Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram 作:霖霧露
俺こと、川村英司の話を聞いてほしい。
「ウィル子が用意しましたのは、ビジネスな装いで統一したスーツ一式!こちらが
ゲームの中に転生したから、2日目でイメチェンである。
いや、元々の着衣もビジネススーツだからそんなにチェンジできてないか。
強いて言えば、安っぽいのからとびっきりの高級品にクラスチェンジしている。
状況を一応報告すると、管理AIたちからはしっかり解放され、現在地は俺の魔法馬車。
ウィル子は自身の〈
そんな地味にやりたい放題したため、ウィル子はこのように俺と共にある。
そして、解放された俺たちが向かうのはコルタナという町。
チェシャにマップ機能を教わり、カルディナ国内という事で、
そうして着くまでの間に俺とウィル子がやっているのは、管理AIに許可を貰って作った特典武具の品評会(?)である。
「続きましては、これまたビジネスマンのおしゃれアイテム、眼鏡!こちらも古代伝説級特典武具、【
眼鏡も付けるとなれば多少はイメチェンか。
度が入ってないので伊達眼鏡、マジでただのおしゃれだ。
しっかり装備効果はあるが。
「ウィル子くん、それぞれの効果を説明したまえ」
「サーイエッサー!」
無駄に
リアクションがしっかりあるって、良いな。
あるよね。古いネタ使ったせいで分かってもらえず、全スルーくらうやつ。
「【細心注衣キングス・オーダー】は、攻撃を自動的に防ぐバリアを12個ストックする《
「へぇー、12回攻撃無効か。地味に強いし、
「ネーミングは、Fateのヘラクレスから拝借しています」
「あー、
さりげなく他作品からネタを拝借していた。
でもヘラクレスって〈エンブリオ〉、ありそうだよな。
「ちなみに、ストックが減る毎に服が1枚ずつ破けます」
「なんで!?」
突然その手のお色気ゲームみたいな性能が明かされた。
「需要はあるんじゃないですか?」
「あるあ……いやねぇよ」
美少女、百歩譲って美少年ならまだしも、冴えないアラサー男性のどこに需要があると言うのか。コレガワカラナイ。
「それで、【望遠傍鏡アンダーライン】の方ですが」
「あ、俺の疑問は流されるのね」
「ウィル子の趣味って事で流してください」
「逆に流せないんだが??????」
ウィル子に何か狙われているのかと、思わず自身の体を自身で抱きしめてしまった。
「【望遠傍鏡アンダーライン】は、ナノマシンを散布し、その散布されたナノマシンが捉えた映像を映す《
さりげなく流されたけど、俺もあまり詮索したくないので流した。
それより、【望遠傍鏡アンダーライン】だ。
「完全に視覚的スキル特化だな。ネーミングはあれか、『とある魔術の
『とある』では確か『アンダーライン』って撮影用ナノマシンがあったはずだ。
効果からして、元ネタはそれだろう。
「正解です。『とある』のあれを再現させてもらったのですよー。この世界、死角や遠方から攻撃してくる人が多かった印象があるので」
死角からと言えば、代表例がマリー・アドラーだろうか。戦法として死角からの攻撃手段を持ってる奴は少なくない。
遠方からは、
ヤバい。どう考えても魔境だ、この世界。
「ああ……。こんだけ色々用意してもらってるのに、全然生き残れるビジョンが湧かない……」
「マスター、安心してください。ウィル子が絶対に守りますから」
俺が絶望に浸っていれば、ウィル子は固い意志を滲ませて宣誓した。
その宣誓に俺はなんとなく、ウィル子らしくなさを感じる。
似たような違和感を、管理AIたちに囲まれた時にも抱いた。
これは、確認しておくべきだろうか。
「ど、どうかしましたか、マスター。ウィル子が守るのでは心配ですか?」
ウィル子は、怯えた様子で俺の顔を窺ってきた。
そう、これだ。これが違和感だ。
原作のウィル子がそうだったように、彼女は川村ヒデオの無事を何よりも優先し、ヒデオの無事を心配していた。
それは、親愛故の、固い絆故の行いだ。
でもこのウィル子は、まるで飼い犬のように怯えている。ともすれば、捨てられるかもとしれないと。
「なぁ、ウィル子。うまい訊き方が分からないんだが。お前って、本当にウィル子か?」
