ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
ガンプラバトル世界大会日本第一地区決勝戦の当日となった。
会場には地区予選でも最大の観客が日本第一地区の代表がどちらになるのかを見に来ていた。
マシロとアオイはバトルシステムを挟んで対峙していた。
マシロはいつも通りの表情だが、アオイの表情は固い。
昨日、レイコからマシロの事を聞かされた時は、ああは言ったが、家に帰り冷静になって見るとレイコに託された物は自分の想像以上に重い。
いうなれば、今日のバトルでの勝敗はマシロの人生を左右すると言っても過言ではないからだ。
自分が負けてしまえば、マシロを救う事が出来ないと思うと緊張して硬くなるのも無理はない。
決勝戦の開始時間となり、マシロとアオイはGPベースをバトルシステムにセットして、ガンプラを置いた。
すると、会場がざわめき出す。
「そんな……ガンプラを変えて来た」
「お互い様だろ」
マシロのガンプラは今までは正反対の重装備のタイプになっていた。
胴体部はセブンスソードとは変わらないが、脚部は大型となっており、腰の増加スラスターから左右に二本のアームが伸びており、そこに片方に4基づつの武装コンテナが付いている。
バックパックにはAGE-1 フルグランサのグラストロランチャーが付いているが、武装コンテナのアームを干渉して前方に砲身を向ける事が出来ない為、グラストロランチャーの方針は通常の逆向きにつけられている。
両腕にはビームバルカン兼ビームサーベルが内蔵されて、セブンスソードの物よりも大型のシールドが装備されている。
両腕のシールドにはビームサーベルが一基つづ装備されており、右手にはドッズランサーを持っている。
完成度は9割だが、圧倒的な火力と多彩な武器を使い、相手や状況に合わせて効果的に敵を仕留めて殲滅するガンダム∀GE-1の殲滅戦用装備のフルアサルトジャケットだ。
対するアオイのビギニングガンダムBも武装を大幅に強化されている。
両腕にはコウスケが制作したユニコーンガンダムのシールドに裏側にビームガトリングガンが2基つづ装備されている。
バックパックにはレッカのビギニングガンダムRのバーニングソードRが2本、サイドアーマーにビームサーベル、右手にはハイパービームライフルがそれぞれ装備されている。
そして、左手にはショップ大会の賞品であるスノーホワイトが装備されていた。
マシロの戦いは相手の事を徹底的に研究している節がある事から、事前情報が全くないスノーホワイトを持たせる事で少しでも相手の策を狂わせようとしての装備だ。
尤も、この一週間で近接戦闘の練習をしていた上に、昨日レイコから貰ったDVDから近接戦闘を想定していたアオイにとっては明らかな砲戦用の装備で来た事で出先を挫かれてた。
「マシロ・クロガミ。ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケット。出る」
「タチバナ・アオイ。ビギニングガンダムB。行きます!」
そして、決勝戦の火蓋が切って落とされた。
バトルフィールドはインダストリアル7。
ガンダムUCの最初と最後の戦場だ。
バトル開始はコロニーの近くの宙域からで、バトルフィールドはコロニー内まで含まれている。
「落ち着くんだ……」
出先こそは挫かれたが、バトルは始まったばかりだ。
アオイは周囲を警戒しながら移動を始める。
相手が砲戦用の装備である以上は、遠距離からの攻撃ですぐに仕留められる危険性がある。
「来る!」
ビギニングガンダムBがシールドを掲げるとビームが直撃する。
高出力のビームだったが、ビギニングガンダムBのシールドにはコウスケが特殊塗装によるIフィールドがある為、ビームを弾いて防いだ。
「Iフィールド。変身ユニコーンの奴が作ったってところか。やるね」
ビームの掃射が終わるとそこにはガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットが肩にグラストロランチャーの砲身を構えていた。
砲身を逆向きに付けたことで、射角は殆ど取る事が出来ないが、バックパックと砲身のジョイントを一時的に外す事で手持ちの火器としてグラストロランチャーを前方に向けて放つ事が出来る。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは再度、グラストロランチャーを放つ。
ビギニングガンダムBは回避して、スノーホワイトを放つ。
反動で後方に吹き飛ばされるも、勢いに逆らわない事で精密さは欠けるが移動と攻撃を同時に行う事が出来る。
正確さには欠ける攻撃だが、一撃の威力は非常に高い為、当たれば流石のガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットでも無事では済まないだろう。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは脚部のスラスターを使って回避する。
「あの装備であんなスピードが出せるなんて……」
