ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle02 「ファーストバトル」

 

 

 PPSE社主催のタッグバトルが来週に迫りユウキ・タツヤは一人の少年と出会った。

 白いガンプラを操り圧倒的な操縦センスを持つ少年だ。

 その少年にタツヤはタッグを申し込んだ。

 突然の申し出に少年も目を細めている。

 

「お前、強いの?」

 

 少年はタツヤにそう返す。

 一瞬、呆気に取られるもタツヤは挑戦的な笑みを浮かべる。

 

「それは僕の実力をバトルで見たいと言う解釈でいいのかな?」

 

 少年の言葉をタツヤは自分と組みたければバトルで実力を示せと解釈した。

 実際のところ言葉通りに強いか弱いかを聞いていただけだが、少年も敢えて訂正はしない。

 なぜなら、その必要がないからだ。

 

「まぁ……そう言う事で良いよ。別に」

 

 話しがまとまり二人は再びガンプラバトルのファイトスペースに戻る。

 ファイトスペースが大して込んでいなかった事もあってタツヤと少年はすんなりとバトルシステムを確保する事が出来た。

 

「ちょい待ち」

 

 バトルを始めようとした矢先に少年は持っていたカバンをごそごそと探る。

 

「待たせた」

 

 少年はそう言ってGPベースをバトルシステムにセットしてガンプラをバトルシステムに置いた。

 

「武装を追加したのか」

「まぁね。流石にお前は装備なしじゃきつそうだからな」

 

 少年はタツヤの実力がさっき戦ったイヌイよりも高いと見抜いた上で装備を追加した。

 バックパックには大型のスラスターユニットが追加され、右手には大型のビームランチャーを持たせている。

 そして、タツヤもGPベースをセットしてガンプラを置いた。

 

「ザク……それも高機動型ね。色はアレだが高機動型と言う辺り趣味は合いそうじゃん」

「やはり、僕と君は運命で結ばれているようだね」

「戦う運命だけどな」

 

 タツヤのガンプラはザクⅡの高機動型をベースに改造した高機動型ザクⅡ改だ。

 ガンダムには本編に登場せずに設定のみで、後に模型誌などに登場するモビルスーツがいくつも存在している。

 それがモビルスーツバリエーション、通称MSVである。

 タツヤのガンプラ、高機動型ザクⅡもMSVに分類されるモビルスーツだ。

 シャア・アズナブルを思わせる赤い塗装に肩には5連装のロケットランチャー、リアアーマーにザクマシンガン、サイドアーマーにはザクマシンガンの弾倉とヒートホークが一つづつ、手持ちにはザクバズーカ、脚部には三連装ミサイルポッドと重装備のガンプラである。

 

「高機動型ザクⅡ改、ユウキ・タツヤ。出る!」

「ガンダム∀GE-1。出る」

 

 バトルシステムの準備が整い二人のバトルが開始された。

 バトルフィールドは市街地。

 ガンプラよりも大きなビルが立ち並ぶで視界が遮られる事が多く相手のガンプラの位置を把握しなければ圧倒的に不利となるフィールドだ。

 

「さて……彼のガンプラはどこに……」

 

 バトルが始まりタツヤは相手の出方をうかがう。

 前のバトルで少年のずば抜けた反射速度と操縦技術は見ている。

 すると、向かいのビルを∀GE-1がスラスターを使って超えるとビームランチャーを構えていた。

 

「さっきのバトルで溜まった鬱憤を晴らさせて貰う!」

 

 ∀GE-1はビームランチャーを放つ。

 高機動型ザクⅡ改はその重装甲からは想像できない機動力で回避する。

 そして、空中の∀GE-1に向かってザクバズーカを放つ。

 ∀GE-1は肩のスラスターを使って強引に空中で方向転換を行うと別のスラスターで後ろに下がりビルの後ろに降りる。

 

「ビルの陰に隠れた? 以外に慎重な攻めをする」

 

 タツヤは前のバトルで被弾を恐れない攻撃的なバトルとは違った戦い方に違和感を覚えていた。

 彼のバトルは一回しか見ていない為、どちらの戦い方が本来の戦い方なのかは判断できない。

 ∀GE-1がビルの左右もしくは上のどの方向から出て来ても良いように警戒するが、どれからも∀GE-1が出て来る事もなく∀GE-1はビルをぶち抜いてビームランチャーを撃って来た。

 

