Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram 作:RAINY
俺こと、川村英司の話を聞いてほしい。
馬車で快適な空の旅をしていたはずが、護衛のモンスターが全滅して絶体絶命。緊張感のない音色のインターホンとは逆に、俺とウィル子は緊張に包まれていた。
「し、新聞とセールスはお断りです!!」
「せめてインターホンに向かって言うのですよー!!」
「言えるか!〈
ウィル子と震える肩を抱き合いながら泣き言を言い合う光景は虚しさすらある。
ピンポーン♪
慈悲なきセカンドコール。まだ連打されてないのが救いだが、そうなるのも時間の問題か。
「まままマスター、そろそろ出ないと実力行使も辞さないかもしれないのです。それをしていない辺りまだ交渉の余地があるのですよー!」
ウィル子自身もその可能性を一縷の望みと思っているのか、涙目でなんとも説得力に欠ける。
「ああそうだ、まだ助かるマダガスカル」
「そーれ、ここ!」
精神の安定を図るためにウィル子と共にボケつつ、インターホンの目の前まで至る。意を決して応答ボタンを押した。
「すいませ~ん、川村ですけど~」
「まーだ時間かかりそうですかねー」
ウィル子、それは受け応える方の台詞ではない。
『やっほー』
モニターには何故か逆さの美女の顔が映し出された。
俺はその顔、というか白銀のメッシュが入った赤髪、赤の右目と白銀の左目に記憶の引っ掛かりを感じる。
「徹底的なまでの紅白」、「〈逸話級〉10体を倒せる程の実力」、「空中戦を熟せる存在」。
そのキーワードから俺は『
そういう〈エンブリオ〉でもない限り地上戦が主なこの世界で、機械兵器を用いて空を駆り、〈超級エンブリオ〉と超級職を併せ持つ存在、AR・I・CA。その実力は〈
そんな強者との出会いに高速で思考回路を回した俺の第一声は――
「食べないでください!!」
――高頻度で男女問わず性的に食べる
『た、食べないよ!?』
俺の予想外の反応に驚きながらの返しだったので、おそらくとあるアニメを想起したものではないだろう。
「たた食べても美味しくないおおお俺にいったい何用かね」
「マスター、声が盛大に震えているのですよー」
「許せ、サスケ……」
俺は今何故強者に狙われたのか分からなくて恐怖しているのだ。精一杯の気力で震える足を抑えているのは評価されこそすれ、貶される謂れはない。
『いやー、空を飛ぶ馬車って珍しいなーと思って。ちょっと話しかけようとしたら周りの鳥みたいな機械が襲ってきたからさ。あれ、君のでしょ?正当防衛とはいえ、壊しちゃったからついでにごめんなさいってね?』
モニターに映し出されているAR・I・CAは申し訳なさそうにしていた。嘘を言っているようには感じ取れない。
「……ウィル子?」
「ちょっと急用を思い出したのですよ」
ウィル子は即座に俺の左手の紋章へ引っ込んだ。
「ウィル子、せめて原因を説明してから引っ込め!おい、応答しろウィル子!ウィル子ーーーーーーー!!」
『説明しよう!』
普通に応答があった。しかも無駄に熱血系漫画の解説風味で。
『2・3体までなら
「ふむ、そうか……。原因は分かった、ウィル子は悪くない」
「10体出せ」とだけの雑な注文をしたのも、〈超級〉の出力に抑えるよう命令したのも俺である。過失を問われるべきは〈マスター〉の俺だろう。
とりあえず、原因が分かったので目先の迷惑をかけた人への対処が優先事項である。
「すまなかった、こちらの不手際だ」
『うん、アタシは特に怒ってないから
「
相手が邪険に扱ってこないのであればこちらがそうする意味もない。原作登場キャラとの接触は原作の時系列を知るにも都合が良いし。
俺は
「外は暑いだろう。って、何処だ?」
馬車の扉を開けて外を確認するとAR・I・CAの姿がない。代わりに馬車の屋根から騒がしいエンジン音が聞こえてきた。
「うわっ」
目の前の砂地にエンジン音の発生元、〈マジンギア〉が着地する。バーニアで舞う砂が目に入らないように目を腕で庇った。
どうして逆さ吊りになっていたかと思えば、〈マジンギア〉を屋根に置いて自身をワイヤーかなんかで繋いでいたのか。
危ない事をするものだ。そうしなければインターホンが押せない状況だったのだが。