回避するガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットのスピードにアオイは驚いていた。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは見るからに重装備のガンプラだ。
それなのに、高い機動力も持っている。
尤も、高出力のスラスターは脚部に集中している為、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットのスピードはセブンスソードの時とは違い、直線的で小回りが利かない。
バトルフィールドがデブリベルトのような障害物の多いフィールドならこうはいかない。
ビギニングガンダムBはハイパービームライフルで攻撃するが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの速度に追いつけずに攻撃は当たらない。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは体をくねらせるように反転すると、ドッズランサーを構えてドッズランサーに内蔵しているドッズガンを連射しながらビギニングガンダムBに突撃して来る。
「当たれ!」
「嫌だね」
ビギニングガンダムBがハイパービームライフルを連射するが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは最低限の動きで回避する。
高い推力で強引に加速したガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは勢いをつけてドッズランサーの一撃を繰り出す。
右腕のシールドで防ごうとするが、勢いの付いたガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの突撃をシールドでは防ぐ事は出来ずに粉砕された。
「なんて破壊力なんだ!」
辛うじて右腕のシールドだけで済んだが、あの一撃はまともに喰らえば一撃で終わりになる程の威力だった。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは再び距離を取って突撃をしようとしている。
ビギニングガンダムBはコロニー「インダストリアル7」の方へと向かう。
コロニーに近づけばコロニーで、相手の動きを制限する事が出来る。
「成程ね。まぁ、関係ないけど」
コロニーの方に向かうビギニングガンダムBをガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットが追いかける。
機動力の差は歴然で、2機の距離は次第に縮まって行く。
そして、ビギニングガンダムBに追いついたガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはドッズランサーを突き出して突撃する。
「今だ!」
だが、ビギニングガンダムBは突然、方向転換を行った。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの重量は突撃時の威力増加に一役かっているが、急な方向転換時には足を引っ張る。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは止まり切れずにコロニーの外壁に激突した。
コロニーの外壁に突撃したガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは外壁をぶち破ってコロニーの中に入った。
「コロニーの中にこっちを誘い込むか……悪くはない策だよ」
コロニーの中でガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはバランスを取って着地する。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットを追ってコロニーの中に入って来たビギニングガンダムBも着地して2機はコロニー内で対峙する。
「その装備なら重力下ではまともに動けない筈です」
ビギニングガンダムBは飛び上がって左腕のシールドについているビームガトリングガンを連射する。
だが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは並行に後退した。
後退するガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットをビームガトリングガンで狙うが、蛇行しながらバックするガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットを捉える事が出来ない。
「悪いな。コイツは重力下の方が戦い易いんだよ」
アオイはコロニー内に引きずり込む事で自身の重量で動きを封じようとしていた。
しかし、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは宇宙戦よりも陸戦を得意としていた。