俺は、まるで目の前のウィル子がウィル子という皮を被った何かのように、見えしまった。
そうして吐き出した質問に、ウィル子は悲しい顔をする。
「……ウィル子は、いいえ、私は。マスター、貴方の、川村英司の望むウィル子に……なれていませんか?」
ある意味で、その返しが答えだった。
「ウィル子……。お前はウィル子じゃないんだな?」
「……私は、貴方の〈エンブリオ〉です。貴方の心から生まれた、貴方の望む形を取った〈エンブリオ〉なのです」
俺は、納得がいった。
俺の転生特典は、ウィル子じゃなかったのだ。
俺に与えられた特典は、俺の望む形で生まれる〈エンブリオ〉だったのだ。
そうして俺の〈エンブリオ〉は、ウィル子を象った。
一緒に居て楽しく、笑いに満ちてストレスなく過ごせるだろう最高の理想像、『戦闘城塞マスラヲ』のウィル子を。
「なるほどな。だからただのチート能力ではなくて、ウィル子だったのか。ははは」
理想像がこんな女の子というのもあって、俺はちょっと気恥ずかしくなってしまった。
思わず気恥ずかしさを誤魔化すような笑いを零した後、俺はウィル子へと手を差し出す。
「……マスター?」
「ウィル子は俺のウィル子って事で、今後もよろしく頼む」
彼女は俺の転生特典であり、俺が選び取った者。
そして、俺が共にこの世界を生きてほしいと願った、大切な友人なのだ。
そうと分かれば難しい事はない。
彼女と俺の在り方を、友達とすれば良い。
「は、はい!
「そんな気負うなって。俺は、ウィル子と友達になりたかったんだよ。願わくば、原作のウィル子とヒデオみたいにな」
「……!はいっ!」
そう頷くウィル子は、今までで一番良い笑顔を浮かべていた。
握る手の力も強く、とても固かったのだ。
「でも改めて考えると、俺って友達に頼りっぱなしの駄目人間なのでは?」
「オリジンマスターも似たようなものでしたから、気にしてはいけないのですよー!」
「いや、ヒデオは己の力で友達を作っていったからなぁ、あれでも」
前科者と間違われる程の目付きの悪さで、良くもあれ程の友情を育めたものだと、川村ヒデオの凄さを実感する。
まぁ、周りが前科持ち程度で怯む軟な精神していないのもあっただろうが。
とするなら、やはりその人生は奇跡と呼ぶに相応しい。
「ウィル子はマスターの友達でもありますが、マスターの〈エンブリオ〉でもあるのですよ。つまりウィル子はマスターの力なのです!」
「うん。そう、だな。そういう事にしよう」
ウィル子が必死に擁護してくれているし、ここは彼女の優しさに甘えてしまおう。
甘えないとマジで俺は無能も良いところだし。
「それでも気が引けるのなら、これからウィル子と友情を育み、他の方々とも育んでいけば良いのですよー」
「ウィル子と育んでいくのはもちろんだが、他の奴らかー……」
パッと思い付くのが『インフィニット・デンドログラム』原作主人公、レイ・スターリングだ。
だが、かの主人公がこのゲームを始めるのは、時系列的にまだ先になる。
レイの兄であるシュウ・スターリングも狙い目だが、自然な方法で友達になるのは難しい気がする。馬鹿みたいな天才だから、下心を見抜かれそうだ。
「
「AR・I・CAねー。悪くないけど、付きまとう色々がねー」
AR・I・CAが現在所属しているだろうクラン<叡智の三角>には、一等面倒臭そうなのが居る。
その人物とは、Mr.フランクリンだ。抱える事情は触れづらいし、その人格はおそらくあまり合わない。
ティアンをNPCでないと思いながら、障碍とならば躊躇なく殺すからな。
俺はティアンを殺したくないから、そこで対立が起き得る。
同じくティアンをNPCと思ってないって言うか、自身もティアンのような状態になってしまってるからな、俺。
「ふーむ。<叡智の三角>が駄目という事なら、<セフィロト>も駄目でしょうか」
「ま、そうなるな」
後にAR・I・CAは<叡智の三角>を抜ける訳だが、その後に入るクラン<セフィロト>も、結構面倒なのだ。
まず、そのクランはカルディナ主導で設立される。
クランとは言うが、実際は国のために働く実働部隊、という事になる。
そこに集まった面子も癖が強いのだ。
