Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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第七話 困難な試練、されど……

 俺こと、川村英司の話を聞いてほしい。

 

「あぁぁぁぁぁぁんまりだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 俺は魔法馬車の中でむせび泣いていた。

 隣にウィル子という衆目がある事も気にせず、大の男が泣き叫んでいるのだ。

 

「どうどう、マスター。落ち着くのですよー」

 

「落ち着けるか!こんなのってないよ、おかしいですよカテジナさん!」

 

「カテジナis誰」

 

「『機動戦士Vガンダム』に出てくるキャラクター」

 

「いや、それは知ってるのですが……」

 

 ウィル子とボケまくったところで、だいぶ俺も落ち着く事ができた。

 

「良し。俺が泣き叫ぶに至った経緯を振り返ろう」

 

「ホワイトボードを出しておくのですよー」

 

 奇妙なボケで困惑していたウィル子も、もう俺の振り返りに付き合う姿勢を取っている。

 それでこそ我が心から生まれた〈エンブリオ〉にして、この世界で最初の友達だ。

 

「ではまず。俺たちは無事コルタナに着いたんだったな」

 

「はい。煌玉馬(ジルコニア)の《自動走行》が正常に働き、難なくコルタナに着きましたね」

 

 

 《乗馬》や《騎乗》といったスキルがなくても目的地まで勝手に向かってくれるジルコニア。地味に便利な奴だ。

 おかげで距離の割に早くコルタナへ到着した。

 食料がなくなっていたから、正直あれ以上時間がかかっていたらヤバかったな。

 

「で、道中狩ったモンスターのドロップを売り払って、食事にありつき、食料の確保もした」

 

「マスターの手料理が楽しみなのですよー」

 

「自慢できる腕ではないから、あまり期待するなよ?」

 

「了解です!ちなみに、ウィル子の食癖は果菜類の夏野菜を絶対食べない事です!」

 

「子供か」

 

 原作に登場した人型の〈エンブリオ〉って、食癖なんて呼ばれてる食事に関する特徴があるのだが、ウィル子にもちゃんとあったらしい。

 それにしても、果菜類の夏野菜とは。

 ピーマンやゴーヤ、トマトにナスなど、子供が嫌いな野菜の集まる分類であるため、実に子供っぽい。

 

「でも、マスターも嫌いとまではいかなくても、苦手ですよね?ピーマンとゴーヤ」

 

「ああ。食えなくはないが、進んでは食わないな」

 

 ピーマンとゴーヤって苦いし。俺は美味しいと思えない。

 

「お揃いなのですよー!」

 

 すっごいにこやかにウィル子が微笑んでいる。

 幸せそうで何よりだ。

 

「話を戻そうか」

 

「マスターが泣き叫んだ理由を振り返ろうの回でしたね」

 

「そうだ。食料調達のところまで話が進んでたな。という事は、次が本題だ」

 

 コルタナ到着とか食料調達は序章である。

 そして、俺が泣き叫んだ理由とは――

 

「サブジョブに何か就けないもんかと、コルタナで一般開放されてるジョブクリスタルに触れたが、何1つ就けませんでした」

 

――ジョブの適性が、俺に全くなかった事である。

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!」

 

「ああ、マスターがまたご乱心なのですよー!」

 

 俺にはなんの才能もないと、世界に突き付けられたのだ。

 そりゃご乱心にもなる。

 

「確かにね、ティアンは〈マスター〉と違って適性のないジョブには就けないって設定があった!適性のあるジョブでも素質次第でレベル上限がカンストに届かないって設定もある!だからって俺に一切のジョブ適性がないのはいったい何なんだ!?」

 

 俺だって、〈マスター〉みたいにどんなジョブにも就けるなんて思ってはいなかった。

 多分下級職でも就けないのばっかりだと予想していた。

 ところが、現実は全ジョブに適性も素質もなし。

 【生贄(サクリファイス)】の適性すらないと来ている。

 

「なんでただ生贄にされるだけのジョブにすら就けねぇんだよ!?生贄の適性ってなんなんだよ!?」

 

