ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle21 「マシロとの賭け」

 世界大会地区予選日本第一ブロックも2回戦を終え、3回戦を翌日に控えている。

 今回は1回戦でゲンドウ・ゴウキが敗退しての波乱の幕開けだが、バトルが2回も終わると落ち着き始めている。

 3回戦を翌日に控えて、マシロは次のバトルの最終調整に入っていた。

 

「次の相手はあのシシドウ・エリカちゃん。まさか、彼女と当たる事になるなんてね」

「ガンダムなら死亡フラグだけどな」

 

 マシロはバトルシステムを使ってCPU戦を行いながらも、レイコの声に耳を傾けている。

 

「彼女のバトルスタイルは突貫力を活かして接近、大剣での一撃、アンタの戦い方と少し似ているわね」

「まぁね。だからこそ、戦い易い相手でもある」

 

 エリカのバトルスタイルはここまでのバトルや過去のバトルからも明らかだ。

 エールストライカーの推力に物を言わせての突撃からの対艦刀の一撃と言うのがエリカのバトルスタイルだ。

 多少強引でも近接戦闘を仕掛けて一撃で仕留めると言うのはマシロのバトルに似ている。

 だからこそ、マシロは戦い易い。

 相手が自分の同じバトルスタイルなら、こっちから仕掛けずとも接近して来てくれると言う事もあるが、自分と同じ戦闘スタイルと言う事は相手の方も、やられると嫌だと思う事も同じと言う事になる。

 マシロは強い相手に勝つ事が好きだが、わざわざ相手に得意な戦い方をさせる事は無い。

 どんな状況だろうと得意分野に持ち込む事もファイターに必要な技術だからだ。

 その為、相手の得意分野を封じる事に躊躇いはない。

 1回戦ではマシロの実力を見せつける為に、あえて最後は相手の得意とする分野でも上回っていると言う事を見せつけたが、それを毎回やる必要もない。

 

「あの手のファイターは勢いを殺せば良い」

「それが無難ね」

 

 相手が突貫力を活かして突撃して来るのであれば、その勢いを止めてしまえば殆ど無力化したも同然だ。

 実際にエリカの過去のバトルでバトルフィールドや対戦相手のガンプラとの相性が悪く、持ち前の機動力を使う事の出来なかった時に負ける確率が圧倒的に高い。

 

「後はアンタの視点から気になる事はない?」

 

 データの上ではマシロの勝率は100%と出ている。

 だが、あくまでもデータの上での話だ。

 実際のバトルにおいて、バトルフィールドは公開されていない事など不確定要素は少なからずある。

 その要素を潰す為に、ファイターであるマシロの意見も重要だ。

 

「そうだな……あの胸は凶器だよ。バトル中に揺れても見ろ。男ならガン見してバトルに集中出来ない」

「……成程。それは盲点だったわ」

「……冗談なんだけどな」

 

 マシロは軽い冗談のつもりだったが、レイコには通じていない。

 寧ろ、男だからこその目線で、実際にあり得る可能性として受け取られている。

 

「尤も、バトル中の俺はそんな物に惑わされる事は無いけどね。例え、水着のお姉さんだろうと躊躇い無く倒せる」

「分かっているわ」

 

 あくまでも可能性の一つとして捉えたレイコだが、実際に起こった時の事は心配してはいない。

 マシロが年相応に異性に興味があると言う事は1か月程前に初めて知ったが、それでも色恋よりもガンプラバトル、三食のメシよりもガンプラバトル、睡眠よりもガンプラバトルだと言う事には変わりはない。

 普段ならともかく、バトル中に余計な事に気を取られると言う事はあり得ないと言う事は今更確認する必要もなかった。

 

「明日のバトルは問題ないと思うけど、少し気になる事があるわ」

「気になる事?」

「Cブロックのアンドウ・コウスケ。彼のバトルは過去のデータをまるっきり違うのよ」

「アンドウ……コウスケ……ああ、あの変身ユニコーンの」

 

 明日のエリカとのバトルは問題はない。

 だが、この先勝ち進むにあたり、1回戦と2回戦のデータの中でコウスケのデータは今までの物とは全然違って来ていると言う事はレイコにとっては予想外の出来事だ。

 