俺の知る限り真面なのは、アルベルト・シュバルツカイザーくらいか。
そいつもまた意思疎通が難しいという問題を抱えているのだが。
「こうなると、AR・I・CAとは知人くらいの関係で留まるのが妥当だな」
「意外、でもないですが。〈超級〉の〈マスター〉たちは色々と難がありますね」
「我が強くないと〈エンブリオ〉が7段階目に到達しない節があるからな、この世界。とりあえず、友達作りは成り行きに任せよう」
覚えている限りの〈マスター〉を思い出したところで、俺は投げやりになった。
だってどいつも難しいんだもん。
「品評会に話を戻そう。
「はい。ウィル子の、というかマスターの記憶にある中で最高の機動兵器を再現したのですよー」
「最高の機動兵器か……」
ウィル子が自信満々元気溌剌なのが、かえって嫌な予感を感じさせる。
いったいどんなヤバいのを生み出したのか。
「それが、こちらになります」
ウィル子は【望遠傍鏡アンダーライン】を操り、《ホログラム》で作った機動兵器の姿を投影した。
「……ウィル子、お前これは」
「にほほほほほほほ」
俺の記憶にある中、という事でもちろん投影された姿には覚えがあった。
ただ、予想以上にヤバいモノだったため、俺は冷や汗をかいたのだ。
「ブラックグリントはやりすぎだって……」
ウィル子は、かつて世界を滅ぼした力を再現していたのだった。
(*´w`*)<【細心注衣キングス・オーダー】の詳細説明~~~~
(´英`)<88888
(*´w`*)<ビジネススーツ一式と表現しましたが、正確に言うと、トレンチコート、ジャケット、ベスト、グローブ、ネクタイ、Yシャツ、インナーシャツ、ベルト、スラックスズボン、ソックス、アンダーウェア上、アンダーウェア下、です。攻撃を無効化する度に、言った順から破けていきます
(´英`)<なぁ、それって最終的に俺パンツ一丁にならない?
(*´w`*)<アンダーウェア上下は見た目上残るのですよー。効果はもちろんないですが
(´英`)<……まぁ、パンツ一丁よりは良かったが。それだと、相手からはバリアのストックが残ってるように見えないか?
(*´w`*)<実は他人からもしっかり見分けが付きます。何故かって言うと、スーツ一式にはⅩⅡ~Ⅰの数字が記されていて、アンダーウェア分のストックがなくなると、Ⅱ・Ⅰと記されていた数字が0に変わります
(´英`)<完全にバリアのストック数はバレる訳だ
(*´w`*)<バリアにリソースを割き過ぎないようにするにはそうするしかなかったのですよー……
(´英`)<《用衣周到》を付けるのと、古代伝説級に収めるためのコストカットだったと。じゃあ、《用衣周到》はどんだけ回復を早められるんだ?
(*´w`*)<通常ストックの回復に24時間かかるところ、MP100万で1時間まで早められます。1時間以上は早められません
(´英`)<そこら辺もコストカットか。かかるMPが莫大だとしても、攻撃無効のバリアを即時回復なんてチートがすぎるし、そのくらいがちょうど良いか
(*´w`*)<装備枠についてですが、上半身、下半身、籠手の枠が埋まります
(´英`)<この効果で装備枠3つなら破格な方だな
(*´w`*)<ついでに、【望遠傍鏡アンダーライン】は頭枠です
(´英`)<えーと、装備枠は最大で頭、上半身、下半身、篭手、ブーツ、外套、右手武器、左手武器、アクセサリー×5、特殊装備品の、計14。その内今回の装備で埋まったのは頭、上半身、下半身、籠手の4つ。ジルコニアの特殊装備品枠も含めて計5つか。まだまだ色々と装備できそうだな
(*´w`*)<救命のブローチ枠はしっかり空いてるのですよー
(´英`)<絶対に装備します、死にたくないので。在庫も絶対確保します、死にたくないので
(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん
(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
※今後の更新について
今後の更新は、だいたいその月の第4日曜日0時にしようと思っています。もし諸事情でその日に更新できない場合、最新話の後書きで連絡させていただきます。