Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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第二話 プータロー

 俺こと、川村英司の話を聞いてほしい。

 

 俺が6時間ほど不貞寝して8時間の睡眠を挿み、更に2時間の不貞寝をするくらいにはショックな話だ。

 

 時は不貞寝をする前まで、16時間ほど前の話。これからののんびり転生ライフのために魔法馬車を走らせてすぐの辺りだ。

 

 

「マスター、馬車は煌玉馬(ジルコニア)で平坦な空中を走らせるとはいえ、空中にもモンスターは居るので対策をした方が良いのですよー」

 

 これからの具体的な方策を話し合おうとダイニングの椅子に腰を落ち着けた時、フヨフヨと浮かんだままのウィル子はまず安全の確保を提案した。

 

「「平坦な空中」というパワーワードはさておいて。対策って言ったって、どうするんだ?俺たちは武器も防具もないから戦えんぞ」

 

「ウィル子たちに戦う力がないのなら、戦えるモノを用意すれば良いのですよー」

 

「……煌玉人作るとか言わないだろうな」

 

 魔法馬車に煌玉馬と、強力すぎるアイテムを生み出した前例があるウィル子を俺はついつい訝しんでしまう。

 いや、マジで言いそうでさ。

 

 『インフィニット・デンドログラム』の作中、確認された煌玉人の数は少ない。1体は生産が専門で戦闘性能があるか疑わしかったが、別の1体はガチの戦闘型だった。

 原作において、〈エンブリオ〉が6段階とはいえ、超級職の〈マスター〉を圧倒していた。端的に言ってヤバい。

 

「さすがに7段階の出力で煌玉人は作れませんねー」

 

 暗に∞段階の出力なら作れるというお答えを頂いた。ウィル子にダイブ型VRMMOは与えちゃダメらしい。

 

「ここはマスターの戦闘力に依存しない、独立戦闘のモンスターを作るのですよー」

 

「モンスターなら7段階で行けるのか?」

 

「機械型のモンスターならマスターのHP・MP・SPと応相談で作れます。強さは払ったポイント量に左右されてしまいますが」

 

 7段階、〈超級(スペリオル)エンブリオ〉としてのウィル子の創造物は〈マスター〉の消費HP・MP・SPに応じて性能を上げるらしい。さり気なくHPも勘定に入れられるのは少し怖いが、もしもの時に使えるだろう。

 ちなみに、ウィル子がスキルを使う時はだいたい俺のHP・MP・SPを消費するようだ。

 

「して、ウィル子君。君の作れる限界で支払われる量はどれくらいかね」

 

「どのポイントかは反映せず、一律90万でレベル100の機械型モンスターが作れるのですよー」

 

「レベル100!?うせやろ!?」

 

 レベル100はモンスターの上限だ。正しくは100以上もあるが、100と101には分厚い壁がある。それを超えられるのは一握り中の一握り、〈SUBM(スペリオルユニークボスモンスター)〉と呼ばれる存在である。

 逆に言えば、レベル100というのは〈UBM(ユニークボスモンスター)〉の最上位だ。このゲームの難易度表記なら〈神話級(マイソロジー)〉に区分され、超級職と〈超級エンブリオ〉を携えた〈マスター〉に相性次第で勝利できる。

 

 そんな物が作れてしまうと言うのだから驚愕するしかない。

 

「あの、すみませんマスター。さすがにウィル子の作ったモンスターは〈UBM〉には届きません。ギリギリ最底辺、〈逸話級(エピソード)〉に届くかどうかなのですよー」

 

「え?それまたどうして」

 

「ウィル子の作り出せるモンスターの質が良くないのです。「レベルを上げて物理で殴る」という感じで、基本性能はそこらのMOBモンスターより強くなりますが、何の特殊スキルも持ちません。いえ、こっちの命令に従わせるための《従属権》は付与できますが、それ以外特別な力は持たないのですよ。例えるなら、「種族値の低いポケモンをレベル100にした」だけなのですよー」

 

「なん……だと……」

 

 ウィル子が述べる事実に俺は冷や汗を流した。

 

 ただそこそこ強いモンスターを侍らせるだけとは、少し拍子抜けなスキルに思えてしまった。この世界のチートじみた〈超級エンブリオ〉に比べると見劣りする。

 