「彼、アンタとのバトル以降、殆どバトルをしていないからデータが古い物しか無かったのよね」

「関係ないだろ。確かにアイツのガンプラは少し面白かったけど、バトルの方は弱かったし。Cブロックって事は俺と当たるのは決勝だから、その前にDブロックを勝ち抜いて来たファイターとバトルする筈だ。Dブロックにはタチバナ・アオイがいる。バトルスタイルが変わろうと元々の素質が無ければ大した事は無いだろうしね」

 

 レイコは今までのデータがあてにならない事に不安を覚えるが、マシロは大して興味は無かった。

 以前にマシロはコウスケとバトルをしている。

 その時にコウスケの実力や才能は把握している。

 その為、バトルスタイルが変わっていようと大した問題ではない。

 各ブロックの代表で行われる準決勝の組み合わせはAブロックとBブロック、CブロックとDブロックの代表と言う事は決まっている。

 その為、CブロックのコウスケとAブロックのマシロでは決勝戦まで当たる事は無い。

 更に言えば、Dブロックにはアオイがいる。

 マシロの見立てではコウスケよりもアオイの方が確実に強くなる。

 つまり、現状ではマシロの決勝戦の相手はアオイだと思っている為、自分と当たらないファイターの情報など今の段階では必要はないと言う事だ。

 

「それはそうなんだけどね」

 

 レイコ自身、決勝の相手はマシロが興味を持つ程の才能を持っているアオイの可能性が高いと考えているが、情報を扱うレイコにとっては勝ち残っている全てのファイターの情報は完璧に抑えておきたい。

 マシロもそれが分かっているからこそ、自分と当たる事は無いファイターの情報は必要としていない。

 レイコの方もマシロは目の前の相手にだけ集中していれば良いと言う事は理解している為、文句を言いつつもコウスケのバトルデータの更新と共にエリカとのバトルプランの作成に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 3回戦になれば、各ブロックのバトルも折り返し地点となり、これから先に進む為には更なる実力が必要となって来る。

 各ブロックで3回戦が開始され、4回戦へと進むファイターが次々と決まって行く。

 アオイもまた、3回戦を始めていた。

 アオイの対戦相手のガンプラはビームバズーカを装備したリック・ドムだ。

 リック・ドムがビームバズーカを放ち、ビギニングガンダムBはシールドで斜めに受け流す。

 そして、ハイパービームライフルで反撃した。

 ビームはリック・ドムの脇腹に当たるが、致命傷にはならなかった。

 被弾しつつも、リック・ドムはビギニングガンダムBにビームバズーカを撃ちながら接近するが、ビームバズーカは被弾してパージするとヒートサーベルに持ち帰る。

 ビギニングガンダムBに接近した、リック・ドムはヒートサーベルを振るい、ビギニングガンダムBはシールドで受け止めるが、シールドはビームバズーカを受け流した時に表面がビームで焼かれており、ヒートソードに切り裂かれた。

 

「まだ!」

 

 シールドが破壊され前にビギニングガンダムBはシールドを捨てると左手にビームサーベルを抜いて、ハイパービームライフルを構えた。

 リック・ドムに至近距離からビームを撃ち込んで、リック・ドムの右腕が撃ち抜かれ、ビームサーベルを突き刺してリック・ドムは破壊された。

 

「ふぅ……何とか勝てた」

「やったな! アオイ!」

 

 3回戦を勝ち抜いて一息ついたアオイにタクトとエリカが駆け寄る。

 

「はい。今回も厳しかったです」

「良く言うぜ。後2回でブロックの勝ち抜けだな」

 

 アオイは後2回勝てばブロックを勝ち抜ける。

 だが、その後に地区予選の準決勝と決勝戦の2回を勝たないと世界大会に行く事は出来ない。

 

「カガミの方も3回戦は問題なさそうみたいだったから、次はアタシの番だな」

 

 Bブロックのレッカも別のスタジアムでバトルをしている。

 対戦相手はそこそこ名が知られているファイターらしいが、実力的にレッカには及ばない為、レッカの勝利は固い。

 

「あの人ですね……シシドウさん。大丈夫ですか?」

 

 レッカの方は特に問題はないが、問題はエリカの方だ。

 エリカの相手はゴウキに勝ち、2回戦も余裕で勝利しているマシロだ。

 2回戦の後に揉めこそしたが、2回のバトルでその実力の高さは認めざる負えない。

 

