Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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第五話 ピンチをチャンスに・下

「彼らの事情や人となりが分かったところで、一旦の結論を出そうかー」

 

 それぞれの意見がどうなったのかの発表会が、チェシャによって取り仕切られた。

 

「処遇は『放置』なのである。前述したが、彼らは前管理者の何らかのプログラムに関係していると推測できる。我輩たちが手を下せば、予期せぬ事態が起こり得るのである。むしろ、彼らの好きにさせるべきとも考える。プログラムであるなら、タスクの邪魔もすべきではない」

 

 最初に口火を切ったのはドーマウス。しかも、その意見は『放置』と来た。

 「触らぬ神に祟りなし」と言ったところか。もしくは、俺たちの善良さを感じ取ってくれたかな?

 

「私は『保留』だ。我らと同等かつ同質の力を持つ以上、我らの計画を狂わせる可能性は無視できない。彼が持つ情報の出所も不透明だ。だから、野放しには反対だ。しかし、手を貸してくれると言うなら、是非とも借りたい。そういう意味で、処分は下さないが、警戒は続けたい」

 

 シャバウォックは慎重に『保留』を選択していた。

 まぁ、こんなどう見たって怪しい存在、野放しにはできんわな。

 

「情報源について追及してなかったわね。まぁ、訊いて答えてくれるとは思えないけど」

 

「……お察しの通り、こればかりは口を開けない。ほんと、無理矢理聞き出そうとかしないでくれよ?」

 

 アリスが予測した通り、俺は原作知識であると教える気はない。

 ネットに上がってたの読みましたとか、言えるか馬鹿野郎。

 

「そうよね。じゃあ、とりあえず『保留』で。不明な点が多すぎて対処に困るわ。後、個人的に興味があるのよね。貴方を構成するデータのブラックボックス」

 

 アリスは〈マスター〉のアバターを担当しているだけあってか、〈マスター〉でありティアンでもある俺のデータを調べたいらしい。

 それはそれでどういう調べ方されるのかと、背筋が震える。

 

「私も『保留』よ。私も、大変興味があるわ」

 

 ハンプティダンプティは今にも舌なめずりしそうな程にっこりしている。

 アリスと違ってこっちはもう背筋が凍るね。

 

「僕は『融和』かなー。何か悪さをしようって感じじゃないし、協力できるなら利益があるしねー」

 

 チェシャは多くの〈マスター〉をログイン画面で見てきただけあって、この短時間で俺の人となりに対して理解を深めたようだ。

 さすがは管理AIきっての良識派。俺もチェシャとは仲良くやりたい。

 

「『保留』……よ。迂闊に触れるのは……得策ではない……わ」

 

 ダッチェスは、その結論に至った過程が不明だが、とかく処分は性急であると判断したのだろう。

 ……過程を省いたの、もしや自身の喋り方だと長くなるって思ったからか。

 現在も〈マスター〉たちの視覚情報操作してるせいで、会話にすらあまりリソース割けないんだもんな……。なんか、仕事増やしてごめん……。

 

「ワァタクシは『利用』ですかぁね。もぉしこちらに牙を向けぇたとしても、ワァタクシたちなら、問題なく処分できまぁすから。利よぉできるだけしぃてしまいましょぉ」

 

 マッドハッターはなんとも明け透けに、当人の目の前で利用しつくす事を宣言した。

 俺としては最早利用されるのは前提。使い潰されなければ構わないが。

 

 これで、ここに居る管理AIたちの意見が出そろった。

 

「それじゃあ、意見をまとめようかー」

 

「『保留』が8票、『処分』が3票、『放置』・『融和』・『利用』が1票ずつである」

 

 現状明確になった意見でも、奇跡的に友好的な票(『放置』や『利用』も含めて)が『処分』票と同数になった。

 

「となると、当面はやっぱり様子見かしらね」

 

「契約を交わしておいた方が良いだろう。力尽くで【誓約書】を破棄できるだろうから、口約束と変わらんが」

 

 アリスが全ての票を鑑みた結論を下し、シャバウォックがその結論に従って話を進める。

 

「口約束でも、余程不利益を被らない限りは守ります守ります。死にたくないので」

 

「君の誠実さに期待するよ。では、内容を詰めていこうか」

 

 意外としっかり応対してくれるシャバウォック。

 そいえば〈マスター〉の成長に関して過激な策を取る事もあるやつだが、基本は常識的だったっけ。

 

「ウィル子、だったかな?今後君にも我々の仕事を一部任せると思うが。具体的に何ができる?」

 

