Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:霖霧露

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(´英`)<オリキャラが出てきますが、お気になさらず。どうせすぐに消える名だ……。


第八話 死を告げる黒い鳥

「付近に敵影なし。前進開始」

 

 カルディナに広がる砂漠を行く戦車、〈マジンギア〉【ガイスト】。

 その車長を務める男が己の目前に浮かぶホログラムを見て、同乗する2人へ報告、片方には指示も送った。

 そのホログラムは車長を務める男、エドガーの〈エンブリオ〉によるモノで、高機能なレーダーかつ騎乗物周辺を映すカメラの役を果たすスキルである。

 

「なぁ、エドガー。ここら辺雑魚ばっかだぞ?本当に〈UBM(ユニークボスモンスター)〉なんて居るのかぁ?」

 

 操縦手を務める男、アランが【ガイスト】を指示通り前進させながらも文句を垂れた。

 かれこそ数時間砂漠を回っているのだ。その文句を垂れるのも無理はない。

 

「……俺も、おかしいとは思ってきている。確かにこの辺りに〈UBM〉が出たと噂を聞いたんだが、誰かが狩ったという話は聞かない」

 

 エドガーも、アランの文句に同調し、怪訝な表情を浮かべていた。

 その怪訝の由来は、数時間かけて〈UBM〉の影も形も見つからない事。そして、もう2つ。

 

「どこへ行っても耳にする噂なのに、どうして誰も狩ってない?どうしてトップランカーたちが動いてない?」

 

 〈UBM〉を狩れば、〈UBM〉の階級にもよるが、強力な武具が手に入る。

 だから、基本争奪戦になるのだ。

 強力な〈UBM〉だとしても、カルディナのトップランカー、それこそカルディナ討伐ランキングトップのファトゥムが動いて狩っているはずだ。

 なのに、狩ったという報告は上がっていない。

 

「……エドガー、弾薬がそろそろ余裕マージンを過ぎる。雑魚相手なら問題ないだろうが、強力な〈UBM〉が相手となると心許ない」

 

 砲手を務める男、ポーが残弾を確認し、苦言を呈した。

 雑魚を散らした後に〈UBM〉討伐が適うだろう分量を持ってきたが、それも少なくなってきていたのだ。

 

「……分かった、撤退し―――」

 

 エドガーが車長として、作戦の中断を決定しようとした時だ。

 【ガイスト】が、激しく揺れた。

 【ガイスト】は、攻撃を受けたのだ。

 

「なっ、攻撃っ!?レーダーには何も……。いやっ、敵機急速接近!」

 

 レーダーに、先程までなかった赤い点が映し出された。

 それも、恐ろしい速度でエドガーたちに近付いてきている。

 そして、距離を開けようと動き出す前に、声が聞こえてきた。

 

『騙して悪いが、仕事なんでな。死んでもらおう』

 

 強烈なまでの死刑宣告。

 続くはカメラ映像で出される、真っ黒な人型機動兵器。

 

『お前で28人目。恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ。選別の素養がある者なら、逃げ延びる事もできるだろう』

 

 死刑宣告の声とは別の声が響き、機動兵器がその巨体に相応しい銃器を、エドガーたちの【ガイスト】に向けた。

 エドガーは戦慄する。

 

「ブラック、グリント……」

 

 エドガーは知っているのだ、その機体がなんであるかを。

 その機体が、何を告げに来るのかを。

 

「エドガー、指示を!」

「っ!俺たちの全力で以って振り切る!」

「了解!」「了解」

 

 アランのおかげで我に返ったエドガー。彼は逃走を選択した。

 アランもポーも、否は唱えない。それが彼らの絆である。

 故に、彼らは全力を行使する。

 

「《我が艦よ、不沈であれ(クラバウターマン)》!」

 

 エドガーが必殺スキルを起動する。

 そうすれば、先程の攻撃などなかったかのように、【ガイスト】が修復された。

 そう。これがエドガーの必殺スキル、騎乗物の超速修復である。

 

「《絶海踏破電源(ノーチラス)》!そして、《レイル・レール》!」

 

 続くは、アランの必殺スキルともう1つ〈エンブリオ〉スキル。

 スキルの起動に合わせ、彼の減っていたMP・SPが回復し、同時に【ガイスト】が戦車らしからぬ加速をし始める。

 前者が必殺スキル。特殊装備品枠が騎乗物で埋まっている時限定で発動できる、MP・SPの超速回復。

 後者が〈エンブリオ〉スキル。空間に電磁的な力場を発生させ、対象物を電磁気力によって加速させる。

 

