指揮官の日常はKAN-SEN達に侵略されているようです   作:烏丸蓮

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お久しぶりです
ネタが思いついたのでまた投稿します



第5話 KAN-SEN達は指揮官の好みを調査するようです(前編)

 

 

 

 

 ここはアズールレーン最前線基地。

 セイレーンとの戦闘も最近では滅多になく、基地には束の間の平和が訪れていた。

 しかし、その基地に所属する指揮官とKAN-SEN達は、一時の平和を全て享受しているわけではない。

 指揮官は毎日執務作業に追われ、KAN-SEN達は演習や遠征、勉学、新技術の研究、他陣営との交流、海水浴、飲み会、BBQ等と陣営の垣根を超えて、お互いに絆を深め切磋琢磨していった。

 …………最後の方はいらない説明だったが、とにかく有事の際に備えて日々研鑽している。

 

 そんな変わらない日常の中で、ある日の午後のことである。

 指揮官と本日の秘書艦“綾波”で今日の業務を片付けていた。

 綾波は重桜所属のKAN-SENで、この母港内ではZ23ことニーミやラフィ―、ジャベリンといった通称“初期艦組”の1人で古参にあたる駆逐艦である。戦闘能力が非常に高く、彼女は自分の大剣で飛行している戦闘機をぶった切るほどである。まさに鬼神である。

 そんな彼女と他愛のない雑談を交えながら執務作業を終わらせていると、執務室の扉がノックされる。

 

 

「入ってどうぞー」

 

 

 指揮官はドアのほうに目を向けて、短く言う。

 この執務室にはよく、KAN-SEN達が執務の手伝いや遊びに来るので来客は珍しくない。この時間になってくると遊びに来るKAN-SENがほとんどなので、恐らくその誘いだろうと予想する。

 

 指揮官の入室許可に対して、そのKAN-SENは執務室の扉を開け、開口一番に言い放つ。

 

 

「指揮官、我々と一緒に来てもらおう」

 

 その発言の主はユニオン空母のエンタープライズであり、その隣にはエンタープライズの後輩、空母エセックスが立っていた。

 

 

「……いきなりどうしたんだ? エンタープライズ。なにかあったのか?」

 

「それについては後で説明する。とにかく一緒に来てくれ」

 

「来てくれって……どこにだ?」

 

「調査室だ」

 

「調査室?」

 

 

 指揮官は怪訝な表情でエンタープライズを見る。

 この母港内には独房(主にアークロイヤル用)はあるが調査室というものは存在しない。多分、KAN-SEN達が勝手に作ったのだろうと指揮官は予想する。

 

 

「それで……俺の何を調べるんだ? 何もしてないぞ?」

 

「色々だ」

 

「色々ってあんた……具体的に言ってくれ」

 

「そうだな……指揮官の趣味、嗜好、性癖とか様々なことだな」

 

「あー! すみません! 実家の母が危篤かもしれないんで今日の所は帰ります!」

 

 

 これはまずいと指揮官は直感的に判断する。この手の類は面倒事に巻き込まれるのは確実だ。

 

 以前も、『私達ともっと親睦を深めましょう!』とKAN-SEN達に飲みに誘われ、ほいほいと連いていった結果、途中で親睦会という名の取調べに変貌していった。

 何故かというと酔った勢いに任せ、冗談で指揮官が好きな異性のタイプを口にしたからである。その瞬間、場の空気が凍り付き、指揮官の酔いも一気に醒めたのはいうまでもない。

 ちなみに、その時の冗談で言った好みのタイプは、身長2mを超す大柄の女性であった。無論、そんなKAN-SENはこの母港にはいない。

 

 その後、目からハイライトさんが家出したKAN-SEN達に尋問された。ギャルゲーの選択肢のように、バッドエンド直行ルートを避けながらなんとか乗り切ったが。

 指揮官はそんな苦い経験を思い出し、咄嗟に親をダシにつかってやり過ごそうとする。

 

 しかし、エンタープライズはキョトンした顔で指揮官に言う。

 

 

「? 何を言っている指揮官? お義母様は朝方に電話した時、元気だったぞ?」

 

「…………いや、なんで勝手に君たちが実家に電話してんの!?」

 

「こんな世の中だ。指揮官の身内に何かあってはいけないと思ってな。だから、私達KAN-SENが、定期的にお義母様に連絡するのが義務となったんだ」

 

「義務ってなんだよ!? 本人は全く知らされてないんだけど!?」

 

 