「さっきの攻撃はこれが狙いと言う訳か!」

 

 先ほどのビルを飛び越えての攻撃は上からタツヤのガンプラの位置を把握する為の布石であると言う事に気が付いた。

 位置さえ分かればビームランチャーでビル越しに攻撃が可能だからだ。

 その上、ビームの威力が先ほどの攻撃よりも威力が上がっている。

 

「あのビームランチャーは威力が可変式……だけど、隠れて狙って来ると言う事は足を止めなければ高出力モードでは使えないと言う事!」

 

 わざわざ隠れていると言う事は相手に狙われるリスクを回避する為だ。

 そこからビルをぶち抜いて攻撃出来るビームランチャーの高出力モードは空中や移動中では踏ん張りが利かずに使えないと言う事を意味している。

 ならば、対処は容易い。

 ∀GE-1がいると思われるビルの陰に肩のロケットランチャーを撃ち込む。

 高機動型ザクⅡは実弾系の装備しか持たない為、ビル越しの攻撃が出来ないがロケットランチャーならば放物線を描くように攻撃も可能で、直接狙う事が出来た。

 

「さあ……どう出る? 右か左か……」

 

 ロケットランチャーで上に逃げると言う事は出来ない。

 そうなれば左右のどちからか後方に引くしかない。

 しかし、彼の性格は非常に交戦的で敵を前に後退するとは考え難い。

 ロケットランチャーが着弾し爆発が起こる。

 そして、∀は飛び出して来た。

 

「正面!」

 

 だが、タツヤの予想していた左右ではなく自分の攻撃でぶち抜いたビルに突っ込んで高機動型ザクⅡの正面からだ。

 バックパックに増設したスタスターユニットのお陰で更に機動力が増した∀GE-1はビームランチャーを構えながら突撃して来る。

 タツヤは迎え撃つ為にザクバスーカを放つ。

 前のバトルで見た反応速度を持ってすれば、回避する事は容易い。

 寧ろ、回避させてその先を狙うつもりでいた。

 しかし、∀GE-1はザクバズーカの弾丸を左腕の装甲に直撃させた。

 ザクバズーカの直撃を受けた左腕の装甲は全くの無傷であった。

 

「防いだ! フェイズシフト装甲! 否、硬いだけか!」

「バトルはやっぱ白兵でないとな!」

 

 ビームランチャーの銃身の左右にはドッズガンが付いており、ドッズガンを連射して突っ込んで来る。

 

「無茶苦茶だ!」

 

 高機動型ザクⅡはザクバズーカで応戦するがすぐに残弾が尽きて∀GE-1に向けて投げつける。

 それに対して∀GE-1もビームランチャーを投げて空中で2機の投げた火器はぶつかり地面に落ちた。

 ∀GE-1は腰のビームサーベルを両手に持ち高機動型ザクⅡ改に切りかかる。

 一撃目はヒートホークで受け止めるが、二撃目の横一閃を後方に飛び退いて回避する。

 リアアーマーのザクマシンガンを左手に持ちながら脚部のミサイルを放って弾幕を張る。

 ミサイルが地面に着弾した時の爆発で砂塵が舞い上がりその隙に高機動型ザクⅡはビルの陰に入り込む。

 

「全く……強いのは分かっていたけどこれ程とはね」

 

 ∀GE-1は追って来る気配はない。

 戦局が優勢だろうと勝負を焦っていないと言う証拠だ。

 それはただ単に突撃思考が強いだけのファイターではないと言う事を示している。

 

「強引な攻めの中に繊細な操縦……ますますタッグを組みたくなって来たよ。彼を口説き落とす為に、まずは僕の実力を彼に認めさせるところから始めないとね」

 

 タツヤは追い詰めながらも状況を楽しんでいた。

 そして、彼をタッグを組んで大会に出たいもだ。

 その為にはこのバトルで勝つ必要がある。

 

「このまま隠れて隙を付くと言う策もある……否! それでは意味は無い!」

 

 追い詰められた状態だろうと彼が操縦ミスをする可能性はゼロに等しい。

 それ以上にこのバトルはタツヤが自分の実力を認めさせる為のバトルだ。

 ならば、逃げの一手はあり得ない。

 タツヤは一息つくと髪を掻き上げる。

 そして、残弾の無いロケットランチャーをミサイルポッドをパージしてザクマシンガンも残弾は残っているがマガジンを新しく装填して残りのマガジンを捨てた。

 