「ごめーん、アタシでも砂を巻き上げない着地とかは無理でさ」
砂煙が消えたのを見計らって〈マジンギア〉からAR・I・CAが降りてきた。ようやくはっきり視認した〈マジンギア〉は、
「ああ、まぁ積もる話は中でしよう。中は快適だぞ?」
今の時系列を知る重要情報が見られたために内心機嫌が良い俺は、怪しまれぬようすぐにAR・I・CAへ視線を移し、馬車内へと招き入れる。
「馬車の中はこんなになってるんだね!広いし涼しい!」
「レジェンダリアではこんな馬車が作られてるらしい。「魔法馬車」だったか。俺は偶然手に入れたんだがな」
「へぇー」
偶然ウィル子が作ったから手に入った物だ。何も嘘は言っていない。
「ダイニングの椅子にでも腰かけといてくれ。飲み物はアイスティーしかないけど、良いかな?」
睡眠薬が入っている、なんて事はない。危機感知ができる〈エンブリオ〉を持つ彼女にはすぐに察知される。
そもそもの話、俺に美女を睡眠薬で眠らせて何かする度胸はない。
食料は備え付けの冷蔵庫(食料調味料限定のアイテムボックス)に蓄えられていたが、残念ながら二日分そこそこしかない。俺が寝ていたのは食料の消費を抑えるための苦肉の策でもあったのだ。だから飲み物は本当にアイスティーしかない。
むしろ何故アイスティーだけはある……。
「ありがとー!砂漠での性能テストで喉が渇いてたんだよね」
差し出されたコップの内容物を何の警戒もなくAR・I・CAは口を付ける。まぁ、危機感知に反応がなかった故だろう。
「「性能テスト」?あの〈マジンギア〉のか」
「〈マジンギア〉って良く分かったね。人型の【マーシャルⅡ】ってまだ出回ってないはずだけど」
「お、おっと。これは失言だったかな?これでも情報通でな。ドライフが人型戦闘兵器の製造に漕ぎつけたってのは知ってたんだ」
漏れた失言を、俺は別の意味で失言だったように取り繕った。間違っても原作知識だと露呈してはいけない。
「お察しの通り、あれが試作段階の空中戦闘用〈マジンギア〉、【マーシャルⅡ】。アタシがそのテストパイロットのAR・I・CA」
「もう空中機動まで可能なのか……。おっと、失礼。俺は英司、川村英司だ」
自己紹介しつつ固い握手を交わす。俺はすぐに放すつもりだったが、AR・I・CAの手が緩まず、じっくり俺の顔を観察していた。
「あの、どうかしたか……?」
「……冴えない感じでスーツ姿の男性も悪くないかも」
視線が獲物を見つけた鷹のように鋭くなった気がしたので背筋が寒くなる。
アラサー・ボサボサ髪・無精髭の男性まで守備範囲なのか、この好色家は。
「そっちは中々気合の入ったキャラクリエイトだな。スクショして後で見抜きに使っても良いか?」
守備範囲から抜け出すべく、俺は初対面でありながら無礼でキモイ行為を敢行した。
「見抜きと言わず、直で抜いてかない?」
「……」
……。
…………。
…………………………………………。
「はっはっはっ。冗談に冗談で返したが、そっちの方が
「ものすごく逡巡していたのですよー……」
「俺は悪くねぇ!」
凄い湿度の高い目つきでウィル子が睨んでくるが、一生涯童貞を守ってしまったのだ。美女の誘惑に心が揺らいでしまっても仕方がないだろう。
「あ、そっちの子も中々良いね!今夜どう?」
「ウィル子にも矛先が向いたのですよー!?」
ウィル子は身の危険を覚えて俺の背後に隠れる。
「おいおいAR・I・CAさんや、からかうのはそこら辺にしてくれよ」
「アタシはかなり本気だよ?どう?いくらくらい払えば寝てくれる?」
「ウィル子、俺の懐のために一肌脱いでくれ」
「売春!ダメ、ゼッタイ!」
怯えきっているのでダメらしい。
「そう、残念」
AR・I・CAは心からそう思っているようでしょんぼりしていた。
「話を戻そう。こっちのモンスターが迷惑かけたな。自動で迎撃するようにしてたもんだから近づいただけで攻撃してしまったんだ」
「良いよー。アタシに怪我はなかったからね」
「あれらに無傷だったのか……。〈逸話級〉相当と自負してたんだがな」
傷を負わせていたら負わせていたで問題だが、無傷というのは驚愕を通り越して呆れる。
まだAR・I・CAは青い【マーシャルⅡ】、【ブルー・オペラ】を所持していない時点では確か超級職ではないか、〈超級エンブリオ〉に目覚めていないかの状態のはず。所謂、「準〈超級〉」というやつだ。