 指揮官は初めて聞く内容に驚いている。

 通りで、この基地に着任当初は頻繁に連絡をよこしていた母親が、最近になって全く連絡を寄こさなくなったわけだ。

俺の代理としてKAN-SEN達が親に連絡していれば、向こうからは緊急事態じゃない限り電話とかしないよね……と一人で納得する。

 ウンウンと頷いている指揮官を見ながら、あることを思い出しエンタープライズは言った。

 

 

「それと安心してくれ指揮官。あなたの妹とペットの柴犬“ゴンザレス”君とも連絡を取り合って安否を確認している」

 

「妹まで!? つーか、ペットの名前は“タロウ”なんですけど!? なんだよゴンザレスって!」

 

 

 その指揮官の発言にエンタープライズは苦笑を浮かべ、言葉を返す。

 

 

「指揮官……その……少し言いにくいんだが…………タロウってニックネームダサくないか? そんな一秒で考えたものより“ゴンザレス”のほうがカッコよくないか?」

 

「てめえ!! 俺がつけた名前馬鹿にすんじゃねえ!!! やんのかコラァァッッ!!」

 

 

 一触即発。指揮官は自分の命名センスを馬鹿にされたことに怒り、エンタープライズに決闘を申し込もうと一歩前に出る。

 と、そこにエンタープライズの隣で静観していたエセックスが口を開く。

 

 

「…………エンタープライズ先輩、そろそろ本題に入りましょう。このままだと話が進みません。指揮官も落ち着いてください」

 

「ふむ、それもそうだな」

 

「納得できないが…………確かにそうだな」

 

 

 話が進まないと判断したエセックスは指揮官たちを落ち着かせる。

 それにエンタープライズと指揮官はエセックスの言葉に同意して、一先ず矛を収めた。

 

 

「それで……俺に何をさせようというんだ? 言っとくがまだ仕事は残っているぞ?」

 

「それなら綾波だけで問題ない……です。もう少しで終わりそうなので、行ってくるといい……です」

 

 

 指揮官の問いに秘書艦の綾波が答える。

 多分、綾波は善意で言ったのだろうが……指揮官には逃げ道を塞がれたのと同じ状況だった。

 

 

「それなら私達と一緒に来てくれ。まあ、そんなに時間はかからないと思う」

 

「はあ……まあ、さっさと終わらせるか」

 

 

 指揮官は気乗りしないがこのままだと押し問答になる可能性がある。それなら、エンタープライズ達に従って、早く調査とやらを終わらせるのがいいと考え席を立つ。

 

 

「それじゃ、綾波。後は任せたぞ。まあ、一応俺が帰ってくるまで執務室に残ってくれ。もし戻るのが遅かったら、ここの鍵だけ閉めて俺に持ってきてくれ」

 

「了解……です」

 

「指揮官、それでは行こうか」

 

 指揮官は綾波にそう伝えると、エンタープライズとエセックスと共に執務室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば調査室ってどこにあるんだ?」

 

 指揮官はユニオンKAN-SEN2名と廊下を歩きながら、疑問をぶつける。

 

「母港内には使われていない部屋がいくつかありましたので、ここから近い空室を借りました」

 

「そっか…………まあ、今度からは部屋の使用許可をとってね?」

 

 

 どうやらこの場所から近い所にあるらしい。

 人目がない山奥に連れていかれて、質問はすでに拷問に変わっていることもないだろし、頬の汗を舐めて、嘘をついているかどうかも確認されないだろう。

 指揮官は内心、ホッと胸を撫で下ろしていると「着きましたよ」とエセックスから声がかかり、3人の歩みはある部屋の前で立ち止まった。

 

 

 

 そこは扉に『調査室!』と可愛らしい字で書かれた白い紙が貼ってある部屋だった。

 

 

 

「では入ろうか指揮官」

 

 エンタープライズに入るように促され、指揮官を先頭に3人は入室する。

 

 

 室内は簡素なつくりだった。部屋はおよそ8畳の広さで正方形になっており、部屋の中央には3人分が作業できる横長の机とその周りに椅子が4つ置かれている。

 そして、ドアのほうから見て左隣にテレビ台とその上に32型の液晶テレビがあり、右隣りには掛け時計が設置されていた。

 窓からは太陽の明るい日ざしが差し込み室内を照らしている。

 

「指揮官は窓側の席に座ってくれ」

 