「兵器の方を作れれば楽なのですけどねー。あ、でもポイントさえ供給してもらえればいくらでも作れるのです。戦いは数ですよ、マスター」

 

「パーフェクトだ、ウィル子」

 

 熱い掌返しだがウィル子もションボリした後にしたり顔になったのでお相子だ。

 

 1体だけならそんなものは強者に捻り潰されるのがオチだが、数が揃えば話は別。なお、広域殲滅型は考慮しないものとする。

 

「だが1体90万かぁ。今の俺で運用できるのかねぇ」

 

 払うポイントが安くない。転生したばかりの俺に支払えるとは考えられないので落胆しつつ、現状はどの程度使えるものかと自身のステータスウィンドを表示した。

 

「は?」

 

 俺の目にあり得ない数値が飛び込んできた。

 

HP 99,999,999/99,999,999

MP 99,999,999/99,999,999

SP 99,999,999/99,999,999

 

「1億まで妖怪1足りない!!」

 

「あ、そっちなのですね」

 

 横から覗き見るウィル子としては別のリアクションを期待していたようだ。

 いや、確かにこの多さは驚きなのだが。ここまで行っているなら後1くらいおまけしてくれても良かったじゃないか。9が凄く並んでいて凄い(小並感)とは思うが。

 

「何のジョブもなしにこれはあり得ないな。今就いてるのは何だ」

 

 ジョブの欄に書かれた文字列を確認する。そこに書かれていたのはこんな文字だ。

 

メインジョブ 【山羊神(ザ・ゴート)】 lv.1

サブジョブ (空欄)

 

「まさかの【(ザ・ワン)】シリーズかよ……」

 

 予想していなかった自身のジョブに顔が引きつった。これも転生特典だろうが、さすがに【神】シリーズは身に余る気がしてならない。

 

 【神】シリーズはスキル特化。その名称・性質に合わせたスキルを多く取得し、さらにはスキルを自身で生み出せる。スキルを作れるというのは、スキルが重要なこの世界において破格だ。

 しかし、上手い話には裏がある。その【神】シリーズはジョブの取得条件が厳しいのだ。

 この世界のNPCであるティアンどころか、プレイヤーである〈マスター〉も就けた者は少ない。

 

「でも山羊の神ってなんだ?」

 

「動物の【神】シリーズとなると、例は【猫神(ザ・リンクス)】と【兎神(ザ・ラビット)】。どちらも管理AI用のジョブなのですよー」

 

「ふむふむ、つまりこれも原作を壊さないための特別措置か」

 

 動物系【神】シリーズは管理AIが後付けした、この世界に元々ない職業だ。そして、管理AIでも自分たち用のジョブしか後付けできていない。

 つまり、このジョブも俺用に後付けされたモノだと予想できる。

 

「それにしてもだ。猫と兎の例もそうだが、どんなジョブか皆目見当も付かんな」

 

「スキル見た方が早いのでは?」

 

「ご尤も。という訳でスキル項目、オープン!」

 

 万感の思いを込めた俺のオープンウィンドウが神の恵みを指し示す。

 

スキル 《スケープゴート》

詳細 パッシブスキル。HP・MP・SPの最大値を「99,999,999」で固定する。STR・AGI・END・DEX・LUCの最大値を「9」で固定する。このスキルを無効化する事はできない。

 

「……」

 

 どうにも目が疲れているようだ。一旦目を瞑り、眼精疲労を少しでも回復させてからもう一度スキルを確認しよう。

 

スキル 《スケープゴート》

詳細 パッシブスキル。HP・MP・SPの最大値を「99,999,999」で固定する。STR・AGI・END・DEX・LUCの最大値を「9」で固定する。このスキルを無効化する事はできない。

 

「……」

 

 どうにも目が疲れてい―――

 

「マスター、現実を受け入れるのですよ。後、文字数稼ぎが露骨です」

 

「ぷぅぅぅぅぅぅぅさん蹴るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 新世界の神のような怒号で叫ぶも、現実は変わらない。

 

「これは、神の贈り物((かっこ)試練)(かっことじ)の方だったみたいですね」

 

「【神】シリーズでありながら、なんたる産廃ジョブだ!というか山羊の神ってか生贄の神じゃねぇか!どっちかって言うと【生贄(サクリファイス)】の超級職だろこれ!ふざけやがって運営この野郎!メルボムしまくってやるからな覚悟しろ!」