「分かんねぇ。けど、バトルはやってみるまで何が起こるか分かんないからな。やれるだけの事はやるさ。後は気合だ。気合で負けてちゃ勝てるバトルも勝てないからな」

 

 マシロを相手に勝算は無いが、それでも始めから負ける気で戦うファイターはいない。

 

「まぁ、今日の為に武装強化もして来たしな」

 

 ただ、精神論で挑むだけではなく、マシロと戦う為にエリカはガンプラを少し強化して来た。

 やれるだけの事はやった為、後はバトルをするだけだ。

 

「じゃ、行って来る」

「あんな奴に負けんじゃねぇぞ」

「頑張って下さい」

「おう」

 

 アオイとタクトの応援を受けて、エリカはAブロックのスタジアムへと向かい、アオイとタクトも応戦の為にスタジアムに向かった。

 

 

 

 

 マシロとエリカはバトルシステムを挟み対峙していた。

 エリカの方は揉めた事もあって、マシロの方を少し睨んでいるが、マシロの方はエリカの方は気にも留めずにガンプラの関節部などを動かして状態を確認している。

 

「……マシロ。このバトルにアタシが勝ったらこの前の事、アオイに詫びろ」

「無理」

 

 エリカの言葉にマシロはエリカに見向きもせずに即答する。

 

「このバトルの勝敗はすでについているような物だからな。俺が勝つ事が決まっている以上はそんな賭けに意味はないよね」

 

 マシロの中では事前用意の時点で、エリカに負ける要素はない。

 自分の勝利で終わる事が確定しているバトルで自分が負けた時の事を賭けする事は無意味でしかなかった。

 バトルの前から勝った気でいるマシロに舐められている気がして、エリカはイラっとするも、マシロは気にした様子もない。

 

「けど……まぁ、それだけじゃつまんないから。バトル中に俺に一度でもまともに攻撃を当てる事が出来たら詫びても構わない」

「言ってくれるな」

「だってそのくらいじゃないと賭けにはならないし。もし、一度でも攻撃を当てる事が出来たら、この国の最上級の謝罪方法であるハラキリして謝ってやるよ。ちなみに俺が勝っても別に何も要求しないから。勝つ事が分かっている賭けはつまんないし」

 

 その言葉にエリカは少なからず動揺していた。

 マシロは自分とのバトルで一度も攻撃を受ける事無く、勝つと言って来ている。

 以前にもエリカは世界大会で優勝すれば結婚すると言う条件を出しているが、今度は更に厳しい条件だ。

 バトル中に一度も攻撃を受けないと言うのは、双方のファイターの実力に圧倒的な差が無ければ成り立たない。

 しかし、悔しいがマシロの実力を考えれば、絶対に出来ないとは言い切れないのも現実だ。

 一度攻撃を受ければマシロは切腹をする、言い方を変えれば、一度でも攻撃を受ければ死ぬと言う事だ。

 普通に考えれば、その程度の事で自分の命を捨てるなどあり得ない為、こちらを混乱させるハッタリだが、ハッタリだと切り捨てる事が出来ない不気味な雰囲気がある。

 

「……上等だ」

 

 不気味な雰囲気は拭えないが、エリカは切腹云々はあくまでも覚悟の話しだと自分を納得させる。

 そして、二人はGPベースをセットして、ガンプラをバトルシステムに置いた。

 マシロのガンプラは2回戦と同じガンダム∀GE-1 セブンスソードだが、エリカのガンプラは少し強化されていた。

 両肩にソードストライカーとランチャーストライカーの装備を付けて、攻撃力を増している。

 

「アサルトルージュ! シシドウ・エリカ。出る!」

「ガンダム∀GE-1 セブンスソード。マシロ・クロガミ。出る」

 

 そして、バトルが開始された。

 バトルフィールドはデブリベルト。

 周囲には戦艦やモビルスーツの残骸が漂うフィールドで障害物が多いフィールドだ。

 

「デブリかよ……こんな時に苦手なフィールドかよ」

 

