ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
アオイとのバトルが終わったコウスケはガンプラのチェックをしていた。
バトル自体はすぐに終わった為、ガンプラは何ともない。
「アンタ、強いんだって」
ガンプラをチェックしていたコウスケは顔を上げて声の方を向いた。
そこには明らかな不審者であるマシロが立っていた。
「君は……?」
「俺の事はどうだって良い。それよりも強いんだろ?」
「それは僕とバトルしたいって事でいいのかな?」
コウスケはマシロの事を少し怪しむが、マシロの言葉をそう捉えていた。
マシロはGPベースとガンプラを取り出した。
それが質問の答えだと確信したコウスケもガンプラをバトルシステムにおいてGPベースをセットする。
そして、マシロとコウスケのバトルが開始された。
「さて……お手並み拝見と行こうか」
バトルフィールドは小惑星帯。
フィールドのところどころに小惑星があり、非常に障害物の多いステージだ。
コウスケは小惑星の影に気を付けながら、進んでいるとマシロの先制攻撃のビームが横切る。
当てるではなく、牽制と威嚇目的のビームに対してコウスケは動じる事は無かった。
そして、ビームの飛んで来た方にビームマグナムを向けた。
「あそこか……速い!」
マシロのガンダム∀GE-1 セブンスソードは小惑星帯をかなりの速度でコウスケのユニコーンに接近していた。
速度を維持しつつも、最小限の動きで小惑星を回避していた。
∀GE-1 セブンスソードはショートドッズライフルを放つ。
ユニコーンはシールドで防ぎつつも、ビームマグナムで反撃する。
だが、∀GE-1 セブンスソードは攻撃を回避する。
「よくもまぁ……このバトルフィールドでそこまでの速度を出せる物だね」
「この程度の障害物は気にする必要はないだろ」
「言ってくれるね」
ユニコーンはビームマグナムを5発撃ったところで弾切れを起こす。
ビームマグナムはその威力を引き換えに1度にエネルギーパックを1つ消費すると言う設定があり、装填されているエネルギーパックは5つで5発しか撃つ事が出来ない。
残弾が尽きるとすぐに、リアアーマーについている予備のエネルギーパックをビームマグナムに装填するが、その隙に∀GE-1 セブンスソードはCソードを展開して、ユニコーンに切りかかった。
それと、ユニコーンはビームサーベルを抜いて受け止めた。
「自信満々なだけはあるね」
「アンタは聞いてた程じゃないよな」
ユニコーンはバルカンを放ち、∀GE-1 セブンスソードは距離を取り、小惑星を盾にして攻撃を防ぎ、小惑星の影から飛び出してCソードを振るう。
それをかわして、ユニコーンはバルカンで牽制する。
「なら、僕も本気で行かせて貰うよ!」
コウスケがそう言うと、ユニコーンの装甲がスライドして行く。
装甲内のフレームが赤く発光し、バックパックのスラスターノズルが2基から4基へと増え、ビームサーベルが出て来る。
最後に頭部のゴーグル状のメインカメラがツインアイへとなり、マスクが収納されて一本角が中央から割れてV字となった。
「変身しやがった。HGにそんな物を仕込んでたとはな」
これには流石のマシロも関心した。
ユニコーンはガンダムとついていながら、その外見にガンダムを連想させる物はない。
だが、作中において特定の条件を満たす事でその姿を変える。
それにより、通常形態がユニコーンモードと呼称されるのに対してガンダムとなった状態をデストロイモードと呼称されている。
その速度が一瞬である為、作中ではデストロイモードへの移行を「変身」とまで言われている。
ガンプラにおいてはユニコーンモードからデストロイモードへの変形はMGでは再現されているが、HGではユニコーンモードとデストロイモードの2種類のユニコーンガンダムとして発売されている為、変身する事は出来ない。
しかし、コウスケは本来は再現されていないHGのユニコーンにデストロイモードへの変形機構を再現していた。
「けど、だから何だって話しなんだけどな」
マシロは感心したが、動揺する事もなく、ショートドッズライフルを放つ。