 せめて何か1つでも就けるジョブがあれば、ウィル子のエネルギータンク兼弱点な状態を、少しでも改善できると考えていた。

 俺のそんな考えは、儚くも脆く崩れ去ったのである。

 

「せめて、せめて【生贄】だけでもあれば、MPをさらに増やせたのに……」

 

「あの、マスター……。追い打ちするようで悪いのですが、それはできないのでは……」

 

「え?」

 

 ウィル子が何を言っているのか、俺には分からない。

 【生贄】は戦闘できないから、充分にレベ上げできないという話なら、【山羊神(ザ・ゴート)】をメインジョブにしている時にモンスターを生み出し、【生贄】にメインジョブを切り替えれば行ける。

 従属キャパシティの方ではモンスターを従えられないが、パーティ枠の方で従えれば、上限が5体になってしまうけど、経験値はしっかり入ってくる。

 

「【山羊神】のスキル、今一度確認してみるのですよー……」

 

 ウィル子は申し訳なさそうに、俺に確認を促してきた。

 善意の行動であるのは一目瞭然なので、促されるままにスキルを確認する。

 

スキル 《スケープゴート》

詳細 パッシブスキル。HP・MP・SPの最大値を「99,999,999」で固定する。STR・AGI・END・DEX・LUCの最大値を「9」で固定する。このスキルを無効化する事はできない。

 

「ん?あ?え?ちょっと待て?……最大値を固定する?」

 

 俺はスキルをしっかり読み込み、ウィル子が指摘していた点を見つけ出せた。

 そう。俺のステータスは、最大値を固定されているのだ。

 つまり、装備やジョブで補正が入っても、俺のステータスは変動しない。

 俺のMPは、仮に【生贄】に就けたとしても、99,999,999なのだ。

 

「……」

 

 あまりにも凄惨な事実を知り、俺は呆けてしまった。

 だってこれ、最大値を固定されるって事は、今後ステータスに補正をかけるような特典武具を手に入れても、無用の長物となる。

 特典武具のスキルは使えるだろうが、確実に旨みを減らしている。

 

「こんなの……、こんなの絶対おかしいよ……」

 

 まどかマギカもびっくりなハードモードだ。

 なんなら死んだらゲームオーバーなのでハードコアだ。東方project風にルナティックと言っても良い。

 ジョブに就けないのは百歩譲って諦めが付く。自分だけの最強ジョブビルドという夢が奪われただけだ。

 しかし、これから手に入るかもしれない装備群についても、色々と諦めろと神に告げられている。

 エネルギータンクという役目の強化も、低いステータスの補助も行えない。

 まさに、夢もキボーもありゃしない。

 俺はもう「orz」の体勢となる。

 

「……あ」

 

 開いたままのステータスウィンドウを弄っていたウィル子が、不吉な呟きを漏らした。

 

「なんだ、ウィル子。俺はこれ以上傷付かないから、何かあったら言ってくれ」

 

「あのー、ですね……?スキルレベルとかジョブレベルが上がれば、スキルの制限が外れるんじゃないかと思ったんですがー……」

 

 ウィル子はステータスウィンドウをそっと差し出した。

 

「……これ、9が何個並んでるの?」

 

「72個です。千無量大数の桁まであります」

 

「……」

 

 【山羊神】のレベルアップに必要なのが、その経験値なのである。

 小学生が好きそうな桁に、俺が絶句以外できなかった。

 ジョブレベルを上げさせる気が一切ない。

 

「ついでに……。《スケープゴート》のスキルレベルは、MAXだそうです……」

 

「……」

 

 絶句以外できないって言ってるだろ。

 何か?もっと面白いリアクションすれば制限解除されるのか?経験値を馬鹿程くれるのか?

