Reincarnationer with Will.Century Of 21 in Infinite Dendrogram   作:RAINY

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(´英`)<やぁ、お待たせ(投稿が遅れた事に関して、筆者の代わりに土下座しながら)


第九話 同じ卓に着け・前編

 俺こと、川村英司の話を聞いてほしい。

 

「さて、ゆっくりお話し合いをしましょう」

 

 目の前にファトゥムが居ます。

 

 その一文で状況が絶望的なのは伝わるだろうが、ちゃんと現状を説明しよう。

 俺は砂漠でファトゥムに捕捉された訳だが、もちろん闘争も逃走もしなかった。

 すれば死ぬだろうと直感していたのだ。

 だから、俺はもう全力で命乞いした。

 一応地上に降りる許しを得てから馬車を着陸させ、砂漠のど真ん中で顔からあらゆる体液を流しつつ、両手を上げて降伏を示した。

 ファトゥムはそれで穏便に済んだ事を喜びつつ、俺に同行を願った。

 そうして連れてこられたのが、カルディナ首都・ドラグノマド。

 【漂竜王 ドラグノマド】という〈UBM(ユニークボスモンスター)〉の背で栄えたその都である。

 そこに着き、適当な建物に入り、薄暗い部屋で2人きり。

 「2人きり」という言葉に反して、ロマンチックの欠片もない。

 強いてロマンチックの欠片を上げるなら、良い香りが部屋に漂っている事か。

 1点とてくれてやれない、慰めのようなロマンチック成分だ。

 代わりに、バイオレンス成分なら満点である。だって、おそらく俺が何かしらの反抗をした瞬間、今井神先生の神がかったゴア表現の1コマがお披露目される。

 残念ながら、そのゴアの錆と消える俺はその作画を拝む事ができないが。

 そもそも、今井神先生が1コマを書いてくれるなんて事はないので誰も拝めない。

 

「まずは自己紹介から。ご存知かもしれませんが、ファトゥムと言います」

 

「こ、これはご丁寧に……。俺は、川村英司です……」

 

 何故だか知らんが凄く穏やかなやり取りから始まった。俺は心中穏やかじゃないが。戦々恐々としてるが。

 

「少し驚いています。あの〝喪失時代(ロストエイジ)〟が、こんな話の分かる人だったとは」

 

「ろ、ロストエイジ……?」

 

 唐突に変なあだ名が跳び出したものだから、俺は少なからず面食らった。

 話の流れ的に俺を指した名なのだろうが、いつの間にかにそんな名前が付いたのやら。

 

「カルディナで貴方が流していた噂の仮称であり、実際被害に遭った〈マスター〉たちが付けた名前です。「あれは、先々期文明の遺物に違いない。あれは、失われた時代の兵器。〝喪失時代(ロストエイジ)〟だ」って。他には、〝黒い鳥〟なんて呼ばれ方もしていましたね」

 

 分かってはいたが、ファトゥムは俺が噂を流していた人物だとすでに知っているようだ。

 そうでなきゃ捕まえに来ないだろうが。

 おまけに、俺がPKした〈マスター〉たちから情報をかき集めていたようでもある。

 本当、〈マスター〉とは厄介なものだ。

 殺しても3日後には蘇るのだから、目撃者を全員キルすればノーアラート理論が使えない。

 殺したのに情報が持ち帰られてしまう。

 それはまぁ仕方ないとして、それ以外に気になる事がある。

 

「〝黒い鳥〟、か……」

 

 その名称を持ち出したという事は、まさかキルした〈マスター〉の中に『アーマードコア』既プレイ者が居たのか。

 地味にこの世界、正しくは〈マスター〉たちの世界に『アーマードコア』が存在する事が知れたから良しとしよう。

 

「貴方にはその呼び名に心当たりがあるんですか?〝喪失時代〟ならまだしも、そっちはてんで分からないのですが。あの黒い機動兵器を見て、鳥と表現するのはいささか疑問があります」

 

「ああ。黒い機動兵器、ブラックグリントの元ネタが登場するゲームに出てくる単語でな。厳密には、ブラックグリントを指す言葉ではないんだが、そう呼びたくなる気持ちも分かる」

 

