Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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第十五話 キセキの代償・前編

□■リアル・某所

 

「……」

 

 1人の男が自室にて、パソコンのキーボードを叩く。彼は、Webデザイナーとしての仕事を在宅で熟している最中だ。熟すというには、憑りつかれたように従事しているが。

 それもそのはずだ。彼は、とある事を忘れたくて、仕事に打ち込んでいる。なのに、忘れさせてくれない。

 携帯端末がバイブレーションを繰り返す。仕事の連絡もその端末で受けているので、念のためバイブレーションしている原因を確認する。

 

「……ッ!……」

 

 するが、歯を食いしばって、端末から手を離した。

 バイブレーションする原因は、知り合いからのメール。それも、〈Infinite(インフィニット) Dendrogram(デンドログラム)〉で知り合った者たちからのモノである。

 彼はそのゲームを忘れたいからこうしているのに、知り合いたちが忘れさせてくれないのだ。

 煩悩を振り払うように、仕事に打ち込む。

 そうしていると、突然アラームが鳴った。

 

「……デスペナルティが、明けたか」

 

 そのアラームは、彼が手癖で設定してしまった、デスペナルティのログイン不可期間が明けた事を知らせるアラームである。

 不意に、これも手癖だが、彼は〈Infinite Dendrogram〉の端末を手に取って、装着しようとした。

 

「……もう、行く意味はない」

 

 だが、装着を中止する。彼にとって、もうあのゲームにログインする理由がない。理由は、全て奪われた。

 何もかも、奪われてしまった。

 

「ッ!こんな、こんなものがなければッ!」

 

 彼はゲーム端末を掲げる。

 奪われると分かっているなら、出会いたくなかった。奪われてしまう程無力なら、得たくなどなかった。

 出会わせたのはこの端末だと。得させたのはこのゲームだと。彼は、今にも投げ捨てようとした。

 しかし、それは携帯端末の着信音で遮られる。

 

「……」

 

 一旦ゲーム端末を置き、携帯端末を見る。着信者は、ゲームの知り合い。それも、一等長い付き合いの者からだ。

 彼は、その知り合いにもうゲームにログインしない事を伝えようと、応答する。

 

『オーナー!』

 

 聞き慣れた英語の発音が、彼の耳に届く。

 

「シャルカ、すまない。もうゲームには―――」

 

『聞いてください、オーナー!クレーミルは!』

 

 彼は、ゲーム内でフォルテスラと名乗る男は、その先を聞きたくなかった。でも、現実を直視しなければならないと、聞き届ける義務があると、耳も目も塞がない。

 その覚悟があったからこそ、フォルテスラにはカミが微笑む。

 

『クレーミルは生きています!!』

 

「……は?」

 

 覚悟していた事と違う現実を聞き届けたフォルテスラは、呆けながらも次の行動が早かった。

 彼は、通話を切る事も放って、ゲーム端末を装着する。そうすれば、する事は1つ。

 

 フォルテスラは、〈Infinite Dendrogram〉の世界に舞い戻った。

 

 

 

「クレーミルが、生きている……」

 

 フォルテスラはセーブポイントに設定していた城塞都市クレーミルのそれにリスポンし、無傷の都市を見回した。

 行き交う人々がおらず、緊迫感のある空気が漂ってはいる。

 

「クレーミルがっ……、生きているっ……!」

 

 だが、己の拠点が、帰るべき場所がまだ存在する事に、フォルテスラは涙を禁じ得なかった。

 もうその場所はないのだと絶望していた彼に、降って湧いた幸福。夢である事が頭に過りながらも、その幸福を噛みしめずには居られない。

 

「フォルテスラさん!」

 

「え、エーリカ!」

 

 1人の女性はフォルテスラが佇んでいる事に気付き、駆け寄ってきた。フォルテスラは、駆け寄ってくるその女性を抱き留めた。

 その女性こそ、フォルテスラが得てしまった出会い。結婚まで果たしてしまった最愛のティアンである。

 

「無事だったんですね!」

 

「エーリカこそ、無事で……無事で良かった」

 

 奪われたと思っていたモノが、実は奪われていなかった。そんな現実に、フォルテスラは涙が止まらない。

 最愛の妻の前で泣き続けるのはさすがに男らしくないと、彼は視界を拭った。そうすれば、己の相棒がいつ話しかけたものかと、機を窺っている姿が映る。

 

「ネイ。お前も、無事なようで何よりだ」

 

「……うん、団長も。……心が折れて、帰ってこないじゃないかって、思っちゃった。駄目だね、アタシ。団長の事、全然信じてなかった」

 

「いいや、ネイは正しい。俺は、心が折れていた。俺は何も守れないのだと、何もかも奪われる程無力なのだと。……きっと、仲間たちからクレーミルがまだ生きている事を聞かなければ、戻ってこなかっただろう」

