Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram 作:RAINY
□■リアル・某所
「……」
1人の男が自室にて、パソコンのキーボードを叩く。彼は、Webデザイナーとしての仕事を在宅で熟している最中だ。熟すというには、憑りつかれたように従事しているが。
それもそのはずだ。彼は、とある事を忘れたくて、仕事に打ち込んでいる。なのに、忘れさせてくれない。
携帯端末がバイブレーションを繰り返す。仕事の連絡もその端末で受けているので、念のためバイブレーションしている原因を確認する。
「……ッ!……」
するが、歯を食いしばって、端末から手を離した。
バイブレーションする原因は、知り合いからのメール。それも、〈
彼はそのゲームを忘れたいからこうしているのに、知り合いたちが忘れさせてくれないのだ。
煩悩を振り払うように、仕事に打ち込む。
そうしていると、突然アラームが鳴った。
「……デスペナルティが、明けたか」
そのアラームは、彼が手癖で設定してしまった、デスペナルティのログイン不可期間が明けた事を知らせるアラームである。
不意に、これも手癖だが、彼は〈Infinite Dendrogram〉の端末を手に取って、装着しようとした。
「……もう、行く意味はない」
だが、装着を中止する。彼にとって、もうあのゲームにログインする理由がない。理由は、全て奪われた。
何もかも、奪われてしまった。
「ッ!こんな、こんなものがなければッ!」
彼はゲーム端末を掲げる。
奪われると分かっているなら、出会いたくなかった。奪われてしまう程無力なら、得たくなどなかった。
出会わせたのはこの端末だと。得させたのはこのゲームだと。彼は、今にも投げ捨てようとした。
しかし、それは携帯端末の着信音で遮られる。
「……」
一旦ゲーム端末を置き、携帯端末を見る。着信者は、ゲームの知り合い。それも、一等長い付き合いの者からだ。
彼は、その知り合いにもうゲームにログインしない事を伝えようと、応答する。
『オーナー!』
聞き慣れた英語の発音が、彼の耳に届く。
「シャルカ、すまない。もうゲームには―――」
『聞いてください、オーナー!クレーミルは!』
彼は、ゲーム内でフォルテスラと名乗る男は、その先を聞きたくなかった。でも、現実を直視しなければならないと、聞き届ける義務があると、耳も目も塞がない。
その覚悟があったからこそ、フォルテスラにはカミが微笑む。
『クレーミルは生きています!!』
「……は?」
覚悟していた事と違う現実を聞き届けたフォルテスラは、呆けながらも次の行動が早かった。
彼は、通話を切る事も放って、ゲーム端末を装着する。そうすれば、する事は1つ。
フォルテスラは、〈Infinite Dendrogram〉の世界に舞い戻った。
「クレーミルが、生きている……」
フォルテスラはセーブポイントに設定していた城塞都市クレーミルのそれにリスポンし、無傷の都市を見回した。
行き交う人々がおらず、緊迫感のある空気が漂ってはいる。
「クレーミルがっ……、生きているっ……!」
だが、己の拠点が、帰るべき場所がまだ存在する事に、フォルテスラは涙を禁じ得なかった。
もうその場所はないのだと絶望していた彼に、降って湧いた幸福。夢である事が頭に過りながらも、その幸福を噛みしめずには居られない。
「フォルテスラさん!」
「え、エーリカ!」
1人の女性はフォルテスラが佇んでいる事に気付き、駆け寄ってきた。フォルテスラは、駆け寄ってくるその女性を抱き留めた。
その女性こそ、フォルテスラが得てしまった出会い。結婚まで果たしてしまった最愛のティアンである。
「無事だったんですね!」
「エーリカこそ、無事で……無事で良かった」
奪われたと思っていたモノが、実は奪われていなかった。そんな現実に、フォルテスラは涙が止まらない。
最愛の妻の前で泣き続けるのはさすがに男らしくないと、彼は視界を拭った。そうすれば、己の相棒がいつ話しかけたものかと、機を窺っている姿が映る。
「ネイ。お前も、無事なようで何よりだ」
「……うん、団長も。……心が折れて、帰ってこないじゃないかって、思っちゃった。駄目だね、アタシ。団長の事、全然信じてなかった」
「いいや、ネイは正しい。俺は、心が折れていた。俺は何も守れないのだと、何もかも奪われる程無力なのだと。……きっと、仲間たちからクレーミルがまだ生きている事を聞かなければ、戻ってこなかっただろう」
