ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle22 「力の価値」

 地区予選も4回戦ともなれば、勝ち残っているファイターの大半は地区の中での名が知られたファイターが多い。

 だが、そんな中でもマシロ、アオイ、レッカの3人はこの地区では無名のファイターとして勝ち進んでいる。

 すでにアオイとレッカは4回戦も勝ち抜いている。

 マシロの4回戦の相手はガンダム試作3号機「デンドロビウム」だ。

 デンドロビウムはガンダム試作3号機「ステイメン」をコアユニットに巨大アームドべースの「オーキス」を搭載した拠点防衛用モビルスーツだ。

 その巨体には多数の火器と戦艦並の推力を持つ。

 マシロのガンダム∀GE-1 セブンスソードはデンドロビウムにショートドッズライフルを放つ。

 だが、ビームはデンドロビウムに直撃する前に弾かれた。

 

「まぁ、デカブツにIフィールドは当然か」

 

 ビームを弾かれるもマシロは動揺した様子は見られない。

 対戦相手のデンドロビウムにIフィールドが搭載されている事は事前情報で知っている事だ。

 デンドロビウムのように大型機に特殊な塗装を施してIフィールドによる防御能力を持たせる事はここ数年の世界大会での流行りでもあった。

 ガンプラバトル自体はまだ10年にも満たない競技ではあるが、その間に行われた世界大会では様々な工夫を凝らしたガンプラが使われていた。

 初期の第一回や第二回では大幅な改造ではなく、細かいディテールに拘ったガンプラが多かったが、第三回や第四回ではそれに加えてファンネルと言った遠隔誘導兵器によるオールレンジ攻撃を行う事が多くなった。

 しかし、ファンネルは一体一では全方位からの攻撃と言うアドバンテージがある反面、操作が難しい為、実力のないファイターが扱えばファンネルの操作に集中するあまり、本体の操作を疎かにしたり、逆にファンネルが余り意味を成さないなどが見られた。

 それに代わって高い火力を持つ大型機が使われ始めた。

 だが、大型機の最大の欠点は大型が故に機動力が低いと言う事だ。

 直線的な機動力は高いが、小回りが利かない為、幾ら火力があっても的が大きいと言う事もあって大型機と言うだけでは勝つのは難しかった。

 その欠点を補うために特殊な塗装によるIフィールドを作中でその手の防御系の機能がない機体に対しても使われるようになり、前回の第五回大会では真偽は定かではないが、Iフィールドを搭載した大型機が参加者の半数近くもいたとすら言われて、それを裏付けるかのように通常バトルにおいては大型機による大火力の撃ち合いと言うのも良く見られた光景だ。

 そんな事もあり、今年の大型機を使うファイターは決して少なくはない。

 尤も、その大型機にIフィールドを使えるようにする為にはそれなりの技術も必要である事もあって大型機で勝ち進めるファイターはほんの一握りでしかない。

 

「とはいえ、やっぱセブンスソードの火力でIフィールドをぶち抜くのは無理っぽいな」

 

 取りあえず撃っては見た物のレイコの予想通りセブンスソードのショートドッズライフルではフィールドを抜いてデンドロビウムにダメージを与える事は難しそうだった。

 この事自体はあくまでも確認である為、予想が正しいと言う裏付けとなり、無意味と言う訳ではない。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは肩のビームブーメランを取るとデンドロビウムに投げつけた。

 小回りの利かないデンドロビウムではビームブーメランを回避する事が出来ずにスラスターを破壊された。

 スラスターを破壊された事で機動性を大きく奪われたデンドロビウムだが、何度かメガビーム砲をガンダム∀GE-1 セブンスソードに向けた。

 

「流石にそいつの直撃は受けたくはないな」

 

 デンドロビウムがメガビーム砲を撃つ前に、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは腰のショートソードを抜いて投擲した。

