Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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(´・ω・`)<評価の低迷や執筆モチベダウンを受け、色々考えた結果、ストックは全部放出してそれで更新を終わろうと思いました。


第十七話 付けの清算・前編

 俺こと、川村英司の話を聞いてほしい。

 

『それじゃあじっくり、話を聞かせてもらおうじゃないかクマ』

 

 シュウ・スターリングにテーブルを挿んで相対していた。

 残念ながら、フィガロと扶桑も同じ卓を囲んでいる。〈アルター王国三巨頭〉に囲まれるとか、失禁ものである。

 

「あ、あのー……。まずよろしいですか?」

 

「何かな?」

 

 震えた手を上げれば、心優しいフィガロが発言を許してくれた。でも脳筋だから油断できない。

 

「【グローリア】、どうなりました?」

 

「うちらがきっちり倒したさかい、安心しぃ」

 

『全員満身創痍、俺は気絶して2人はデスペナだけどなクマ』

 

「おかげで、再会するのに3日もかかってしまったね」

 

 扶桑、シュウ、フィガロの弁を信じるなら、【グローリア】は無事討伐されたようだ。俺に構っている余裕があるのだから、そうだろうと察してはいた。でも、ちゃんと聞かないと安心できないものだ。

 ……と言うか、あれから3日経ってるのか。俺は起きて外を空気吸いに魔法馬車から出てみれば、〈月世の会〉に囲まれているという恐怖体験をしたのだが。

 

(きっちり3日間、熟睡してたのですよー。死んだように寝ていたので、ウィル子はとても気が気じゃありませんでした)

 

 ウィル子からも証言が得られたので、俺はマジで3日間寝続けていたらしい。

 

「次は僕で良いかい?あまり訊きたい事もないし、言いたい事もそれ程ないからね」

 

「ええよー。うちは契約煮詰めないかんから、話し長くなってまうしー」

 

『……俺もあまり他所に聞かれたくない事を訊くから、それで良いクマ』

 

 〈アルター王国三巨頭〉が話し合い、暗に話す順番が決まる。

 最初がフィガロの話だ。いったい何を俺に言いたいのか、俺も興味がある。その興味を以ってフィガロを注視すれば、彼は唐突に頭を下げた。

 

「ありがとう、クレーミルを救ってくれて。君が救ってくれなければ、フォルテスラはこのゲームを引退してた」

 

 唐突なお辞儀に面食らったが、俺はフィガロのその感謝で納得する。

 フォルテスラは、フィガロにとって大切なライバルなのだ。フィガロは闘技場トップで、フォルテスラはまだ3位だけど、それでもいずれは王座を賭けて戦う事を約束した者同士。強敵と書いて友なのである。

 

「なんだ、そんな事か。気にしないでくれ。俺は俺がしたいと思い、できると信じたからやったまで。自己満足なんだ」

 

「それでもだ。ありがとう」

 

 自分勝手な行動と俺は自嘲してみるも、フィガロは感謝を続け、あるモノを提示してくる。

 それは、フレンド申請だ。

 

「何かあれば呼んでくれ。決闘しか脳がないから、力になれるかは分からないけど」

 

「いいや。お前との友好は助かるよ。何かあれば、メールで相談させてもらう」

 

 フィガロは俺の喜ばしい反応を見納め、満足したように席を立った。

 言いたい事は全て言い終わったようで、振り返りもせずに魔法馬車の扉を開けて退室する。

 実に実直な男であり、そんな男と友誼を図れた事に俺は内心ほっとしている。

 

「じゃあ、次はうちな」

 

 でも、まだ面倒事が積もっていた。言わずもがな、契約を詰めてこようとしている扶桑である。

 おまけに、この後シュウとの密談も控えていた。この先生き残る事ができるだろうか。

 

「まず前提の話や。あんさん、アルター王国に所属する気あるん?」

 