 

「多分このジョブ用意したのは運営ではないですし、メルボムしたらウィル子たちの存在がバレるのですよー」

 

「おいおいおい、死ぬわ俺」

 

 興奮していた精神は己の命を縮める事実を聞いて冷静になる。躁鬱の落差で眩暈がしそうだ。

 

「はぁ……。よし、寝るか」

 

「え?」

 

 

 という事で今に至る。

 

 補足だが、寝る前にウィル子にレベル100モンスターを10体ほど注文しておいた。身の安全はバッチリで、快適な空の旅を過ごしている。

 

 俺はショックだった。別に異世界転生で無双が是が非でもしたかった訳ではないが、ここまでお膳立てしておいて俺自身はほとんど何もできない。

 

「これじゃあウィル子のヒモだなぁ……」

 

 枕に頭を預けたまま溜息を吐いても、吐かれた息は俺のやる気の如く霧散する。

 

「まぁ、別に良いかぁ。第一目的が「のんびりする」なんだし、俺自身が強くなくても……」

 

 自己弁護をしてみるも、消え失せたやる気は帰ってこない。

 

 しばしの間、何かを考えるでもなく、また不貞寝に戻るでもなく、じっと天井を眺めていた。

 

「マスター!」

 

「なんだよウィル子。俺は寝るので忙しいだが」

 

 自室の扉を勢いよく開けるウィル子を煩わしく思いつつ、しかし彼女に頼って生きるしかない俺はのそのそと上体を起こす。

 

「ウィル子たちの護衛モンスターが次々にやられているのですよー!!」

 

「なんだと!?」

 

 10体のレベル100モンスター。個々はギリギリ〈逸話級〉程度だが、それでも10体だ。

 それに、ジルコニアに付いて来られるよう、飛行ができるモンスターを創造した。野良のモンスターやそこら辺の〈マスター〉に負けるはずがない。

 

「い、今10体目が……!」

 

 俺もウィル子も顔色が青ざめる。

 

「うぃ、ウィル子!次のモンスターを―――」

 

 ピンポーン♪

 

 ウィル子に指示を出そうとした時、空中を走り続ける馬車のインターホンが鳴った。




(*´w`*)<本作におけるウィル子の能力の解説~

(´英`)<8888

(*´w`*)<『戦闘城塞マスラヲ』等の原作ウィル子は、万物(電子機器関連)を創造する『01能力』、世界中のあらゆる電子機器を支配する『億千万の電脳(スカイネット)』。この2つの能力を持っていました

(´英`)<本作ではそれらが『《21世紀(ウィル・センチュリー)を願う神(・オブ・トゥウェンティーワン)》』という1つのエンブリオスキルに統合されてる訳だ

(*´w`*)<だいたいその認識で合ってますが、明確には違います

(´英`)<と、仰ると?

(*´w`*)<万物の創造も、電子機器の支配も、全てデータ改ざんにより行っているのですよー

(´英`)<ああ。ゲーム内のデータ弄ってる事になるのね、アイテムの創造

(*´w`*)<そういう事です。ついでに、チートよろしく、ゲームシステムも色々と弄れます。全てではありませんが

(´英`)<とりあえず、今はゲームシステム弄るのは控えてくれよ?絶対に管理AIに殺される

(*´w`*)<フリですか?

(´英`)<フリじゃねぇ!マジだ!

(*´w`*)<にほほほほほ。あっと、ウィル子のエンブリオスキルには原作ウィル子の特性も統合されてるの、言い忘れるところだったのです。具体的に言うと、データ食べちゃったりとか、最適ルートの演算とか。そこら辺もスキルという事で行えます

(´英`)<まぁ、原作ウィル子みたいな事ができるスキルって事だな

(*´w`*)<原作ウィル子っぽい事を、マスターのHP・MP・SPを使って行うって事です。ちなみに、ウィル子のスキルって実はマスターに発動権限がありません。全てウィル子の任意です。本作で権限があるように見えるのは、ウィル子がマスターのお願いを全て素直に聞いてる故だったりするのですよー

(´英`)<さらに俺のヒモ感及びスケープゴート感が上がってるな!!!!!?????

(*´w`*)<今回の解説はここまで。ではではみなさん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
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