 『アーマードコアヴァーディクトデイ(ACVD)』にて出てきた『黒い鳥』。

 ゲーム内では、いわゆる情勢を一変させてしまう程強いアーマードコア(AC)乗りを指して使われる単語である。

 暗にAC歴代シリーズの主人公を指しているその単語だが、ブラックグリントはAC4シリーズで主人公が乗っていた機体の同列機体、それを改造した物だと考察されているのである。

 だから、ブラックグリントを指して『黒い鳥』と呼ぶのは正確ではないが、大きな間違いでもない。

 

「へぇ。あの機動兵器って、ブラックグリントと言うんですね」

 

「正式には、【N-WGIX/V(エヌダブリュージーナインブイ)】だな。それだと呼びづらいから、ブラックグリントって呼んでるんだ」

 

「なるほどなるほど」

 

 オタク的な細かい注釈にも耳を傾け、ファトゥムは頷いてくれた。

 そうして気安く会話に応じてくれるものだから、俺の気も緩んでくる。

 今となっては、どうしてあんなに怯えていたのかと、そんな俺自身に疑念を抱いてしまう。

 

「ちなみに、良ければお聞きしたいのですけど。あのブラックグリント、どうやって操縦しているので?」

 

「操縦なんてしてないさ。全部組み込んだAIがやってくれてる」

 

「AIが?あの兵器、まさか完全に自律した兵器なのですか?」

 

「そのまさかだよ。しかも、無数の戦場を渡り歩いた頭脳って設定も再現されてる。余程想定外の戦闘じゃなければ、ブラックグリントは問題なく戦える」

 

 デンドロ内でもトッププレイヤーであるファトゥムが驚愕している事に気を良くし、俺はブラックグリントを誇った。

 優越感に似た感覚を味わえて、俺はとても気分が良い。

 

「そんな物を、いったいどうやって」

 

「ウィル子のスキルだよ。俺のウィル子が、スキルでいとも容易く作った。俺も最初はビビったもんさ。ウィル子とはいえ、ブラックグリントまで作れるなんて」

 

 気分が良いまま、俺はウィル子の事も語りだす。

 

「「ウィル子」というのは、貴方の〈エンブリオ〉の事であってますか?」

 

「うーん。まぁ、一応そうだな。個人的に納得は……。いや、ウィル子が俺の心から生まれた事に、変わりはないんだったか」

 

 何故ウィル子という無双すぎるチートを引いたのか、今でも不思議でしょうがない。

 でも、俺が心から求めていた存在、という事なら納得なのだ。

 『戦闘城塞マスラヲ』は大好きだった。

 その作品の主人公とウィル子がワチャワチャやっているのはとても楽しく、そして憧れたものだ。

 俺も、ウィル子のような友達とワチャワチャしたいと思うくらいには。

 だから、俺の望む形で生まれる〈エンブリオ〉が、ウィル子を象った。

 憧れが現実となったのである。

 

「ん?〈エンブリオ〉はそうして生まれるのが普通ではありませんか?その言い分だと、まるで違う生まれ方をしたように聞こえますが」

 

「まぁ、ちょっと特殊でな。俺のウィル子は―――」

 

「マスター!!」

 

 俺のウィル子に関する真実を吐きそうになったところで、ウィル子がそれを遮った。

 その際の声といい、その表情といい、とても焦っているようだ。

 

「さっきまで全然会話に混ざってこないと思ったら、急にどうしたんだ?何か不都合があったか?」

 

「すみません、マスター。ちょっと時間がかかりましたが、えーと……。とにかくすぐに治します!ちょっと痛いかもしれませんが、我慢してほしいのですよー!」

 

「治す?いったい何を―――」

 

 ウィル子が焦った様子のまま、俺の体に触れた。

 そうすると、俺の体に異変が起こる。

 

「ぐ、がぁあああああああああああ!!!!」

 

 「ちょっと痛い」では済まない、髪を鷲掴みにされて引きちぎられるような激痛が、俺に襲い掛かった。

 

「う、ぐ……。お前……っ!」

 

 そうして激痛の名残に耐えながら、俺はウィル子、ではなくファトゥムを睨んだ。

 俺は激痛に反して、頭がスッキリしたのだ。

 気分の良さが、薬物によるモノだと気付かされるくらいに。

 

「ウィル子!サイバー・ドラゴンの召喚を!」

 

「イエッサー!」

 