脚部に高出力のスラスターが集中していたのも、重力下でホバー装甲を行う為だ。
地上をホバーで移動する事で平面なら高い機動力と小回りが利く。
「さて……得意なフィールドに持ち込んだところで行くか」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはグラストロランチャーを構えて放つ。
その一撃はビギニングガンダムBの横を通り過ぎる。
「外した……?」
「後ろ」
グラストロランチャーはビギニングガンダムBを直接狙った物ではなかった。
ビギニングガンダムBの後方のビルを破壊し、ビルがビギニングガンダムBに襲い掛かる。
「っ!」
ビギニングガンダムBは倒壊するビルを回避するが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットがすでに先回りをしていた。
脚部のスラスターを全開にして、ビギニングガンダムBに突っ込むとドッズランサーを突き出して来る。
ビギニングガンダムBはシールドで受け止めるが、そのまま、地上までもつれ込む。
「この程度か? お前の実力は」
至近距離からシールドにドッズガンを撃ち込むがシールドのIフィールドを打ち破る事は出来ない。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはビギニングガンダムBを蹴り飛ばすとドッズガンを連射する。
「……強い。でも、僕は負ける訳には行かないんです! 貴方に勝つ為に協力してくれた友達の為にも……貴方の為にも!」
ビギニングガンダムBはハイパービームライフルを放つが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットのシールドであっさりと防がれる。
「友達ね……さぞかし気分が良いんだろうな。見下せる友達がいるってのは」
「何を……」
「気づいてないのか? お前、自分がボッチになりたくはないから、手加減してるって事にさ」
「っ……」
マシロの言葉にアオイは返す事が出来なかった。
アオイ自身、手加減していると言う感覚は無い。
だが、一人になりたくないと言う事は否定できない。
そこから、マシロの言っている事は事実なのだと、図星を突かれたような感覚を受ける。
「手加減して、接待バトルをしないと維持の出来ない関係が友達ね……笑わせる」
アオイは茫然とし、その間にガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットがドッズランサーでビギニングガンダムBに一撃を入れる。
直撃を受けるも、損傷はしていなかった。
「僕は……それでも僕は! 友達の為になら戦える!」
ビギニングガンダムBはスノーホワイトを放つ。
反動でビルに激突するが、その攻撃をガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは距離を取りながらかわす。
「友達を理由にバトルなんかするなよ。バトルは自分の為のするもんだ」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはビギニングガンダムBに接近する。
ビギニングガンダムBはスノーホワイトを向けるが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは気にすることはない。
ビギニングガンダムBがスノーホワイトを放つ瞬間にガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは射線からそれて回避する。
「タイムラグは分かってんだよ」
アオイ達は知らないが、スノーホワイトはマシロが制作している。
その為、スノーホワイトの威力も射撃間のタイムラグも把握している。
タイムラグを把握していれば、向けられたくらいでは動揺する事無く、対処も出来る。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはドッズランサーを突き出すが、ビギニングガンダムBは転がるように横に飛んで回避する。
「僕は……」
「自分の為にすら戦えない奴が誰かの為に戦える訳が無いだろ」
「僕は……貴方とは違う! 貴方のように僕は一人で戦っている訳じゃない!」
ビギニングガンダムBはハイパービームライフルを連射するが、いつもの精密さはまるでない。
そんな攻撃ではガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは回避するまでも無かった。
「それでも、友達と言っておきながら相手を心の奥底で見下している奴よりはマシだね」
「貴方だって!」
「俺は俺の力を知っている。そして、相手の力を知って仕舞えば上から目線にもなるさ」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはグラストロランチャーを放ち、ビギニングガンダムBはシールドで受け止めるが、尻餅をついて倒れてしまう。