 

 フォルテスラの相棒、彼の〈エンブリオ〉にしてTYPE:メイデン、ネイリング。彼女は、己の担い手が心折れていない事を信じられず、そんな己を恥じていた。

 その不信を聞き届け、フォルテスラは自嘲する。ネイリングの不信は事実なのだ。フォルテスラの心は()()()()()()()()()。しかし、仲間たちに声と、この現実が、()()()()()()()()のだ。

 そうして幾ばくか考える余裕が生まれたフォルテスラに、1つの疑問が芽吹く。

 

「それにしても、いったい誰がクレーミルを……」

 

 クレーミルは【グローリア】の光線を浴びる間近だったはずだ。フォルテスラはその光線を止めるために死力を尽くし、されど敵わなかった。

 なのに、都市は生きている。目立った損壊もない。〈SUBM〉を前にして、何事もなかったなどあり得ない。

 ならば、誰かがこの都市を【グローリア】から救ったはずである。あのモンスターの光線を止める人物など、フォルテスラは皆目見当も付かなかった。王国の〈超級〉プレイヤーたち、フィガロ、扶桑月夜(ふそうつきよ)、レイレイと面識があってなお、だ。

 

「オーナー!」

 

「シャルカ。すまないが、詳しい状況を教えてもらえないか?」

 

「そうしたいのは山々ですが、のんびりしている余裕はありません。目的地へ早く向かいましょう」

 

「目的地?」

 

 フォルテスラにクレーミルが生きている事を知らせたシャルカ。彼なら状況を把握しているだろうと訊ねるが、説明より先に足を動かすよう強要される。

 

「はい。【グローリア】を未だ食い止めてくれている、彼の元へ」

 

「なっ」

 

 その一言で、フォルテスラは説明が後回しにされた訳を理解する。

 【グローリア】は、まだ倒されていない。あの恐るべき竜を、誰かが食い止めている。それだけで、フォルテスラが足を動かすのには充分だ。

 

「場所は!」

 

「ルニングス領の境界です!」

 

 フォルテスラとシャルカは、培ったAGI(速度)を以って駆ける。

 長い道中、肺が張り裂けそうだったが、彼らは懸命に駆けた。だからこそ、半日もかからずその場に至る。

 あの【グローリア】が、雁字搦めになっているその現場へ。

 

「なんだ、あれは……」

 

 あの竜を縛り上げ、その場に留めているというだけでも異常だが、フォルテスラは縛り上げている物にも異常性を見た。

 【グローリア】を縛り上げているのは、大蛇のような機械が何十と集まり、形成している網だ。傷口から光を照射されないよう、その傷口全てを覆うように変形している機械もある。それでも、時折機械が破壊され、それを即時修復する事で持たせているような、予断の許さぬ状態であるが。

 フォルテスラたちが知る由はないが、それら機械は『遊戯王GX』に登場する『サイバー・ドラゴン』というモンスターと酷似している。

 

「団長!帰ってきてくれたんですね!」

 

「ライザー、遅れてすまない」

 

 まるで仮面ライダーの変身スーツを纏ったような風貌の男、マスクド・ライザー。感激と共に迎え入れる彼に、フォルテスラは純粋な謝意で以って頭を下げた。

 

「ところで、これはいったいどういう状況だ」

 

「彼です。彼が、食い止めてくれています」

 

 フォルテスラが訊ねれば、ライザーが指差し、シャルカもそちらの方へ目をやっている。

 彼らが示す先に居たのは、馬車の上に腰かけた――

 

「眠い眠い眠い寝たい、でも寝たら多分死ぬ。プロデューサーさん!三徹ですよ、三徹!これって凄くないですか!?いやもう凄い!訳が分からない!俺が働いてたブラッククソ企業でも三徹はさせなかったぜ!?もう最高にハイってヤツだぁ!!愛してるんだぁ君たちをぉ!!ギャハハハハハハハ!!」

 

――控えめに言って狂っている男だった。

 情状酌量の余地があるとすれば、3日間寝てないという事。ここまで得られた情報を総合すると、その男は、3日間もこの場で【グローリア】を食い止めているのである。

 ならば、眠気と危機感で狂ってしまうのもおかしくはない。

 

「マスター!落ち着いてください!」

 

「馬鹿を言え、落ち着いたら即座に寝るぞ!寝たら死ぬぞ臆せば死ぬぞ!死ぬしかないなぁ、ポルナレフ!!」

 

 その男は無駄にテンションを上げ、頭に浮かんだ言葉を全部発して、耐え難い眠気に抗っていた。

 前述の情状酌量の余地はあるが、それにしたって話しかけづらい。でも、フォルテスラはその男の横に歩み寄る。

 

「……ッ!……フォルテスラ、ですね」

 

「……如何にもだ。自己紹介が省けて助かる」

 