 投擲されたショートソードはメガビーム砲の砲身の中に入ると、メガビーム砲は爆発を起こした。

 爆発と同時にデンドロビウムはメガビーム砲をパージしていた為、本体への損傷は最低限に抑えられていた。

 メガビーム砲を失うもデンドロビームは、武器コンテナから三角柱状のコンテナを射出した。

 そのコンテナの一面には38発づつ、計108発のマイクロミサイルが搭載されており、その108発のマイクロミサイルが一斉にガンダム∀GE-1 セブンスソードに襲い掛かる。

 全方位から襲い掛かるマイクロミサイルをガンダム∀GE-1 セブンスソードは機体を乱回転させつつも、胸部のビームバルカンとショートドッズライフルで迎撃する。

 その際のマシロの操縦は明らかに常人離れした速度で操縦桿を動かしていた。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードの動きに対戦相手のファイターも呆気に取られていた。

 そして、最後には108発のマイクロミサイルは全て迎撃されて辺りは爆風で視界が悪くなっている。

 

「ミサイルで俺に当てたかったら後、148発は撃ち込んで来るんだな」

 

 爆風からガンダム∀GE-1 セブンスソードは飛び出すとCソードを展開し、コアユニットであるステイメインごとデンドロビウムに突き刺した。

 ガンプラバトルにおいて、別の機体をコアユニットとしている機体やコアファイターのような脱出機能を持った機体、機体の一部を分離して独立稼動出来る機体などは本体が破壊されても、その部分さえ残されていれば敗北判定とはならず、バトルを続行する事が出来る。

 マシロはそれを見越してステイメインごとデンドロビウムにCソードを突き刺した。

 従来なら、オーキスをパージすればステイメインの状態でバトルが続行出来るが、オーキスごとCソードで貫かれていては意味がなかった。

 

「相変わらずむかつく程強いな」

「最後のミサイルを迎撃した時の動きとかありえないって」

「ですね」

 

 マシロのバトルを観戦していたアオイ達もマシロのバトルは素直に認めざる負えない。

 

「この調子じゃ次も勝って準決勝じゃカガミの奴と当たるな」

 

 レッカの次の対戦相手もそれなりの実力者である事は変わりないが、レッカの実力を考えると勝てるだろう。

 マシロの方も負ける要素が無ければ準決勝でマシロとレッカが当たる事になる。

 

「どっちが決勝に上がって来るにしても厳しい戦いになるな」

「その前に5回戦だな。準決勝は恐らくはアンドウセンパイ……アオイにとっては初めての対戦相手だ」

 

 決勝戦はマシロかレッカだが、その前に5回戦と準決勝に勝たねばならない。

 特に準決勝はアオイが初めてバトルしたコウスケだ。

 コウスケのバトルはマシロのバトルの方に気を取られていた事もあって、一度も観戦してはいない。

 今回も順当に勝ち上がって来ている。

 

「余り自信は無いです……」

「だよな。俺らもマシロの事ばかりだったけど、先輩の実力だって世界を狙えるんだ。油断出来る訳が無いか……」

「こうなれば特訓しかないな。アタシもキサラギも負けちまってるからみっちり付き合える」

 

 アオイが自信が無いのはいつもの事だ。

 幸いにも5回戦まで少し日にちはある。

 その間に特訓を重ねれば少しは自信にも繋がる。

 

「打倒、センパイ! 目指せ世界大会! だな」

「いやいや、ここは世界制覇! くらいの勢いでいかねーと」

「キサラギにしては良い事言うじゃん!」

 

 すでにアオイを置いてきぼりにして、話しが大きく膨らみ、アオイは苦笑いをしながらそんな二人を見ていた。

 

 

 

 

 