 エリカは開始早々、愚痴っていた。

 エリカのバトルスタイルでは、障害物の多いデブリベルトでは戦い難い。

 勝ってアオイの謝らせないといけないバトルで苦手なフィールドに当たったのは運が悪いとしか言いようは無い。

 

「つっても、アイツだって……」

 

 苦手なフィールドだが、悲観するだけではない。

 マシロも高速戦を得意としている以上は、障害物の多いデブリベルトでは機動力を活かし辛いはずだ。

 そして、マシロの先制攻撃のビームがフィールドを横切る。

 

「いきなり撃って来たのかよ!」

 

 ビームはアサルトルージュの位置からは遠く離れている。

 ビームは外れたが、次々とビームが飛んで来る。

 

「当てずっぽうかよ!」

 

 ビームは正確さに欠けているが、ここまで撃って来られたら下手に動けば逆にビームに当たる危険性が高い。

 アサルトルージュはデブリの陰に隠れて、様子を伺う。

 ビームの威力は高くは無い為、デブリを撃ち抜ける程ではない。

 

「どこから来る……まだ、距離はあるはずだ」

「ところがギッチョン……なんてな!」

 

 ビームの威力が大した事は無いと言う事と、デブリで相手も速度を出せないと言う事から、エリカはまだ距離が離れていると思っていたが、実際は違った。

 ショートドッズライフルの威力を意図的に落として、マシロは威力の小ささから、撃っている距離が離れていると思わせて、デブリの中を最短距離で尚且つ、最大速度で突っ切って来た。

 デブリの影から、ガンダム∀GE-1 セブンスソードが飛び出してCソードを振るう。

 

「いつの間に!」

 

 アサルトルージュはとっさに回避すると、Cソードはデブリを一刀両断する。

 すぐに頭部のバルカンと右肩の対艦バルカンで反撃する。

 デブリを切り裂いたガンダム∀GE-1 セブンスソードはすぐに距離を取ってデブリを盾に攻撃を防ぐ。

 

「ちっ……逃げるな!」

「嫌だね。俺もまだ死にたくないんでね」

 

 アサルトルージュはガンランチャーを放つが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはデブリに上手く誘導して防ぐ。

 逃げるガンダム∀GE-1 セブンスソードにアサルトルージュはビームライフルを連射して追いかける。

 

「ちょこまかと……」

 

 デブリを避ける為に速度を出せないアサルトルージュに対して、デブリを気にしていないガンダム∀GE-1 セブンスソードの間では速度に絶対的な差がある為、距離は開いて行くばかりだ。

 その上で、デブリの影でガンダム∀GE-1 セブンスソードを一瞬見失うと、デブリの影からガンダム∀GE-1 セブンスソードが出て来てCソードを振るう。

 

「くそ!」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードの不意打ちを回避して、対艦バルカンを放つが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは大き目のデブリの陰に隠れて防ぐ。

 そして、影から出てショートドッズライフルを撃っては逃げる。

 そのビームをシールドで受け止めるが、いつの間にかビームの威力が最大まで上げられていた事もあって、シールドが破壊された。

 アサルトルージュはビームライフルを時折撃ちながら追いかけるが、機動力の差だけではなく、アサルトルージュを中心に球を描くようにガンダム∀GE-1 セブンスソードは移動する為、アサルトルージュは方向転換を余儀なくされる。

 直進するだけなら、高い機動力を発揮するアサルトルージュだが、小回りを苦手をしている為、ここまで方向転換させられては持ち前の機動力を活かす事は更に出来なくなる。

 尤も、マシロの方もその弱点を見越した上での動きだった。

 

「このままじゃ埒が明かない……だったら!」

 

 普通に追い駆けっこをしたところで、追いつく事は出来ないと判断したエリカは次の手を打つ。

 左肩のビームブーメラン「マイダスメッサー」を手に取るとそれを投げた。

 次にガンダム∀GE-1 セブンスソードをビームブーメランの軌道上に誘い込むようにビームライフルを放った。

 エリカの思惑通りにガンダム∀GE-1 セブンスソードはビームブーメランの軌道上に誘い込まれた。

 

「あんまり相手を舐めすぎるからこうなる!」

「少しは頭を使って来たようだけどさ。うちのレイコの想定通りなんだよね」

 