 歩み寄ってきた事に気付いたのは男の傍らに浮かぶ少女、ウィル子。ウィル子は、フォルテスラの接近に気付いてすぐ、その目付きを鋭くした。殺気すら感じる、故知らぬ敵対心に、フォルテスラは少し怯む。

 

「貴方が、貴方がもっと強ければ。マイマスターはその身を捧げる必要なんてありませんでした」

 

 その敵対心の故は、己のマスターが身を捧げた事。フォルテスラが男の方、川村英司を注視すれば、左袖がプラプラと揺れているのが見て取れる。そこから推測し、身を捧げたとは文字通りである事を理解する。

 そう。英司は左腕を捧げたのだ。そうする事で、〈無限〉相当とまでは行かないまでも、ウィル子の出力を向上させた。そうする事で、ウィル子はゲームデータの改変を可能とし、実行に移したのである。

 実行に移したデータ改変の詳細は、移動ログの削除。【グローリア】がクレーミルに至っているというデータを削除し、結果、ルニングス領まで瞬間移動させた。そうする事により、クレーミルと英司は光線から逃すという、前代未聞の解決法だ。管理AIの何体かは度肝を抜かれた事だろう。

 ただし、英司が左腕を失った事実は変わらない。ウィル子はその原因が、【グローリア】を倒せなかったフォルテスラたちにあると、彼らを責めている。

 

「……全く以ってその通りだ。俺が、あの超魔竜を倒せていれば、君のマスターに傷を負わせたりしなかっただろう」

 

「今更、そんな真摯な態度を見せたって遅いのですよ!」

 

「止めろ、ウィル子」

 

 八つ当たりのような怒りを真面目に受け止めたフォルテスラ。その真面目さが反ってウィル子の怒りを買い、攻撃を仕掛けようとしたが、英司によって制止される。

 

「ですが、マスター!!」

 

「これは俺の決断だ。この傷は、俺の決意の証だ。誰にも俺の決断を汚させるつもりはない。誰にも俺の傷をくれてやるつもりはない。俺は、俺の内から出た正義で、己の身を捧げたんだ」

 

 眠気と危機感に狂いながら、英司は己の理性を、正義を誇示した。

 確かにその決意は憧れから端を発するモノかもしれない。だが、憧れて真似したのは自分なのだと、英司は誇る。

 だからこそ、自身が己の気持ちに殉じる事のできた確固たる証を、誰のせいにもしない。

 

「でも、マスター……」

 

「ありがとう、ウィル子。俺のために怒ってくれて」

 

「ッ……。マスター……。貴方の傷が貴方の決意の証だと言うなら、私の怒りは私の親愛の証なのです……」

 

「ああ。だから、ありがとう」

 

「……」

 

 ウィル子は何も言えなくなった。親愛なる者を思う気持ちが、そうさせる。大切に思う気持ちと、裏切りたくない気持ちが彼女の中でせめぎ合い、どうして良いか分からなくなってしまった。

 そんな彼女はどうする事もできず、ただひたすらに、親愛なる者へ寄り添い続ける。握る彼の左袖を、涙で濡らしながら。




(´英`)<隻腕ってかっこよくね?

(*´w`*)<本編との落差が半端ないのですよー……

(´英`)<空元気だ、察してくれ。文字通りスケープゴートになった故にな

(*´w`*)<あっ(察し)

(´英`)<察しが遅い(似てない大塚芳忠さんの声真似をしながら)

(*´w`*)<という事で、本作におけるクレーミル救出法!『【グローリア】を遠くに飛ばして縛り付ければいいよね!』作戦なのでしたー

(´英`)<切り替えが早い(似てない大塚芳(ry)。まぁ、とりあえず。『言うが易し、行うは難し』をやってのけるのは、さすがウィル子って感じだけどな

(*´w`*)<代わりとして、マイマスターの左腕はウィル子が美味しくいただきました

(´英`)<お前も本編との落差ぁ!!

(*´w`*)<正直に言うと、美味しかったというか、凄い力が湧いてきたので

(´英`)<うん、原作と同じシステムが適応されてるようで何よりです(遠い目)

(*´w`*)<何はともあれ、こうしてクレーミル、ひいてはフォルテスラを救えてしまった訳でして。これ、結構な原作ブレイクではないのですか?

(´英`)<原作は犠牲となったのだ。ご都合主義二次創作オリ主の、その犠牲にな

(*´w`*)<まぁ、あれですね。原作で救われないモノを救うのも、二次創作の醍醐味なのですよー

(´英`)<そういう事だ。どうせ、世界の修正力的なサムシングで大筋は変わらないんだろうし

(*´w`*)<もっと話に原作ブレイク盛るとかさぁ

(´英`)<止めてくれウィル子。原作ブレイクは作者の執筆技量に効く

(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
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