 そうならそうと言ってくれ。ギャグマンガみたいなリアクション取ってやるよ。

 

「マスター、気を確かに!マスターにはウィル子が居ます!ウィル子が付いているのですよー!」

 

「……」

 

 俺はおもむろに、なんとなく買っておいたビニール紐をアイテムボックスから取り出した。

 

「あ、あら……急に立ち上がってどうしたんですか?」

 

「……」

 

「ビニール紐で輪を作って……」

 

「……」

 

「って、ちょっと待ったー!自殺は良くないのですー!」

 

 天井から下げた首吊り縄もとい首吊りビニール紐は、俺が体重を預けた瞬間ぶつっと切れた。

 そのまま床に顔面をシューーーーーッ!!!超エキサイティイイイイン!!!

 痛みに俺はどたんばたんごすんと身もだえたのだ。

 

「『戦闘城塞マスラヲ』の序盤再現とかいらないのですよーーー!!!心臓に悪いから止めてください!」

 

「……ビニール紐って、本当に体重を支えらんないんだな」

 

 憧れる川村ヒデオの気持ちが少しでも味わえて、とても感激である。

 

「感激するところと違います!お願いですから、命を粗末にしないでください!」

 

「ああ、分かってるよ……。最悪ウィル子が助けてくれると思ったから、冗談半分でやっただけだ……」

 

「今のマスターだと冗談に見えないのですよーーー!!」

 

 当然だが、ウィル子に酷く叱られた。

 そういう、俺を大切に思ってくれる意思が如実に伝わってきて、俺は心癒される。

 

「「心癒される」って、傷心の度にやったりしないでくださいよ!」

 

「分かってるって。臭い台詞だが、俺の命は俺だけのモノじゃないんだ。俺が死ねば、ウィル子も死ぬ。友達を殺すような事は、俺はしないさ」

 

「今しがたそれっぽい事をしたのですが」

 

「だから、冗談だったんだって」

 

 己の成長が見込めない事に落ち込んでいたさっきと打って変わって、俺は笑えていた。

 ひとえに、ウィル子が居るからだ。

 彼女を揶揄えば、元気で可愛らしい反応をくれる。

 それが俺の生きる活力になる。

 俺1人だったら、本当に自殺していただろう。

 

「ありがとう、ウィル子」

 

 だから、俺は素直に感謝を伝えた。

 

「きゅ、急に言われると、びっくりするのですよ」

 

 頬を赤らめるウィル子。

 原作ウィル子と違って微妙にヒロインっぽくなっているが、それで良いのだ。

 彼女は俺のウィル子。俺の心から生まれた〈エンブリオ〉。

 そして、俺の大事な友達なのだから。

 

「さてと。それじゃあシャバウォックに殺されないように、仕事しますかねぇ」

 

 今度こそしっかり立ち上がる。

 自分の足で踏みしめる。

 そうして、俺は生きていくのだ。俺の友達と共に。




(*´w`*)<という事で、Not成長主人公である事を説明する回をお送りしたのですよー

(´英`)<涙がで、出ますよ……

(*´w`*)<ウィル子が居る時点でチートで、やろうとすれば好きなだけゲームシステムを弄れるんですから、これ以上の力はいらないのでは?

(´英`)<それはそう。でも、男のプライドと言うか、メンツと言うか、ね?大事なモノが、ないなーって……

(*´w`*)<ウィル子以外、何もいらないでしょう?

(´英`)<え?ヤンデレ方面に進むの?

(*´w`*)<マスターが望むのであれば

(´英`)<何それ怖い

(*´w`*)<それはさておき。マスターの状態について、おさらいしましょう

(´英`)<そうね。と言ってもまぁ、簡単な話だ。俺にジョブの適性及び素質がない

(*´w`*)<落ちこぼれって呼ばれて後々成長していく感じの主人公ですかね?

(´英`)<その成長の可能性を軒並み潰されているので、その可能性はありません。……自分で言ってて、泣けてくらぁ

(*´w`*)<マスター自体は成長しないので、正直今後強くなる方法は特典武具のスキルによるものだけですね

(´英`)<まぁ、ブラックグリントがあるし、どうにかなるでしょ

(*´w`*)<そのブラックグリントの登場は、予定通りいけば次回となります

(´英`)<どのくらい無双するか、次回をお楽しみに

(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
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