フォルテスラの相棒、彼の〈エンブリオ〉にしてTYPE:メイデン、ネイリング。彼女は、己の担い手が心折れていない事を信じられず、そんな己を恥じていた。
その不信を聞き届け、フォルテスラは自嘲する。ネイリングの不信は事実なのだ。フォルテスラの心は
そうして幾ばくか考える余裕が生まれたフォルテスラに、1つの疑問が芽吹く。
「それにしても、いったい誰がクレーミルを……」
クレーミルは【グローリア】の光線を浴びる間近だったはずだ。フォルテスラはその光線を止めるために死力を尽くし、されど敵わなかった。
なのに、都市は生きている。目立った損壊もない。〈SUBM〉を前にして、何事もなかったなどあり得ない。
ならば、誰かがこの都市を【グローリア】から救ったはずである。あのモンスターの光線を止める人物など、フォルテスラは皆目見当も付かなかった。王国の〈超級〉プレイヤーたち、フィガロ、
「オーナー!」
「シャルカ。すまないが、詳しい状況を教えてもらえないか?」
「そうしたいのは山々ですが、のんびりしている余裕はありません。目的地へ早く向かいましょう」
「目的地?」
フォルテスラにクレーミルが生きている事を知らせたシャルカ。彼なら状況を把握しているだろうと訊ねるが、説明より先に足を動かすよう強要される。
「はい。【グローリア】を未だ食い止めてくれている、彼の元へ」
「なっ」
その一言で、フォルテスラは説明が後回しにされた訳を理解する。
【グローリア】は、まだ倒されていない。あの恐るべき竜を、誰かが食い止めている。それだけで、フォルテスラが足を動かすのには充分だ。
「場所は!」
「ルニングス領の境界です!」
フォルテスラとシャルカは、培った
長い道中、肺が張り裂けそうだったが、彼らは懸命に駆けた。だからこそ、半日もかからずその場に至る。
あの【グローリア】が、雁字搦めになっているその現場へ。
「なんだ、あれは……」
あの竜を縛り上げ、その場に留めているというだけでも異常だが、フォルテスラは縛り上げている物にも異常性を見た。
【グローリア】を縛り上げているのは、大蛇のような機械が何十と集まり、形成している網だ。傷口から光を照射されないよう、その傷口全てを覆うように変形している機械もある。それでも、時折機械が破壊され、それを即時修復する事で持たせているような、予断の許さぬ状態であるが。
フォルテスラたちが知る由はないが、それら機械は『遊戯王GX』に登場する『サイバー・ドラゴン』というモンスターと酷似している。
「団長!帰ってきてくれたんですね!」
「ライザー、遅れてすまない」
まるで仮面ライダーの変身スーツを纏ったような風貌の男、マスクド・ライザー。感激と共に迎え入れる彼に、フォルテスラは純粋な謝意で以って頭を下げた。
「ところで、これはいったいどういう状況だ」
「彼です。彼が、食い止めてくれています」
フォルテスラが訊ねれば、ライザーが指差し、シャルカもそちらの方へ目をやっている。
彼らが示す先に居たのは、馬車の上に腰かけた――
「眠い眠い眠い寝たい、でも寝たら多分死ぬ。プロデューサーさん!三徹ですよ、三徹!これって凄くないですか!?いやもう凄い!訳が分からない!俺が働いてたブラッククソ企業でも三徹はさせなかったぜ!?もう最高にハイってヤツだぁ!!愛してるんだぁ君たちをぉ!!ギャハハハハハハハ!!」
――控えめに言って狂っている男だった。
情状酌量の余地があるとすれば、3日間寝てないという事。ここまで得られた情報を総合すると、その男は、3日間もこの場で【グローリア】を食い止めているのである。
ならば、眠気と危機感で狂ってしまうのもおかしくはない。
「マスター!落ち着いてください!」
「馬鹿を言え、落ち着いたら即座に寝るぞ!寝たら死ぬぞ臆せば死ぬぞ!死ぬしかないなぁ、ポルナレフ!!」
その男は無駄にテンションを上げ、頭に浮かんだ言葉を全部発して、耐え難い眠気に抗っていた。
前述の情状酌量の余地はあるが、それにしたって話しかけづらい。でも、フォルテスラはその男の横に歩み寄る。
「……ッ!……フォルテスラ、ですね」
「……如何にもだ。自己紹介が省けて助かる」
歩み寄ってきた事に気付いたのは男の傍らに浮かぶ少女、ウィル子。ウィル子は、フォルテスラの接近に気付いてすぐ、その目付きを鋭くした。殺気すら感じる、故知らぬ敵対心に、フォルテスラは少し怯む。