「相手を見下していると言う点では、俺もお前も同じ穴の狢なんだよ」
「絶対に違う!」
ビギニングガンダムBはスノーホワイトを投げ捨てると、バーニングソードRを抜いてガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットに切りかかる。
だが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは軽くかわすと、ビギニングガンダムBに足を引っ掛けて、ビギニングガンダムBはうつ伏せに倒れる。
「どこが違う? 何が違う。俺もお前も同類だよ。同じ才能を持った者同士だ」
「僕は……そんなんじゃ……」
もはや完全にアオイは錯乱していた。
マシロの言っている事を否定しようにも、心の奥底ではマシロの言っている事は本当の事だと受け入れてしまっている。
それを否定しようとしても否定しきれない。
否定しきれなければ、マシロの言っている事が正しいと証明しているような物だった。
「僕はただ……独りでいるのが嫌だったんだ」
錯乱している中でアオイはポツリと零した。
アオイはいつも独りだった。
中学時代や高校入学してから、話すクラスメイトがいなかった訳ではない。
だが、学校が終われば誰もアオイの事を気に掛ける事は無かった。
自分から歩み寄る勇気がなかったアオイは親しい友人を作る事が出来なかった。
しかし、始めは偶然だったが、アオイにも親しい友人が出来た。
エリカとタクトだ。
二人との出会いでアオイの毎日は変わった。
自分とは正反対の性格をしている二人だが、三人でいる事が多く、三人でいる間はアオイは独りではなかった。
それをマシロの言葉で自覚して、マシロの言っている事が事実だったと認めざる負い。
「アオイ!」
心の奥底を見透かされて、事実を突きつけられ、それを認めてしまえばそこには絶望しかない。
だが、そんなアオイの耳に声が届いた。
普通なら会場の声援でかき消されてアオイの耳に届く事のない声だ。
「アオイ! 負けんじゃねぇ!」
「お前ならやれる! アタシ等が付いてんぞ!」
「キサラギ……君、シシドウ……さん」
アオイにとって初めての親しい友人であるエリカとタクト。
二人が観客席の最前列から身を乗り出すように、心の底からアオイの勝利を信じてアオイを応援している。
アオイの耳には観客の声援は聞こえず、二人の声だけが届いた、アオイの目には観客席の二人の姿しか見えなかった。
それはアオイの願望が見せた幻かも知れない。
だが、そんな幻でもアオイに立ち上がる力を与えた。
そんなアオイに応えるようにビギニングガンダムBは立ち上がる。
「確かに貴方の言う通りかも知れません……それもまた、僕なのかも知れません。でも……それだけが僕の全てじゃない!」
確かにマシロの言う事は正しい。
しかし、期待を裏切りたくはないと思う反面、期待に応えたいと思うのもアオイだ。
結局のところ、マシロの言うアオイはアオイの一面でしかない。
立ち上がったビギニングガンダムBはハイパービームライフルを放つ。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはシールドで防ぐと、ビギニングガンダムBは一気に接近するとバーニングソードRを振るう。
それをガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはドッズランサーで受け止めた。
「ようやくその気になったか」
「はぁぁぁぁ!」
ビギニングガンダムBは何度もバーニングソードRを振るい、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはドッズランサーで確実にいなしていく。
何度か切りつけると至近距離からハイパービームライフルを放つ。
その攻撃をガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは体を沈ませてギリギリのところで回避すると、ドッズランサーを突き上げる。
だが、ビギニングガンダムBは飛び上がって回避する。
「やるな。コイツもかわすか」
上空に回避したビギニングガンダムBはハイパービームライフルを放つ。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは後退しながらシールドでビームを防ぐ。
「流れが変わったか……まぁ良い」
後退しながらガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは先ほどビギニングガンダムBが捨てたスノーホワイトを回収する。
「使わないなら借りるぞ」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはスノーホワイトをビギニングガンダムBに向ける。
スノーホワイトは二つの砲門から交互にビームを放つ。
これが本来のスノーホワイトの使い方だ。
多少威力が落ちるが、それでも十分な威力のビームを片方でも受ける為、交互に撃つ事で連射速度を補う事が出来る。
ビギニングガンダムは回避しながら、ビームガトリングガンで反撃する。