「君に僕と言う存在を刻み付けよう! ユウキ・タツヤと言う存在を!」

 

 気合と共にビルの陰から飛び出して、ザクマシンガンを連射して突撃する。

 タツヤが隠れている間に∀GE-1はビームランチャーを回収していた。

 

「速い……装備を捨てたからか」

 

 高機動型ザクⅡ改は少し前よりも速度が上がっていた。

 タツヤが残弾の尽きた装備を捨てて機体の重量が軽くなったからだ。

 ビームランチャーを放つが高機動型ザクⅡ改はヒートトマホークを投擲した。

 それと構えた状態のビームランチャーで弾いて、すぐに高機動型ザクⅡ改に狙いを定めようとする。

 しかし、高機動型ザクⅡ改は大きく飛び上がった。

 

「上か!」

「後ろを取らせて貰う!」

 

 ∀GE-1をアーチを描きながら飛び越えて背後に着地する。

 少年の人間離れした反射速度はそれに完全に反応しており、片足を軸にして前方にいた高機動型ザクⅡ改に狙いを付けようとしていたビームランチャーの方向を強引に変える。

 そして、それによって高機動型ザクⅡ改を殴り飛ばそうとする。

 

「君ならそうすると思っていた!」

 

 今までのバトルから少年の戦い方は自分で叫んだように近接戦闘を中心とする攻撃的なバトルスタイルだ。

 その為、この距離なら幾ら彼の反応速度が速かろうと、コマンド入力からビームランチャーは高出力である為、高出力モードでなくとも多少のタイムラグがあると言う事は今までの戦いで分かっている。

 ドッズガンを使っても至近距離とはいえ、数秒は耐えることが出来る。

 それだけの時間があればタツヤの高機動型ザクⅡ改の機動力なら∀GE-1の懐に飛び込む事は可能だ。

 当然、その事は相手も分かっている。

 そして、振り向いて腰のビームサーベルを抜いて対処のも時間がかかってしまう為、打撃攻撃を行うと読んでいた。

 高機動型ザクⅡ改はビームランチャーの銃身が頭部を掠るギリギリの所に後退してビームランチャーを回避する。

 しかし、少年も回避行動を取った瞬間に回避されると判断してビームランチャーを振りながらビームを放った。

 そのビームは高機動型ザクⅡ改の頭部を吹き飛ばすが止まる事は無くヒートホークを振り上げる。

 

「たかがメインカメラをやられただけだ! どうと言う事は無い!」

「ちぃ!」

 

 振り下ろされたヒートホークを∀GE-1はビームランチャーで受け止めた。

 だが、ビームランチャーにヒートホークが食い込み切断されるのは時間の問題だ。

 

「想像以上だよ。お前」

 

 少年がそう言うと目を細めた。

 その瞬間、∀GE-1はビームランチャーを手放した。

 それと同時に両腕の装甲の先端からビームサーベルが展開された。

 

「ビームサ……」

 

 それに気づいた時には∀GE-1は両腕のビームサーベルを振り上げて、ビームランチャーごと高機動型ザクⅡ改の両腕を切り裂いて蹴り飛ばした。

 一連の動作にかかった時間は恐ろしく短く、タツヤがビームサーベルを認識した直後には高機動型ザクⅡ改は蹴り飛ばされてビルに激突していた。

 

「俺の勝ちだ」

「そのようだね」

 

 ビルに激突した高機動型ザクⅡの胴体に∀GE-1は右腕のビームサーベルを突きつけていた。

 最後の攻撃が完全に防がれて両腕と頭部を破壊された高機動型ザクⅡ改には反撃の手段は残されていなかった。

 その為、タツヤは素直に負けを認めた。

 負けた事は悔しいが最後の一瞬に彼の本気を垣間見た。

 今はそれだけで十分だった。

 タツヤがバトルの敗北を宣言してバトルが終了となった。

 

「僕の負けだよ」

「当然の結果。俺、強いし。でもまぁ……俺を一瞬でも本気にしたんだ。組んでも良いぞ」

 

 その言葉にタツヤはキョトンとしてしまう。

 バトルで敗北した時点で彼を組む事を半ば諦めていた。

 がだ、彼の方は一瞬でも本気を出した事でタツヤを自分が組むに値するファイターだと言う事を認めていた。

 