 マシロの4回戦の翌日、アオイはエリカとタクトと町で待ち合わせをしていた。

 三人の目的地はホワイトファングではない。

 ホワイトファングは品揃いも良く、設備も整っている為、良く溜まり場にしているが今日は別の場所で練習を行う事になっている。

 練習の場所を変える事で、少しでも違ったタイプのファイターとバトルを行う事でアオイに欠けている実戦経験を増やす事が目的だ。

 実戦経験が増えれば、それだけバトルの時に冷静に判断する事が出来るからだ。

 

「この辺りなんだが……」

「本当にこの辺りにあるのか?」

「間違いないってネットで調べて来たから」

「あれじゃないんですか?」

 

 タクトがこの辺りでガンプラバトルを行える場所を事前にネットを使って調べて来ていた。

 プリントアウトした地図を頼りにその場所を探していた。

 

「茨の園……ここだな」

「地下……本当に大丈夫なんだよな。アタシ等はともかく、アオイを面倒事に巻き込む事は出来ねーぞ」

「大丈夫だって……多分」

 

 目的地の茨の園はビルの地下にあるようだった。

 少し怪しげな雰囲気を漂わせている為、エリカは心配しているが、タクトもきちんとネットで調べている。

 その情報を信じて、タクトを先頭に3人は階段を下りていく。

 階段を下りていくと茨の園と書かれた看板とドアに辿りつく。

 中に入るとかなり開けた空間となっており、そこは熱気に包まれていた。

 

「中は案外普通だな」

「なんか、僕達……場違いな気がするんですが……」

 

 茨の園に来ている客はパッと見で30代以上が多いように見える。

 ホワイトファングは10代や20代の客が多い為、客層が違うだけでも雰囲気はまるで違う。

 ホワイトファングは和気藹々とした雰囲気ではあるが、茨の園の空気はどこか殺伐としている。

 天上からモニターがいくつも吊るされており、バトルの様子が映されている。

 そのバトルに対して、客たちは応戦にしては汚い言葉で、すでに応援と言うよりも野次に近い怒号を上げている。

 

「何事も経験だって」

「取りあえず、観戦からしとくか」

「ですね……流石にこんな中でバトルは……」

 

 アオイは場の雰囲気に圧倒されている為、すぐにバトルが出来る状態ではない。

 場の雰囲気にも慣れると言う意味も兼ねて3人はまずは、バトルの観戦から始める事にした。

 

「結構強いファイターが多いな」

 

 何回かバトルを観戦したが、茨の園でバトルしているファイターのレベルは思った以上に高い。

 客の人数的にはホワイトファングの足元にも及ばないが、茨の園の方が平均的にはレベルが高い。

 

「ん?」

「どした?」

「いや……ミズキさんがいたような気がしたんだが……」

「流石にこんなところに出入りはしないだろ」

 

 観戦しているとタクトの視界にミズキが入ったような気がした。

 だが、エリカの言うように茨の園とミズキとは結びつかない。

 どちらかと言えばミズキは茨の園のような騒がしい場所よりも図書館やカフェと言った静かで落ち着いた場所の方が似合っているとタクトも思う。

 

「こんなところで会うなんて奇遇だな」

「……マシロさん」

 

 ミズキがいた気がする事は気のせいだと思い直した矢先に今度はマシロと遭遇した。

 マシロに対して、タクトは明らかに敵意を向ける。

 

「アンタみたいなお坊ちゃんが何でこんなところにいんだよ?」

「答える必要はないけどね。俺はオーバーワーク気味だから息抜き」

「……答えんのかよ」

 

 棘のある言い方だが、マシロは全く気にしてはいない。

 マシロが茨の園に来た理由の一つがここ数日のオーバーワークだ。

 一日100回近くのCPU戦を行っている事もあり、今日は息抜きを兼ねて茨の園に来たらしい。

 闇雲にバトルをやり続けていたところでマシロの体が持たないのも当然で、たまに一日のバトルの回数は通常の半分程にして息抜きで出歩いて適当な相手を探してバトルしている。

 

「で、そっちは?」

「……秘密の特訓だ」

「俺に話した時点で秘密じゃなくね?」

「その辺にしとけって」

 

