜は王都に向かい、ここを離れている。残るのは死の足跡。枯れた木と枯れてない木の境がはっきりしており、どういう経路を辿ったか丸分かりだ。
「……」
俺はただ、その足跡の先を眺めていた。
救えなかったと思うのは傲慢だろう。ともすれば、間に合わなかったと称するのも、お門違いだ。
あの〈
(俺は、【グローリア】に近付く事さえできない……)
【グローリア】は半径1キロメートルの範囲に結界を張っており、その結界内に入った合計ジョブレベル499以下の
ここで問題になってくるのが、俺のジョブレベルである。
(レベル1の俺は、結界内に入れない……)
俺の唯一就いているジョブ、【
よって、俺が結界内に入ろうものなら、即死する。《
(ブラックグリントも、駄目だ……)
ブラックグリントが倒した者のドロップを俺の物とするため、ブラックグリントは俺の装備判定となっている。煌玉人のような存在であり、俺の超級武具なのだ。看破系のスキルで見抜かれた際には、神話級武具と表記されるが。
何にしろ、俺の装備であるが故に、装備主である俺が結界内に入らねば、いくら結界内でブラックグリントが攻撃してもダメージにならない。
(ウィル子の力で……。いや、無理か……)
ゲームシステムを弄れるウィル子の
しかし、無限相当出力リソースは現在において管理AIたちの監視下にある。もしその状態でそのリソースを私的利用しようとすれば、管理AIたちは実力行使に出るのが目に見えていた。そうなったら、管理AIたちに注力せねばならず、【グローリア】に割ける余力はない。
(八方塞がり、か……。じゃあ、これから起こる惨劇を、俺は見過ごすのか?)
1つの領土がすでに滅んでいるが、被害はこれだけに留まらない。俺の記憶が正しければ、後1つ、都市が滅びる。
「マスター……」
ウィル子が心配そうに、俺へと声をかけた。俺はそんな彼女に微笑みを返し、同時に再認識する。俺が憧れた存在は何で、俺が立てた誓いはなんなのかと。
(見過ごすなんてできない。命が奇跡である事を知る男に憧れた俺が、これを見過ごすなんて嘘だ)
『戦闘城塞マスラオ』の主人公、川村ヒデオに憧れ、彼の不殺を俺も誓った。ならばこそ、億千万の闇を打ち払った彼に倣い、狂竜に抵抗するくらいはすべきだ。
(考えろ。犠牲を減らすくらいはできるはずだ。考えろ。お前の憧れた主人公なら、何か策が浮かぶはずだ)
考えて考えて、憧れの主人公が戦っていた姿を想起して、そうして思い出す。
「……ウィル子。原作ウィル子が信徒の体を贄にして奇跡を起こしたように、お前にも俺を贄とする事で出力を上げられたりするか?」
『戦闘城塞マスラオ』にて、億千万の闇を打ち払う時、ヒデオがその身を捧げる事で奇跡を成していた。
もしかしたら、俺の心から生まれたウィル子にもそういう能力が備わっているかもしれない。
その仮説は、ウィル子の表情で以って証明される。
「……っ!」
ウィル子は息を呑み、青ざめていた。おそらく、できるのだろう。俺の体を贄とすれば、ウィル子は出力を超級以上に上げられる。
「ウィル子」
「嫌です!」
ここで『できない』とウィル子が言わなかったのは駄目押しだ。最早俺の中でそういう効果が備わっている事が確定される。
ならば、俺がすべき事は1つ。
「
ジルコニアは一度俺とウィル子を一瞥してから、天空を駆け始める。
「ジルコニア!止まりなさい!貴方もこれからしにいくのが自殺行為だと、分かっているでしょう!?」
ウィル子はジルコニアに制止を呼び掛けたが、その足が止まる様子はない。ジルコニアも、選択したのだ。動物は飼い主に似ると言うが、煌玉馬にも適応されるらしい。
「マスター!止めましょう!マスターが行かなくなって、この事態は解決されます!〈アルター王国三巨頭〉が倒してくれます!」
「でも、クレーミルは滅びる」
「それは必定です、運命です!マスターが命を懸ける必要なんてありません!」
ウィル子は止まらないジルコニアを見て、所有者である俺の説得に掛かった。彼女は俺の命を第一としてくれている。その優しさは身に染みる程、理解はできている。
「でも、クレーミルの人々は救えるかもしれない」
だからと言って、俺の選択は変わらない。救える可能性があるなら救いに行く。今なら、まだ間に合うのだ。
「マスター……」
「ウィル子、俺だって死にたくない。誰だって死にたくないんだ。クレーミルの人々だって、死にたくない。そんな大勢を、俺の腕1本か四肢全部か知らないが、その程度の犠牲で救える。なら、その身を捧げて世界を救った男に憧れてる俺は、そうしなくちゃいけないだろう?」