 扶桑が切り出したのは、本当にクランへ加入させるための質問。俺を絶対に加入させる気のようだ。

 ……もっと訊くべき事がありそうなもんだが、彼女にとってはクランが優先って事か。

 

「あるよ。今んところフリーだしな。今回の功績を出汁にすれば、王国に所属するのも難しくないだろう」

 

「せやな。じゃあ続いてはー。うちのクランの決まりゆうか、〈月世の会〉の教義を守る気はあるん?」

 

 ……本当にクランの事しか興味ないのかもしれない。

 

「『枷に囚われた肉体より離れ、真なる魂の世界に赴く』。それに、『自由なる世界で、己の魂の赴くままに自由を謳歌せよ』、だったか?つまりはこのゲーム内で自由に生きろって事だろ?そういう解釈で良いなら守れるが」

 

「その解釈でええよ。じゃあ、〈月世の会〉を笠に着て、悪行したりする気はあるん?」

 

「……」

 

 その質問に対して、俺は言葉を詰まらせた。何故かって言うと、色々と複雑な事情があるせいだ。

 

「あるん?」

 

「な、ないんだけど……。ちょっとロール的にPKしなくちゃいけないし……、そのロールのせいでもうカルディナから指名手配食らってる……」

 

 扶桑の目付きが鋭くなったので、ある程度はぐらかしながら複雑な事情を語った。

 そう。俺は〈月世の会〉に悪影響を与えるつもりはないが、仕事柄後ろ暗い事をしなくてはならないのだ。その仕事を悪行と取られれば、扶桑の質問に否と答えねばならない。

 

『お前、カルディナで何やらかしたんだ』

 

「PKだよ、PK。ティアン殺しはしてない。そのはずなのに、何が琴線に触れたのか、ファトゥムまで出張ってきちゃって……」

 

 静観していたシュウが呆れ交じりに口を開いた。カルディナ指名手配が命知らずの愚行と認識しているから、呆れずには居られなかったのだろう。

 でも、俺は何も悪くない。悪くないのだが、シュウは呆れ果てたようで、閉口している。

 

「うーん……。あんまり悪評が立つんは勘弁してほしいなー」

 

『……今さらその程度の悪評なんて何も影響しないだろ』

 

 閉口したんだけどつい小声でツッコミを入れてしまうシュウ。

 実際、〈月世の会〉はすでにカルト教団扱いされているし、ちょっかいかけた時の報復を怖がられたり、強烈なまでの国教浸食行動を煙たがられていたりする。

 そのほかは、現教主である扶桑が女狐と称されたり、か。

 

「なんか言うた?クマやん」

 

『これ以上下がる株はないって言ったクマ』

 

 訊き返した扶桑にあえて言い直すシュウ。目の前で火花散らすのは止めて欲しい。とばっちり食らうのは俺なんだ。

 

「ま、不信心なクマのやっかみなんて、聞き流すに限るわ。で、そのロールって止められたりせぇへんの?」

 

「悪いが、止められない。ライフワークと言うか……。仕事なんだ」

 

 (俺の)ライフ(を管理AIたちから守るための)ワークなのだ。強要されたところで、止められる訳はない。むしろ止められるもんだったら止めたい。

 

「PKが仕事?依頼でも受け取るん?」

 

「ああ、だいたいはな。今のお得意様はカルディナだよ」

 

『……カルディナで指名手配されてるのに、カルディナの仕事を受けてるクマ?』

 

「指名手配してきてるのも、仕事を斡旋してきてるのも、理由はカルディナ議長かファトゥムに聞いてくれ。俺だって現状は訳が分からん」

 

 扶桑が困惑、シュウも困惑。そして俺も困惑で一同困惑。真実はカルディナ議長のみぞ知る。故に迷宮入りである。

 なので、その理由について、シュウは追及しなかった。扶桑は代わりに、ニッコリ笑う。

 

「それ、うちも依頼できるん?」

 

 なんと、まさかのお得意様開拓か。でもちょっと俺は渋い顔をする。

 

