ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
4月の後半に入り、静岡の日本第一地区の地区予選が開始された。
日本の地区予選では第一地区が最も早く予選が開始される。
その大きな理由は会場にあった。
第一地区の予選会場は世界大会の開かれる人工島で行われる。
人工島には世界大会で使用される5つのスタジアムがある。
中央には決勝トーナメントや大規模なバトルを行うメインスタジアムにその四方には4つのサブスタジアムがある。
第一地区の予選は4つのサブスタジアムに分かれて行われる。
「俺とアオイはDブロックで、シシドウはAか」
「カガミ君はBブロックみたい」
会場に到着したアオイとエリカ、タクトは自分達のブロックを確認していた。
それによれば、アオイとタクトはDブロック、エリカはAブロックでレッカはBブロックと言う事だ。
「アタシがアオイかタクトと当たるのは決勝戦になるって事か」
「その前に、ゲンドウさんもAブロックだぜ?」
「アンドウ先輩はCブロックですね」
他の有力なファイターで地区でも上位に当たるゲンドウ・ゴウキはエリカと同じAブロックでアンドウ・コウスケはCブロックとなっていた。
「マシロの奴もAか……」
「なぁ、本気かよ? 流石に無理だと思うぜ?」
Aブロックにはエリカとゴウキの他にマシロの名も表示されていた。
あれからマシロにエリカからたまにメールを送っても返信もなければ、電話をかけても出る事も折り返しの連絡が来る事もない状態が続いていた。
だが、地区予選にエントリーしている辺り、マシロも本気だと言う事になる。
「約束は約束だ」
「でも、もしかしたらって事も……」
「あり得ないって、地区予選だけでも、Aブロックにはエリカ以外にゲンドウさんがいるんだぜ?」
「そうなんですけど……」
マシロの実力を知らない3人からすれば、初心者に毛の生えた程度の実力ではAブロックを勝ち抜く事さえも難しいだろう。
「じゃ、アタシは会場の方に行くわ。組み合わせはスタジアムの方で発表みたいだし。こっちの状況も後でメールで送る」
「頼む。こっちも後でメールしとく」
「頑張って下さい」
「お前らもな」
各ブロックの組み合わせは各スタジアムで発表される。
アオイとタクトは同じブロックである為、エリカは自分のブロックのバトルが行われるスタジアムに向かい、アオイとタクトも自分達のスタジアムへと向かった。
自分達のブロックのスタジアムに向かい、そこで組み合わせが発表された。
そして、アオイとタクトは指定されたバトルシステムに付いた。
「まさか、またいきなり当たるとはな」
「ですね……」
アオイとタクトの初戦の相手はショップ大会と同じでアオイとタクトと言う組み合わせだった。
それによって二人はいきなり対峙する事になっている。
「まぁ、これも運命だ。さっさと片方が予選落ちして相手を応援出来ると思えば良いってことだ」
「僕も負けるつもりはありませんよ」
「俺もだよ」
二人はGPベースをセットしてガンプラをバトルシステムに置いた。
タクトのガンプラはフライルーをコアに様々な強化ユニットを装備したギャプランTR-5[ファイバー]だ。
一方のアオイのガンプラはビギニングガンダムBだった。
流石に半月でショップ大会の賞品であるスノーホワイトを扱える程のガンプラを制作するには時間が足りなさ過ぎた。
時間の足りない状況で、突貫作業で制作したガンプラを使って出場するには、リスクが高すぎた。
そんな事をするよりも、ビギニングガンダムBでもショップ大会は優勝している為、改造する事無く腕を磨いた方が確実であるとタクトたちと話し合った結果だ。
「ビギニングガンダムB。タチバナ・アオイ。行きます!」
「ファイバー。キサラギ・タクト。出るぞ!」
今回のバトルフィールドは山岳地帯だ。
足場は傾斜となっている為、陸戦においては位置取りが重要となって来る。
「速い!」
ファイバーは高い加速性能を誇り、一気に距離を詰めて来る。
「まずは挨拶代りの一発をくらえ!」
ファイバーは地上のビギニングガンダムBに拡散ビーム砲を撃つ込む。
ビギニングガンダムBはシールドを掲げて守りに徹した。
「っ……だけど、シールドも強化しているから!」
今までのバトルでビギニングガンダムBのシールドの破壊率はかなり高い。
その為、地区予選に向けてシールドの強度を向上させていた。
多少は重量が増したが、防御力が向上している。
「守り切ったか」
「次はこっちの番です!」
シールドはボロボロになりながらも何とか、ファイバーの攻撃を凌ぐと今度はビギニングガンダムBが攻勢に出る。
ファイバーに狙いを定めてハイパービームライフルを放つ。
「そう簡単に当たるかよ!」
ファイバーはその高い加速性能を活かして、ビギニングガンダムBの攻撃をかわしていた。
しかし、強化したのはシールドだけではなかった。
アオイのバトルはハイパービームライフルを中心とした射撃戦を得意としている。
ハイパービームライフルは通常のビームライフルよりも高い威力を維持しつつも、そこそこの連射速度を持っている。
だが、高い威力と持っていたとしても、切り札としての決め手に欠けていた。
ショップ大会ではゼロ距離攻撃などで、補っていた。
それを改良によって射撃能力を犠牲にして、威力を重視したバーストショットを追加した。
バーストショットは連射が効かない上に、撃つまでに多少のタイムラグがある。