デストロイモードとなったユニコーンは先ほどよりも速く動いて回避する。
「さぁ……どう出る!」
上がった機動力で小惑星帯を移動したユニコーンはビームトンファーで∀GE-1 セブンスソードの背後から切りつける。
完全に捉えたとコウスケは思ったが、ビームトンファーは空を切り、∀GE-1 セブンスソードはユニコーンの背後を取っていた。
「なっ! 一体何を!」
「何って、普通に回り込んだだけだぞ」
ユニコーンの攻撃の直前に瞬時にスラスターの出力を最大で使って動いた事で、その動きについて行けなかったコウスケには∀GE-1 セブンスソードが消えたように錯覚した。
その間に∀GE-1 セブンスソードはユニコーンの背後に回り、Cソードを振り上げていた。
「させない!」
「無駄だよ」
ユニコーンは振り向きながら、ビームトンファーで防ごうとする。
だが、勢いよく振り落されたCソードはビームトンファーごと右腕を切り落とす。
「馬鹿な……」
「何が? その程度を切り捨てられないで何の為の剣だよ」
Cソードは普通に振るっても十分な切れ味を持つが、本来の切れ味はその上を行っていた。
勢いをつけて振るう事で更に切れ味を増して、ビームすら切り裂く事が出来る。
∀GE-1 セブンスソードはユニコーンを蹴り飛ばして、ビームバルカンを放つ。
ユニコーンはシールドを掲げて、バルカンで応戦しようとするが、ショートソードを投げつけられて頭部に突き刺さる。
「くっ!」
バックパックのビームサーベルを抜こうとするが、ビームサーベルを投擲されたビームサーベルによって潰された。
そして、∀GE-1 セブンスソードは小惑星の陰に隠れながら、ユニコーンに迫る。
「どこから……」
コウスケは小惑星の影から飛び出して来る∀GE-1 セブンスソードを警戒するが、∀GE-1 セブンスソードはシールドに内蔵されているビームサーベルで小惑星を両断して、突っ込んで来た。
Cソードを突き出して、ユニコーンのシールドを貫いた。
そのまま、ユニコーンの左腕が破壊される。
そこからは一方的なバトルだった。
∀GE-1 セブンスソードのCソードでユニコーンはズタズタに切り裂かれてやがて、戦闘不能と見なされてバトルが終了した。
「こんな事が……」
「まぁ、こんなもんだよな」
バトルが終わり、マシロはガンプラを回収した。
切り札を出しても一方的なバトルで敗北したコウスケは茫然をするもすぐに持ち直す。
「凄いね。それ程までの実力に達するまでに余程の努力をしたんだろうね」
「努力ね……別にしてないけど」
「え?」
バトルには負けたが、笑みを浮かべて握手の手を差し伸べようとしていたが、マシロの言葉でコウスケは止まる。
「俺さ、ガンプラバトルで努力とか頑張った事ってさ一度もないんだよね」
コウスケの頭の中にマシロの言葉は殆ど届いてはいなかった。
これだけの実力を持ちながら、マシロは努力をしていないと言う。
それは、コウスケのこれまでの方針を全否定していると言っても過言ではない。
尤も、マシロが操作技術や制作技術の向上に費やした時間はコウスケの比ではない。
今のマシロはガンプラバトルに勝つ為に生きていると言っても良い程だからだ。
だが、マシロにとってはそれは努力でもなんでもない。
マシロはただ、好きな事を好きなだけやって極めようとしているだけに過ぎない。
だからこそ、マシロの中でもガンプラバトルにおいて努力はしていないと言う認識を持っていた。
しかし、コウスケからすれば、単なる才能だけでこれ程までの実力に到達したとしか聞こえない。
「つか、それ程って言うけどさ、俺、アンタ程度のファイターに全力を出す訳ないじゃん」
マシロは更に追い打ちをかける。
このバトルの目的はあくまでも改修した∀GE-1を対人バトルでの感触を確かめる為だ。
その為、マシロは実力を殆ど発揮してはいなかった。
その上で出かけにレイコに言われた通りに痛ぶっての勝利だ。
マシロからすればその気になれば、すぐに決める事の出来たバトルを意図的に引き延ばした事になる。
「まっ、ガンプラバトルで努力している時点でお前は俺には勝てないし。知ってるか? 結果の出せない努力は無駄な努力って言うんだぜ? 俺はそんな努力はしたくはないけどね」