「なんでもできますよ?」

 

「……なんでもとは、つまり私が担当している〈UBM(ユニークボスモンスター)〉のデザインや認定のような事も?」

 

「はい、できます。それだけでもないのですよー?プレイヤーアバターの管理、〈エンブリオ〉の保管、モンスターの創造、自然環境の設定、“監獄”の維持、グラフィック情報の変更、アイテムの整理、セキュリティの施工、イベントやクエストの策定、時間の操作。貴方方管理AIがやっている事、ウィル子はそっくりそのまま行えるのですよー」

 

 ゲームという事になっているから全てのデータを閲覧・管理・改竄できるという。それが、この〈虚数(イマジナリー)エンブリオ〉としてのウィル子の能力らしい。

 このゲームのプレイヤーも多いという事で、ゲームへの信仰心みたいなのも多いからそれだけウィル子も力を振るえるのだろう。

 そして、ウィル子の脅威、その一端を聞かされた管理AIたちは、皆それぞれ警戒を露にし出す。

 

「ウィル子ぉ!なんだって彼らの警戒心を煽るような事言ったのぉ!」

 

「彼らの役に立てる事をプレゼンテーションしたかったのですよぉ!こっちはマスターの身を守るために必死なのです!」

 

 お互い胸倉掴み合って揺さぶり合う光景は、なんともシュールな見世物だろう。

 管理AIたちも警戒心を緩めた、と言うより「どうする?こいつら」という困惑気味な雰囲気を漂わせている。

 

「まぁ、とりあえず。僕みたいに多くの分野を担えるって事だねー。それなら、僕と同じように雑用してもらって良いんじゃないかなー」

 

 微妙な雰囲気から最も早く立ち直ったのはチェシャ。

 こういう〈マスター〉と〈エンブリオ〉がバカやっている風景は、最も疑似的に〈マスター〉やってる分、見慣れているのかもしれない。

 

「……大丈夫なのであるか?」

 

「僕たちから敵対しなければ大丈夫だと思うよー」

 

「絶対敵対しないので見逃してください!」

 

「右に同じくなのですよー!」

 

 心配がるドーマウスに対してチェシャが肯定的な意見を述べてくれたので、これ幸いにと同調した。

 ほんと、命だけは助けて。

 

「ほらね」

 

「……違う部分で心配になってきたのである」

 

 まだ何か心配がるドーマウスに、俺は「信じて!」と訴えかける熱視線を向ける。

 何故か顔を背けられた。

 

「話を戻そうかー。僕たちが求めるのは君の処理能力。雑用として僕たちに協力してもらう事―。対し、君たちに上げるのが英司くんのデータ管理権限とー、〈超級(スペリオル)エンブリオ〉分の余力。異論はないかなー?」

 

「その条件を呑んでくれるなら、俺に異論はないです。お願いですからその条件で呑んでください」

 

 もう俺は土下座へと即座に移れる準備で管理AIたちに懇願する。

 恥も誇りもないが、それらで命は繋げないんだ。

 そんな情けなさに呆れてか(心打たれてか)、皆が頷いて賛同を示していた。

 

「いや、1つ条件を加えたい」

 

 そこで異論を挿んだのが、シャバウォックである。

 

「じょ、条件とは?」

 

「そんなに怖がらないで良い。〈超級〉分の力が残るなら、充分に遂行できる仕事を任せたいだけだ」

 

 シャバウォックは柔和な態度で俺を落ち着かせようとしてくれているが、お前ら管理AIの測量は信じられない。

 特に、シャバウォックは不死身の〈SUBM(スペリオルユニークボスモンスター)〉を何度となくけしかけようとした奴だ。

 どんな無理難題を投げてくるか、分かったものではない。

 

「第六段階までエンブリオが至っているマスターを、積極的にPK(ピーケー)してほしいのさ」

 

 PK、プレイヤーキル。

 なるほど、俺に〈マスター〉たちの試練を務めさせる気か。〈超級エンブリオ〉に至るための試練を。

 確か、帝国の方でラビットが同じような仕事を務めていたはずだ。

 しかし、ラビットは出力を第六段階に抑えられている。

 なら、超級をぶつけるというのも、試みとしてアリだろう。

 

「では、ウィル子たちも更なる対価を求めるのですよ」

 

 ウィル子は強気の姿勢で交渉に出た。

 どこか滲み出ている不快感が、強気の所以だろうか。

 

「ふむ。具体的に何を求める?」

 

「特典武具を違法製造させてください。9個で良いです」

 

 謙虚にも9個……じゃねぇよ!9個は凄い強欲だよ!