「俺も大会には出る予定だったからな。俺の眼鏡に適うファイターが居なければ適当な奴でも見つけて出るつもりだったし。ああ……でも、優勝賞品のガンプラは俺が貰うから」

「それは別に構わないけど……」

 

 大会の優勝賞品のガンプラはPPSE社が用意した限定モデルで希少価値が極めて高い。

 大会規約では世界大会は出場者は参加不可となっている。

 それはあくまでも大会その物が世界大会を見たファイター達の為の物であるからだ。

 しかし、優勝賞品を目当てに参加するファイターも多く中には世界大会の出場を逃した実力者も少なくは無い。

 タツヤは元より優勝賞品のガンプラには余り興味は無かった。

 無論、貰えれば欲しいとも思っているが、それよりも高い実力を持ったファイターとバトルする事の方が重要だった。

 だから、少年が優勝賞品のガンプラを欲しいと言うのであれば譲る事に抵抗は無い。

 

「優勝する事が前提なのかい?」

「何言ってんだ? お前は途中で負けることが前提なのかよ」

 

 確かに彼の言う通り、始めから負けることを考えて大会に参加するファイターは少ないだろう。

 そして、勝ち続けると言う事は最後には優勝すると言う事になる。

 少年の中には優勝すると言う事は確定事項だと言う事だ。

 

「確かにね。君なら出来そうだ」

「俺と組むんだから、優勝するのはお前も同じだろ?」

「確かに」

 

 彼の中ではタツヤと組む事もまた決定事項らしい。

 

「分かった。優勝賞品のガンプラは君に譲るよ」

「契約成立だな」

 

 少年と組む事が確定し、タツヤは持っていた大会の登録用紙を少年に渡す。 

 すでにタツヤの方は必要事項が書かれている為、後は相方が書いて大会事務局に提出すれば大会へのエントリーは終了する。

 少年とタツヤはバトルシステムでは他の客の迷惑となる為、ゲームセンター内の休憩所のテーブルに移動する。

 

「これってフルネームじゃないと駄目なん? 俺、ファミリーネームは好きじゃないから書きたくないんだけど」

「構わないよ。名前はあくまでも大会の登録名に過ぎないから余りにもふざけた名前じゃなければ問題は無かった筈」

「了解っと……」

 

 少年は確認を取ってファイター名の欄に記入する。

 どうやら、少年は自分の苗字の事を嫌っているようだが、流石にその事をここで聞くのは余りのも彼の事情に深く踏み込み過ぎる。

 

「マシロ……君」

 

 タツヤはファイターの登録名の欄で初めて彼の名前を知る事になる。

 欄にはお世辞にも綺麗とは言えない字で「マシロ」とただ一言書いてあった。

 

「そっ。名乗ってなかったっけ?」

「そうだった。僕は……」

「ユウキ タツヤ。さっき叫んでた」

 

 今更ながら自己紹介をしようとするもタツヤはバトル中に自分の名前を叫んでいた。

 熱くなって叫んでいた為、冷静になってみると少し恥ずかしいが、少年、マシロは気にした様子もなく用紙に必要事項を書き終えた。

 必要事項と言ってもマシロが書いたのは名前と年齢、性別だけだ。

 性別は見れば男だと分かり、名前もすでに知っている為、書かれた欄で知らないのは年齢だけだ。

 

「僕と同い年のようだけど、高校生?」

「高校は面倒だから言ってない。まぁ……フリーのファイターってとこ?」

 

 マシロはそう言うがどこまで本当の事か分からない。

 年齢が同じであるなら、マシロは高校に通う年齢だ。

 余程金銭面などで問題が無い限りは高校に進学するのはタツヤの中では当たり前だが、それがマシロにとっての当たり前とは限らない。

 見る限りでは金銭面で問題があるようには見えない為、何かしらの事情があるのだろうと考えるもやはり深く踏み込むと言う事はしない。

 

「大会は来週だったよな。俺はそろそろ帰るわ」

 

 マシロはそう言ってタツヤに用紙を渡してさっさと帰って行く。

 タツヤも用紙に不備がないかを確認していた為、マシロを止めることが出来ずに見失ってしまった。

 

 

 

 

 

 ゲームセンターを後にしたマシロは商店街をぶらついていた。

 目的である自分の眼鏡に適うファイターを見つけることが出来た。

 当初は邪魔にならない程度の実力があれば良いと思っていたが、予想以上の実力を持ったファイターを見つけることが出来て少し上機嫌だ。

 

