Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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第十六話 キセキの代償・後編

「不躾ですまないが、どうして君は【グローリア】に討伐しないんだ」

 

 英司の左袖にウィル子が顔を(うず)める現状。フォルテスラは、それを問う雰囲気でないと察しながらも、そう問わずには居られなかった。

 【グローリア】を3日間も食い止める事ができるならば、討伐も可能なはずだと疑ったのだ。

 

「見りゃ分かるだろ。いや、見たからこそ疑問なのか。ならはっきり言おう。俺じゃ相性が悪い。3日間も食い止められた、じゃなくて、3日間食い止める事しかできないんだ」

 

 それは、限界値の見誤りである。

 食い止める事が、英司の持つ限界値。そして同時に、3日間というのも、限界値だ。

 

「ま、まさか、これ以上食い止められないのか!?」

 

「これ以上食い止められる訳ねぇだろ三徹だっつってんの聞こえなかったか、あぁん!?リアル換算でも24時間営業だぞ!こっちはコンビニじゃねぇんだよ!!」

 

 フォルテスラが驚愕しているが、当然の話である。

 3日間、英司は眠らず、正確に言うと死の恐怖で眠れず、今しがた発狂する程ストレスを溜めている。これ以上は、生物的に無理だ。

 

「ならば、早く討伐しなくては!」

 

「玉砕しに行くつもりじゃねぇだろうな。生憎、後少しでもアイツのHP削られて、ステータスアップのスキルが起動したら、もう1秒も持たなくなるぞ」

 

「っ!」

 

 【グローリア】は、残量HPの低下に応じて自身のステータスを強化する。その事は、フォルテスラも既知だ。

 そして、さっきの話と繋がってくるが、現在の【グローリア】が英司の食い止めておける限界値だ。1桁程度ステータス上昇ならどうにかなるだろうが、討伐できないけど大ダメージは与えられる強者が攻撃に出れば、おそらくその限りではない。

 そんな下手な強者が手を出せば、【グローリア】を食い止める事は不可能になる。

 

「では、どうしろと!!」

 

 フォルテスラは苦悶に満ちて、叫んだ。

 【グローリア】が解き放たれてしまえば、また城塞都市クレーミルが危機にさらされてしまう。まさにぬか喜びだ。救われたはずの命が、一時の幻だったように絶やされる。

 フォルテスラに、その命を救う力はない。彼の心は折損こそしていないが、歪曲したままだ。折損していれば、あるいは彼の〈エンブリオ〉が〈超級(スペリオル)〉に至っていたかもしれない。それは、すでにもしも(if)になり下がった未来である。

 

「そう慌てるなよ。俺だってここで暢気に座ってた訳じゃない」

 

 焦燥するフォルテスラとは対照的に、英司は冷静に、不敵な笑みを浮かべた。

 もう猶予がないというのにそんなに余裕があるのは、とても簡単な理由がある。

 切り札を、呼び寄せたのだ。

 

「な、なんだ!あの巨大戦艦は!?」

 

 ライザーがカイたちのはるか後方より迫るそれ、巨大戦艦を指差していた。

 この〈Infinite(インフィニット) Dendrogram(デンドログラム)〉において、巨大戦艦なんてたった1つしかない。

 そして、その甲板には多くの人影があった。

 

「君かい?僕を呼んだのは」

 

 まず甲板から下りてきたのは、ビジュアルに統一性のない、されどどれも特典武具ないし一級品装備で統一した装いの男。

 好青年的でありながら好戦的な気配を滲ませるその男の名は、フィガロ。アルター王国決闘ランキングトップである。

 

「『スコアアタックに挑戦しないか』って、中々の誘い文句だろ?」

 

「ああ。それもフォルテスラとのスコアアタックだなんて、心が躍るね」

 

 フィガロを呼び寄せた誘い文句はそれ。『フォルテスラとスコアアタックをしないか?』という、好戦的なフィガロを呼び寄せるのにとっておきのモノだ。

 伝令を走らせて伝えてもらったその誘い文句は見事、フィガロに刺さった。

 ちなみに、伝令役はフォルテスラがオーナーを務めるクラン、〈バビロニア戦闘団〉のクランメンバーである。

 