 

「9個、ね。随分と欲深いな」

 

 やっぱり謙虚扱いはされなかった。

 

「それだけマスターを守るのには必要です。上級と超級に大きな差があるとはいえ、覆せない程の差ではありません。相性が悪ければ、それだけ差も縮まります」

 

 どうやらウィル子は俺を守る万全な態勢を得るために、9個も要求したようだ。

 ごめんね……、弱くって……。

 

「ふむ。そうだとしても、9個は譲れない」

 

「では超級相当を1つ、神話級(マイソロジー)相当を1つ、古代伝説級(エンシェントレジェンダリー)相当を2つで構わないのです」

 

 態度を変えないシャバウォックに、ウィル子は強情に食らいついた。

 最初にかなり重い要求をして、次にそれより軽い要求をするというのは、確かに有用な交渉術ではあるが。

 

「部を弁えないとはこの事だろう。君は自身の置かれている立場を理解しているのかな?」

 

「そちらこそ、状況を理解しているのですか?こちらはなりふり構わなければ、貴方方をデリートしてしまっても構わないのですよ?」

 

 なんだってウィル子がこんな反抗的なんだ!?ちょっとキャラが違くない!?

 ……いや、ヒデオが危険にさらされた時はこんな感じだったか。

 でも、彼女の〈マスター〉が俺ではあるが、俺の扱いとすると違和感がある。

 

「そうか。一度身を以て分からせるべきか?」

 

「止めるのである、シャバウォック」

 

「そうね、そこまでにしましょ?」

 

「うんうん。あんまり暴れると、後が面倒だからねー」

 

 ドーマウス、アリス、チェシャから思わぬ制止がかかった。

 

「あまり過干渉すべきでないと、提言しているのである。前管理者のプログラムが暴走したら、どうするつもりか」

 

 ドーマウスは『俺=前管理者のプログラム説』を踏まえた観点。

 

「甲斐甲斐しくて健気な子じゃない。少しくらい我がままを聞いてあげるのが、エンブリオとしての先輩というものじゃないかしら」

 

 アリスはウィル子を後輩として扱う観点。

 

「〈無限(インフィニット)エンブリオ〉同士がぶつかった際の被害なんて、甚大である以外は未知数だからねー」

 

 チェシャは後処理を考慮しての観点。

 実に三者三様の動機だった。

 

「……そうだな。少し冷静さを欠いていた」

 

 そうして3つの観点から制止され、シャバウォックは自身の非を認めて矛を収めた。

 超怖かった。

 

「……君の要求を呑もう」

 

 冷静に思考を巡らせた上で、シャバウォックは要求を呑んでも良いと判断したようだ。

 

「だが、しっかりと働いてもらおうか。期待しているよ?」

 

 その代わり、ウィル子の雑用生活と、俺のPK生活が余儀なくされるのだった。




(*´w`*)<特典武具は9個で良い

(´英`)<俺にできない事を平然とやってのける!そこに痺れる!ただし憧れねぇ!死ぬとこだったじゃねぇか!!

(*´w`*)<でも、マスターの【山羊神(ザ・ゴート)】を考えると、妥当ではないですか?

(´英`)<……。それで、折衷案で4つにしたけど、もうどんなのにするか決まってるのか?

(*´w`*)<話をあからさまに逸らしたのですよー……。まぁ、一応候補はあります。超級のは、私たちの代わりに戦ってくれる兵器を作る予定です

(´英`)<……煌玉人?

(*´w`*)<いえ、もっとすごいのです。言っちゃうと、他作品の機動兵器をまんま作るのですよー

(´英`)<……今から考えるだけでこえぇや

(*´w`*)<それで、古代伝説級の方は。1つは防御極振り、もう1つは、何と言えばいいでしょうね?観測機器?

(´英`)<観測機器?

(*´w`*)<望遠鏡と言うか、とかく遠くを見るためのそれです。危険はできるだけ早く察知したいのですよー

(´英`)<ああ、馬鹿速い奴らが多いしな。そいつらを早く見つけるに越した事はないか。それで、神話級は?

(*´w`*)<未定です。候補が多すぎて、絞り込めてません。今後次第になりそうなのですよー

(´英`)<ある種予備か。整えた装備の思わぬ弱点とか埋めるために枠を確保した、的な

(*´w`*)<そういう事です。とりあえずは、決めてあるのは次回のお楽しみ、という事で

(´英`)<今回はこの辺までか。じゃあ、それでは皆さん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
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