「貴方が、貴方がもっと強ければ。マイマスターはその身を捧げる必要なんてありませんでした」
その敵対心の故は、己のマスターが身を捧げた事。フォルテスラが男の方、川村英司を注視すれば、左袖がプラプラと揺れているのが見て取れる。そこから推測し、身を捧げたとは文字通りである事を理解する。
そう。英司は左腕を捧げたのだ。そうする事で、〈無限〉相当とまでは行かないまでも、ウィル子の出力を向上させた。そうする事で、ウィル子はゲームデータの改変を可能とし、実行に移したのである。
実行に移したデータ改変の詳細は、移動ログの削除。【グローリア】がクレーミルに至っているというデータを削除し、結果、ルニングス領まで瞬間移動させた。そうする事により、クレーミルと英司は光線から逃すという、前代未聞の解決法だ。管理AIの何体かは度肝を抜かれた事だろう。
ただし、英司が左腕を失った事実は変わらない。ウィル子はその原因が、【グローリア】を倒せなかったフォルテスラたちにあると、彼らを責めている。
「……全く以ってその通りだ。俺が、あの超魔竜を倒せていれば、君のマスターに傷を負わせたりしなかっただろう」
「今更、そんな真摯な態度を見せたって遅いのですよ!」
「止めろ、ウィル子」
八つ当たりのような怒りを真面目に受け止めたフォルテスラ。その真面目さが反ってウィル子の怒りを買い、攻撃を仕掛けようとしたが、英司によって制止される。
「ですが、マスター!!」
「これは俺の決断だ。この傷は、俺の決意の証だ。誰にも俺の決断を汚させるつもりはない。誰にも俺の傷をくれてやるつもりはない。俺は、俺の内から出た正義で、己の身を捧げたんだ」
眠気と危機感に狂いながら、英司は己の理性を、正義を誇示した。
確かにその決意は憧れから端を発するモノかもしれない。だが、憧れて真似したのは自分なのだと、英司は誇る。
だからこそ、自身が己の気持ちに殉じる事のできた確固たる証を、誰のせいにもしない。
「でも、マスター……」
「ありがとう、ウィル子。俺のために怒ってくれて」
「ッ……。マスター……。貴方の傷が貴方の決意の証だと言うなら、私の怒りは私の親愛の証なのです……」
「ああ。だから、ありがとう」
「……」
ウィル子は何も言えなくなった。親愛なる者を思う気持ちが、そうさせる。大切に思う気持ちと、裏切りたくない気持ちが彼女の中でせめぎ合い、どうして良いか分からなくなってしまった。
そんな彼女はどうする事もできず、ただひたすらに、親愛なる者へ寄り添い続ける。握る彼の左袖を、涙で濡らしながら。
(´英`)<隻腕ってかっこよくね?
(*´w`*)<本編との落差が半端ないのですよー……
(´英`)<空元気だ、察してくれ。文字通りスケープゴートになった故にな
(*´w`*)<あっ(察し)
(´英`)<察しが遅い(似てない大塚芳忠さんの声真似をしながら)
(*´w`*)<という事で、本作におけるクレーミル救出法!『【グローリア】を遠くに飛ばして縛り付ければいいよね!』作戦なのでしたー
(´英`)<切り替えが早い(似てない大塚芳(ry)。まぁ、とりあえず。『言うが易し、行うは難し』をやってのけるのは、さすがウィル子って感じだけどな
(*´w`*)<代わりとして、マイマスターの左腕はウィル子が美味しくいただきました
(´英`)<お前も本編との落差ぁ!!
(*´w`*)<正直に言うと、美味しかったというか、凄い力が湧いてきたので
(´英`)<うん、原作と同じシステムが適応されてるようで何よりです(遠い目)
(*´w`*)<何はともあれ、こうしてクレーミル、ひいてはフォルテスラを救えてしまった訳でして。これ、結構な原作ブレイクではないのですか?
(´英`)<原作は犠牲となったのだ。ご都合主義二次創作オリ主の、その犠牲にな
(*´w`*)<まぁ、あれですね。原作で救われないモノを救うのも、二次創作の醍醐味なのですよー
(´英`)<そういう事だ。どうせ、世界の修正力的なサムシングで大筋は変わらないんだろうし
(*´w`*)<もっと話に原作ブレイク盛るとかさぁ
(´英`)<止めてくれウィル子。原作ブレイクは作者の執筆技量に効く
(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん
(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)