「なんや、面白い事になってはるなー」

 

 フィガロに続くのは、総勢34名の一団。その一団を代表するのは着物に身を包み、外見だけなら大和撫子の女性。

 自身が信じる宗教の布教活動に熱心なその女性の名は、扶桑(ふそう)月夜(つくよ)。アルター王国クランランキングトップ、〈月世(げっせい)の会〉オーナーである。

 

「そんで、あんたはんがウチの入信希望者であっとる?〝喪失時代(ロストエイジ)〟はん?」

 

「籍を置いてやるだけだ。悪いが、クランのイベントには付き合わんぞ」

 

 扶桑を呼び寄せた誘い文句はそれ。『【グローリア】迎撃に参戦してくれたら〝喪失時代〟が入信する』という、正直一か八かの誘い文句だった。

 その一か八かの誘い文句が幸運な事に、扶桑に刺さったのだ。ただ、扶桑はちゃっかりアルター王国王族からも報酬を搾り取っているが。

 

「内容については後でしっかり詰めさせてもらうんで、よろしゅうな?」

 

「……はい」

 

 被害が原作より小さくなったため、アルター王国が報酬を渋ると踏んだ上でのその誘い文句であり、こうして扶桑がしっかり契約を持ちかけるのも織り込み済みだ。織り込み済みと言っても打開策がある訳ではなく、英司がただ苦渋の選択に耐え忍ぶだけである。

 ちなみに残念ながら、王国が絞り出された報酬は原作と同じであり、英司はそこに更なる付加価値を付けてしまった結果となっていた。その事実を、英司は知る由もない。

 

 とにかく、こうして後に〈アルター王国三巨頭〉と称えられる二角が揃った。しかも、状況を静観する事が多い2人だ。

 ならば――

 

『お前が、あの手紙の送り主で間違いないクマ?』

 

――危機に率先して突っ込む最後の一角が、出て来ない訳はない。

 甲板から一直線に魔法馬車へ乗り移ったのは、ファンシーな熊の着ぐるみを着込む男。

 ただならぬ気配と才気に溢れたその男の名は、シュウ・スターリング。アルター王国討伐ランキングトップである。

 

「伝書鳩がしっかり届いたようで何よりだよ」

 

『……お前が何故あの事を知っているのか、聞き出すのは後クマ』

 

 扶桑を呼び寄せた誘い文句はとある秘密。『管理AIたちの手が加えられている【グローリア】では【邪神(ジ・イーヴィル)】は滅ぼせない。むしろ、力を解放させてしまう危険すらある』と、そう記した手紙を鳩型の機械に届けさせた。

 内容が内容だけに、伝令役を誰かに頼む事はできなかったのだ。

 しかし、内容が内容だけに、シュウには刺さった。それ故に、シュウは死力を尽くして【グローリア】を討伐するだろう。

 

「さぁて。切り札全部呼べたから安心感が湧いてきてな、そろそろ眠気がピークだ。せめて俺が寝る前に、戦う順番を決めてくれ」

 

「初手は僕」

 

「次がうち」

 

『最後が俺クマ』

 

「段取りがよろしい」

 

 英司が会議時間を設けるまでもなく、3人は戦う順番を決めていた。

 原作と同じ、フィガロ、扶桑、シュウの順番である。

 

「じゃあ俺から助言だ。あのクソドラゴンが持つ主なスキルは3つ。1つ目は2本角が持つスキル。半径1キロメートル内の合計レベル500未満の人間範疇生物とレベル100未満の非人間範疇生物、それらを問答無用で殺す結界。おまけに結界外からの攻撃は全て無効にする。レベル500未満は問答無用で死ねとかふざけんなくたばれ」

 

 フィガロたちにとってお浚いとなるだろう英司の助言。その助言を、フィガロたちは傾注した。

 フィガロたちは全員、英司の底知れなさを感じ取っている。その底知れなさは、英司の誘い文句、まるで完全に人格を把握しているようなそれに起因している。

 どこから情報を得てどうやって人格把握したのか、謎なのだ。そんな謎を持つ男なら、お浚い以外に何か助言をしてくれるのではないかと、フィガロたちは期待している。

 