 このままではまた、喧嘩になりそうだった為、エリカが仲裁に入る。

 流石にタクトも喧嘩騒ぎを起こす気は無い為、素直に従った。

 

「お前達は運が良い。今日は面白いバトルが見られるかも知れない」

 

 マシロはそう言ってモニターの一つを指さす。

 マシロが今日、ここに来たのは偶然と言う訳ではなかった。

 あるファイターのバトルを見る為に、ここまで足を運んで来た。

 

「あれって……」

「アンドウ先輩?」

「ホワイトファングで見ないと思ったらここでバトルしてたのか」

 

 モニターに映されているファイターはアオイが準決勝でバトルすると予想しているアンドウ・コウスケだ。

 マシロはコウスケのバトルを見る為にここまで来た。

 

「何でも以前とはバトルスタイルを変えてたらしい。前は弱かったけど、面白いガンプラを使ってたからな」

「面白いガンプラ?」

「そっ、変身するユニコーン」

 

 そう言われて、アオイ達は互いに目配せをするが、誰もその事は知らないらしい。

 コウスケのユニコーンガンダムはユニコーンモードからデストロイモードになれると言う事は余り知られてはいない。

 去年までは違うガンプラを使っていて、デストロイモードは切り札である為、それを使わないといけない程のファイターか、そのファイターとのバトルを運良く見る事が出来なければ知らないのも無理はない。

 

「アレは……黒いユニコーン」

「バンシィ……」

 

 バトルシステムに置かれたコウスケのガンプラは以前のユニコーンガンダムではなかった。

 ユニコーンガンダム2号機、通称「バンシィ」だ。

 ユニコーンガンダムの2号機として作られた機体だが、白一色のユニコーンとは違い黒い。

 装備は原作に当たる小説版ではなくOVA版の装備であるアームド・アーマーが装備されている。

 

「趣味悪りぃ……それにいきなりデストロイか……」

 

 マシロからすれば白いユニコーンから黒いユニコーンに乗り換えたような物で少し気に入らない。

 そして、以前とは違いバンシィはデストロイモードだ。

 

「始まるぞ」

 

 マシロは嫌な予感を感じていると、バトルは開始される。

 バトルフィールドはオーソドックスは地上フィールドで対戦相手のガンプラはジム・キャノンⅡだ。

 ジム・キャノンⅡは先制攻撃でビームキャノンを放つ。

 バンシィは大きく飛んで回避すると、右腕のアームド・アーマーBSをジム・キャノンⅡに向けて放った。

 ジム・キャノンⅡは90mmジム・ライフルで反撃を行いつつも回避する。

 アームド・アーマーBSはビームを掃射しつつ、ジム・キャノンⅡを狙い、やがてジム・キャノンⅡの右足に直撃し、右足が破壊される。

 

「あちゃ……足をやられた。運がねぇな」

「お前の目は節穴か。今の攻撃は足を潰しにかかってる」

 

 マシロに指摘されてタクトはムッとする。

 だが、今の攻撃はマシロの目にはジム・キャノンⅡの足を始めから狙っていたように見えた。

 右足を破壊された事で、ジム・キャノンⅡは尻餅をついて倒れ込んだ。

 バンシィは着地すると、一気にジム・キャノンⅡとの距離を詰めた。

 ジム・キャノンⅡはジム・ライフルで応戦するが、距離を詰められるとアームド・アーマーBSでライフルが弾かれると、バンシィは左腕のアームド・アーマーVNを展開する。

 獣の爪を思わせるクローとなったアームド・アーマーVNを振り落すが、ジム・キャノンⅡはギリギリでシールドで防ぐがシールドは破壊される。

 ジム・キャノンⅡはビームキャノンを放つが、バンシィは後方に下がり、頭部のバルカンをジム・キャノンⅡに放つ。

 

「弄り殺す気か」

 