マシロは最後に止めを刺す。
結局のところ、マシロからすれば努力は結果を出す為の手段であってでそれが出せなかった以上は無駄でしかない。
マシロもガンプラバトルにおいては天才的な才能を持っているが、その反面、それ以外の事は殆ど出来ない。
故にマシロはガンプラバトル以外の事に関しては生きる上で最低限の事が出来れば後はやるだけ無駄な為、出来なくても構わないと思っていた。
「君は一体何もなんだ……」
「名乗る程じゃないさ。だが、強いて言うなら白い悪魔……ヴァイス・デビルとでの名乗って置く」
本名を名乗る事を禁じられていたマシロはそう名乗る。
今でこそ殆ど無名なマシロだが、いずれはガンプラバトルの表舞台に出て行く予定だ。
そうなれば二つ名うあ通り名が必要となって来る。
その名を聞けば誰もがマシロを思い浮かべる名だ。
いずれは、必要になって来るのであれば、誰かに勝手につけられるよりは自分で名乗ってそれを定着させた方が良かった。
完全に打ちのめされたコウスケの事を気にも留める事なく、マシロはホテルへと帰って行く。
アオイの初めてのバトルから数日が経ち、アオイは毎日のようにエリカと共にホワイトファングでバトルの練習をさせられていた。
提案はエリカからの物で、始めは渋っていたが、半ば強引に押し切られた。
それでも、何度もバトルしているうちに操作も慣れて来ている。
「だいぶマシになったけど、接近されると弱いんだな」
「はい……接近されると動揺してしまって……」
何回もバトルをしていれば、アオイの操作の癖も見えて来る。
距離を取っての射撃においては、十分に使えるレベルの物になっている。
だが、接近されると途端に動きが悪くなって負けると言うのがアオイの負けパターンだ。
「いつもは頭の中で想像しているだけでしたから、射撃の方は何とかなるんですけど、接近戦はイメージ通りにいかなくて……」
今まで、アオイは声を掛ける勇気を持てずにバトルをした事は無かった。
しかし、バトルをやりたいと言う気持ちを持っていた為、バトルはもっぱら想像の中で行っていた。
その為、射撃に関しては落ち着いてイメージ通りに行えたが、接近戦はイメージ通りには行っていなかった。
「その辺は慣れていくにしても、射撃中心でバトルを組み立てた方が良いか」
「ですね。僕もそっちの方が向いている気がします」
近接戦闘になれば、反応速度ととっさの判断力が必要となって来る。
そのどちらもアオイは欠けている。
ならば、射撃主体のバトルと言う方向性は間違っていない。
「さて休憩は終わりにしよう。次の対戦相手を見繕って来る」
エリカはそう言って、アオイの返事を聞く事なく、人ごみに紛れていく。
アオイは今更、断る訳にもいかず、自分が強くなっていると言う実感も出て来ている為、エリカの帰りを待っていた。
数分後、エリカは戻って来た。
「待たせた」
「いえ……」
「たく……タチバナ?」
エリカの連れて来た相手はアオイも知っていた。
キサラギ・タクト。
アオイとエリカのクラスメイトでもある。
エリカ同様にクラスでは目立つ存在で成績は余り良くないが、運動に関してはいくつもの部活から勧誘されていると耳にした事がある。
「キサラギ君もガンプラバトルをやってたんだね」
「まぁな。で、なんで俺、シシドウに拉致られんだ?」
「キサラギ君……僕とバトルしてください」
タクトは何も説明を受けなかったらしく状況が呑み込めていなかった。
アオイは意を決してタクトにバトルを申し込む。
「良いぜ」
決死の覚悟にも近い覚悟で申し込んだが、あっさりとバトルをする事に決まった。
すぐに空いているバトルシステムを見つけるとバトルの準備に入る。
「タチバナ、キサラギの奴は結構やるから注意な。けど、アンドウセンパイ程じゃねぇ。コイツに勝てないとセンパイに勝つなんて夢のまた夢だぞ」
「うっせぇよ。あの人はこの辺りでも別格だし」
明らかに踏み出しにする気満々のエリカに対して文句を言いつつも、タクトはGPベースをセットしてガンプラをバトルシステムに置いた。
タクトが使用するガンプラはZガンダムに登場する可変モビルスーツのギャプランだ。