「2つ目は1本角が持つスキル。光を照射して、後に光の照射を受けているモノを全て蒸発させる。おまけに、その光は口だけじゃなく傷口からも照射できる。光から逃げられない奴は死ねとかふざけんなくたばれ」

 

 さっきから微妙に私情が混じっているが、フィガロたちは気にしない。

 

「3つ目は3本角が持つスキル。HP低下に伴ってステータスを強化する。おまけに、どんな傷も基本的なパフォーマンスに影響を与えなくする。頑張って削ったのにどんどん強くなって死ねとかふざけんなくたばれ」

 

 ここまで、フィガロたちが持つ情報と大差はない。強いて言うなら、それぞれのスキルをそれぞれの頭が所有しているという事のみ、新情報となり得るか。

 

「まぁその基本スキルを組み合わせて色々やってくるが、どうにか対処してくれ」

 

 正直、フィガロたちにとってこの助言は期待外れだった。そう。ここまでだったら。

 

「ちなみにここに居ないもう1つの頭に関しては、もう【犯罪王(キング・オブ・クライム)】が倒したから気にしなくて良いぞ」

 

「……ん?」「……え?」「……あ?」

 

 異口同音の素っ頓狂な声を上げるフィガロ、扶桑、シュウ。かの3つ首竜に4つ目の頭があるなど、彼らには予想の範疇外だ。

 

「ワンチャン発見が遅れたり、そもそも捜索してない事を懸念してたが。念のために俺も4つ目の頭を探して早く見つけちゃったせいで、むしろ討伐が早まっちゃったんだよな。まぁ、この世の理はすなわち速さだ、物事を速くなしとげればそのぶん時間が有効に使える、遅い事なら誰でもできる、20年かければバカでも傑作小説が書ける!有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家、週刊よりも日刊、つまり速さこそ有能なのが文化の基本法則!」

 

『ちょっと待った!4つ目の頭のスキルは!』

 

「やられた他の頭のバックアップ。以上。では、俺は言いたい事を言い切ったので寝ます。お休み」

 

『ま、待て!』

 

「いいや限界だ!寝るね!!」

 

 最後の質問に答えた英司は、シュウの引き留めも聞かずにバタンキュー。威勢の良い一声をだして一瞬、その元気が嘘だったかのように倒れた。

 限界だったのだ。3日間も【グローリア】を食い止めるために、その間一睡もしていない。今まで眠気に耐えていられた事の方が奇跡なのである。

 

『……』

 

「……なんや、訊きたい事が色々増えてしもうたなー」

 

「倒してからで良いんじゃないかい?今から起こすのは忍びない」

 

 三者三様、それぞれ死んだように寝入った英司に呆れていた。

 一頻り英司を見下ろせば、【グローリア】を縛っていたモンスターたちの壊れていく音が3人の耳に届く。

 その音が、戦いの合図だ。

 

「それじゃあ、初手は貰っていくよ」

 

「スコアアタック、頑張ってなー」

 

『行ってこい、フィガ公』

 

 ここから、〈アルター王国三巨頭〉の、その伝説が始まる。




(´英`)<伝説が始まる。本作で描かれるとは言ってない

(*´w`*)<ほぼ原作通りですからね。気になる人は原作を読むのですよー

(´英`)<本作は原作既読を推奨しております

(*´w`*)<でも、原作と違って凄く端折られたところがありますよね?

(´英`)<四つ目の頭、零本角VSゼクスね。こっちも描かないけど多少内容を語ると、バックアップが全然取れてない無能力な零本角をベイビーサブミッションでゼクスが倒してます

(*´w`*)<弱体化してるのですか、零本角……。というか、その場合ゼクスさんの特典武具が変わってくるのでは?

(´英`)<変わらないって事でお願いします

(*´w`*)<どこにお願いしているのですか……

(´英`)<世界の修正力。またの名をご都合主義

(*´w`*)<酷いご都合主義を見たのですよー……

(´英`)<まぁ、今回はこの辺で。それではみなさん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
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