そして、スノーホワイトは二つの砲門からの高出力のビームを放つ。
先ほどまでの攻撃はビギニングガンダムBを誘い込む物で、ビギニングガンダムBは回避する事が出来ずにシールドで防ぐ。
「へぇ……こいつを耐えきるか。良い盾だ」
スノーホワイトの掃射が終わると、ビギニングガンダムBは地上に落ちる。
大火力を正面から受けたが、Iフィールド付きのシールドで防御していた。
「アンドウ先輩のシールドのお陰だ……」
コウスケが制作したシールドのIフィールドで普通のシールドなら確実にシールドごとやられていたビームでも耐え切る事が出来た。
だが、代償としてシールドが使い物にならなくなってしまった。
「ありがとうございます。先輩」
ビギニングガンダムBは左腕のシールドをパージする。
「感傷に浸っている場合か?」
ビギニングガンダムBに接近していたガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットがドッズランサーを突き出し、ビギニングガンダムBはバーニングソードRで受け流す。
そして、バーニングソードRを振り落すと、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはシールドで受け止める。
「少しはやるようになったじゃないか」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはシールドでビギニングガンダムBを押し戻すと、ドッズランサーの横でビギニングガンダムBを殴り飛ばした。
殴り飛ばされながらも、体勢を整えたビギニングガンダムBはビームバルカンを連射しながらバーニングソードRを突き出す。
それに応戦するようにガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットもドッズランサーを突き出して、2機の武器の先端がぶつかり合う。
「独りで戦っている貴方には分かりません!」
ぶつかり合った2機の武器だが、ビギニングガンダムBのバーニングソードRが先に砕け散った。
すぐに柄を捨てるともう一本のバーニングソードRを抜いた。
「相手を下している友達関係よりはマシだね」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはドッズランサーで何度も突きを繰り出し、ビギニングガンダムBはバーニングソードRで弾いた。
「それでも! 僕は僕を信じて託してくれた人達の為に戦う! それは嘘ではない本当の事です!」
やがてバーニングソードRが粉砕されるが、すぐにビームサーベルを持って接近する。
それに合わせるようにガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットがドッズランサーの突きがビギニングガンダムBの胴体に突き刺さる。
「終わりか?」
「まだです!」
ビギニングガンダムBは胴体をドッズランサーで貫かれながらも左腕でドッズランサーを捕まえる。
そして右手のビームサーベルを逆手に持ってガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットに振り落す。
至近距離でドッズランサーを捕まれている為、振りほどく事も出来ない。
観客の誰もが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはこの一撃を回避出来ないと思った瞬間、ドッズランサーの槍の部分が高速で回転を始めた。
それによって、ビギニングガンダムBはガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットにビームサーベルを突き刺す事が出来ずに一回転をして両足が地面に叩き付けられて破壊されながら、地に伏した。
「思い切りは悪くないけどな。悪いけど、俺には通じない」
「まだ……終わってない!」
ビギニングガンダムBが胴体に穴を開けられて地に伏した時点で観客の誰もがアオイの敗北を確信しただろう。
エリカとタクトですらアオイの敗北を予感させられていた。
ただ、一人アオイを除いたマシロだけが、終わってないと確信していた。
ビギニングガンダムBは腕を使って強引に立ち上がってビームサーベルを突き出した。
狙いはガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの胴体だ。
ガンプラバトルにおいて、胴体は最も致命傷になり易い場所だ。
そこを狙って、アオイは最後の渾身の一撃を放った。
その一撃は確かにガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの胴体を捕えた。
絶体絶命の状況からの一撃で誰もがアオイの逆転勝利を予期した。
「狙いも悪くない……けど、胴体の追加装甲は電磁装甲製……ビームは通さないんだよ」
アオイの渾身の一撃は確かにガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの胴体を捕えていた。