 バンシィの戦いを見てマシロはポツリと零した。

 ビームキャノンの攻撃を回避したバンシィは、アームドアーマーVNを通常形態の打撃武器としてジム・キャノンⅡのビームキャノンの片方を殴り飛ばして破壊する。

 再度、ビームキャノンで応戦しようとするジム・キャノンの胴体をバンシィは踏みつけるとアームド・アーマーBSでビームキャノンを破壊する。

 踏みつけられて身動きの取れないジム・キャノンにバンシィは止めのアームド・アーマーBSを撃ち込んでバトルは終了した。

 バトルが終わった後マシロ以外は茫然として、一言も喋らなかった。

 アオイ達の知るコウスケのバトルとは正反対で相手をいたぶっていた。

 それが未だに信じられない。

 

「つまらないな」

 

 そんな中、マシロはバトルの感想を口にした。

 確かに以前とは違う戦い方だった。

 前にバトルした時に比べるとバトルの腕は上がっていたが、非常につまらないバトルだった。

 以前のコウスケは弱かったが、面白いガンプラを使っていた。

 ユニコーンをデストロイモードに変身させる機能はマシロからすれば無駄の一言だ。

 それを組み込む為に装甲を削って内部に隙間を作って変身時に装甲の一部をスライドさせて収納できるようにしていたのだろう。

 それらを行う為には手間を技術が必要となる。

 だが、それに見合った性能を得られると言うだけではない。

 装甲を削った事で防御力は低下する上に、デストロイモードに変身させる位なら、初めからデストロイモードのユニコーンを買って作り込んだ方がよっぽど強いガンプラを作る事が出来る事は誰の目にも明らかだ。

 作中ではデストロイモードのリスクとして瞬間移動にも見間違う程の機動力から来る殺人的な加速とサイコミュによるパイロットの心身への負荷で5分程度しか使えないが、ガンプラバトルにおいては関係ない。

 ユニコーンを完全に変身させる事が出来る機構を再現できる程の腕があれば、リスクと手間が性能に見合わないと言う事が分からない訳が無い。

 それでも尚、変身させる事出来るユニコーンを制作したのは、本編の設定をリスペクトしたが故なのだろう。

 ガンプラバトルで勝利する事を目的にガンプラを制作しているマシロからすれば、勝つ為に必要な事として自分のやりたいように改造を施している為、コウスケの行った改造は無駄で馬鹿げているとしか言いようがない。

 無意味だと分かっていてもそれを行った事だけはマシロも面白いと認めていた。

 本当に興味を持たない相手にはバトル後に話しかけられても無視して答える事は無い事が多いマシロだが、多少なりとも認めていたが故にバトルの後に話しに応じた。

 

「アレが力に飲まれると言う事か……確かに醜いな。父さんの言った通りだ。ああはなりたくは無い」

 

 今のバトルを見る限り、コウスケはただ力を振るいたいだけに見えた。

 その気になれば、もっと早く勝負を決める事が出来た。

 それなのにいたぶっていた。

 大局を見据えて指示を出したレイコにやるように言われたマシロとは違い、ただ自分の力を見せつけるかのようでマシロの目には非常に醜く見えた。

 そして、それは今な亡き父から何度も言われた事でもあった。

 マシロ達は人より優れた才能と言う力を持っている。

 故に決して力に飲まれてはいけないと。

 

「やぁ、まさか君が見ていたとは思わなかったよ」

「……アンドウ先輩」

 

 バトルが終わり時間が経っていたのか先ほどまでバトルをしていたコウスケがそこにいた。

 マシロを含めた皆が以前のコウスケと面識があるが、コウスケは別人と化していた。

 以前は礼儀正しい好青年と言う印象だが、今のコウスケはどこか陰湿な印象を受ける。

 同じ高校でも学年が違えば、接点が殆ど無い為、コウスケと会う機会は無かったが、この変貌ぶりには驚くしかない。

 尤も、先ほどのバトルを見ている為、驚きは半減してはいる。

 