 デブリの影から飛び出して来たビームブーメランがガンダム∀GE-1 セブンスソードを捉えるかと思われた。

 しかし、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは高速で回転しているビームブーメランの柄の部分を正確に掴んで、ビームブーメランを止めた。

 

「んな事があり得んのかよ!」

 

 これはエリカも予想外の事態だった。

 ビームブーメランは高速で回転している。

 そんなビームブーメランを回避したり、弾くのではなく掴んで止めるなど普通はやらない。

 一歩間違えれば、掴み損なって腕が破壊されるだろうからだ。

 そうなれば、エリカとマシロとの間で交わされた賭けは文句なしでマシロの負けだ。

 流石に賭けに負けたからと言って、切腹はしないが負けた以上はアオイに謝らないといけない。

 

「あり得るから起きたんだよ。じゃ、そろそろ観客も退屈して来たところだ。そろそろこっちからも仕掛けさせて貰う!」

 

 マシロがそう言うと明らかに空気が変わった。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは持っていたビームブーメランをアサルトルージュに目掛けて投げた。

 

「利子も付けて返してやるよ」

 

 更にはガンダム∀GE-1 セブンスソードの左肩のビームブーメランも投げた。

 

「そう簡単に当たってやるかよ!」

 

 二つのビームブーメランをアサルトルージュは回避するが、その間にガンダム∀GE-1 セブンスソードは一つのビームブーメランの軌道上に移動すると、再びビームブーメランをキャッチすると、アサルトルージュに投げる。

 この時、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはデブリで右肩がエリカの位置から見えないようにしていた為、エリカは気づかなかった。

 すでに、ガンダム∀GE-1 セブンスソードの右肩のビームブーメランが付いていなかった事に。

 投げ返されたビームブーメランを回避するが、すでに投げられていた3つ目のビームブーメランがアサルトルージュの片足を切断した。

 

「いつの間に!」

「余り早くやられてくれるなよ」

 

 移動したガンダム∀GE-1 セブンスソードがビームブーメランを掴んで今度は上に投げて、すぐに次のビームブーメランを下に投げる。

 

「ふざけた戦い方をして!」

 

 アサルトルージュはビームライフルをガンダム∀GE-1 セブンスソードに向けるが、下方向に投げたビームブーメランが戻って来て、ビームライフルを破壊し、上に投げたビームブーメランがエールストライカーについている対艦刀を破壊する。

 

「くそ!」

「これで、得意の突貫攻撃は使えない」

「舐めんなって言ってんだろ!」

 

 アサルトルージュは対艦刀を失いながらも、ビームサーベルを抜いて対艦バルカンを連射しながら、ガンダム∀GE-1 セブンスソードに突撃して行く。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはデブリの影に隠れて対艦バルカンの攻撃を防ぐ。

 アサルトルージュはこの間にガンダム∀GE-1 セブンスソードとの距離を詰めようとするが、上下に投げた物とは別の3つ目のビームブーメランが、アサルトルージュの真横からアサルトルージュの動きに事前に合わせていたかのような正確さでエールストライカーのスラスターを切り裂く。

 エールストライカーが損傷した事で素早くアサルトルージュはエールストライカーをパージする。

 

「ちくしょう……」

 

 3つのビームブーメランは示し合わせたようにガンダム∀GE-1 セブンスソードの方向に飛んで行くと、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはそれを左腕の一振りで3つとも、指の間に挟んでキャッチする。

 

「そんじゃ、もう一度踊って貰おうか」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは左手に持っている3つのビームブーメランを多少の時間差をつけて投げた。

 アサルトルージュは四方から飛んで来るビームブーメランを回避するが、デブリのせいで大きく動く事が出来ずにビームブーメランを完全にかわし切る事が出来ない。

 やがて、ビームブーメランが右肩のコンボウェポンポッドを掠めて切り込みが入ったためにパージし、別のビームブーメランが右腕を切り落とした。

 

「これで丸裸だな」

「自分だけは高見の見物かよ!」

 

 右腕とコンボウェポンを失った事でアサルトルージュの武器は頭部のバルカンのみだ。

 それでも尚、エリカは諦める事無くビームブーメランの攻撃を回避に専念する。

 

「諦めてるかよ!」

 