だが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの胸部の追加装甲は塗装の際にプラフスキー粒子を変容させるように特殊な塗装を施されていた。
それによってIフィールドと同じようにビームを弾く事が出来た。
アオイの渾身の一撃は無情にも、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットを貫く事が出来なかった。
「そんな……」
そして、アオイの最後の一撃に気づいていたマシロはすでに次の手を打っていた。
アオイが勝負を諦めていないのであれば、狙いは胴体の一点である事を予測していれば、胴体の電磁装甲で防げることも分かっている。
だから最後の一撃をマシロは避ける事も防ぐ事もしなかった。
その必要がないからだ。
その代りに反撃の動作に入っていた。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはドッズランサーをすでにビギニングガンダムBに向けていた。
そして、ドッズランサーに内蔵されているドッズガンをビギニングガンダムBに撃ち込んだ。
次々と撃ち込まれたビームが威力は低いが確実にビギニングガンダムBを破壊して行く。
ドッズガンの連射を撃ち込まれたビギニングガンダムBはビルに倒れ込む。
「ガンプラバトルに偶然も奇跡もない。全ては日ごろの積み重ねた力と勝ちないと願う心によって生み出される想いがそろっての結果だ。想いだけでも力だけでも勝てず、想いでも力でも劣るお前が俺に勝てないのは必然。そして、俺は最後の最後まで気を抜く事はない」
ビルに倒れてまともに動く事の出来ないビギニングガンダムBにガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはスノーホワイトを向けた。
流石にボロボロのビギニングガンダムBでスノーホワイトの一撃を防ぐのは不可能だ。
ビギニングガンダムBはビームバルカンを撃つが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットを止める事が出来なかった。
ゆっくりと油断する事無く、接近するガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはもはや、回避すらも出来ない距離まで来ると無慈悲にスノーホワイトを放った。
その強力なビームにビギニングガンダムBは成す術もなく飲み込まれた。
スノーホワイトの一撃でバトルの勝敗は決した。
バトルが終了すると、会場は盛大な歓声が鳴り響く。
その歓声は両者を称える物だったが、アオイの健闘を称える声の方が多かった。
結果だけを見ればアオイはマシロに手も足も出せずに完敗している。
だが、ここまでのバトルでマシロを相手にあそこまで戦えたファイターは一人もいない。
そこまでマシロと戦ったアオイのバトルが観客の心を震わせた。
バトルに敗北した物の多くの観客からの声援を受けたアオイは少しの間放心していた。
我に返るとすでにマシロの姿は無く、バトルシステムにもマシロのガンプラは無く、そこにあるのは無残に破壊されたビギニングガンダムBの残骸だけだ。
唯一無事だったのは。途中からマシロが使っていたスノーホワイトくらいだ。
アオイはそれを回収すると、バトルシステムから離れる。
「アオイ!」
「シシドウさん、キサラギ君……ごめんなさい。僕……」
「気にすんなよ。お前は良くやった」
バトルが終わり、エリカとタクトがアオイの元に駆けつける。
アオイはすぐに謝るが、二人は負けたアオイの事を責める事は無い。
「本当だって。お前、いつの間にあそこまで強くなったんだよ」
「それは……」
アオイは興奮する二人を前に言い淀む。
今までの練習以上の実力を今日は発揮していた。
それは、マシロが言っていた事を証明しているような物でもあった。
「ごめんなさい。僕は二人の事を友達だって思っていたけど……心の底では信じる事が出来なかった……僕は……友達失格です」
バトルに負けた事よりも、アオイにとってはその事の方が重要だ。
マシロとのバトルでアオイは自分すらも気づいていない自分の本心を知った。
独りになりたくないと言う思いから、二人の事を信じる事が出来ていなかった。
だから、無意識の内に手加減をしていた。
事情は呑み込めなかったが、涙を流して謝るアオイに二人もある程度の事情は察した。
「そう言うもんだろ。友達ってのはさ。なぁ、シシドウ?」
「まぁ……アタシは家の方でいろいろと人の面倒な部分も見てるからかも知れないけどさ。そう簡単に心の底から信じる事なんて普通は出来るもんじゃないって」
「そうそう。けど、それでも赦し合って、本当のダチになれるんだろ?」
エリカもタクトも友達の事を全て信じているとは言い難い。
時には疑う事だって何度もある。
それでも、それを赦す事が出来るのが本当の友達だ。
「けど……アオイがそうやって胸の内を話してくれるってのは嬉しい。そうやってアタシ等はもっと友達になって行けるしな」
「シシドウさん……」