「ここは力が支配する場所だよ。君たちのような子供が来る場所じゃないな」

 

 コウスケはアオイ達を嘲笑うかのようにそう言った。

 ホワイトファングは地区のファイターの情報を集める為に、誰でも気軽に遊びに来れる場所と言う雰囲気を作っている。

 一方の茨の園はとにかく、強いファイターが幅を利かせている。

 つまり、遠回しにアオイ達を弱者として馬鹿にしていると言う事だ。

 その意味を完全に理解している訳ではないが、コウスケが自分達を馬鹿にしていると言う事はアオイ達にも何となく伝わっている。

 そんなコウスケの態度にタクトが食ってかかりそうになるが、マシロが何も言わずにコウスケの横を通り過ぎようとしていた為、食ってかかる事は無かった。

 

「待ちなよ。ヴァイス・デビル」

「それ覚えてたんだ」

 

 呼び止められたマシロは仕方が無く立ち止まって振り返る。

 白い悪魔、ヴァイス・デビル。

 かつて、マシロがコウスケに名乗った名だ。

 そして、ネット上に情報をばら撒いていた。

 しかし、マシロはレイコとは違い情報の扱いに長けている訳ではない。

 その為、ヴァイス・デビルの名は殆ど広まる事はなく、いつしかマシロも自演して情報を広める事に飽きていた。

 今ではその名を覚えている者は殆どいない為、本当に都市伝説を化している。

 

「俺は君に感謝しているんだ。あの日、君に負けた事で気づいたんだよ。圧倒的な力……力こそが全てなんだと!」

 

 そう言うコウスケはどこか狂信的な印象すら受けた。

 アオイの初めてのバトルの後、コウスケはマシロに大敗した。

 そして、今までの努力を否定されたコウスケはある答えに至った。

 力こそが全てなのだと。

 どんなに努力を重ねようとも圧倒的な力を前には無意味であると、マシロとのバトルを通じてコウスケは悟った。

 ここでのバトルでコウスケはその圧倒的な力を手に入れていた。

 

「くだらない」

 

 そんな、コウスケをマシロは一蹴する。

 

「力はただ力でしかない。それ自体に価値はない。そこに使う理由を与えて初めて価値があるんだよ。つまり、力を行使する為の力に価値はない。よってお前のバトルにも価値はないって事だ」

 

 マシロにとって、力は力でしかなかった。

 その力をバトルで勝つ為に使い、勝てば楽しいと言う理由を持たせる事で力に価値が出て来る。

 今のコウスケは力を使う為に力を欲している。

 そんな力に価値は無かった。

 

「言ってくれるね。なら、君と俺の力……どっちが正しいかここで決めようじゃないか」

「やだね。アンタじゃ俺には勝てないよ。力の意味すら解せないアンタじゃ俺とバトルしても勝負は見えてる」

「逃げるのかい? 意外と臆病なんだな」

「この国にはこんな諺があるらしいな。弱い犬程良く吠えるって。確かに」

 

 コウスケとバトルする気のないマシロは挑発に挑発で返す。

 

「けど、どうしても俺とバトルしたければ決勝まで上がって来いよ。まぁ、準決勝まで勝ち上がっても準決勝で負けるだろうけどな」

「準決勝……ああ、君か」

 

 今の今まで蚊帳の外だったアオイにコウスケの視線が向けられた。

 このままで行けば、準決勝でアオイとコウスケが当たる。

 マシロはコウスケはアオイに勝てないと断言した。

 だが、アオイに勝った事のあるコウスケは、マシロの言っている事を戯言としか捉えていないようだ。

 

「彼の実力を知って言っているのかい?」

「どう言う!」

「少なくともアンタよりはマシだってことは知ってるつもりだけど?」

 