「《我等は共に大海へ(アルゴノーツ)》」

 

 最後に、ポーの必殺スキル。

 目に見える変化はない。だが、彼らはその変化を知覚する。

 MP・SPが、【ガイスト】乗組員全ての共有されているのだ。

 複数人で同じ騎乗物に乗らねば意味を成さない、しかし、このメンバーであれば絶大な意味を持つ。

 

 どれもこれも〈エンブリオ〉の奥の手たる必殺スキルなのだ。当然、発動にも維持にもMP・SPを食う。

 そのMP・SPは、《我等は共に大海へ(アルゴノーツ)》のステータス共有によって《絶海踏破電源(ノーチラス)》が賄える。

 おかげで《我が艦よ、不沈であれ(クラバウターマン)》も常時発動でき、【ガイスト】の耐久は無限となっているのだ。

 奇跡的にも成り立った、最強の戦車乗員。それが、エドガー、アラン、ポーの【ガイスト】戦車チームである。

 

 だが悲しきかな。そんな奇跡にして最強のチームが相対しているのは、常識外れ(イレギュラー)だ。

 

「行ける!逃げ切れるぞ!」

「撤退ってのは情けねぇが、今回ばかりはそうも言ってらんねぇよな」

「……車長の命令は絶対だ。それに、エドガーが判断を誤る訳がない」

 

 レーダーに映る敵影が遠ざかっているのに、彼ら3人は生存できたと喜ぶ。

 しかし、それは仮初なのだ。

 

『オーバード・ブースト、レディー……ゴー!』

 

 敵影は、殺人的な加速によって瞬く間に追い縋った。

 人型機動兵器と【ガイスト】は並走する。

 

「ま、マジかよ!ありえねぇ!エドガー、このままじゃ(まず)くねぇか!」

「大丈夫、なはずだ!俺の知ってる機体なら、あの加速は永続的なモノじゃない!いつまでも並走はできない!攻撃も、回復速度を上回れ……。待て、ブラックグリントなら!!」

 

 自身らの全力なら生還できると確信していたところ、エドガーは思い出した。

 自身の知るあの機体が、もし完全再現されていたら。こちらの回復などお構いなしに、一撃で削り得る攻撃があるはずだ、と。

 

『プライマルアーマー、攻性反転』

 

 エドガーの思考に丸を付けるかの如く、辺りが緑色に輝き出した。

 

「全速全k―――」

『アサルトアーマー』

 

 攻撃の予兆を見て、回避を選択した時には、もう遅かった。

 人型機動兵器の周りが、緑色に爆ぜた。

 それは機動兵器に張られていたバリアのエネルギーを、全て攻撃に用いる暴威。

 緑色の爆発、絶大なエネルギー砲が、エドガーらの【ガイスト】を襲ったのだ。

 

 爆発によって舞った砂煙が晴れる。

 残っているのは、黒い人型機動兵器のみだった。

 

『ターゲットの破壊を確認。システム通常モードに移行』

 

 慈悲なき死神は選別を終え、その場で待機する。

 そんな光景を、この死神をこの世に生み出した張本人たちが映像越しに見ていた。

 

「さすがはJ。歴戦傭兵の人格をコピーしたAIって設定を再現、コピーにコピー重ねてるようなもんだから、どんなデッドコピー品になるかと思ったが。この調子なら問題なさそうだな」

 

 その人物とは俺こと、川村英司である。

 魔法馬車を煌玉馬(ジルコニア)に上空まで牽引してもらって、そこで停車。

 アンダーラインの《ホログラム》で、馬車の周りを自然な風景と差し替えてカモフラージュ。

 そうして俺は、そんなとても安全な馬車の中から、《忍び寄る視線(アンダーライン)》で見ていたのだ。

 

「これで、第6段階〈エンブリオ〉の〈マスター〉、キル達成28人目だな」

 

 シャバウォックに頼まれていた仕事を、俺はカルディナで順調に熟していた。

 〈UBM〉の偽情報を流し、まんまと騙された〈マスター〉をブラックグリントで狩っていく。

 機動兵器ブラックグリント、正式名称【N-WGIX/V】は超級(スペリオル)相当の超兵器。

 そこら辺の〈マスター〉に負ける訳はない

 ちなみに、種別は本当にただの兵器。多分、煌玉人と似たような扱いである。

 そのため、明確に言うと特典武器ではないから、シャバウォックたちとの誓約と破ってしまうのだが、そこら辺はウィル子がどうにか管理AIたちを説得したらしい。

 