 エンタープライズは窓まで移動して、ブラインドシャッターで入ってくる明かりを調整しながら指揮官に言う。

 指揮官はエンタープライズに言われた通りに行動し、窓際の席に座る。

 そして、指揮官の対面にエンタープライズが座り、その隣にエセックスも着席した。

 

「それで……俺の何を調べるんだ?」

 

 指揮官は2人が着席すると同時に問いかける。

 

「そうだな。では初めに……指揮官はどのKAN-SENが好きなんだ」

 

「いきなり回答に困る質問だなオイ」

 

 

 最初からとばしてくる質問に指揮官は苦笑いをする。

 エセックスは記録係だろうか……ペンを持って机に用紙を置き、指揮官の言葉を一字一句、文字に起こそうと会話に耳を傾けていた。

 

 

「そうだな……皆のことは好きだよ? 好きじゃなきゃ指揮官とかしてないし」

 

「ふむ……ではどの艦種が好きとかはあるのか? 駆逐艦とかどうだ?」

 

「いや、どうだって言われましても……嫌いではないけど。つーか、なんだその質問は。意味が分からんぞ」

 

 

 指揮官は嫌な予感を感じ始める。どう考えても誘導尋問のような気がしてならない。

 エンタープライズは両手を組み、真剣な眼差しで指揮官を見ている。指揮官は何もやましいことはしていないのに、その真剣な表情に目を逸らしてしまう。

 そんなやりとりをしている中、記録係のエセックスが指揮官に尋ねる。

 

 

「最近、購入した本とかはありますか? 例えば……Hな本とか」

 

「えっ!? それどういう質問!? たとえ買ったとしても人に言うか!!」

 

 いきなり変な質問をされ、指揮官は声を荒げる。

 

「エロ本を買うならどういう系が好みなんだ? やはり幼い少女が載っている系か?」

 

「やはりってなんだ!? エンタープライズは俺をどういう目で見てんだ!? つーかよ!」

 

 

 

 

「本当に聞きたいことを直接聞けよ!! まどろっこしいなオイ!!」

 

 

 

 

 指揮官はこれでは埒が明かないと思い、本題に入るように促す。

 指揮官の趣味や嗜好を調査するだけなら、さっきまでいた執務室でも可能なはず……

 しかし、人目につかない場所まで連れて来たということは、おそらくだが周囲の目が届かない所で調べたいのだろう。誰にも聞かれないのが重要なのだ。

 

「……では単刀直入に聞こう」

 

 エンタープライズは身を乗り出して指揮官に顔を寄せる。

 真っ直ぐな瞳でエンタープライズは目の前の相手を捉える。相変わらず綺麗な整った顔立ちだなと指揮官は思っていると、エンタープライズは声を潜めて言う。

 

 

 

 

 

 

「指揮官はロリコンなのか?」

 

 

 

 

「んなわけねえだろうがああああああああ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 突然のシャウトにエセックスの体は一瞬ビクッとする。

 しかし、その絶叫にはエンタープライズは全く意に返さず続けて質問する。

 

 

「……ロリコンではないのか?…………指揮官、本当のことを言ってくれ! 私はあなたならどんな性癖も受け入れるぞ!!」

 

「どこぞのロイヤル空母と一緒にするんじゃねえ!! 前の朝礼の時に俺はロリコンじゃないって皆納得しただろーが!!」

 

「それなんだが……なかなか誰にも指輪を渡してくれないからな。前にKAN-SEN円卓会議でロリコンかもしれないって議題に上がったんだ」

 

「それを確かめるために、私と先輩が調査員として白羽の矢が立ったわけです!」

 

「ええ……まだ、ロリコン疑惑が払拭されてなかったよ……」

 

 

 ふたを開けてみたら、ただロリコンだと疑われているだけだった。

 指揮官はこんなことのために、綾波に業務を任せた自分が馬鹿馬鹿しくなった。

 指揮官は心の中で溜息をつき、ロリコンの疑いを晴らすため、未だに疑惑の目をしたユニオンKAN-SEN達に言う。

 

 

 

「安心しろ。俺はロリコンじゃないさ。ぶっちゃけるとな…………赤城たちに体を密着される度にドキドキしている」

 

 

 指揮官は少し恥ずかしそうに言った。

 そう、これは本音である。たとえお馬鹿さんが多くても、ここのKAN-SEN達は基本的にスタイルの良い美女・美少女だらけなのだ。

 そんな彼女たちに抱き着かれると、少なからず意識してしまうのは仕方がない。

 こんな発言すると赤城や大鳳は喜びそうだが……まあ、ロリコン疑惑を晴らすのが先決だ。

 