 俺の号令と共に、ウィル子は機械型モンスター、遊戯王GXのサイバー・ドラゴンに似せたそれを4体召喚した。

 そのサイバー・ドラゴンをファトゥムへの攻撃に使うのではなく、まず、薄暗い部屋の四隅に焚かれたお香を焼却させる。

 そのお香が、俺の気分を良くさせていた薬物である。

 つまり、さっきの激痛はウィル子が無理矢理解毒した事によるモノ。

 おそらく、俺にかかっているバッドステータスのデータを、電子ウィルスよろしく破壊したのだろう。

 バッドステータスとはいえ、俺を成すデータの一部だったため、引きちぎられるような痛みだったという事だろう。

 まぁあの激痛についてのどうだって良い。重要な事じゃない。

 重要なのは、ファトゥムが仕掛けてきていた、という事だ。

 

「ファトゥム、これはなんのつもりだ……!」

 

「ふむ。あのまま色々と訊き出せれば楽だったのですけど、そうもいきませんか」

 

「答えろ、ファトゥム!カルディナは、そもそも俺の排除を目論んでいたのか!?」

 

 1つの仕掛けが無力化された中、悠然と構えるファトゥム。

 対して俺は、内心焦っていた。

 もうカルディナは、俺の敵対者と認識しているかもしれない。

 とすると、目の前のトッププレイヤーが俺の敵であり、後々カルディナに迎え入れられる〈セフィロト〉のクランメンバーが俺の敵となる。

 9人の〈超級〉マスターが敵になるとか、考えたくない。

 

「……測りかねている。というのが、こちら側の素直な気持ちです」

 

「測りかねている……?」

 

 相変わらずファトゥムが悠然としているから、それが嘘かどうかの判別はできない。

 だが、果たして測りかねる事になり得るのか。

 カルディナ政府の長は未来視のような力を持つ者。カルディナ議長、ラ・プラス・ファンタズマだ。

 そんな者が居ながら、俺の事を測りかねるなど、果たしてあるのだろうか。

 分からないというのが、虚しくも俺の結論である。

 俺が知る限りでは、カルディナ議長の未来視がどのような仕組みか不明であり、かつ、原作主人公たるレイ・スターリングの周辺は読み違えていた。

 俺の事が測りかねない可能性は俺視点、充分にあるのだ。

 

「ですから、お話しませんか?今度は、対等に」

 

 ファトゥムが怪しく微笑む。

 俺は跳ね飛ばした椅子に再度腰を落ち着けるか、幾ばくか躊躇するのだった。




(*´w`*)<「自白剤がお香タイプならファトゥムも効いてないの?」って質問が出そうなので、先に説明させていただくのですよー!

(´英`)<端的に言うと、ファトゥムはプレイヤーだから効かない。俺はプレイヤーじゃないから効くって話だな

(*´w`*)<このゲームには『プレイヤー保護機能』という、魅了系スキルなどの精神変容及び精神汚染系スキルで、ゲームを遊ぶプレイヤーが本当に魅了されたりしないように守る機能があります

(´英`)<独自解釈ではあるが、おそらく自白剤からも守られると判断した。だから、ゲームを遊ぶプレイヤーであるファトゥムはその機能で自白剤から守られた

(*´w`*)<対し、川村英司(マイマスター)はプレイヤーではなくゲーム内に根差す生命。管理AIから庇護対象にカウントもされてないので、『プレイヤー保護機能』なんて適応されていないのですよー

(´英`)<「ウィル子が『プレイヤー保護機能』を適応してくれれば良いんじゃないか?」って話になるだろうが、それは無理だ

(*´w`*)<マイマスターはゲームプレイヤーのアバターとデータ構成が違っています。なので、ゲームプレイヤー用の『プレイヤー保護機能』は適応できません。また、マイマスター用に『プレイヤー保護機能』を改造する事も、ウィル子にはできません

(´英`)<俺のデータ構成には、ウィル子でも読み解けないブラックボックスがあるんだ。そのブラックボックスのせいで、俺用の『プレイヤー保護機能』が作れないんだ

(*´w`*)<これも神の贈り物((かっこ)試練)(かっことじ)という事なのですよ

(´英`)<Goddamn!!!!

(*´w`*)<ではでは今回はこの辺で。それではみなさん

(´英`)(*´w`*)<また次回~(なのですよ~)
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