「けど……少し本気で動かしただけでこれか……」

 

 マシロは歩きながら∀GE-1を取り出す。

 ∀GE-1の右腕の関節にはヒビが入っていた。

 タツヤとのバトルでは高出力のビーム兵器であるビームランチャーを装備させた。

 それを振り回した上に最後は本気を出してガンプラの限界を超える動きをさせてしまったせいだ。

 マシロが本気でガンプラを動かすといつもガンプラの限界を超えることが殆どだ。

 それはマシロが時間と持てうる技術の全てを注ぎ込んで制作したガンダム∀GE-1ですらもだ。

 

「関節強度は次の課題になるか……こいつが解決しないとどうしようもないな」

 

 マシロにとって∀GE-1は到達点ではない。

 マシロの理想とするガンプラの最低条件はマシロの本気に耐えることが出来るガンプラだ。

 現在は市販のガンプラをベースに制作しているが、既存のガンプラを使用している以上は関節部の強度の問題が付いて回る。

 

「ずいぶんとお楽しみだったようですね。マシロ様」

「げ……シオン」

 

 声を掛けられたマシロは顔を引きつらせる。

 そこには日本の町にはそぐわない執事が立っていた。

 顔は笑っているが明らかに怒っているち言う事が分かる。

 

「やぁ……シオン。こんなところで奇遇だな」

「本当に奇遇ですね。マシロ様」

 

 シオンと呼ばれた執事はじりじりとマシロとの距離を詰めていく。

 マシロも少しづつ離れようとするも、シオンは一瞬にしてマシロとの距離を詰めてマシロを捕まえる。

 

「一応、俺はお前の主の筈だが?」

「私の雇用主は貴方の兄上です」

 

 シオンはマシロを連れて道路に止めていた車に押し込める。

 マシロを押し込めてシオンも車に乗るとそれを確認した運転手が車を走らせる。

 

「大会のエントリーは明日までですよ。会長の方から連絡がありました」

「ボスにはエントリーは終わったって伝えといて。後は優勝するだけだから、限定ガンプラを手に入れるのは時間の問題だって事もな」

「承知しました」

 

 マシロ自身が優勝賞品のガンプラが欲しいと言う訳ではなかった。

 レアなだけのガンプラにマシロは興味がないからだ。

 それでも大会に出て限定のガンプラを手に入れようとしているのはマシロのクライアントの意向だ。

 

「全く……ボスのつまんねーお使いと思ったけど、少しは楽しめることが出来るかもな」

「それは何よりです」

 

 マシロは窓から外を見ながらそう言う。

 元々、クライアントの意向だろうと余り大会に興味はなかったが、タツヤとの出会いはマシロに大会への興味を持たせるのには十分な出来事だった。

 

「勝手に出歩いた事はともかく、いい出会いがあったようですね」

「まぁね。けど、感情のままに行動する事は人間として正しい事なんだぞ」

「マシロ様の場合は感情でしか行動しない事に問題があるんですよ」

 

 シオンはため息をつく。

 マシロとの付き合いは数年にも及ぶが初めて会った時からまるで変わらないでいる。

 本人は子供の気持ちを忘れないでいるだけだと主張するも、シオンから見れば子供の頃から全くと言って良い程成長していない。

 成長したのは余計な知恵位なものだ。

 

「勝手に出歩かれては護衛としての私の立場がありません」

「ああ……お前って俺の世話係だけじゃなくて護衛って設定もあったよな。安心しろ。ガンダムじゃ設定だけあって作中で使われない事は良くある事だ」

 

 シオンは再びため息をつく。

 シオンはマシロにつけられた執事として主に身の周りの世話をする事が仕事だが、護衛としても仕事も持っている。

 見た目こそはマシロよりも弱そうな華奢な体格ではあるが、あらゆる格闘技に精通している。

 尤も、マシロが命を狙われたりする事は無い為、その実力を披露する事は今までには一度もない。

 

(流石はガンダムを生み出した日本と言う所か……そう言えばあのおっさんもこの国の人間だったよな)

 

 マシロはふと思い出す。

 マシロは今までのガンプラバトルで負けた事は1度しかない。

 その1度の敗北を与えた相手も日本人のファイターだった。

 マシロとしてはその敗北は人生における唯一の汚点だった。

 

「まぁ……でも、今回はサクッと優勝するさ」

 

 マシロはそう呟き車はマシロの止まるホテルへと戻って行く。

 

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