「そんな……。そんなの、間違っています……」
俺を説得できなかったウィル子は俯き、一言だけ無力感を零して、その姿を隠した。
左手の紋章に引っ込んだのか、どこぞのプログラムに侵入したのか。どちらかなのかは分からないが、ウィル子は俺を無理矢理止めるような事はしなかった。やろうとすれば、ジルコニアを強制停止するくらいはできるだろうに。
「……行くぞ、ジルコニア。俺たちは死にに行くんじゃない。助けに行くんだ」
半ば独り言のようなそれに、ジルコニアは嘶きを返してくれた。後は、風を切る音だけが響く。
それから1日。今回は、まだ間に合った。だが、あくまで辛うじて、である。
【グローリア】が傷口より照射する光線で、〈マスター〉たちが皆消し飛んでいた。3つある頭の1つ、1本だけ角が生えたそれの口を塞いでいた泥が、崩れ落ちていく。あの泥は〈エンブリオ〉で、その〈エンブリオ〉の〈マスター〉は、光に呑まれたのだろう。
泥が崩れた1本角の頭が、その口内に光を迸らせていた。傷口から出していたのより強い光線を、【グローリア】は照射しようとしている。
「やらせる、ものかよおおおおおッ!!」
誰かが叫んでいた。傷口からの照射から奇跡的にも生き残っていた〈マスター〉が、ただ1人で抗っている。
しかし、無理だろう。【グローリア】は3つある頭を全て倒さなければ、討伐できない。現状において、その頭は3つ全て健在。たった1人に、現状を覆せる訳はない。
俺はその〈マスター〉を半ば見捨てるように、クレーミルへと照射される白光の中に入った。
このままここに居続ければ、俺は死ぬだろう。それを理解して、それでも入った。無理強いするために。
「……ウィル子。このままじゃ俺、死ぬぞ」
そう。現状を打開できるウィル子に、俺は俺自身の命を使って、無理強いする。
現状をどうにかしてくれと、己の身を捧げる。
1本角が青から赤へと変色していく。それが、この白光が光線へと変わる合図だ。ウィル子は、まだ現れない。
「……夢を見ていたようだったな。死んだ後に二次元へ転生する、そんな夢」
死が迫っているのに、不思議と怖くなかった。俺にとってこの第二の人生は、まさに夢だったのだ。
第一の人生が終わった事を実感していないが、それにしたって第二の人生が小説の中だ。どこか現実味がない。だから、俺はこの人生を夢のように、内心感じていたのだろう。
『胡蝶の夢』とはよく言ったものだ。確かに、この第二の人生は、植物状態となった俺が見ている、夢なのかもしれない。そんな、悟りを得てしまった。
1本角が赤に染まろうとしている。
俺は、夢から覚めるのだろう。この甘美なる、第二の人生から。
『マイマスター……。ごめんなさい……』
視界が白んで、何も見えなくなった時。ウィル子の声が脳裏に届いた。
そうして、俺の体は軽くなった。
(´英`)<『俺の体は軽くなった』。死んだとは言ってない
(*´w`*)<本編がシリアス気味なのに後書きはこれですよー……
(´英`)<俺が死んだらこの小説が終わるんだが?
(*´w`*)<ウィル子は一向に構わんッ!!
(´英`)<いや、構えよ。お前のマスターが死ぬぞ
(*´w`*)<死んで別の世界にまた転生するかもしれないじゃないですか
(´英`)<まぁ、この殺伐とした世界から脱したいという気持ちはなきにしもあらずだが。せっかくデンドロの世界に転生したんだから、もうちょい生きさせてよ
(*´w`*)<善処します
(´英`)<全力を尽くしてもろて
(*´w`*)<話は変わりますが、最後1人で抗っていた〈マスター〉は、お察しいただける通り、フォルテスラです
(´英`)<突然の話題逸らし!まぁ、なんだ……。フォルテスラのデスペナは免れなかったな。多分どうやっても
(*´w`*)<プレイヤーアバターは死んでも生き返るんですし、放っておいて良いのでは?
(´英`)<そうだよ(便乗)
(*´w`*)<一番の問題は、その後どうなるかではないでしょうか
(´英`)<流されたけど……。そうだな。フォルテスラは原作において重要なキャラクターだ。こいつがどう転ぶかで話が割と変わってくる。そして、今丁度分岐点にいる訳だ
(*´w`*)<どうなるのでしょうねー
(´英`)<待て。しかして希望せよ
(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん
(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)