「あのモンスターたち、速度は高かったけど耐久はそこまででもなかったね。一発で壊れちゃったよ」
「……ウィル子?」
「当たらなければどうという事はないという思想を基にした設計だったので、耐久はそこまで割り振っていなかったのですよー。空に飛ばすとなると軽量化もしなくてはならなかったので」
合理的な判断に基づいての設計だったらしい。
説明されて納得したので俺は訴追しない。
「あの鳥型の兵器ってウィルちゃんが作ったモンスターだったんだね」
もう「ウィルちゃん」呼びとは親密度の上昇が早すぎる気がするが、まぁこっちも馴れ馴れしいタメ口だったから言いっこなしか。
「にほほほほ、機械系の製造は大得意なのですよー」
「へぇー。それならさ、アタシの所属するクランに来ない?メカニックの集まりだからきっと気に入るだろうし、クランの皆も受け入れてくれると思うなー」
「マスター、どうしますか?」
「あ、俺に振るのね」
「いや、ウィル子のマスターなのですから」
そういえばそうだったと再認識する。
ウィル子は俺の心から生まれた〈エンブリオ〉ではなく『戦闘城塞マスラヲ』由来の転生特典なので、俺の〈エンブリオ〉という認識が薄いのだ。
「うーん、今は何処かに属するって気分ではないなぁ」
ブラック企業からの解放というのもあって、集団への帰属に対する忌避感を覚えている。
仕事を押し付けるだけの上司、蹴落とすのだけは上手い同僚、そんなブラック企業に勤めてハイライトが消えていく部下。仕事に忙殺され、それらとの交流だけに絞られてしまった俺は心が摩耗していただろう。
そういう訳があってしばらくは一人で自由を謳歌したい。傷心気味な現状では、クラン内で問題を起こす可能性もあるだろう。
「そっかー。じゃあ、気が向いたらいつでも声かけてね」
俺から後ろ向きの返事を受けても気にせず、AR・I・CAはフレンド申請を送ってきた。
「ああ、その時はよろしく頼む」
本来の〈マスター〉ではない俺にもしっかりフレンド機能が適応されている事に安堵しつつ、目の前に浮かぶフレンド許可不許可に関するウィンドウの「YES」枠をタッチした。
願わくば、前世でこういう友人が居続けてほしかったものである。
「そろそろ帰らないと。フーちゃんに怒られちゃう!」
「テストパイロットに来てたんだったら問題ないんじゃ?」
「無断のテストパイロットだからね!試作機も試作機だからここまでの運転は見越してないよ!」
晴れやかなAR・I・CA。だけどそれは怒られる。
「またいつか会おうねー!クランへの加入以外でも、人肌が恋しくなったら呼んで良いよー!」
慌ただしく退室するAR・I・CAを見送ろうとしたが、外に出た時にはもう空を一条の彗星が走っているだけだった。
「あ」
去り行くAR・I・CAを眺めて思い出す。
「どうしたのですか?マスター」
「一番近い町はどの方向にあるか、訊き忘れた……」
「……」
俺とウィル子は途方に暮れる。
「まぁ、真っすぐ進めばそのうち町が見えてくるだろう……」
「そうですねー……」
これからの旅路を憂鬱に感じながら、俺は肩を落として馬車内に戻ろうとした。
「ちょっと良いかなー」
「ん?」
かけられた声の方に顔を向ける。
そこには、
(´英`)<という事で、今回で書き溜め放出終了だ。以後はかなりスローペースな投稿になる
(*´w`*)<……書き溜め、少なくないですか?
(´英`)<まぁ、筆者も他の執筆に追われてたっぽいし。それに、欲しい情報が出てこなくて困ってるそうだ。
(*´w`*)<具体的に言うと、どの情報ですか?
(´英`)<マリー・アドラーがどうやって【疫病王】に勝ったのかっていうのと、AR・I・CAの〈エンブリオ〉の必殺スキル
(*´w`*)<……あの2人と戦う予定なのですか?
(´英`)<できればその予定で行きたいから、その点も踏まえてスローペースにやるんだってさ
(*´w`*)<次回の更新が遅くなりそうなのですよー
(´英`)<全くだ
(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん
(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)