「……間違ってもティアンは殺さないからな」

 

 だって、国教浸食のためにアルター王国国教のお偉いさん暗殺依頼だされそうなんだもん。

 

「なんや酷い風評被害やわー。うちも他の宗教とは仲良くしたいんよ?重役暗殺なんて頼まへんって」

 

「……」

 

 扶桑は俺の誤解を解くように弁明してきたが、俺が別に重役暗殺拒否を匂わせていないのに、そう誤解していると考えている。

 それって、そういう依頼を想定していたからではないだろうか。

 

「うちんとこに変なちょっかいかけてくる〈マスター〉を、ちょっとけちょんけちょんにやっつけてもらいたいだけやよ?そういう依頼はできへんの?」

 

「……最終的に依頼を受けるかの判断は俺がする。受ける目安を言うと、〈エンブリオ〉が6段階以下かどうかだ。準〈超級〉プレイヤーは相手次第。〈超級〉プレイヤーは受けないと思ってくれ」

 

 一応お得意様になる可能性があるので、ある程度の依頼受注ラインを開示した。収入源が多いに越した事はない。

 ……依頼に思わぬ落とし穴がありそうだが。しっかり背景を調査してから依頼を受けよう。

 

「ふむふむ……。うちも利用できるんやったら、止めさせるんも不都合やなー。でも、ちょっと程度を弁えてくれへん?さすがにクランメンバーから国際指名手配犯を出すんは、うちも願い下げやわー」

 

「元よりそのつもりだよ。カルディナではやり過ぎたからな……。反省したんだ」

 

 その内目を付けられてはいただろうが、もう少しキルペースを落としていれば、ファトゥムたちの動きも遅かっただろう。管理AIたちが怒らないキルペースを見極めるべきだった点も踏まえ、要反省である。

 

「ほなそういう感じで。これが【誓約書】や」

 

 ちゃっかりしてると言うか、しっかりしてると言うか。扶桑はゲームシステム的な強制力を行使してきた。

 当然、俺はその【誓約書】の内容を隅から隅まで見る。サラリーマンとしても、こういう物で見落としは厳禁だ。滅多にないが、事前の打ち合わせと違う内容だったりするし。

 まぁ、そんな事すれば、そんな物持ってきた奴が信用を損なうのだが。目の前の女性が目先の信用を気にするのか、大変疑わしい。

 

「……良し。この内容で問題ない」

 

 熟読した結果、質疑応答で擦り合わせた事と、扶桑と敵対しないとか王国に反逆しないとか、そんな常識的な範囲の事しか書かれていなかった。

 俺は安心して署名する。

 

「これからよろしゅうな?」

 

「……まぁ、敵にならないよう心掛けるさ」

 

 扶桑が妖艶な微笑を浮かべながら、差し出してきた右手。俺は、恐る恐る握り返した。

 なんだか先行きが不安である。

 

「そんで、依頼やないんやけど。早速頼みがあるんやわー」

 

「……頼み?」

 

 フラグが秒で回収されそうな気がしてならない。

 

「うちのレベ上げ、付き合ってくれへん?あのドラゴン倒すんに、うちのジョブレベル全部使ってしもたんよ」

 

「……ああ。なんだ、そういう頼みか」

 

 微笑に苦みが混じる扶桑。

 そう。彼女は原作でも、ジョブレベルを対価にして発動するスキルを使用し、ジョブレベル全てを捧げている。現在、彼女のレベルは0なのだ。ジョブは就いたままらしいが、ステータスは初期値になっているだろう。

 何を頼まれるのかと不安だったが、そんなに大した頼みではなかったので、俺はほっと胸を撫でおろす。

 

「もちろんタダやないよ。レベルがそこそこ戻ってきたら、あんさんの左腕、再生さしたるよー」

 

「やりましょう、マイマスター」

 

「どぉわ!?」

 