 

「それでは……指揮官はちゃんと反応するのですね? 大丈夫ですよね?」

 

「反応って……何が反応するのか気になるが……まあそうだな、大丈夫だ」

 

「そして、ユニオンの空母に激しくドキドキするというわけだな」

 

「いや、ユニオン空母はどっから出てきた? 捏造するんじゃありません」

 

 指揮官がエンタープライズのボケに反応すると、エセックスは今までの会話から察して安堵する。

 

 

「指揮官がロリコンでないなら安心しました。指揮官がもしそうだったら……私達も困るので……」

 

「ああ、そうだな。これでもしロリコンだったなら指揮官を独房に入れて、ロリコン矯正装置を付けるところだったが……よかった」

 

「発想が物騒すぎるだろ!? もし、ロリコンだったらそんな罰があったのかよ!」

 

「冗談だ……まあ、皆は指揮官のこと本気でロリコンと思ってはいないさ。時間を取らせてすまなかった」

 

 

 エンタープライズは謝りながら、ペコリと頭を下げる。それを見てエセックスも慌てて指揮官に頭を下げた。

 

 

「別にいいさ、こんなことには慣れているからよ」

 

 

 指揮官も安堵する。これで皆にロリコンだと疑われないだろう。

 エンタープライズたちに多少時間を取られたが、これもいわゆるコラテラルダメージに過ぎない。疑惑払拭の為の致し方ない犠牲だと割り切った。

 

 

「それでは報告書を作成して終わろうか……エセックス!」

 

「はい、先輩! えーと…………『指揮官はKAN-SENに密着されるとギンギンする』……と。これでよろしいですね?」

 

「待て待て待て待て……全然よろしくねえよ、ちゃんと書きなさい」

 

 

 先程までとは変わってジョークを言えるほど、調査室には穏やかな雰囲気が流れている。

 そんな雰囲気の中、エンタープライズは終了の合図を出す。

 

 

「では指揮官の疑いも晴れたことだ。執務室に戻ろうか」

 

 

「ああ、そうだな。帰って早く執務を終わらせ「ちょっと待った!」ないとな……は?」

 

 

 指揮官が話している最中に、言葉に被さるように誰かが発言する。

 3人は声がしたほうに顔を向けると、そこには扉の前で腕組みをして、体重をドアに預けているアークロイヤルの姿があった。

 

 

「閣下はまだロリコンである可能性が高い」

 

「……何言ってんだこのロリコン」

 

 いつの間にかロイヤルのロリコンことアークロイヤルが、室内に侵入していることも疑問に思わないほど、変態の言うことが理解できなかった。

 

 指揮官たちが不審者を見るような目で見ていると、アークロイヤルは口を開く。

 

 

「では、その証拠をお見せしよう」

 

「証拠……?」

 

「閣下、その場で立ち上がってくれ」

 

「……? なんで立たないといけないんだ?」

 

「いいから立ってくれ。立てば分かる」

 

「はあ……?」

 

 指揮官は言葉の意味を疑問に思いながら立ち上がる。

 

 

 

 その時である――――指揮官の制服からバサバサと大きな音を立て、なにかが落ちてくる。

 それは雑誌であった……指揮官は予期せぬ出来事に体が硬直する。

 エセックスとエンタープライズが不思議に思いながら、雑誌を拾い上げるとそこには――――

 

 

『必勝ロリ本! 駆逐艦の全てを教えます!!』

 

 

『俺の駆逐艦はこんなにも可愛い!』

 

 

『駆逐艦大全~この世の全てを置いてきたPrat4!~』

 

 

 等々、そんなロリコン御用達の雑誌が計10冊ほど落ちていた。

 中身を見てエンタープライズとエセックスは絶句する。

 アークロイヤルは暗黒微笑を浮かべている。

 そして…………指揮官は未だに硬直しており、現実に起こっていることに理解が追い付いていなかった。

 

 室内がしんと静まり返る中、指揮官は必死に思考する。

 なぜ、こんな大量の雑誌を俺の制服に入れたのか。つーか、ただの嫌がらせだよね?

 それよりもアークロイヤルはどうやってロリ本を一瞬で紛れ込ませたのか……次から次へと謎が湧いてくるが、それよりも指揮官はひとつだけ確信したことがある。

 

 

 

 

 ――――そう、アークロイヤルによるいともたやすく行われるえげつない攻撃はすでに始まっているのだと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
後編はそんなに時間が空かないと思います。
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