モビルアーマーに変形する事が可能で空戦能力を持つ。
「ギャプラン、キサラギ・タクト。出るぜ!」
「ビギニングガンダムB、タチバナ・アオイ。行きます!」
そして、バトルが開始される。
今回のバトルフィールドはコロニー内だ。
バトルが開始され、ビギニングガンダムBはハイパービームライフルを放つ。
ギャプランはすでにモビルアーマー形態に変形して回避すると、バインダーに内蔵されているビームライフルで反撃する。
ビギニングガンダムBはシールドでビームを受け止めると、着地して身を隠す。
「相手は機動力の高いギャプラン。油断しているとすぐに距離を詰められる」
ビルの陰に身を隠して上空を飛行しているギャプランに狙いを定めてハイパービームライフルを放つ。
だが、直前のところで気づかれて回避されると、ギャプランは旋回してビームライフルを放つ。
「そこか!」
ビギニングガンダムBはビルの陰から飛び出て回避して、ギャプランとの距離を取ろうとするが、姿を現した事でギャプランの追撃を受ける。
「悪いが、こっちの方が機動力は上なんでね!」
ビギニングガンダムBとギャプランとの間に機動力の差は歴然ですぐに距離を詰められてしまう。
モビルスーツ形態に変形したギャプランはビームサーベルを抜いて切りかかる。
ビギニングガンダムBはシールドで防いでハイパービームライフルで反撃する。
「おっと!」
「当たらない!」
ハイパービームライフルを連射するも、ギャプランはムーバブルシールドを使って回避、接近してビームサーベルを振り落す。
ビギニングガンダムBはシールドで受け止めて、ビームバルカンでギャプランを牽制する。
その隙に再びビルの物陰に隠れる。
「ハァ……ハァ……どうする……このままじゃ勝てない」
何とかやられずに済んでいるが、いつまでも逃げ続ける事は出来ない。
ギャプランはすでにモビルアーマー形態となり、上空を旋回しながらこちらの動きを窺っている。
「考えろ……考えるんだ。僕」
アオイは必死に打開策を考える。
ここで負けるようではコウスケに勝つ事は出来ない。
逆にこの局面を乗り越える事が出来るのであれば、勝つ可能性は見えて来る。
アオイは自身を落ち着かせる。
そして、自分に出来る事を考えた。
相手は近接戦闘を仕掛けて来る事は予想出来る。
近接戦闘に持ち込まれたら、アオイに勝機は無い。
そうなれば、接近される前に叩くしかない。
「チャンスは一度……」
今は隠れている為、最初の一撃が最も反応が遅れる。
そこを突くしかない。
アオイはギャプランの動きに集中する。
タイミングを外せば終わりだ。
だが、時間をかけ過ぎても相手が痺れを切らすかも知れない。
「今だ!」
「そこか!」
ビルの陰から飛び出してビギニングガンダムBはハイパービームライフルを放つ。
タクトも反応したが、反応が少し遅れてしまう。
ビームはギャプランを掠めるが、ムーバブルバインダーの片方を破壊する事に成功した。
「やべ!」
バランスが崩れたところで、ギャプランはモビルスーツ形態に変形するが、その隙にすかさずハイパービームライフルを撃ち込む。
ビームの直撃を受けたギャプランは撃墜されてバトルが終了する。
「勝った……」
勝敗が決まったが、アオイは少し茫然としていた。
最後の方は無我夢中だったが、自分の思い描いていたようにバトルをする事が出来ていた。
「マジかよ」
「今のは良かったぞ。やれば出来るじゃん」
タクトとエリカの言葉も余り頭に入って来ないが、少ししてようやく勝ったと言う実感が湧い来る。
「いえ、偶然ですよ」
「謙遜すんなって」
「偶然だろうと勝ったんだから少しは胸を張れよな」
勝ったものの最後は上手く想像通りのバトルが出来たに過ぎない。
だが、実力が伴わなければ想像通りにバトルを行う事が出来ない事も事実だ。
エリカとタクトにそう言われて、アオイは照れていた。
そんな様子を一人の少年が遠目で見ていた。
「最後の射撃……悪くなかったな。青いビギニング使いか……俺のビギニングとどっちが強いんだろうな」
そう言う少年の手には一部を赤く塗装したビギニングガンダムが握られていた。