 ビームブーメランの攻撃を回避していると次第にエリカもビームブーメランの軌道に目が慣れて来て、見切れるようになって来ていた。

 そして、アサルトルージュに向かって飛んで来たビームブーメランをアサルトルージュは今までマシロがやって来たように柄の部分を掴んで止めた。 

 

「そう簡単にやられるか!」

「想定の範囲内だよ」

 

 ビームブーメランを掴んで止める事に成功したが、ビームブーメラン自体囮だった。

 エリカがビームブーメランに気を取られている間にガンダム∀GE-1 セブンスソードはアサルトルージュの背後を取っていた。

 

「生憎とうちのレイコは性格は腐っているけど、データ使いにありがちなバトル中の性能に対応できないなんて3流じゃないんだよね。残念な事に」

 

 エリカがバトル中に成長すると言う可能性は事前にレイコが予測していた可能性の一つだ。

 だからこそ、マシロはビームブーメランでエリカの気を自分から逸らした。

 成長した事で翻弄されていたビームブーメランを止めたと言う隙をつく為にだ。

 バトル中に成長したファイターで最も厄介なのは成長してすぐだ。

 成長した事で勢いが付き、バトルの流れさえも変えての逆転劇は世界大会でも度々見られる。

 しかし、始めから相手がバトル中に成長すると言う事を想定して戦っていれば、成長しても流れを変えられる心配は少ない。

 そして、エリカの成長はレイコの予想の範囲を超える事までは無い為、マシロにとっては脅威となる事は無かった。

 背後を取ったガンダム∀GE-1 セブンスソードはCソードを展開して突き出した。

 

「ちくしょう!」

 

 マシロの余裕を打ち崩せたと思った途端に、背後を取られた為にエリカの反応は明らかに遅れ、アサルトルージュは動く事が出来ずに背中からCソードが胸を貫いた。

 それが致命傷となってエリカの敗北が決まった。

 

「……アタシの負けか」

「賭けは俺の勝ちって事で良いよな」

「……ああ」

 

 エリカは素直に自分の敗北を認めていた。

 バトルだけでなく、アオイに謝らせる為の条件の方もだ。

 バトルフィールドが苦手とするデブリベルトだったのは運が悪かったとしか言いようは無いが、それを差し引いても完璧にエリカの戦い方は封じ込まれていた。

 完全に実力で負けたと言う事は認めざる負えない事実だ。

 

「なぁ……聞いても良いか?」

「何?」

「お前、一度でも攻撃を受けたらどうするつもりだったんだよ?」

 

 賭けに負けた以上、その質問に意味はない。

 だが、エリカはどうしても気になっていた。

 

「ガンプラバトルの勝敗で決めた事は絶対……つまり、そう言う事だ」

 

 マシロはそう言って、ガンプラを回収すると帰って行く。

 エリカにはその答えで十分だった。

 マシロは嘘でもハッタリでもなく、本当に賭けに負けたら切腹をしてアオイに詫びる気だった。

 ただの遊びであるガンプラバトルの勝敗で命を捨てるなど、馬鹿らしいが少なくともマシロはそれ程、本気だったと言う事だ。

 エリカもバトルで壊れたガンプラを回収してバトルシステムから離れる。

 通路に出ると、観客席からエリカのバトルを観戦していたアオイとタクトもエリカのバトルが終わり、エリカと合流する。

 

「悪い。勝てなかった」

 

 エリカがそう言うと、アオイもタクトもバツが悪そうにして何も言えなかった。

 「惜しかった」や「次は勝てる」等と言う励ましの言葉をかけようにも、激戦の末の敗北ならまだしも、二人の目から見てもエリカはマシロに手も足も出せずに完敗している。

 

「アオイ。気を付けろよ。マシロは普通のファイターとは何かが違う」

「シシドウさん……」

 

 それがマシロと実際にバトルしたエリカの感想だった。

 エリカに完勝したマシロだが、恐らくは全力を出し切ってはいない。

 そんな余裕がバトルの終わったマシロから感じられていた。

 そして、このままアオイが勝ち進んだ場合、決勝で当たる事になる。

 

「分かりました」

 

 実際にバトルしたが故にマシロの力の一端を垣間見たエリカの言葉をアオイも心に留めた。

 エリカは地区予選3回戦で敗退し、マシロは4回戦へと駒を進めた。

 

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