 扶桑が払う対価に、ウィル子が食い気味で姿を現した。危うく椅子をひっくり返すところだったが、ウィル子の反応も無理なからぬ話。

 四肢欠損を回復できるスキルを持っているのは、【女教皇(ハイプリエステス)】と【聖女(セイント)】。少なくとも、俺たちが知っているのはその2つのみだ。

 そして、【聖女】は【犯罪王(キング・オブ・クライム)】ゼクス・ヴュルフェルが就いているという、トンデモ事態になっている。

 プレイヤーならデスペナ明けに四肢欠損も含めて全回復できるが、俺にそのデスペナシステムはない。

 そのため、事実上俺が頼れるのは【女教皇】である扶桑のみ。ウィル子が食い気味なのも、俺の左腕を再生させるにはその頼みを聞き届ける以外ないからだ。

 ……ゼクスがオーナーを務める〈IF(イリーガル・フロンティア)〉に加入すれば、再生してもらえるだろうが。俺が犯罪クランに加入するなど、万に一つもありはしない。

 

「へぇー……。それが噂の、〝喪失時代(ロストエイジ)〟のメイデンやね」

 

 扶桑は興味深く、ウィル子を注視した。

 メイデンと言うだけでこの〈Infinite(インフィニット) Dendrogram(デンドログラム)〉をゲームではなく、別世界と認識している事が証明される。奇しくも、そういう精神性の人間しか、〈エンブリオ〉のTypeがメイデンにならないのだ。

 そして、扶桑はそういう者こそ〈月世の会〉に求めている。何故かって、このフルダイブのゲームこそ真の世界だと、信者は掲げているからだ。まずこのゲーム内を別世界と認識しなければ始まらない教義なのである。

 

「……人に近しいガードナーかもしれないだろ」

 

「いいえ、その子はメイデンです。(これ)の目、同族の目は欺けませんよ?」

 

 ワンチャンぼかしにかかったが、問答無用で見透かされた。突如現れた、扶桑の〈エンブリオ〉、メイデンであるカグヤに。

 ウィル子のTypeを見透かされてはしまったが、逆に言えばそれだけ。メイデンである事以上の情報、本当は〈無限(インフィニット)エンブリオ〉相当である事は見透かされていないようだ。

 

「……はぁ。好きに判定してくれ。俺はお前たちが見抜ける以上の情報なんて、絶対に与えないからな。手の内が少しでもバレちまえば、こっちは商売上がったりだ」

 

「生産系やから、フォートレスとかそこらやろ?生産工場の実体はないし、ワールドとかも混じっとるやろか」

 

「……」

 

 俺はなんの反応もしないよう、唇を噛むくらいに口を噤んだ。扶桑はそんな俺の様子をニヤニヤ見つめてくる。

 後ろめたい事は別にないんだけど、狐に睨まれているようで汗がにじんでしまう。

 

『おい、雌狐。契約は済んだんだろ。いい加減こっちに譲るクマ』

 

「そうやねー。もっとじっくり話したいさかい、今度はちゃんとした場を用意するわ」

 

 必死に口を噤む俺の様子を見かねてか、はたまた待ちきれなかったのか。シュウは交代を急かした。

 扶桑は何かご満悦のようで、シュウの急かしも邪険にせず、席を立つ。

 

「また今度なー、〝喪失時代〟はーん」

 

 できれば二度と会いたくないが、正式なクラン加入のためにも頼みを聞き届けるためにも、絶対にもう1度は会わなくてはいけない。

 俺はその未来を憂いながら、にこやかに手を振る扶桑へ、嫌々手を振り返した。ついでに、送られてきたフレンド申請も嫌々許可した。

 そうすれば、扶桑とカグヤは二の句を続けずに、魔法馬車の扉を潜る。

 馬車内は静かになった――

 

『じゃあ、最後は俺の番だ』

 

――凄く嫌な意味で。




(´・ω・`)<後書きももうないんだ。許して。
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