「で、ウィル子。あの3人の誰が第6段階〈エンンブリオ〉だっけ」

 

「エドガーと言う人がそうなのですよー。単純な騎乗物の超速修復ですが、単純であるからこそ強いスキルでしたね。アサルトアーマーによる一撃必殺でなかったら、回復が間に合っていたので取り逃していたでしょう」

 

「3人の内1人が6段階でそれか。複数人はやっぱり相手したくないな」

 

 本当、第7段階連中もヤバいが、第6段階も舐められない。

 今のところ、第6段階が1人だけというPTにしか当たっていないのは、割かし幸運なのだろう。

 

「こんなんだったら、第7段階とは絶対にやり合いたくねぇな」

 

「フラグですか?」

 

「縁起でもないから止めろ」

 

 第6段階〈エンブリオ〉の〈マスター〉を28人屠ってきたとはいえ、ブラックグリントに任せきりの戦闘。

 俺たちが戦闘慣れしているとは、とてもではないが言えない。

 こんな状態で第7段階〈エンブリオ〉相手なんて無理だ。まして、超級職もセットで引っ提げてるマスターとなんて以ての外だ。

 

「さて。一仕事終わったし、さっさとずらかるか。万が一でも、俺たちがこの偽情報の主犯とバレるのは避けたい」

 

 まだ情報通の間でも、誰も勝てない〈UBM〉が居るという話になっている。

 ここで偽情報を流しているとバレたら、確実に糾弾されてしまう。

 最悪、カルディナ政府ともう懇意にしているだろうファトゥムも動き出すかもしれない。

 

「では、逃避行なのですよー!って言いたいのですが、どうにも視界が悪いですね」

 

「ん?そんなに砂舞い上げたか?さっき晴れたと思ったんだが……」

 

 気付けば、俺たちの視界は砂煙に塞がれていた。

 いや、煙と言うには荒々しい。これは、砂嵐と言う方が正しいか。

 

『報告する。ブースターの噴射ノズルに砂が詰まった。機動力が激減している』

 

「は?」

 

 唐突に、Jの方から気の抜けるような報告がなされた。

 それと同時に、ブースターが軒並み根詰まりするような事があるのかと疑問を抱き、嫌な予感を覚える。

 

『そんなところに居たんですか』

 

 偶然にもアンダーラインが拾った音声に、俺は嫌な予感が当たった事を直感する。

 だって、咄嗟に《忍び寄る視線(アンダーライン)》で声のした方を映せば、空中に砂の足場を作って立っている者が居たのだから。

 

『あー、あー。こちらはファトゥム。聞こえていたら応答してください』

 

 直感は確信になる。

 そして、最悪は現実となった。




(*´w`*)<ブラックグリントの詳細説明~~~~

(´英`)<88888

(*´w`*)<まず、コジマは使ってません

(´英`)<そりゃそうだろうな。アーマードコア原作における最悪の汚染物質だ。かわりに莫大なエネルギーが取り出せるって、アーマードコアNEXTに使われてるが。アーマードコアNEXTであるブラックグリントにも使われてるが、そこまで再現する訳にはいかんな

(*´w`*)<なので、マスターの莫大なMPで代用してるのですよ

(´英`)<MP融ける

(*´w`*)<一応、事前にMPをチャージしておけるエネルギーセルを用意し、マスターの持て余しているMPをチャージしてもらっています

(´英`)<MP900万チャージできるエネルギーセルな。あれ1本で稼働できて30分だってんだから、マジで燃費わりぃよ、あのアーマードコア。

(*´w`*)<ミサイルとライフルも1発HP・MP・SP90万でウィル子が作ってますからね

(´英`)<アーマードコア原作もびっくりな、おそろしく高い弾薬費だ。俺じゃなきゃ賄えないね

(*´w`*)<ちなみに、種別としては多分煌玉人と同じ自立稼働兵器なので、普段はマスターのアイテムボックス内で待機してます。弾薬も、アイテムボックスにストックしているので、ウィル子の力で戦闘中も装填できます。ストックが切れない限り、撃ち放題なのですよー!

(´英`)<まだそんなにストックないから、そんなに撃てないがな

(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)

※更新遅延のお詫び(2021/1/31)
 更新が遅れてしまった事、及び1カ月以上音信不通だった事、真に申し訳ありません。諸事情により更新予定日に更新ができず、未だに更新できない状態にあります。ただ、来週の日曜日、2月7日にはどうにか更新しようと思っています。
 今後はこのような更新遅延がないよう注意しつつ、お詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。

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