それと通常射撃で牽制を行い、狙いを定めていた。
「そこ!」
ビギニングガンダムBがハイパービームライフルのバーストショットを放つ。
その一撃はファイバーのスラスターユニットに直撃した。
「くっそ!」
スラスターユニットをパージすると、多数の強化ユニットを装備した事で大型となった機体を支える事が出来ずに、降下して行く。
飛べなくなった事でファイバーは強化ユニットを全てパージしてフライルーへとなった。
「これで身軽になった!」
フライルーはロングブレードライフルを放つ。
ビギニングガンダムBはシールドで防ぐが最初の攻撃を防いだ時点でシールドの強度は限界に近かった事もあって、あっさりと破壊された。
だが、シールドを破壊されつつも、ビギニングガンダムBは飛び上がりフライルーにビームサーベルで切りかかる。
「接近戦かよ!」
今までは積極的に接近戦はして来なかった事もあって、タクトの反応は一瞬遅れるがそれでも何とか回避した。
「まだ!」
ビームサーベルの一閃が回避されるも、ビギニングガンダムBは振り返ってハイパービームライフルを撃って、フライルーのダブルシールドブースターを撃ち抜いた。
フライルーはそのまま、地上に着地してロングブレードライフルで、ビギニングガンダムBに突撃する。
そして、ロングブレードライフルを振り回す。
「接近戦なら俺に分があるって忘れたか!」
殆ど出鱈目にロングブレードライフルを振り回す、フライルーにビギニングガンダムBは近づけずにいる。
万が一にでも、ロングブレードライフルが直撃すれば一撃で致命傷となりかねない。
「僕だって少しは成長してるんです!」
今までなら、決定力不足だったが、今は違う。
ビギニングガンダムBはハイパービームライフルのバーストショットを放った。
ビームはロングブレードライフルに直撃して破壊した。
「やべ!」
その衝撃でフライルーは体勢を崩していた。
「貰いました!」
ビギニングガンダムBは一気に接近すると、ビームサーベルをフライルーに突き刺した。
ビームサーベルが突き刺さったフライルーは爆発してバトルは終了した。
「ああっ……くっそ。また負けた」
「良いバトルでした」
バトルが終了してバトルシステムを離れて、アオイとタクトは互いに健闘を認め合っていた。
タクトはバトルに負けて悔しそうにしているが、素直にアオイの勝利を認めている。
「俺に勝ったんだ。最後まで勝ち残れよ。で、次は俺が勝つ」
「はい……でも、次も僕が勝ちます」
そう言って二人は笑い合う。
タクトの世界大会への挑戦は一回戦で終わったが、これでガンプラバトルが終わった訳ではない。
「そう言えば、シシドウからメールが入ってた。シシドウのバトルはまだだけど、クロガミさんの試合はそろそろ始まるな」
バトル中にエリカからのメールがタクトの携帯に届いていた。
内容は自分のバトルの相手と時間とマシロの相手と時間だった。
「ちなみに、マシロさんの相手はゲンドウさんだってよ」
「えっと……」
メールにはマシロの相手はゴウキと書かれていた。
いきなり、地区上位であるゴウキと当たった事にアオイも返す言葉もなく、愛想笑いをしている。
「こりゃ、ご愁傷様か……今から、急げばバトルには間に合いそうだな。行って見るか」
「そうですね」
時間的にマシロのバトルは急げば間に合いそうだ。
すでにゴウキと当たった時点で、マシロに勝ち目はないと思っている為、せめて最初で最後のバトルくらいは見届けてやろうとタクトは提案した。
アオイもそれに同意して、タクトと共にAブロックのスタジアムへと向かった。
各スタジアムの一回戦は複数のバトルを同時に進行している。
観客席に到着したアオイとタクトはマシロの対戦しているバトルシステムを探した。
「キサラギ君、あそこ」
アオイがマシロよりも先にエリカを見つけた。
今、バトルしているファイターの中でエリカが見ているバトルがマシロのバトルである可能性が高い。
「シシドウ! クロガミさんのバトルはどうなった?」
「アオイにキサラギか……」
エリカと合流するが、エリカの様子は少しおかしい。
「マシロのバトルはもう……終わった」
エリカはそう言って、一つのバトルシステムを指さした。
そこには確かにマシロの一回戦の相手であるゴウキがいたが、ゴウキは茫然と立ち尽くしていた。
「ゲンドウさん……勝ったんじゃないんですか?」
「……いや、負けたよ。マシロの奴に」
遠目だが、ゴウキの表情は勝者の物には到底見えなかった。
「マジかよ」
「本当だ。あのゲンドウさんが手も足も出せない程に圧倒的だった」
エリカ自身も未だに自分で見た物が信じられなかった。
エリカもバトルが開始されてた当初は、マシロに勝ち目はないと思っていた。
だが、バトルが始まればゴウキは手も足も出せずに完全に敗北した。
「アイツ……本当にクロガミさんなのかよ?」
タクトは思わず呟いた。
マシロがゴウキに勝った事が信じられないと言う事もあったが、それ以上にゴウキの対戦相手が自分達の知るマシロからはかけ離れていた。
いつもの白いコートではなく、髪も最低限整えられている程度で、すでに春だと言うのに白いマフラーをしている。
何より、自分達の知る穏やかな青年を絵に描いたような雰囲気ではなく、鋭く研ぎ澄まされた雰囲気を纏っている。
そして、プラフスキー粒子の散布が終わって機能を停止しているバトルシステムには、バラバラになったゴウキのゴッドタイタスと無傷の白いガンプラが立っていた。
それが何より、このバトルの勝敗を物語っていた。