「取りあえず、そのシシドウさんは止めにしね? 俺の事もタクトで良いしさ。それにたまに敬語とかも混ざってるし」
「だな、なんか苗字だと距離を感じるな。アタシ等はもう普通にアオイって呼んでるし」
アオイは今までエリカにもタクトにも名前ではなく苗字で呼んでいた。
二人からすれば、名前ではなく、苗字で呼ばれる事に距離感を感じる。
「えっと……エリカさん、タクト君……で良いかな?」
「最終的には呼び捨てにして欲しいが、今はそれでいいか」
「そうだな。来年に向けて特訓に入るんだ。その内呼び捨てにもなるかも知れないしな」
「来年?」
「マシロの奴に来年の世界大会でリベンジする話しに決まってんだろ」
タクトとエリカの中ではアオイは来年の世界大会の地区予選にてマシロにリベンジする事になっていた。
そこまで考えていないのは当のアオイだけだ。
「やんないのかよ?」
「いえ……やります!」
アオイは力強く答える。
来年は今年とは違う。
本当の意味で二人と友達になれた。
これ程力強い物はない。
「取り込み中悪いけど、少し良い?」
「えっと……」
「ミズキよ」
アオイが新たな一歩を踏み出そうとしていると、ミズキが話しかける。
いつもの執事服は必要が無い為、今日は仕事用のスーツだが、三人はホワイトファングでバイトをしていた時のミズキしか知らない為、普段のミズキの姿に驚いている。
「余り時間がないから単刀直入に言うわ。昨日、吹き込まれた事は事実だけと結構適当だから。マシロに関しては今の生活を満喫しているし、私も仕事として割り切れば文句はないわ」
ミズキはレイコがアオイ達に吹き込んだ事を訂正しに来たようだ。
内容は事実だが、マシロもミズキも助ける必要はない。
マシロは今の生活を気にっているし、ミズキも仕事と割り切れば文句はない。
「本題はそんなところだけど、一つ忠告。これ以上、マシロ……クロガミ一族に関わらない方が良いわ。あそこは普通じゃないから」
シオンは何年もマシロの世話係をしている。
そこでクロガミ一族の内情に少し触れてもいる。
先代のマシロ達の父親に関しては実家の工場を買収した事で実家を救ってもらっている為、恩は感じている。
だが、今の代のクロガミ一族は以前とは少し違って来ている。
少なくとも、一般人であるアオイ達が関わって良い相手ではない。
「それだけは覚えておいて」
ミズキは用件だけを伝えて、去って行く。
そんなミズキを見送り、言葉の意味を考えながらもアオイは来年の世界大会に向けて新たな一歩を踏み出した。
アオイ達に忠告したシオンは、マシロが乗る車に戻っていた。
「遅い。何やってたの?」
車に乗り込むシオンにマシロはそう言う。
だが、形式的に聞いているようで、余り興味はなさそうだ。
「少し野暮用です。マシロ様」
説明したところでマシロは興味を示す事も無い為、差しさわりの無い回答をする。
案の定、マシロはシオンが何をして来たなどに興味はないようだ。
「それで今日のバトルはどうでした?」
「まぁまぁかな。つまらなくはないけど、おもしろくもない。その程度のバトル。だけど、終わってみればただ弱い者虐めをしただけで虚しいだけだ」
マシロは頬杖をついてそう言う。
傍から見れば。アオイはかなりの善戦をしていた。
それ故に、アオイに対する歓声も凄かった。
だが、当のマシロから見れば大したことのないバトルだったようだ。
「その割には彼は善戦していたようですけど」
「こっちの装備は武器を状況に合わせて使い分ける装備なんだよ。それでドッズランサーとグラストロランチャーしか使ってない。つまりはそう言う事。それにあの形態は格闘戦をする為の物でもないからな」
本来、フルアサルトジャケットは装備を使い分ける事で真価を発揮する。
だが、マシロはあのバトルでドッズランサーとグラストロランチャーしか自身の装備は使っていない。
つまり、アオイとのバトルはその二つの装備を使うだけで足りたと言う事だ。
その上で、あの形態では格闘戦は不向きだ。
精々、勢いをつけてのドッズランサーでの突貫くらいが本来の格闘戦だ。
「まぁ……最後までゾーンに入る事は無かったからな」
アオイはバトルで最後までゾーンに入る事は無かった。
ゾーンこそはアオイにとって、最大の才能だ。
それを使う事無くアオイはあそこまでマシロに喰らいついた。
「アイツなら後、1年くらい死にもの狂いで練習すれば今の俺とならそれなりのバトルは出来るようになるかもな。尤も、その頃には俺は比べものにならないくらいに強くなってるから、今更手遅れなんだけどな」
それがマシロのアオイに対する評価だ。
素質はあるが、アオイの場合、本気になるのが遅すぎた。
1年練習を繰り返せば、今のマシロと戦う事は出来るだろう。
だが、その1年でマシロは更に進化する。
「世界大会か……少しはマシなファイターと戦えれば良いんだけどな」
マシロはまだ見ぬ世界の強敵達に思いを馳せる。
こうして、タチバナ・アオイは地区大会決勝戦で敗退するも掛け替えのない物を手にれ、一方のマシロは世界大会への切符は手に入れたが、勝利から得られる喜びを得る事が出来ず、ただ虚しさだけが残り、マシロとアオイのそれぞれの地区予選が幕を下した。