 明らかにアオイを見下した態度にタクトの我慢の限界で、今度こそはエリカも止める気は無かったが、マシロの言葉が遮る。

 

「ふん。まぁ良い。どっちが正しいか時期に分かるからね」

「そうだな。その時に無様に泣くのはアンタの方だけどな」

 

 どっちも自分の意見を曲げる事は無かった。

 そして、当事者である筈のアオイは口を挟む事も無く、マシロとコウスケのどちらが正しいかと言う事はアオイとコウスケの準決勝で決められる事となった。

 

 

 

 

 

 アオイの意志とは関係なく、マシロとコウスケの争いに巻き込まれたが、その前に5回戦を勝ち抜かなければ意味はない。

 5回戦の時点で地区予選のベスト8となり、すでにマシロとレッカは勝ち抜いて準決勝でのバトルが決まっている。

 そして、コウスケも別のスタジアムでバトル中だが、相手を見る限りでは勝ちは見えている。

 アオイの5回戦の対戦相手のガンプラはラファエルガンダムだ。

 ラファエルガンダムはGNビームライフルで、牽制の射撃を放つ。

 ビギニングガンダムBはシールドを掲げながら、ハイパービームライフルで応戦している。

 ビギニングガンダムBの攻撃を回避して、ラファエルガンダムはバックパックのGNビッグキャノンを最大出力で放つ。

 

「くっ!」

 

 何とか回避するが、ビームはシールドに掠りシールドの表面が焼かれる。

 体勢を崩しながらもハイパービームライフルで反撃すると、ビームはラファエルガンダムのバックパックに直撃した。

 バックパックが爆発する前に、ラファエルガンダムはバックパックを本体からパージし、GNビッグキャノンもパージした。

 GNビッグキャノンは元々、パージして独立して使う事も出来る為、そのままビギニングガンダムBにビームを放つ。

 ラファエルガンダムも含めて三方向からの攻撃をシールドを使って防いでいたが、GNビッグキャノンの砲撃でシールドの表面にダメージを受けていた事もあってシールドが破壊される。

 

「僕は……」

 

 シールドを失いつつも、ハイパービームライフルでGNビッグキャノンを一つ撃ち落すと左手にビームサーベルを持って一気にラファエルガンダムの方に向かう。

 ラファエルガンダムは残っていたGNビッグキャノンを腕に付けたGNビッグクローでビギニングガンダムBを迎え撃つ。

 ビギニングガンダムBのビームサーベルをラファエルガンダムのGNビッグクローはぶつかり合う。

 GNビッグクローをビームサーベルが貫きかけるが、ラファエルガンダムは強引にGNビッグクローを振り抜いて、ビギニングガンダムBの左腕をもぎ取る。

 ビギニングガンダムBの左腕をもぎ取ったが、ラファエルガンダムのGNビッグクローもビームサーベルによる損傷で使い物にならなくなった為、パージされた。

 

「シシドウさんとキサラギ君の期待に応える為にも……」

 

 ビギニングガンダムBは振り向き、ハイパービームライフルを構えた。

 ラファエルガンダムもGNビームライフルを構えていた。

 

「負けたくない!」

 

 2機は同時にビームを放った。

 2機の撃ったビームはぶつかり合う。

 そして、ビギニングガンダムBのハイパービームライフルの方が威力が多少、勝っていた為、ラファエルガンダムの放ったビームは射線を変えてビギニングガンダムBの足を貫き、ビギニングガンダムBの放ったビームはラファエルガンダムの胴体を貫いていた。

 胴体を撃ち抜かれたラファエルガンダムは爆散し、アオイの勝利となる。

 アオイが勝利した事でDブロックの代表も決まり、ベスト4が全て出そろった事になる。

 そして、準決勝第一試合はマシロVSレッカ、第二試合はアオイVSコウスケと言う4人中3人が無名のルーキーと言う異例の形で日本第一地区の地区予選は終盤に入って行く。

 

 

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